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(2)「卸電力取引市場の整備について」
                      匿名希望(電力市場関係者)

 2005年4月より、電気事業分科会の報告書(「今後の望ましい電気事業改
革の詳細設計について」平成16年5月)に基づいた卸電力取引市場が創設さ
れた。卸電力取引市場における取引には、取引所取引、相対仲介取引、相対直
接取引などの形態がある。取引所は法律外事項であるが、電源開発投資環境を
整備し、全国的な電源の有効利用の促進する目的があり、任意取引市場として
整備し、相対取引との併存により事業者のリスク管理の容易化が期待される。
今回の報告書に基づいて創設されたのが、私設任意の「有限責任中間法人 日
本卸電力取引所(以下JPEX)」である。JPEXでは、報告書に要求された
一日前市場や先渡し市場(一ヶ月物)のほか、独自に掲示板取引が用意されて
いる。
 卸電力取引市場では、JPEX以外にナットソースジャパン社(以下NJが、
今回の卸電力取引制度整備以前から仲介事業の展開をしていたが、今般の制整
備により制度に準拠した店頭取引(OTC)市場での仲介事業(相対仲介取引)
を展開し始めている。但し、NJはフレキシブルな取引形態の先渡し市場に当
面特化すると共に、卸電力だけでなく小売電力取引市場も併設して運営してい
る。JPEXとNJは、ともに卸電力取引市場における仲介事業者である。
 また、従前の卸電力供給事業のほか、特定規模電気事業者(通常新規参入者
やPPSといわれる)間における電力の融通の形態で行なわれる取引(相対直
接取引)も始動している。このうち、一般電気事業者(通常電力会社といわれ
る)やPPSが設立に参画し、卸電力取引市場の成否を測るバロメーターと目
され、各事業者がその利用を義務的に考え、実際仲介事業が具体的に見えてい
るJPEXについて考えてみる。2005年6月現在、JEPXの一日前市場
の1日(受渡日ベース、土日祝日を含む)の平均約定電力量は、70万kWhを
超えたところである。6月下旬には200万kWhを超える約定が出来た日もあ
る。4〜5月が電力にとっては不需要期であることを差し引いても、取引高は
少ないというのが多くの関係者の意見であろう。ただ、取引については黎明期
であり、当初の想定通りとの指摘もある。
 因みに、一日前市場に対する2005年4月の約定高の1,422万kWhに対し
て、売り注文は約10億kWhである。最初の月であり、レベル感の形成が十分に
なされていないため、手探りでの価格提示が生んだ約定率1%台と言う数値で
あろうが、今後この数値が改善されないと、「見せ玉」としての売り注文という
レッテルが貼られかねない。
 さて、JEPXの収益からみた約定量の多寡について考えてみる。4〜5月
が電気の不需要期であることを差し引いて、仮に平均100万kWhの取引がコ
ンスタントに行われるようになったとする。JEPXはその仲介手数料を売買
当事者双方から1kWhあたり3銭(消費税抜き)ずつ徴収する。1日100万
kWhであるから受け渡し日ベースで1日6万円の収入となる。年間(365日)
に直すと2,190万円となる。
 JEPXのシステム投資は公表されていない(一日前市場の仲介を独占的に
行う法人である以上この程度の経営情報は公開した方が良いという意見もあ
る)が、2億円とも3億円とも言われる。仮に2億とした場合、システムの初
期投資だけで金利負担を抜きにしても10年近い投資回収期間がかかる。加え
て、システムメンテナンスや人件費等の費用が加わることになる。更に、シス
テムの改修や更新も考えなくてはならない。
 これに対し、先渡し市場や掲示板市場などの追加的収入が考えられる。この
うち、先渡し市場は2005年6月20日までに9件、約1,177万kWhの約
定で70万円程度の仲介実績があり、1年間でも1,000万円を越えることは
厳しい様子である。また、掲示板の掲載料は3,000円/日・件であり、仮に
甘めにみて1日平均20件あっても、営業日を250日とすると年間の掲載料
収入は1,500万円である。
 この状況を考えると、仲介料率一定ならば先渡し市場の出来高増加と一日前
市場の出来高増加が無い限り、事業としての電力取引仲介はシステム投資型で
は厳しいものとなる。電気事業者の太宗が設立に参画したJEPXの収益から
考えると、現在の取引は極めて低調ということになる。現状の一日前市場は板
寄せ型のオークション市場となっており、連系線の制約を一括で判断するため、
システムでの対応が事実上必須に近い。システム型の電力取引仲介が財務的に
厳しい事業ということは、現状の一日前市場の運用が中長期的には困難という
ことである。対策としては、仲介料率の設定見直し、板寄せ型からザラバ型へ
の取引方法の移行(この場合JEPX以外の仲介も容易になる可能性がある)、
半ば強制的な市場実績作り(ミルク補給)などがあるかもしれない。だが、い
ずれも取引参加者に何らかの資金負担が生じる可能性が高い。
 そのほかにも、色々な不満が聞かれる中で、常時バックアップ料金見合いで
価格が高いという意見(先渡しが、昼間型で6月が11〜12円台、7月が1
6円台、9月が13円台の約定と言われている。また、一日前市場でも昼間で
東日本が24円台などという値段がメディアで流れている)や、先渡しの商品
設計、リアルタイム市場の創設要求なども聞かれる。常時バックアップについ
ては、制度としての役割を考え直す時期かもしれない。後者2つについては、
取引所でいきなり仕切って商品設計をするのではなく、OTCでの標準的な商
品の形成を待って行なうことを考えるべきではないか(他の多くの商品上場は
そのようなプロセスを踏んでニーズに適応した商品設計を行なっている)。
 現状の卸電力取引市場を見てみたときに、市場の成否はマクロベースで見な
くてはならないため、JEPXのみならず、卸電力取引市場というマクロで市
場が効率的に形成されるように、全ての参加者が多様な形で協力することが肝
要と感じている。また、机上の空論でなく実際に稼動することで、実務上の問
題点が発見でき、より使い勝手の良い制度へ改善できるという効果が期待でき
る。「電気」という経済性と社会性の両面の価値のある商品を取り扱う関係者が、
取引にも柔軟に対応することで、企業としての社会的責務の達成を容易にする
ことに資すると考える。

                      匿名希望(電力市場関係者)

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