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3.特集2「電力市場自由化・卸電力取引市場の現在」

 ゆっくりとではあるが、電力市場の自由化は、制度の上では進展している。
実態については、今後、その評価をあおいでいくことになるだろう。
 今年4月より、50kW以上の需要家を対象に、自由化の枠が広げられた。同
時に、卸電力取引市場が創設された。今回は、スタートして3ヵ月が経過した
卸電力取引市場をめぐって、2人の識者に執筆していただいた。

(1)「現実に立脚した良き電力市場への道」
           西村 陽(関西学院大学経済学部講師
               電力改革論・電力経営戦略論・環境経済論)

 今年2005年は日本の電力改革にとって初めての卸電力取引市場がスタート
し、長年日本の電力関係者を悩ませてきた競争の透明性確保への切り札として
中立機関(系統利用協議会)が設立されるという記念すべき年となった。1990年
代に入って始まった世界各国の電力自由化・競争促進の潮流に対してなんとか
追いつき、改革の遅れに対する国際的な圧力をかわそうとしてきた行政当局、
そしてそれに異を唱えながらもつきあってきた電力業界にとっては「やれやれ」
といったところかも知れない。
 しかしながら今、自由化が進んだ世界の電力市場を俯瞰した場合、電力自由
化は価格の低下、安定供給とインフラ健全性確保、そして環境価値の実現のど
れをとってもあまり良い成績を残していない。欧州では競争促進と自由化によ
る効率化や価格の下落が完全に一巡し、産業用・家庭用ともに価格は上昇に転
じているし、米国においてはカリフォルニア危機・エンロン破綻による電力ビ
ジネス全体の不安定化が起こった他、妄信的な電力自由化はこの産業の基幹イ
ンフラである送電ネットワークを弱める方向に働くという認識が(市場主義の
発祥の地であるにもかかわらず)ある程度共有されつつある。
 さらに言えば、自由化による競争が進んで電力価格が低下し続けている局面
では、風力発電をはじめとする再生可能エネルギーも極めて採用されにくく、
電力自由化と環境価値創造が両立できないという傾向も、これまでの世界各国
の経験からほぼ明らかになっている。ドイツをはじめとする欧州のいくつかの
国において、敢えて家庭用顧客に環境価値に対する消費者の負担を求める(すな
わち家庭用電気料金の値上げ)ことでグリーン電力を健全な市場ベースに乗せ
ているのはその良い証左であろう。
 ここまでの観察で言えるのは以下のようなことである。すなわち、電力自由
化と競争導入は既存の電力会社の経営体質強化や投資のダウンサイジングには
大きな効果を持つが、決して長期的な価格の下落や安定供給の確保、そして環
境価値の実現を保障するものではない。市場の力で価格は下がり、市場の仕組
みで送電投資も確保されて、市場を通じてグリーン電力も大いに入ってくると
いうのは、(主として経済学やネットワーク産業組織を浅くしか学んでいない人
の)単に不勉強な楽観主義に過ぎない。
 今なさなければならないことは、日本という市場特性に合わせた現実の上に
しっかりと立ち、顧客の利益、長期的なエネルギー供給基盤、そして環境価値
をどう創り上げていくかを目的オリエンティッドに議論して実践することに他
ならない。そこでは電力自由化も電力取引市場も、RPSも目的ではなく手段
の一つに過ぎないのだ。
 そうした現実主義と目的意識の上に立った時、(これはISEPの飯田哲也さ
ん、大林ミカさんとも時々話をすることだが)電力会社のような既存エネルギー
事業者と環境価値創造をしようとする市民は決して敵同士ではない。もちろん
電力価格が果てしなく下がり続け、電力会社が体力の限界に挑戦している中で
環境価値創造を彼ら電力会社に課するのは余りに酷だし、決してうまくは行か
ないだろう。しかしながら、市民もちゃんと負担し、ネットワークの健全性を
維持しながら、かつ環境に優しいシステムを作ることができれば、わが国にお
いてはじめて市場メカニズム、市民の意志、エネルギー企業の価値創造がうま
く協働(コラボレーション)しあった新しい電力市場の形が出来上がるのではな
いだろうか。
 そうした視点を常にもって、多くの皆さんに電力自由化に興味を持っていた
だきたいし、そこには優れた日本型市場の大きな可能性があることを知ってい
ただきたいと思う。

                 西村 陽(関西学院大学経済学部講師)
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