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1. 風発 「社会知を紡ぐということ」
                       飯田哲也(ISEP所長)

本号で特集しているとおり、モントリオールで開催されているCOP11/M
OP1(気候変動枠組条約第11回締約国会議/京都議定書第1回締約国会議)
では、いよいよ次期削減目標がアジェンダに乗ることになる。ただし現時点で
は、目標以前に、基本的な枠組みやプロセスに関してもさまざまな提案が提示
され「百家争鳴状態」にあるが、その事実自体が、すでに実質的に国際政治的
のアジェンダに乗っている証左である。そして、最終的な決着は、国際政治的
にさまざまに展開されていく、新しい「国際的な意思決定プロセス」によって
定まることは言うまでもない。

この「国際的な意思決定プロセス」に関して、欧州連合(EU)には、酸性雨
を契機とした「長距離越境大気汚染条約」(LRTAP、1979年)の締結以来、「一日
の長」がある。しかも、立憲原理に補完性原理や汚染者負担原則を明示的に取
り入れ、近年では「オーフス条約」(1999年)などを通して、環境政策へのいっ
そうの市民参加と意思決定のプロセスの透明化、分権化を図っている。やはり、
どうみても環境政策に関する「社会知」を積み重ねてきたのは、欧州社会とい
わざるを得ない。

振り返って、日本はどうか。たとえば、昨今、メディアを賑わせているのは、
アスベスト問題とマンションにおける耐震強度の偽造問題である。ここでは、
一つ一つの問題の詳細には立ち入らないが、いずれも共通している要素がある。
何かをきっかけに「社会的な問題」が浮上すると、一時期はメディアもそのニ
ュース一色となるのだが、政府は社会的な不満を「鎮火」するために、表面上
の「お詫び」や「補償」を優先し、必ずしも本質的な問題を洗い出すことはな
い。むしろ、本質的な問題を覆い隠すために、意図的にずれた「犯人」が生け
贄に提示され、メディアもまんまとその方向に誘導される。

アスベスト問題の本質は、「通産省」のDNAとも言える産業擁護のための政策や
事実の歪曲であり、これは水俣病以来ずっと変わらない。耐震強度の偽造問題
は、そもそも耐震性以前のお粗末な「文化住宅」がはびこっているこの国の住
宅政策そのものだろう。JCOだけに責任を押しつけた東海村臨界事故、カイワ
レを犯人に仕立てたO157問題、実用化の見通しのない高速原型炉もんじゅの実
験再開や核燃料サイクル政策などなど、枚挙に暇がない。この国の政策は、平
川秀幸氏(京都女子大学)が指摘するとおり、「証拠に基づく政策(Evidence-
Based Policy)」ではなく、「妄想(delusion, obsession)」に基づく政策、
"Delusion-Based Policy (DBP)"なのである。原因が何も改善されないから、問
題は繰り返され、いたずらに時間とお金と環境が費やされ、そして時には人命
が犠牲となる。古くは旧日本軍が同じ構図を持っていたことは、歴史的に検証
されている。

この構図を抱えた日本政府が、気候変動の新しい「国際的な意思決定プロセス」
に参画するのである。明日香報告にあるとおり、京都議定書に対してすら、デ
マゴギーのような言説が産業界や経産省サイドからは聞こえてくるのである。
この「妄想ベース」の姿勢は、国際的には、良くても「ノイズ」、悪くすれば大
きな障害になりかねない。国内の気候変動政策やエネルギー政策を、妄想ベー
スから社会知を紡ぎ上げる構造に転換していくこと。それは、国際社会に対し
ても、そして将来世代に対しても、日本社会を構成するわれわれ自身の責任な
のである。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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