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2. NEWS in-depth


環境省、国立・国定公園と風力建設に関わる検討会開始
副所長 大林ミカ


 環境省は、8月1日に、「国立・国定公園内における風力発電施設
設置のあり方に関する検討会」を立ち上げる。昨年から政府が取り
組んでいる構造改革特区への提案募集において、自然公園特別地
域における風力発電の施設設置に関し、自然公園法の許可基準の
緩和を求める提案が、複数出されたことなどが契機となった。国立、
国定公園内の風力発電施設設置を提案したのは、北海道湧別町
(網走国定公園)、愛知県豊根村(天竜奥三河国定公園)、兵庫県
南淡町(瀬戸内海国立公園)など。全体で4回か ら5回の検討会を
開催し、今年中にとりまとめを行い、パブリックコメントを実施の上、
2004年4月に許可基準を施行する予定となっている。委員は、牛山泉
(足利工業大 学)、小河原孝生(生態計画研究所)、熊谷洋一(東京
大学)、瀬田信哉(国立公園協会)、本藤祐樹(電力中央研究所)、
森本幸裕(京都大学)、山岸哲(山階鳥類研究所)、吉野正敏(筑波
大学名誉教授)、飯田哲也(当研究所所長)の各氏9名の予定である。
 環境省は、構造改革特区提案に関しては、特定の地域で一括して
規制緩和を行う特区制度には自然公園保護はなじまず、施設許可は、
個別案件毎に慎重に審査が必要としている。そして、特区での風力
発電設置を認めない代わりに、今回の検討会において自然公園内で
の風力発電施設の設置許可基準を明確化する方針であるという。
 国立公園の特別地域は規制が厳しく、工作物を建設するには、環境
相の許可が必要である。自然公園法施行規則では、工作物を「建築
物」「道路」「その他」に分類していて、それぞれの許可基準を決めて
いる。風力発電は「その他」の部類に入る。現在自然公園内で風力
発電の設置が認められているのは、ほとんどが研究用か自家発電用
の用途に限られていて、事業用で設置が許可されているのは、三重
県の「室生赤目青山国定公園」だけである。このケースに関しても、
環境省は当初は慎重な姿勢で、 県側との協議の結果、近くにすで
に研究用の風車が設置されていることなどから「景観上の支障は著し
いとはいえない」と漸く同意した経緯がある。
 自然公園法は、今まで主に景観の観点から運用がなされてきた。
現行の景観中心の保護政策は、さまざまな矛盾も生んでいる。例え
ば、河川・湖沼などの内水面の生態系の保全管理は水産資源保護法
下にあって自然公園法には関わらないため、自然公園法のもとでは、
水中生物に致命的な影響を与える大規模発電所からの温排水を排出
する排水管建設は許可されるにもかかわらず、地上の突起物としての
風力発電は排除さ れてしまう。
 上記のような自然保護法の運用に関しては、今まで自然保護団体
からも批判が寄せられていたが、風力発電の設置に関しては、風力発
電の建設・運用時における生物 (鳥類、昆虫類、植物など)に与える
影響について、同じように懸念の声があがり始めている。
 NEDOが今年4月に行った「風力発電のための環境影響評価マニュ
アル(案)」へのパブリックコメント募集にも、自然保護団体から寄せら
れたらしい意見が幾つかみられる。NEDOの回答は、その他の省庁の
行っているパブリックコメントへの対応とくらべると、コウモリ類や渡り
を行う昆虫類の記述について改訂が行われるなど、寄せられた意見
その他に比較的良心的に対応しているように思われる。しかし、地域
に開かれた建設過程のために各自治体と連携しつつ影響を見極める
ことを要求する意見などに対して、「環境影響評価法」の枠外なので
難しいと切り捨てるなど、いささか紋切り型の回答も見られた。そうで
あるならば、やはり別の枠組みの中で、周辺環境も含めた地域社会
の合意を得るための別のプロセスを作る必要があるということになる。
また、コメントの募集期間がわずか2週間であることも大きな問題で
あろう。さらに、環境省に対しては、(財)日本自然保護協会や(財)日
本野鳥の会などは、自治体から多数規制緩和のための提案が出され
たことを懸念し、今年3月に鈴木環境大臣宛にそれぞれ意見書を提出
している。これらの団体は、1)一律の規制緩和ではなく個別の事業に
ついて景観や野生生物に与える環境影響評価を行うこ と、2)風力発
電の建設は環境影響評価法の対象外であるため、自然公園内に設置
す る場合の国のガイドラインを確立すること、3)これらの手続きに際し
ての市民や NGOの参加を得ること、などを要請している。
 日本では、風力発電の発展がまだ萌芽期にあるため、鳥類への影
響が大きな論争とはなっておらず、包括的かつ定量的なスタディーも
無く、景観に関してもガイドライ ンの設置が遅れている。しかし、2001
年には、岩手県三陸町でイヌワシへの影響が問題となって住友商事が
10MWの風力発電開発を、山形県酒田市では景観問題を巡って山形
県の不許可により新日鐵が30MWの開発計画を、それぞれ断念する
などの事例が出てきている。また、福島県が県独自で、風力発電開発
を環境アセスメント制度の対象と するなど、自治体レベルでの対応も
先行しつつあるが、鳥類保護や景観保護などの地域を越えた課題を
論じる際には、やはり何らかの基本的ガイドラインが必要となるだろう。
 先の三重県のケースでは、県が主宰して、『「青山高原に風力発電
が建設されるこ と」に関するアンケート調査』を行った。アンケート期間
は、7週間にわたり、郵送、FAX、インターネット、窓口回収箱を利用し
たものである。2,600件近くの意見が寄せられており、風力発電に肯定
的な意見は89.0%、否定的な意見は4.4%であったとい う。アンケート手
法そのものが妥当であったかどうかなども精査が必要であるが、景観
という主観的な問題を論じる際に広く意見を募る方法は、一つの手法と
して取り入れられるべきであろう。
 90年代に鳥類への影響が大きな議論となったアメリカでは、政府主
導のもと、自然保護団体、エネルギーの専門家、自然エネルギー業界、
電力会社など、すべてのステークホルダーの参加による全米風力調整
委員会が組織され、風力発電の影響に関する議論を行って、ガイダンス
書のとりまとめ、報告書の発表などを行っている。ここでの議論をみてい
くと、それぞれの地域に固有の自然環境、景観、生物種の生息があるた
め、結果として、一律の基準を設けることは不可能であり、それぞれの
サイトを注意深くみていく必要があることが指摘されている。
 現在、ただでさえ逆風の中にある日本の風力発電事業者にとって、地
域ごとのアセスメントなどの実施は、過重な要求であるという声も聞こえ
てきそうである。しかし、これらのプロセスには、地域や市民の参画が必
要となるし、今までの大規模集中型設備を中心としたエネルギー政策が、
このような市民参や合意のプロセスを全く無視して行われてきたことを考
えると、風力発電の開発に伴って、多様なセクターの合意を得る行為が
必然となのは、あくまで地域と共生する風力発電の面目躍如ではないだ
ろうか。
 課題は多いが、審議会の議論の行方に期待したい。


Source:
環境省:http://www.env.go.jp
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO):
「風力発電のための環境影響評価マニュアル(案)」へのパブリックコメン
ト募集の 結果について
:http://www.nedo.go.jp/informations/koubo/150604_2/150604_2.html
日本自然保護協会NACS-J:
日本野鳥の会:
三重県:
「青山高原に風力発電が建設されること」に関するアンケート調査結果
: http://www.pref.mie.jp/SHIZENK/gyousei/windfarm/index.htm
National Wind Coordinating Committee:

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