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2.特集「核燃料サイクル

 原子力委員会は新しい原子力政策大綱(案)を7月に発表、パブリックコメ
ントを実施し、近く最終案がまとめられる。これに合わせて、9月4日(日) 東
京都千代田区大手町にある「JAホール」にて、福島県の主催により、国際シ
ンポジウム「核燃料サイクルを考える」が開催される(お知らせ欄参照)。
 このシンポジウムを前に、当日のパネラーの一人である、吉岡斉九州大学大
学院教授からご寄稿いただいた。また、ISEP副所長の大林ミカの政策レビ
ューのほか、主催者でありわが国有数の発電県で、電源立地県の立場から様々
な提言を行っている福島県が、原子力委員会の原子力政策大綱案の核燃料サイ
クルについて提出した意見を、資料として紹介する。


寄稿「原子力介護政策と、その一環としての再処理介護政策は、認めがたい」
           吉岡 斉(九州大学大学院比較社会文化研究院教授)

 新しい原子力政策大綱が近く策定される見込みである。それは原子力委員会
が約5年毎に改訂を重ねてきた原子力研究開発利用長期計画を引き継ぐ長期政
策指針である。原子力委員会新計画策定会議は7月29日、原子力政策大綱(案)
を発表し、8月28日まで1カ月にわたりパブリックコメントを実施し、同時に
全国5カ所で地方公聴会を実施した。9月16日の第32回会議では、それらの
場で提出された国民意見の反映の仕方等について審議が行われ、その次の第3
3回会議(9月末又は10月初旬)で、最終案がまとまり原子力委員会に答申さ
れ、さらに何らかの形で閣議に提出される見込みである。今後大きな政変等が
起こらない限り、2004年6月21日に第1回が開かれてから1年あまりの長丁
場も、どうやら終幕を迎えそうだ。
 今回の原子力政策大綱の、「主要三事業」(原子力発電、核燃料サイクル、高
速増殖炉)に関する方針は、以下のとおりである。
 第1に、政策大綱(案)には、原子力発電を日本の発電電力量全体の30〜40%
程度という現在の水準程度か、それ以上の水準に、21世紀全体をとおして、
維持することが適当であるという認識が示されている。そしてこの数値目標の
達成を確実にするための取組を、政府と電気事業者は進めるべきであるとされ
ている。たとえば既設の商業発電用原子炉(原発)の廃止に際しては、代替原
発を建設する、つまり原発を原発でリプレイスすることを基本とするという方
針が示されている。代替原発のスペックについても、大型軽水炉を中心とし、
状況によっては中型軽水炉も選択肢とする、というきわめて具体的な指針が示
されている。
 第2に、核燃料サイクルバックエンドに関しては、電力会社に実質的に再処
理を義務づけ、六ヶ所再処理工場の円滑な操業を奨励し、そのコスト補填のた
めの法的措置を講ずるという現行政策を堅持する方針を、政策大綱(案)は示
している。批判的委員は現行政策の推進に対して、主に3つの理由を挙げて異
論を唱えてきた。第1に、日本が約40トンのプルトニウムを保有(大部分は英
仏で保管)しているのに、これ以上プルトニウムの在庫を増やす正当な理由が
ないことである。第2に、日本の理由なきプルトニウム増産が世界の核軍縮・
核不拡散に悪影響を及ぼすことである。第3に、再処理事業の推進は、電気事
業者に多大な経営リスクを背負わせ、それが顕在化した場合には、バブル経済
崩壊後の金融危機のときと同様、莫大な国民負担が必要となることである。そ
もそも再処理等積立金自体が、再処理をやらない場合には不要の国民負担増で
ある。多くのマスメディアも同様の懸念を表明していた。しかし策定会議はそ
うした懸念を押し切って、現行政策堅持の決定をした。ここで当然問題となる
のは、「余剰プルトニウム」の扱いであるが、政策大綱(案)本文をよく見ると、
余剰プルトニウムという用語自体が消えている。米国ブッシュ政権が続いてい
る間に、「プルトニウムは幾ら溜め込んでも、管理さえしていれば何の問題もな
い」という新たなルールを、実質的に作ろうとしているのだと推察される。(原
子力関係者はブッシュが政権にある2008年までに、第二再処理工場の建設計画
の橋頭堡を築いておきたいと考えているとも推察される)。
 第3に、高速増殖炉研究開発に関しては、当初の結論は、研究開発機関の調
査研究の結論をまって2015年頃から実用化計画について検討するというもの
だった。ところが商業用原子力発電に関する審議が始まった3月になって突然、
「2050年頃からの商業ベースでの導入を目指す」というアイデアが登場し、政
策大綱(案)にもそれが取り入れられた。2050年頃というのは、軽水炉の寿命
を60年とし、既設の原子炉が新たな原子炉によってリプレイスされると仮定し、
現在の既設炉のリプレイス集中期の後半にかろうじて間に合う時期に当たる。
そこに至るまでの開発構想もそのフィージビリティも全く議論されぬまま、こ
の結論が出された。(高速増殖炉研究開発の利害関係者たちは、この結論に勇気
づけられて、パブリックコメントや地方公聴会で、2050年までの開発構想を示
せと、原子力委員会や策定会議に詰め寄っている。権益の維持・拡大のみに関
心のある関係者たちの、的外れな要求の口実とならぬためにも、2050年という
目標年次の削除は不可欠である)。
 今回の「原子力政策大綱(案)」は、原子力研究開発利用の推進について、従
来よりも一段と「ハードコア」な方針を示している。だが筆者に言わせれば「ハ
ードコア」は外見だけであり、実質的にはこれは「原子力介護プラン」に他な
らない。
 たとえば21世紀全体をとおして原子力発電シェアを30〜40%以上に堅持
せよという目標が国策として定められれば、電気事業者はそれに協力すること
を条件として、あらゆる政府支援を要請することができる。そして事業経営の
長期的安泰に関する政府保証を獲得することができる。それには新自由主義改
革を手加減することが含まれよう。また原発立地自治体は、こうした国策が示
されることにより、原発の廃止によるゴーストタウン化の不安を、多少は和ら
げることができる。
 核燃料サイクルバックエンドに関する従来政策の堅持についても、事業者に
対する政府保証(国民へのコスト・リスクの転嫁)と、立地自治体に対する交
付金・固定資産税・雇用の保障、という目的が背景にあることは容易に見て取
れる。
 高速増殖炉については、今後も2050年を展望するほどの超長期にわたって巨
額の税金を注ぎ込むことが、約束されたと見るべきだろう。
 これが「原子力介護プラン」である以上、介護費用を負担させられる国民は
「果たして原子力は介護に値するのか」という観点から、原子力政策批判を展
開することが不可欠である。原子力発電は火力発電と対等の条件で競争させる
べきであり、介護する必要はない余分の費用と財務リスクをともなう再処理事
業をやりたい業者には、自己責任原則のもとでやって頂けばよい。高速増殖炉
研究開発は中小規模の研究として、他の研究プロジェクトと予算獲得を競わせ
ればよい。

           吉岡 斉(九州大学大学院比較社会文化研究院教授)


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