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3.連載「光と風と樹々と」(3)
 市民風車のビジネス・モデルをつくった「はまかぜちゃん」
                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

●新たに5基―累計19億3000万円を集める市民風車事業
 2001年9月の「はまかぜちゃん」の運転開始からスタートした日本の市民風
車事業はすでに5基を数えるが、来年2月から9月にかけて、青森県大間町、
秋田市(2基)、茨城県神栖市、千葉県旭市で計5基が運転開始する予定である。
株式会社自然エネルギー市民ファンドをつうじて、1口50万円、計10億円の
市民出資の募集が11月から始まった。
 北海道グリーンファンドの関係者から、はまかぜちゃんの出資募集をいよい
よ始めるという話をはじめて耳にしたのは、奇しくも5年前の2000年12月8
日、日比谷公会堂で開かれた、10月に亡くなられた高木仁三郎さんを偲ぶ会の
折だった。6000万円が目標と聞いて、不景気に苦しむ北海道で、1口50万円
ではたしてどれだけ集まるだろう、と心配したが、私の予想をはるかに超えて、
2ヶ月あまりで、1億2000万円以上の出資があった。
 これを皮切りに、既設の市民風車事業は、合計約9億3000万円も集めている。
とくに本年2月に運転を開始した石狩市民風車2基の募集枠4億7000万円は、
またたく間に一杯になったという。市民風車への期待が、全国的にも、いかに
大きいかを物語っている(朝日新聞2005年2月2日付「風力発電 6%削減京
都議定書発効へ」第5回記事参照)。
 今回の新規募集と運転開始が順調にいけば、合計10基、総出力13,300kW、
総出資額約19億3000万円の市民風車事業ということになる。
 
●新エネルギー特別措置法下、生き延びた市民風車
 天下の悪法といえる「新エネルギー特別措置法」が2003年4月に施行されて
以降、市民風車がはたして生き延びることができるのか。これが大きな課題だ
った。同法施行後、計7基の運転開始は、市民風車が同法下でも生き延びるこ
とができることを示すことになる。
 東北電力の場合には、市民風車に対応する2000kW以下のプロジェクトの場合
は、電気分を3円でしか買わないことになった。11.5円がある日突然3分の1
近い3円の値段になるという「暴挙」が、現代において、しかも自然エネルギ
ーの促進を名目にまかりとおっている。
 大間や秋田の市民風車は、幸い他の電力会社が、クレジット分を6円程度で
買ってくれることになったようだが、電気が3円で、クレジット分が6円程度
というのは、得心がいかない。電気としての価値が、クレジットの半分以下し
かないというような専横的な取引きが許されてよいのだろうか。
 そもそも、ビジネスとしての風車事業は、電気などの販売契約さえ結べれば、
故障も少ないし、景気に左右されるわけでもないし、風は数年というような長
期的なスパンで見るとかなり安定して吹くから、事業リスクの少ない手堅いビ
ジネスである。デンマークを皮切りに、ドイツやスペインなどで、個人やグル
ープ、組合などによる市民風車が急増したのは、飯田哲也氏らが強調してきた
ように、固定価格での購入を電力会社に義務づける制度であるために発電事業
者にとって大きなメリットがあるからだが、風さえあれば、そもそもの事業リ
スクが少ないからでもある。
 デンマークのユットランド半島や北ドイツでは、日本やオランダ、アメリカ
で見かけるような大型のウィンド・ファームが多いわけではない。個人やグル
ープ所有の1基からせいぜい数基程度の発電用風車が、市民風車にふさわしく、
のどかに、そこかしこに点在している。

 野口悠紀雄の新著『ゴールドラッシュの『超』ビジネスモデル』を最近おも
しろく読んだ。拙著の『脱原子力社会の選択』(新曜社、1996年、pp25-31)で
も論じたが、ゴールドラッシュは、今もなお、既成の価値や枠組みにしばられ
ないカリフォルニアのパイオニア精神として息づいている。「カリフォルニ
ア・エナジー・ゴールドラッシュ」と呼ばれるような1980年代のカリフォルニ
アにおける風力発電ビジネスの勃興も、1993年のサクラメント電力公社による
世界初のグリーン電力制度のスタートも、このような精神のあらわれである。
 この本を読みながらあらためて思ったのは、北海道グリーンファンドや自然
エネルギー市民ファンドも、小口市民出資という、まったく新しい「市民風車
の日本版ビジネスモデル」をつくったのだということである。ビジネスモデル
ができたからこそ単発の1基に終わらずに、青森の「わんず」と秋田の「天風
丸」に拡大し、新エネルギー特別措置法下も生き延びることができたのである
(鈴木亨「市民風車の普及とひろがり」飯田哲也編『自然エネルギー市場』2005
年、築地書館)。石狩市民風車を経て、地元のNPOなどを母体とする事業主体
としての有限中間責任法人の設立、自然エネルギー市民ファンドによる出資の
募集と事業主体へ融資という「新エネルギー特別措置法」下でのビジネスモデ
ルが確立したといってよい。
 本年9月末現在認証件数2万3000件を超えるNPOの世界も、(委託事業の
受け皿となるような)事業系のNPOと(おもに会員収入に依拠する)運動系
のNPOに大別できる。おおまかに言えば、環境NPOは運動団体的な性格が
強く、事業展開は容易ではない。市民風車は、環境NPOの世界での、委託事
業ではない、自立した事業展開の代表的な成功例といえるのである。事業性と
運動性との見事な統合をはたしてみせたのではないか。
 市民風車は、アメリカでも、community-based wind power というコンセプト
とともに、現在大きな焦点になっている。次号では、ミネソタ州の農民風車を
紹介したい。

                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

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