上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2)「原子力を通じて見る西川一誠・福井県知事」
 日野行介(毎日新聞大阪社会部記者、今年3月まで福井支局敦賀駐在記者)

 「高木さんに同じことをされるなら納得が行くんですがね。西川さんにはね
え…」。関西電力のある幹部がため息混じりに漏らした。原発の運転再開や設置
などの了解権限を人質に取る、いわゆる「原発カード」を武器に過大な地元振
興策の要求を国や電力会社に続ける西川一誠・福井県知事。その原子力政策の
原点は知事としての成り立ちにある。
 西川知事は自治官僚出身。同じく自治官僚だった栗田幸雄・前知事から招か
れて副知事を務めた後、03年4月の統一地方選に立候補した。県議会の主要会
派がすべて推薦したうえ、対抗馬は議員実績も無い元外交官、高木文堂氏でい
わゆる「無党派候補」。高木氏は高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開や、敦賀原
発3、4号機増設計画の是非を住民投票で問うよう訴えたが、全国有数の保守
県である福井で勝敗の行方は最初から明らかに思えた。
 しかし選挙終盤、県内各マスコミの世論調査で意外な接戦ぶりが明らかにな
った。ついには地元新聞1社が「高木氏リード」と報じ、西川陣営には危機感
が広がった。このピンチを救ったのは原発15基が並ぶ嶺南地域の経済を支配す
る「原子力勢力」。彼らは「ここが貢献どころ」と、原発内で働く下請け、孫請
け、労働者たちに強烈な締め付けを行い、西川氏を救った。結果は西川氏の辛
勝。決め手となったのはやはり嶺南だった。嶺南ではダブルスコアで西川氏が
圧勝。県内の原子力勢力の力を見せつけた。
 栗田前知事の4期16年の在任中、もんじゅのナトリウム漏れ火災事故、関電
高浜原発で使うMOX燃料の検査データねつ造と原子力スキャンダルが相次い
だ。だが栗田前知事は発覚直後はその都度、有権者向けに「怒りのポーズ」を
見せるものの、ほとぼりが冷めると、JR小浜線電化や北陸線・湖西線の直流
化への巨額寄付金などの「地域振興」名目のカネと引き換えに、プルサーマル
やもんじゅ改造工事の安全審査入りなど、原子力勢力が求める案件をすんなり
認めてきた。原子力勢力にとっては「扱いやすい知事」(関電関係者)だった。
 その栗田前知事の後継者として当選した西川知事。それだけに前知事の路線
を踏襲すると原子力勢力は期待した。「我々が勝たせた選挙だ」(敦賀市内の原
子力関連業者)との思いもあった。だが思惑は裏切られた。西川氏は思わぬ苦
戦の教訓から、「マニフェスト」、「情報公開」を政策として打ち出し、県内無党
派層へのアピールを最優先にし始めたのだ。
 一方、原子力について、西川知事のスタンスは一貫している。「原子力から(も
しくは利用して)地域振興策(カネ)を引き出し、県全体(これが重要)の利
益につなげる」というものだ。その徹底ぶりが「原子力勢力」にとっては思い
のほか厳しく、煙たい存在になり始めている。
 そのスタンスがはっきりと表れたのが、昨年末から今年2月まで繰り広げら
れた北陸新幹線の延伸問題ともんじゅの運転再開への地元了解だろう。
 もんじゅの改造工事については、02年12月に国の原子力安全・保安院が許
可し、残るは知事と敦賀市長の了解待ちの状態が続いた。その間、03年1月に
名古屋高裁金沢支部がもんじゅの設置許可無効を命じる判決を出したため、裁
判が最高裁に持ち込まれ、地元了解までの手続きがさらに長期化する結果にな
った。
 しかし経産省と文科省、核燃料サイクル開発機構は最高裁の判断が出される
前に了解するよう求め続け、敦賀市長は03年12月に早々と了解意思を発表。
残るは西川知事の判断に委ねられた。「最高裁の判断が出るまで待つべし」、
「推進なら待つ必要はない。早く了解すべき」と、県民世論も分かれる中、西
川知事はどちらとも姿勢を示さず、時間だけが過ぎていった。
 知事本人が明らかにしないため、その真相は明らかではない。しかしこうし
た時間稼ぎの背景には北陸新幹線の福井駅延伸問題があると言われる。
 国の財政悪化と、「我田引鉄」、「政治新幹線」の言葉が象徴する新幹線延伸へ
の厳しい世論から、04年末の整備新幹線のスキーム見直しには厳しい見方が多
かった。北陸新幹線の場合、金沢駅までの着工は確実視されたが、福井駅まで
の延伸は微妙な情勢だった。
 「新幹線のことになると知事の目の色が変わる」(県幹部)と言われるほど、
新幹線の福井延伸には熱心だった西川知事。03年秋から04年末まで連日、東
京陳情を繰り返し、その県庁挙げての時代遅れな陳情の様子は中央の民放テレ
ビ局に大きく取り上げられたほどだった。この陳情で西川知事が訴えたのが「国
の原子力政策への福井県の貢献」。これは「原発カード」と言うほかない。
 「原発カード」を使った結果だろうか、昨年12月、政府・与党の検討委員会
は金沢駅までの線路延伸に加えて、飛び地になる福井駅の新年度着工を決定し
た。県庁関係者は「将来的な福井延伸の担保」と狂喜したが、東京や大阪では
「20年、30年後に来る新幹線を待つなんて無意味。メンツだけの無駄な公共工
事」と批判を集めたことも付け加えたい。
 では、もんじゅはどうなったか。最高裁の判決を待つことなく、西川知事は
今年2月6日、改造工事の着手を了解した。「慎重な姿勢」を強調し、了解を「待
たせた」2年間は一体何だったのか? 裁判結果を待たずに了解した理由は何
だったのか? やはり新幹線の延伸を引き出す条件に使ったということ以外に
理由は浮かばない。
 04年7月の福井豪雨後の素早い対応、04年8月の美浜原発3号機事故の直後、
渋る関電を説き伏せて11基の原発を順次止めさせ、2次系の点検を行わせるな
ど従来の知事とは違う手法から、県内世論の西川支持率は確実に高まっている。
だが原子力政策について言えば、スタンスはあくまで「徹底した地域振興最優
先」、「原発カードの連発」なのだ。
 さて美浜原発3号機事故によって、巨額の地域振興資金が関電から福井県に
投じられることがウラ約束されたとも言われるが、こうした投資は福井県にと
って従来にない恒久的な地域振興につながるのだろうか。結局は、従来通りハ
コモノ作りにつぎ込まれ土建業を一時的に潤すだけの無駄ガネになるのではな
いかとも危ぐされており、他の先進国に比べて極めて高額な電気料金を支払う
消費者としては複雑な心境になる。国の原子力政策の中身や是非はともかくと
して、プルサーマル計画や中間貯蔵施設の設置、高速増殖炉計画の前進など国
の重要な原子力政策の是非が、こうした立地地域の「地域振興策」に矮小化さ
れ、立地地域の知事が事実上決めてしまっている歪んだ現状が福井県政には凝
縮されている。
 「情報公開」、「マニフェスト」などの用語を連発し、改革派知事の姿勢を前
面に押し出す一方で、「原発カード」については県民に説明せず、一部の側近た
ちだけで政策を決めるとも言われる西川県政。どこか胡散臭さがつきまとう小
泉流改革との類似性も見え隠れする。高木氏に投票した無党派層が西川氏支持
に回りつつあると言われる反面、西川氏当選の決め手となった嶺南地域の原子
力関係者からは「高木氏に次も出て欲しいんだけど…」との皮肉な期待も聞こ
えてくる。
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://isepseenarchive.blog88.fc2.com/tb.php/178-6cff08fc
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。