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5.「お笑い原子力ムラ敦賀」(6)

  日野行介(毎日新聞大阪社会部記者、今年3月まで福井支局敦賀駐在記者)

 今回も原子力の「隠ぺい体質」の話を続けたい。昨年8月9日に起きた関西
電力美浜原発3号機事故から既に1年が過ぎた。まずは改めて犠牲となられた
5人のご冥福を祈りたい。
 事故後に関電が取った報道対応はあまりに異常だった。事故の起きたタービ
ン建屋には、経産省の幹部や国会議員、地元の県知事や県議、美浜町長や町議
らが「視察」と称して次々と中に入り、出てきては「これは人災だ」、「まずは
事実解明を」などと無意味な発言を繰り返した。そんな政治的なパフォーマン
スのためには立入を認めたにも関わらず、報道の立ち入りは一切シャットアウ
トだった。現場の状況を映したビデオテープや写真の提供すら事故の3日後だ
った。国民や消費者の関心や不安への配慮など後回しで、政治家や官僚こそが
自分たちを守ってくれると信じているのだろう。
 結局、報道陣が初めて事故現場に入ったのは事故から1ケ月近く経った昨年
9月7日。毎日新聞社からは私とカメラマンの2人が入った。この時の関電の
対応もやはり異常と言うほかなかった。
 通常、原発サイト内に入る際、所々にあるIAEAの監視カメラが入ったボ
ックスと、テロ対策のため格納容器の出入り口のハッチ、それから警備風景は
撮影しないようクギを刺される。プルトニウム防護やテロ対策がその理由だ。
それは理解できるし、そもそもテロ対策の取材ではないので、あえて破ったこ
とはない。
 しかし、この時の関電の事前指示は「ここで取って良いと指示を出しますの
で、その場所以外は取らないでください」と言うもの。さらに「皆様(報道陣)
との信頼関係で立ち入りを認めるのですから、破れば次に入るのは難しくなり
ます」と脅した。事故を起こした関電から「信頼関係」などという言葉が出て
くるとは。まさしく噴飯ものと言うほかない。
 認められた立ち入り時間はわずか30分。しかも夕刊の締切間際の午前中に
設定する巧妙さだった。だがタービン建屋内に入った報道陣は当然のことなが
ら、関電社員の監視を無視するかのようにあちこちの撮影を始めた。そして3
0分が過ぎ、タービン建屋から出ると、私は出入り口の右側に小さい付属の建
物があることに気が付いた。それは事故直後にタービン建屋から救出した犠牲
者や負傷者を運び入れた作業員用の休憩室だった。中に入ると、壁際には大き
なホワイトボードがあり、中に入っていた作業員の人数、負傷者の様子、時系
列で示した事故の模様などが書き込まれており、事故の痕跡を残していた。私
が夢中になってホワイトボードの写真を撮っていると、関電職員が慌てた様子
で近づいて来て、「何勝手なことしているんだ。写真を撮るな!約束を守れ!」
と怒鳴った。私も逆上し、「このホワイトボードのどこがプルトニウム防護に関
係するんだ!都合よく公開のルールを変えるな!」と怒鳴り返した。関電の職
員からまともな反論は返って来なかった。
 度重なるトラブルと相次ぐ隠ぺいの発覚によって原発への国民の視線は次第
に厳しくなり、トラブルの隠ぺいは減ったとも言われる。だが、それは表面上
のことだ。テロ対策を名目にむしろ隠ぺい体質は強まっていると見た方が良い。
今年6月、弊社の報道によって三菱電機の保有する原発の2次冷却系のメンテ
ナンスについてのデータがネット上に流出したことが発覚した。これに対して
保安院や地元自治体は情報管理を徹底するよう指示するだけだった。だが本当
の問題は違うところにある。プルトニウム防護やテロ対策を理由にどこまでが
秘密にすべき情報なのかを精査する必要がある。テロ対策を万能薬のように都
合よく使い、何でも隠せる仕組みを作らせてはいけない。


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