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2. 特集「福井県のエネルギー問題の現在」

 福井県は原子力発電が集中する県の一つ。重要な産業という見方もできる。
だが、敦賀原子力、もんじゅ、美浜原子力と事故が相次ぎ、老朽化した原子力
発電所も複数を抱える。原子力政策の矛盾が噴出した状態にあるといえよう。
 こうした地域で、原子力に頼らない市民の動きも登場している。それは、原
子力に頼ってきた日本が、これからどのように方向転換するべきなのか、重要
なヒントを与えてくれる試みでもある。
 今回は、こうした福井県のエネルギー問題について、「風発」に加え、「森と
暮らすどんぐり倶楽部」の創設者で、美浜町議会議員松下照幸氏、および本誌
の連載でおなじみの、今年3月まで福井支局に勤務していた日野行介氏に、ご
寄稿いただいた。


1)福井県における原子力発電の状況と私たちの取り組み
              松下照幸(美浜町・森と暮らすどんぐり倶楽部)

 福井県には、関西電力の原発11基と、日本原電の原発2基、そして今は事故
と不祥事で名前が変わってしまったが、旧動燃が作った「ふげん」、「もんじゅ」
の15基がある。その内訳は、加圧水型、沸騰水型、新型転換炉、高速増殖炉で
あり、原子炉の全てのタイプが存在する。
 なぜ福井県にこれほどの原発が集中して建てられたのか。それは、原子力と
いう特殊性に起因する。大事故発生時の補償問題、過疎地に限定して作られる
ためにインフラ建設費用がかさむこと、また、1基だけでは定期検査を行う作
業員の年間確保が難しいために、最低3基は隣接して作りたい。そういう原子
力サイドの事情が集中を促してきた。
 原発が運転を始めると、美浜1号機、敦賀1号機、等々、深刻な事故・トラ
ブルを起こし始めた。事故の隠蔽、データ改ざん、被曝労働、そしてスリーマ
イルやチェルノブイリ事故の発生が、新規立地を制限した。美浜2号、もんじ
ゅ、敦賀2号、美浜3号と、県内で連続して起きた原発事故は、既設立地の増
設をも止めることとなった。原発の衰退は、原発自体が鳴らしてきた警鐘の結
果であるとも言えるだろう。
 電力自由化がこの事情をさらに決定的なものにした。自由化によって地域独
占が外され、総括原価方式という電力会社の料金設定に非常に有利な制度が崩
された。従って、建設段階に入った日本原電敦賀3・4号機でさえ完成するか
どうか疑わしい。3・4号機の土木工事は認められたが本体着工は2−3年延
期するという事態は、尋常ではない。この報道に接した時、私にはある直感が
働いた。「これは痛み分けだ!」
 土木工事が始まれば立地自治体に交付金が出る。3・4号機の電力を買う関
西、中部、北陸電力は、本体着工を遅らせて、電力自由化の進展状況を盾に「電
気を買う余裕がありません」と言えば世論は納得する。敦賀市から大阪ガスが
撤退したときも、何の波風も立たなかった。だから、敦賀3・4号機の建設も
音便に止められるのである。自治体側に少しは不満が残りそうだが、交付金で
なだめられることになる。これが、日本原電敦賀3・4号機に関する私の予測
である。
 原発に対する風向きは厳しい。原発で働いている作業員、或いは経営者はそ
のように感じているだろう。地域で発信する私の声を最も理解しているのは、
原発関係者ではなかろうかとさえ思っている。定期検査の短縮は経営者にとっ
て特に厳しい。今までは1基に付き年3ヶ月の定期検査があったのに、最近で
は40日強。作業員を常時雇用しておくことができなくなる。作業単価の切り下
げも、かっての4割から5割に及ぶという。会社を止めてアルバイトをしてい
た時、原発下請け会社の社長が私を見つけて訴え始めた。「松下さん、ちょっと
聞いてほしい」、「わしらはまだ仕事があるほうでいいほうなんやが、仕事があ
っても単価が切り下げられて利益がでんのや」と言うのである。美浜3号機事
故が起きる少し前のことであった。これでは作業員の安全教育さえできないで
はないか。職場での改善案さえ受け入れられないとも聞いている。ある原発作
業員が私を訪ねてきた。「家の用事で会社を休みたいが、びっしり詰め込まれた
行程があるために、休むこともできない。定検短縮で夜遅くまで働かされ、体
力的にも持たない。このことをなんとか一般質問で言ってもらえないか」とい
うものであった。2人の訴えは関電の発電所次長に伝え、議会では一般質問も
行った。「こんな状況でどうやって安全の担保ができるのか」というのが私の主
張だった。美浜3号機事故の後、議会において藤関電社長に直接そのことを伝
えた。放射能を大量に扱う設備を運営している会社のトップとして、こんな恥
ずかしいことはないだろう。経営に「安全」が欠落している。
 福井県はまるで原発の見本市のようである。様々なケースの事故・トラブル
が続出する。まるで目が回るような忙しさである。美浜原発は古い。30年を超
えた炉が2基、30年を迎える炉が1基である。3号機事故後、トラブルが相次
いである。損傷箇所をなおしたと思ったらまた次のトラブル発生などというケ
ースが続いている。4年前に美浜町は美浜原発の増設を要望した。昨年、関電
から美浜町に「増設できない」旨を伝えられた。美浜原発1・2号機はもうす
ぐ40年を迎える。自由化の影響を考慮すると、後数年で廃炉に至るのではない
かと私は考えている。
 関電から増設できないことを伝えられた美浜町は、「美浜町に原発がなくな
ることを実感した」に違いない。美浜町は使用済み燃料の中間貯蔵施設誘致に
急遽乗り出した。議会でもその意志が確認された。私は条件付き賛成を主張し
た。いずれは「核のゴミ」になるものを他の地域に押しつけて騒動を起こさせ
たくない。美浜町に原発がなくなることが決まったのだから、ソフトランディ
ングへの方向付けとして、「美浜原発が生み出したものは美浜原発で」という判
断をしたのである。
 もんじゅの改造工事、プルサーマル、老朽化、定期検査の短縮、等々、課題
は山ほどある。いずれも無理難題ばかりである。そこへ自由化という経済的な
制約が入ってくる。原発の衰退はいっそう早まるだろう。電力会社はバックエ
ンドの問題を抱えているために、国や立地自治体へのあからさまな本音を語れ
ないが、撤退を模索し始めたことは間違いないだろう。
 美浜町で「はあとふる体験事業」が動き始めた。ここ2年ほどかけて、「体験
事業」を受け入れるための議論を重ねてきた。中高生の修学旅行を受け入れ、
地域を活性化させようとする試みである。その中心的メンバーとして私たちの
「森と暮らすどんぐり倶楽部」がある。森の恵みを活かして地域を元気にしよ
うという私たちの試みである。もちろん事業として経営的に成り立たせたい。
3年目から収支も良くなってきた。日本経済の不況のどん底期に私たちは事業
をスタートさせた。それも「林業」という分野である。多くのマスコミに注目
され、TV、ラジオ、新聞、雑誌に取り上げられた。どんぐり倶楽部の職員3
名の内2名は原発を厳しく批判している。美浜町の人の多くはそのことを知っ
ている。それでも違和感なく、「はあとふる体験事業」の中心にいることができ
る。
 来年から1,500人近い生徒が修学旅行で美浜町に来てくれることが内定した。
旅行会社に営業に出かけた人から、原発への不安が出されたケースが多かった
と聞かされた。美浜3号機事故の影響だろう。彼はその質問にこう答えたそう
だ。「美浜町には原発を推進している人もいますが、反対している人もいます。
美浜に来て頂いてその人の話を聞くことだってできるんですよ」と。すると、
旅行会社の人たちの表情が変わったそうだ。是非、私たちを訪ねてきて頂きた
いと願っている。
 私はバイオマス発電にも関心を持っている。地域の現状は、お金をかけて良
質の木質廃棄物を大量に処分している。隣接するいくつかの自治体をエリアと
して、静脈産業として成り立たせたいと願っている。隣町の町長は私の意見を
聞いてバイオマスへの取り組みを始めた。しかし、発電への挑戦はまだ迷って
いる。原子力の下請け会社の人は、私が提案するバイオマスについて強い関心
を示した。美浜町の土建会社の方から私の話を聞きたいという要請も入ってい
る。立地町の私の夢をかなえるには相当の力量が必要であると思うが、私には
とてもその力はない。都市部の人たちとの連携を模索したいと願っている。
 以上、福井県の原子力問題に関する状況を羅列しながら、私たちの活動につ
いて紹介させて頂いた。字数の関係から書くことができなかったことも多いが、
私たちを取り巻く福井県内の事情(一部)は理解して頂けたのではないかと思
う。

         松下照幸(美浜町町議会議員・森と暮らすどんぐり倶楽部)


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