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3.ジャーナリストより

「日本を劣化させる政・官・業と学界、マスコミ〜
             〜アメリカ牛肉の輸入再開問題を例に」
                         岡田幹治(ライター)

 日本を悪くしているのは、政・官・業に学界、マスコミを加えた5者のもた
れあい構造だ、とよく言われる。アメリカ牛肉の輸入再開問題を追いながら、
それを実感する日々である。
 アメリカでBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)の牛が見つかった2003年末
以来ストップしているアメリカ牛肉の輸入を、再開してよいかどうか。この答
えは、日米のBSE対策を比較すれば、自ずから明らかになる。
 日本は、(1)全頭検査、(2)すべての食用牛からの危険部位(脳、脊髄など4部
位)の除去、(3)肉骨粉の製造・飼料としての使用の全面禁止、(4)トレーサビリ
ティー(生産履歴管理)という、現在考え得る最も厳しい対策を実施して、「B
SE汚染のない国」を目指している。
 これに対してアメリカは、(1)全食用牛の1%程度の抜き取り検査をしている
だけで、(2)4危険部位の除去も30カ月以上の牛についてしか実施していない。
日米で雲泥の差があるのは(3)の飼料規制だ。アメリカでは、危険部位を含む肉
骨粉の製造が許され、牛に与えることこそ禁止されているが、鶏や豚の餌には
使ってよい。しかも、その餌を食べた鶏の糞や、牛の血液・牛脂まで牛に与え
てよいことになっている。これでは、BSEの病原体である「異常プリオンタ
ンパク質」がいつ牛の口に入ってもおかしくない。(4)のトレーサビリティーは
実施していない。
 まともに考えればとても輸入できないアメリカ牛肉に、どうやって輸入の道
を開くか。日米の官僚が考えだしたのが、「20ヶ月以下の牛」の「危険部位を
除去した」という2条件つきの肉と内臓に限れば、安全性を装えるという悪(?)
知恵だった。それには、食品安全委員会によるお墨付きが欠かせない。
 そこで考えられたのが、食品安全委(寺田雅昭委員長)を舞台にした田舎芝
居だ。まず、輸入再開とは無関係の国内問題として、病原体の蓄積が少ない20
カ月以下の牛では検査をしても感染を発見するのは難しい、との答申をプリオ
ン専門調査会(食品安全委の下部組織、座長・吉川泰弘東大大学院教授)に出
してもらう。そして、国内での検査を21ヶ月以上に変更したうえで(実際は各
県が20ヶ月以下も検査するので、全頭検査は維持される)、「2条件つきのアメ
リカ牛肉と国産牛肉の安全性リスクは同等か」諮問したのだ。
 両国牛肉のリスク比較を諮問する前に、日米の局長級協議は昨年10月、2条
件つきでの輸入再開に基本合意しているのだから、田舎芝居の思惑は見え見え。
「関係官庁から独立した食の番人」という触れ込みで設立された食品安全委も
馬鹿にされたものだ。
 諮問後も、アメリカからは危ない情報が次々に伝えられる。その最たるもの
は、2例目の感染牛がアメリカ生まれだったこと(03年の1例目は、カナダ生
まれだった)。これでアメリカ農務省のいう「アメリカはBSEの清浄国」とい
う主張はあえなく崩れてしまった。
 そうした状況のもとでプリオン調査会の審議が進み、9月中には答申のたた
き台が示される、というところまできたのだが、これまでを振り返って政・官・
業と学界、マスコミの果たした役割を検証してみると、以下のようになるだろ
う。
 田舎芝居の脚本を書き、演出してきたのは官僚だ。農林水産、厚生労働両省
に外務省、さらには食品安全委の事務局も加わっての合作かと推定される。
 芝居づくりの陰の指示者は政治家、なかでも小泉純一郎首相だろう。日米同
盟の信奉者で、「ブッシュのペット」といわれる首相は、昨年9月の首脳会談で、
牛肉輸出再開にかけるブッシュ大統領のただならぬ気迫を感じたようだ。帰国
後間もない内閣改造で、当時、自民党の食品産業振興議員連盟会長をしていた
島村宜伸氏を農水相に起用する。その直前、アメリカ牛肉の輸入再開を求める
業界の陳情を首相に取り次いだ人物だ(島村氏は今年8月、衆院解散に反対し
て罷免されている)。
 業界はこのように政界に働きかけるだけではない。今年9月、朝日、読売、
日経などの有力紙に一面広告を出し、アメリカ牛肉の安全性を訴えた。「BSE
の『ホント』を知ることが大切です」という大見出しが踊る広告は、「ホント」
とはほど遠い内容だった。さらに、唐木英明・東大名誉教授を講師にした昼食
つき懇談会を開くなどして、マスコミ対策も怠りない。唐木教授は「BSEの
安全対策は危険部位の除去で十分。全頭検査は不必要」という妄説を説きまわ
っている代表的な業界寄りの学者だ。
 御用学者とおぼしき学者は、食品安全委でもプリオン調査会でも主要な地位
を占めている。この役者たちが脚本通りの演技をしたから、多少のギクシャク
はありながらも、田舎芝居がここまで進んできたのだ。
 田舎芝居の本質を見極めず、不正確な記事を垂れ流してきたのが多くのマス
コミである。日米で基本合意している以上、最終的には輸入が再開されるに決
まっているとの予断のもとに、あらゆる出来事を最終決着への一こまと位置づ
ける記事ばかりが目に付いた。
 このような5者のもたれあいの中で、アメリカ牛肉の輸入再開を止めるには
どうしたらよいか。人為がつくり出したBSEという恐ろしい病気をこれ以上
外国から持ち込むのはやめ、食の安全を守りたいと、まっとうな市民や研究者
が声をさらに強めることだろう。そして、プリオン調査会の専門委員たちには、
立場の重要さを改めて自覚し、科学者の良心に基づく結論を出してほしいと要
望する。正確な情報の提供によってそうした動きを少しでも後押しできれば、
と私は考えている。

                         岡田幹治(ライター)


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