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4.連載「光と風と樹々と」(1)
 「ネイティブ・アメリカン初の風力発電プロジェクト(1)」
               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

はじめに――巨大プロジェクト 対 地域プロジェクト
 日本で注目を浴びる市民共同発電所。海外でも似たような取り組みは多い。
昨年5月下旬から本年3月末まで約10ヶ月間、私は、オランダとアメリカ合州
国ミネソタ州に滞在した。ミネソタ大学では1学期間、環境社会学の講義をし、
ハーバード大学やミシガン大学などで講演を行った。幾つか調査も行った。そ
こでの見聞を紹介していきたい。
 連載のタイトル名の趣旨は、察しのいい読者にはすぐにおわかりだろう。再
生可能エネルギーの三大代表、太陽光・風力・バイオマスに対応する。
 市民共同発電所は英語では、もう少し広い意味だが、commnunity-based
project というと通じやすい。commnunity-based wind project のように。大
手資本による巨大プロジェクトではない、地元出資の比較的小規模なプロジェ
クトである。やがて詳論していきたいが、commnunity-based project をいかに
育てるかは、とりわけ風力発電ビジネスにおいて大きな課題になっている。
 デンマーク、ドイツの風力発電は、個人や協同組合による地元出資の小規模
プロジェクトが多い(出資者に有利な固定価格での買い取り制度が小規模プロ
ジェクトを育てるからである)。デンマークのユットランド半島や北ドイツを旅
してみるといい。車でも列車でも、車窓からは、あちこちに数台の風力発電
並んでいるのが見える。
 
風力発電のサウジアラビア」
 ミネアポリスから、レンタカーで、12月はじめの大草原(プレーリー)をひ
たすら西へ西へとフリーウェー90号線を走った。前にも後ろにも車はいない、
対向車もいないというような時間がかなり続く。時速90マイル(約145キロ、
1マイル=1.6キロ)ぐらいで駆け抜ける。助手席にいるのは相棒のジェフ。私
をミネソタに呼んでくれたミネソタ大の環境社会学者ジェフリー・ブロードベ
ントである。彼との雑談は楽しいが、運転中に難しい内容を英語で答えるのは、
かなり辛い。ときどき、やさしい話題に戻してくれと頼む。まるで、映画Rain
Manのようだ。そういえば、1988年封切りのこの映画には冒頭でロサンゼルス
近くの風車群が出てくる。はじめて見たときは、何だろうと思った。(この映画
以前に封切られた作品で、たくさんの発電用風車群が出てくる映画をご存じの
方は、是非ご教示いただきたい)
 ミネソタ州内の90号線沿いに見かけた風力発電が、サウスダコタ州内に入る
と見えなくなる。カリフォルニアではじまったアメリカの風力発電は、今や五
大湖西部の中西部(Mid West)に急速に拡大しつつある。「風力発電のサウジア
ラビア」。ミネソタ州やその周辺ではこんな言い方が流行っている。風の強さで
は、西隣のサウスダコタも負けてはいない。10年後か20年後には、この90号
線沿いが大風力発電地帯になっているのではないか、とジェフと興奮する。今
はただただとうもろこし畑がひろがっているだけである。唯一の障害は、大容
量の送電線がないことである。90号線沿いに、シカゴまで、大容量の送電線を
敷設するための話し合いがはじまっている(いずれ詳論したい)。
 
「バラのつぼみ」という場所で
 私たちが向かっているのは、ネイティブ・アメリカン(いわゆるインディア
ン)、スー族の居留地である。州境の Sioux Falls から210マイル走って、Murdo
というところで、90号線から83号線に入り、今度はアップダウンの多い道を
70マイル走って、南のネブラスカ州との州境にあるRosebud へ(バラのつぼみ
という意味の地名、オーソン・ウェルズの代表作、映画「市民ケーン」の謎の
言葉と同じである)。そこに、ネイティブ・アメリカン初の風力発電機が1基た
っているという。中心人物に話しを聴きにいくのである。出発地点のミネアポ
リスとの所要時間は休憩時間をのぞいて正味約8時間。メーター上の片道の走
行距離は、517マイル=827キロだった。直線になおすと東京−広島間にほぼ相
当する距離である。
 現地に近づくと、ついに風力発電機が見えてきた。2003年5月1日に営業運
転を開始した750kWのNEGミーコン社製である。所有し、運転するのは、ロ
ーズバッヅ・スー族(tribe)である。詳細は次号に譲るが、アメリカの文脈で
は、ネイティブ・アメリカンが自分たち独自の風力発電をもつということには
日本で想像する以上の画期的な意義がある。そして彼らは、風車を増設し、プ
ロジェクトを拡大していくことに大きな夢をもっていた。ここでも発電用風車
が生み出しているのは、単なる電気だけではない。地域の活力・未来というエ
ネルギーでもある。文字どおり大きな「バラのつぼみ」である(続く)。

               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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