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4.再生可能エネルギーとファイナンスに関する一考察
~ Beijing International Renewable Energy Conference 2005にて~
   木村寿香(Imperial Collage, University of London、上海交通大学)

2004年6月にドイツで開催されたInternational Conference for Renewable
Energies(Renewables 2004)を受けて、世界銀行(世銀)は再生可能エネルギー
促進のための融資を年間20%ずつ増加するとし、初年度の実行額は目標を大き
く上回った。特に中国においては、1990年代初頭からの数々の大規模な調査活
動(注1)と助言に加えて、1999年にはRenewable Energy Development Project
(US$100million Loan, US$ 35million GEF Grant)、さらに2005年には
RenewableEnergy Scale-up Program(US$87million Loan, US$ 40.22million
Grant)など有償・無償の資金を提供している。

しかし、世銀に対する評価は依然として厳しい。今回北京で採択されたBeijing
Declaration on Renewable Energy for Sustainable Development では、「世銀
等国際金融機関は再生可能エネルギー技術への投資を大幅に拡大すること」を
要求され、更にNGOをはじめとするCivil Society のDeclarationでは、「世
銀等国際金融機関は再生可能エネルギーを支援する適切な方策をいまだ講じて
いない」と批判されている。

北京会議における世銀のJamal Saghir、Director, Energy & Water Department

プレゼンテーションによれば、Bonn Action Planにおける開発途上国が公約し

「再生可能エネルギーによる発電を2015年までに80GW」を達成するにはU
S$90−120 billion、もしくは年間US$10 billionの資金が必要とされる。
しかし、Bonn Action Planはインドやインドネシアにおける取組みを含んでい
ない。それらを含めば、US$227billion、もしくは年間US$23 billionの
資金が必要であるという調査もある。2004年の米国と欧州の政府による再生可
能エネルギー支援は年間US$10 billion(注2)であったことと比較すれば、
発展途上国が必要とする金額の巨大さが鮮明になる。

しかし、これをファイナンスの問題として考える際に注意するべき点は、投資
と金融の区別である。プロジェクトに必要な投資額は、必要な金融の金額では
ない。まずは再生可能エネルギー技術の開発・生産主体もしくは、発電・発熱
などの事業主体である企業が、投資コストの一部を負担し、残りを金融機関等
から調達することになる。次に、資金調達手段は事業主体により大きな差があ
る。再生可能エネルギー技術(例えば風力発電のタービンなど)の製造業者の
資金調達手段は実は幅広い。中国を例にとれば、研究開発については政府の補
助金、製品商品化以降はプライベートプライベートエクィティ、そして銀行か
らの資金調達が可能である。しかし、発電・発熱事業者の資金調達手段は限ら
れている。まず、事業収益のアップサイドの可能性そしてExitの可能性が限ら
れていることからハイリスク・ハイリターンを目指すプライベートプライベー
トエクィティにはそぐわない。設備購入など初期投資コストは高いにも関わら
ず、政府からの補助は固定価格買取など「事業開始後」のものが多く、したが
って、事業開始時の初期投資は主に事業主の内部資本と銀行借入に頼ることが
多くなる。発電・発熱事業者が既存の大手であれば、コーポレートファイナン
ス、プロジェクトファイナンス等調達手段も調達先も選択肢があるが、新規参
入した規模の小さい事業主の場合、銀行からの融資を受けるのはより難しくな
る。さらに最小規模の発電・発熱の主体、つまり家庭利用のための投資につい
ては、特に貧困家庭においては、銀行からの借入は非常に困難である。

このような現状に対して、Beijing Declarationをはじめいたるところで「開
発すべき」と言われているInnovative financing mechanismとはどうあるべき
なのか?Innovative financing mechanismについては、新しい革新的な金融の
「手法」と解釈されることが多く、Renewables2004以降各地で行われた再生可
能エネルギーとファイナンスに関する国際会議では、特に先進国における新し
い金融商品について取り上げられることが多かった。今回の北京会議のファイ
ナンスフォーラムにおいてInnovative financing mechanismがどうあるべきで
あるかについての踏み込んだ議論には至らなかったが、世銀、アジア開発銀行、
KfW、中国国家開発銀行、商業銀行、そしてAmerican Council on Renewable
Energy等、様々な視点から再生可能エネルギーへのファイナンスの現状と展望
についてのプレゼンテーションがあった。さらに資金の借手側である企業の声
を起業家フォーラムで聞くことができ、今後の課題について考える上でのイン
スピレーションを得ることができた。Innovative financing mechanismは、資
金調達手段が既にある企業へより便利で安価な資金を提供するメカニズムであ
ると同時に、現状資金調達手段が限られている借手へ資金を新たに提供するメ
カニズムであるべきであり、したがって借手ごとのニーズに従ってファイナン
スの手法を提案する必要がある。例えば、発電・発熱事業者には、再生可能エ
ネルギーが地域に根差した分散化したエネルギーであることを勘案すれば、地
元金融機関からの調達が最も相応しい。そのためには世銀等国際金融機関は援
助対象国の地元金融機関をクラウドアウトせず、機関構築やキャパシティビル
ディングをサポートするかたちでの援助が望ましいと思われる。さらに借手を
細かく分類し、彼らの資金ニーズを掘り下げることによって、Innovative
financing mechanismについてより具体的な提案ができると思う。今後は実務
に携わりながら、この課題に取り組んで行きたいと思う。

   木村寿香(Imperial Collage, University of London、上海交通大学)

(注1) 主なレポートには、China: Issues and Options in Greenhouse Gas
Emissions Control (1996), China Renewable Energy for Electric Power(1996),
Financial Incentives for Renewable Energy Development (1997),Assessing
Markets for Renewable Energy in Rural Areas of Northwestern China (2000)
等がある。
(注2) Dr Eric Martinot, Senior Visiting Scholar, Tsinghua University
の北京会議でのプレゼンテーションより。


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