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2.特集「2006年の環境とエネルギー問題を展望する」

 SEENの新年号と2月号の2回にわたって、2006年の環境とエネルギ
ー問題の展望を特集する。
 今年もまた、環境もエネルギーも問題が山積みというのが正直なところだろ
う。例えば、地球温暖化問題をとっても、京都議定書が発効したとはいえ、こ
れが地球温暖化を防止する実効力のある議定書に育っていくためには、まだま
だ先は長い。原子力問題や自然エネルギーの普及なども同様だ。
 とはいえ、一年の最初にあたって、こうした問題の展望を示しておくことは
重要だ。これを参考に、問題解決の舵取りを、引き続き行っていきたい。

1)電力自由化と原子力発電との原理的矛盾
               橘川武郎(東京大学社会科学研究所教授)

 電力自由化と原子力発電とのあいだには、二重の原理的矛盾が存在する。
 第1の矛盾は、電力自由化が市場メカニズムの導入(=国家の後退)を基本
とするものであるのに対して、原子力発電には国家介入が不可避である点にあ
る。
 原子力発電に国家介入が必要となる事情としては、まず、立地確保の問題が
ある。原子力に限らず他の電源及び流通設備に関しても、立地を円滑に進める
ためには、事実上、電源三法の枠組みが必要不可欠である。これは、簡単に言
えば、国家が市場に介入して何とか電力設備立地を確保していく手法である。
しかも、この枠組みがあっても、計画どおりには電力設備立地がなかなか進ま
ないのが現状である。
 また、原子力発電への国家介入を不可避にするより大きな事情として、使用
済み核燃料の処理問題(いわゆる「バックエンド問題」)がある。核燃料のバッ
クエンド問題に関しては、リサイクルするにせよワンススルー(直接処分)す
るにせよ、国家の介入は避けて通ることができない。また、リサイクル路線を
採用する場合には、核不拡散政策との整合性を図ることが必要になるが、これ
が、市場メカニズムとは別次元の政治的マターであることは、言うまでもない。
 第2の矛盾は、電力自由化によって競争の当事者となる電力各社には他社と
異なる個性的な経営行動が求められるのに対して、原子力開発を推進するため
には電力各社が一枚岩的な行動をとらざるをえない点にある。
 電力自由化の進展とともに始まりつつある本格的な競争を論じるにあたって
は、競争の主たる担い手が誰になるかを、正確に見極める必要がある。
1995年以来の電力自由化のプロセスでは、IPP(独立系発電事業者)や
PPS(特定規模電気事業者)の新規参入により、既存10電力会社とのあい
だの競争が激化するという見通しが語られることが多かった。しかし、IPP
やPPSには供給力の面での制約があり、卸電力取引所が登場しても、この制
約は残るものと思われる。端的に言えば、IPPやPPSは本格的競争の主役
にはなりえないのであり、主役の座を占めるのは、既存の電気事業者(送電系
統から切り離されている沖縄電力を除く9電力会社)それ自身ということにな
る。
 全国的に事業所を展開する企業Aが競争入札等により、9電力会社中で最も
安い料金を提示した既存電気事業者Bと、電力売買を一括契約する。その場合
には、電気事業者Bは、これまでの供給区域の外にある企業Aの全国の事業所
に向けて、電力を供給することになる。振替供給料金の廃止という現実をふま
えれば、ここでBが行うような全国大の電力供給を通じて、9電力会社間の市
場競争が激化することは、大いにありうる(2005年11月に九州電力が広
島県内のジャスコ宇品店に電力供給を開始したが、これは、9電力会社間の市
場競争の端緒となりうる出来事である)。もちろん、東西の周波数の違いや北本
(北海道本州)連系線の送電規模の限界などがあり、競争はある程度チェック
されるであろうが、それでも、9電力会社自身が主役となって競争が本格化す
ることに変りはない。これが、本格的競争時代の実相なのである。
 9電力会社相互間の競争が本格的競争時代の基本線であるとすれば、そこで
は電力各社が、他社とは異なる個性的な経営行動をいかに展開するかが焦点と
なる。一方、原子力発電に関しては、立地問題についてもバックエンド問題に
ついても、電力各社は一枚岩的対応をせざるをえない。原子力発電事業は、事
実上、民営であるが国策、つまり国策民営であるという状況が続いているから
である。
 この小稿で指摘したように、電力自由化と原子力発電とのあいだには、(1)
市場原理対国家介入、(2)個性的行動対一枚岩的対応、という二重の原理的矛
盾が存在する。電力自由化で求められているのは電力各社が私企業性を強めて
いくことであるが、その一方で原子力発電事業は、引き続き国策民営方式によ
って運営されている。この矛盾は深刻であり、電力会社は、自由化と原子力発
電とのあいだで「股裂き状態」に陥っているというのが、現実の姿である。

               橘川武郎(東京大学社会科学研究所教授)


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