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3.連載「お笑い原子力ムラ敦賀」(5)
  日野 行介(毎日新聞大阪社会部記者 今年3月まで福井支局敦賀駐在)

 今回は原子力ムラのハコモノ行政のお笑い話と少し離れた話をさせていただ
きたい。古くはもんじゅ事故のビデオ隠し、関西電力のMOX燃料データのね
つ造、最近でも東京電力のトラブル隠しと、原子力は根深い「隠ぺい体質」を
批判されてきた。近年は露骨なトラブル隠ぺいが減ったとも言われるが、福井
支局敦賀駐在の記者として原発立地の最前線で経験した実例から、原子力の広
報体制の現状をお伝えしたい。
 1960〜70年代の日本の原子力黎明期、新聞やテレビは「第3の火」、「エ
ネルギー革命」と原子力をほめ讃えた。また読売新聞の正力松太郎社主が旗振
り役だったこともあり、弊社を含むいわゆる大手マスコミは原子力に対して本
質的に協力的で、多額の広告料を受け取る代わりに徹底的に厳しいことは書か
ないと一般に思われているようだ。しかし原発に対して厳格な目を向けてきた
通信部記者として“筆を曲げる”よう会社から求められたことは無いし、原稿
をひどく改ざんされたことも無い。むしろ電力会社の技術者からは「マスコミ
が原子力を社会悪な存在にした」と筋違いな恨み言を言われることも多かった
ように思う。
 さて本題に入りたい。02年11月、後に大惨事を引き起こす関西電力美浜原
発3号機で、「発表されていないが、冷却水漏れが起きているようだ。下請け業
者を集めている」と知人から私の携帯電話に連絡が入った。私は当時、北朝鮮
から帰国した拉致被害者の地村夫妻の取材に駆り出され、敦賀から西に約50km
離れた福井県小浜市にいた。慌てて美浜原発のベテラン広報マンに電話する
と、「水漏れなど起きていない」と全面否定。しかし取りつく島も無いその言い
方に不審を感じ、今度は福井県の原子力安全対策課に電話をすると、あっけな
く「水漏れは起きています。直接の1次冷却水ではなく付属配管ポンプのシー
ル水(封水)であり、現在は漏えいが微量のため原子炉停止には至らない。報
道発表の基準外なので公表していない。しばらく様子を見る」と詳しく説明し
てくれた。
 さすがに怒りを覚え、今度は関電の原発11基を統括する若狭支社の若い広
報担当に抗議すると、「美浜の担当者には厳しく注意します。ただ水漏れはすぐ
に止まるようなので記事にはしないでほしい」と要請。こちらもあえて混乱を
引き起こすつもりもなかったので、いったんは矛を収めた。
 それから1週間後のこと。午前4時ごろ、関電若狭支社の担当者からの電話
でたたき起こされた。「水漏れがひどくなり、これから原子炉を停止する」とい
う信じられない内容。「すぐ(水漏れは)止まると言っただろ!ウソばかりつく
な!」と怒りをぶつけると、相手は黙ったまま。私はことの顛末を報告書にま
とめて本社に提出し、関電に正式に抗議した。その結果だろうか。美浜原発で
長年にわたり報道窓口をしてきたベテラン広報マンはしばらくして小浜営業所
に配置換えに、また若狭支社の若い広報担当者は依願退職した。
 この話には続きがある。福井県小浜市で使用済み核燃料の中間貯蔵施設の誘
致話が持ち上がり、04年7月に推進派の新人と反対する現職市長による激しい
市長選が繰り広げられた。忘れもしない福井豪雨が起きた7月18日の告示日、
私が取材のため推進派新人の出陣式に行くと、頭に鉢巻、手にのぼりを持った
あのベテラン広報マンの姿が。私が「お久ぶりですね」と声をかけると、彼は
複雑な愛想笑いを浮かべ、何も返事をしないまま逃げるように走り去っていっ
た。


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