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5.連載「光と風と樹々と」(2)
    「ネイティブ・アメリカン初の風力発電プロジェクト2」
                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

   1本のつぼみから

 前回述べたように、私は昨年12月4日、ミネアポリスから正味8時間、800km
あまり、大草原を疾走して、ローズバッヅ・スー族の風力発電機の現場に到着
した。2003年5月1日に営業運転を開始した、ネイティブ・アメリカン(いわ
ゆるアメリカン・インディアン)初の商業用風力発電プロジェクトである。サ
ウスダコタ州とネブラスカ州の州境である。建設費総額77万ドル(約8500万
円)のうち、50万ドルは、エネルギー省からの助成金。このプロジェクトはそ
もそもはエネルギー省の提案から始まったのだという。現時点では、系統連結
ではなく、発電した電気はすべて隣接するカジノとホテルに売っている。
 北海道グリーンファンドの「はまかぜちゃん」や鰺ヶ沢町の「わんず」、秋田
の「天風丸」のように愛称がある。1999年12月に72歳で亡くなった部族長の
ニックネームにちなんで「Little Soldier(小さな兵士)」と呼ばれている。
 2003年5月1日の運転開始式の模様などは、
http://www.nativeenergy.com/newsletter/NEWSLETTER4.pdf
(英文)で詳報されている。
 最初の1年で、230万kWhの買電量だったという。平均稼働率はちょうど35%
になる。かなり高い。月別でも、32から9%の範囲内という。1年をとおして
風がいい。また彼らはNative Energy 社をつうじて、全米に、グリーン・タグ
(green tag)というアメリカ版のグリーン電力証書を売っている。これまでで
23万ドルの売り上げを得ているという。

   5万kWのウィンド・ファームへ

 今はまだ1基だけだが、第2のプロジェクトとして、1500kWから2000kWの
風力発電機を十数機建設し、3万kWのウィンド・ファームを所有する予定でも
ある。農業省の村落電力基金から総建設費の80%を援助してもらうメドがつい
ているという。あと20%分資金獲得のメドをつけたいということだった。アメ
リカにはいろいろな種類のファンド、日本式にいうと補助金がある。2005年末
か、2006年始めに増設予定。さらには、1万kWのウィンド・ファームを2箇
所につくる予定という。2008年までには合計5万kWのウィンド・ファームに
したいと、意気軒昂である。ローズバッヅの「バラのつぼみ」は、ウィンド・
ファームという大きなバラ園に育つことを夢見ているのである(もっともロー
ズバッヅという英語の地名自体、白人から与えられた呼び名であり、彼らの伝
統的な呼び方は、Sicangu Oyate である)。
 ネイティブ・アメリカンには、連邦政府や州政府の補助金頼りで、勤労意欲
がない、アル中や成人病の罹患率が高いなどの多くのマイナス・イメージがつ
きまとう。ローズバッヅのカジノもそうだが、ミネソタ州など、アメリカの多
くの州では、ネイティブ・アメリカンにのみカジノ経営を許可している。カジ
ノ経営でようやく一息ついている、というのが、ネイティブ・アメリカンのイ
メージである。

   歴史を変える・歴史が変わる

 だからこそ風力発電は、彼らにとっての新たな希望のエネルギーである。白
人たちに追いやられて住み着いたネイティブ・アメリカンの現住地は、ローズ
バッヅのように風の強い周辺的な場所が多い。風力発電は、アメリカでも、長
年悩まされてきた強風をプラスの価値に転換する「一打逆転」の大きな契機で
ある。しかも彼らの伝統的な価値観は、太陽や風と親和的である。「自分たちの
伝統文化、霊的な価値と現代のテクノロジーの結合が風力発電だ」と、1号機
のニックネームのもとになった部族長の「Little Soldier」は、仲間を説得し
たのだという。さらに、ネイティブ・アメリカンの土地に風力発電機を建設す
ることは、他の土地に建設する場合に比べて、税制上の優遇措置が多く得られ
るという実利的なメリットもある。最大の課題は過疎地で送電線の容量が貧弱
すぎることである。
 私たちに長時間、説明してくれたリーダーのトニー・ロジャーも、40歳代後
半だが、インターネットや電力ビジネスに強く、ネイティブ・アメリカンの歴
史にも強い、堅実で現代的なロマンチストだった。ネイティブ・アメリカンの
歴史と生活は、これから十数年の間に、風力発電ビジネスの拡大とともに、全
米で大きく変化していく可能性がある。
 サウスダコタ州には、風力発電機は州全体でもまだ27機しかない。今はただ
ただ退屈な90号線沿いに、やがては、風力発電機が林立する日も遠くないだろ
う。実際、フロリダ・パワー社が定格出力1000メガワット(100万kW)のウィ
ンド・ファームを州内に建設する計画だという。

                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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