上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
4.連載 「上海からの風の便り」(2)
   木村寿香 (Imperial College, University of London・上海交通大学)

今回は、Beijing International Renewable Energy Conference 2005
(www.birec2005.cn)の直前ということもあり、特大号として、中国の政策の
要点を簡潔にご紹介したいと思います。

中国の自然エネルギー政策は、主に三つの層から成り立っています。まず第一
に「農村・辺境地域の電化」として1970年代以来の小型独立型発電システムの
推進を基盤としながら、第二に1990年代後半に始まった「新産業育成」、そし
て第三に「温室効果ガスの削減」に資する石炭・石油代替エネルギーとしての
自然エネルギーの推進です。

重層的な目的の中でも特に重要な「農村・辺境地域の電化」と「温室効果ガス
の削減」に対する従来の政策の成果を簡単に見てみましょう。

* 農村・辺境地域の電化
1970年代からの長年にわたる小型水力発電の推進に加え、1990年代後半の「光
明工程」「西部大開発」といった巨大国家プロジェクトの枠組みの中で小型風
力・太陽光発電が強力に推進された結果、自然エネルギー発電の小型の独立型
発電システムの開発と利用普及が広域に広まっただけでなく、製造技術も成熟
化し、小型発電機・太陽温水器等製造業およびサービス業の育成にも成功しま
した。2003年末時点で、PVは50MW、独立型風力発電18,000基、小型水力発電
は560MW、バイオマス発電は2,000MW、太陽温水器5億平方メーター、そして
150,000戸のソーラーホームシステムの普及を達成しています。

* 温室効果ガスの削減
中国の主な温室効果ガスの排出源は石炭による火力発電です。しかし「石炭を
代替するエネルギー」としての自然エネルギーの普及は滞っています。特に系
統連系型の大型風力発電の開発が遅れています。中国は世界でも指折りの風力
資源国で、ドイツの11.3倍以上と言われる風力資源を持ちながらも、2003年
末の風力発電容量は567MW(全体の0.1%程度)でしかなく、ドイツの容量の4%
にも及びません。グリーン電力の普及による温室効果ガス削減という点では大
いに改善の余地があります。

以上の結果は、従来の政府の規制と補助金を中心とした政策手段では、農村の
電化など一部の政策目標は達成できても、大規模な温室効果ガスの削減などの
目標達成は難しいということを示唆しています。最近の調査によれば、中国の
大型風力案件は補助金に頼っており、民間主導の案件が育たず、発電コストの
削減が遅れ、他国よりも60%高い水準にあるといいます。商業ベースのデベロ
ッパーや金融手法など、大型風力発電普及に必要な裾野産業も成熟しておらず、
その結果、取引費用が高いと指摘されています。

新しい政策フレームワークの背骨である「自然エネルギー法」では、以上の反
省に基づき、政策手段の柱に固定価格買取り制度を採用し、マーケットメカニ
ズムを活用していく方針です。

「自然エネルギー法」は、2005年2月末、第10期全国人民代表大会常務委員
会大14回会議で全会一致で可決され、2006年1月より施行の予定です。自然
エネルギーを積極活用していくことを明確にしたもので、今後の中国の自然エ
ネルギー推進の基本法となります。エネルギー資源の調査、開発計画、技術的
支援、応用、価格管理などを規定しています。(「自然エネルギー法」全文は
www.creia.netよりダウンロードできます)

従来のトップダウンのアプローチと異なり、政府は買取保証と技術基準の設定
と監査に注力し、マーケットメカニズムを整えることで、自然エネルギーを利
用した電力、熱、ガス、液体燃料の生産を促進させるアプローチです。注目す
べき項目について次に具体的に見てみましょう。

* エネルギーシステムへの考慮 
自然エネルギーからの電力のみならず、熱・ガス・バイオ液体燃料に対する政
策を講じ、利用ニーズに応じてエネルギーの買取り義務を課している点は注目
に値します。電力については系統管理事業者が買取り、都市部の住宅用暖房用
の熱については熱パイプライン事業者が買取り、さらに自動車用のエネルギー
のバイオ液体燃料については石油小売業者が買取ることを明確にしました。な
お、この買取り義務に反した各買取業者には罰金が課されます。さらに住宅用
太陽熱温水器などについては、建築基準を策定し、不動産開発業者が設計・建
築の際に必要な協力を提供することを規定しています。エネルギー源をいかに
組み合わせ、いかに上手に変換しながら使いやすい二次エネルギーを得るかと
いうエネルギーシステムの哲学が明確な方針と言えます。

* 固定価格買取り制度の導入
自然エネルギーからの電力の買取価格は、政府が定める一定の価格(feed in
tariff)とします。中国では、1994年以来、風力発電からの電力の買取りが一
部行われていましたが、買取価格については、個別のケースに応じて系統管理
事業者と自然エネルギー発電業者との間の交渉で決定されていたため混乱と紛
争の原因となっていました。今回の買取価格の透明化と対象電源の拡大により、
自然エネルギーの強力な推進策となると期待されています。

* コスト負担の構造の明確化
地域に分散した自然エネルギーによる発電からの買取り義務が規定され、その
費用は系統管理事業者が電気料金に上乗せできる仕組みになりました。その具
体的な方法については、別途政令で規定されます。

* バイオ液体燃料の販路確保
バイオ液体燃料(アルコールガソリン等)は、既に同品質のガソリンと価格差
はなくなったものの、流通システムがなかったことが普及のボトルネックとな
っていました。河南省など一部の省では、地方政府の政策に基づきバイオ液体
燃料をガソリンスタンドで販売を開始していましたが、この法律の施行により
全国的に石油販売業者の流通経路を確保することとなりました。

* 監督主体と実施主体の明確化
従来は、地域開発の分野、産業育成の分野、そしてエネルギーの分野と、自然
エネルギーの旗振り役が省をまたいで複数存在していましたが、今後は自然エ
ネルギーの開発と利用の責任が一元化されます。これにより自然エネルギーの
持つ複数の特性に関係する部署間の調整を、統合的なアプローチで検討し対応
することができます。さらに他のエネルギー源開発利用、電力の自由化政策、
地球温暖化対策など他の政策との調和が期待できます。政策の実施主体として
の地方政府の役割も明確にされました。さらに行政の不作為に対しての罰則を
伴うようになりました。

今後注目する点として次のものが挙げられます。

* 地方政府の取組みとの整合性 
一部の地方政府は実験的な自然エネルギー推進方策を既に採用していますが、
今回の法律で必ずしも全てサポートされていません。例えば、上海市の世界銀
行の支援を得て企画した独自のShanghai Jade Electricityグリーン電力プロ
グラムや、広東省の風力発電買取価格の特別優遇等との整合性はなく、今後の
調整が必要と思われます。

* 発電事業者 
中国の発電業者は、旧国家電力公司が分割して設立された中国国電集団など五
大発電業者が半分のシェアを持ち、その他は地方政府や民営企業が運営する小
規模な発電事業者が数百社乱立しています。五大発電業者も含めて、電力業界
の自由化のもと生存競争が激化しているなかで、初期投資コストが高い自然エ
ネルギー発電に対してはどこも消極的でした。電力セクターの自由化の渦の中、
独立系発電事業者が新しい経済インセンティブにどう反応するのか、今後の注
目に値します。

次回の連載では、独立系発電事業者の対応と「誰のための自然エネルギーか」
を考えたいと思います。

木村 寿香(Imperial Collage, University of London、上海交通大学)


−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://isepseenarchive.blog88.fc2.com/tb.php/180-75d12452
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。