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3.政策レビュー
「六カ所再処理工場-日本はアジアの核センターとなるのか?」
                      大林ミカ(ISEP副所長)

 1月21日に通常国会が始まり、6月19日の会期終了予定まで、150日間の議
会が開かれている。各省とも、法案成立のための国会詣でが続けられているが、
今回の国会には、SEENでも何度か触れた、核燃料サイクルについての法案も提
出されることになっている。
 政府が、2月18日に閣議決定し国会に提出した「原子力発電における使用済
燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律」案は、六カ所
再処理工場の操業を前に、採算性のない再処理事業への、新しい資金調達を行
うための法律である。
 法律の骨子は、毎年度、経済産業大臣が電力会社ごとに算定し通知する額を、
電力会社が「資金管理法人」に積み立てるものである。今後40年にわたって六
カ所再処理工場で再処理を行う、発生した3.2万トンの使用済み燃料について、
資金コストの発生を試算、すでに引当金として内部留保されているもの以外に、
足りない部分約5兆円を未回収費用部分として回収する。法律には明記されて
いないが、審議会の報告書では、使用済み燃料の発生より後に、市場参入した
新規事業者に対し託送料金を通じた資金調達を行うとされている。
 簡単に言えば、再処理工場にかかるコストが思っていたよりも相当高くつい
てしまい、また、電力自由化も始まって、運転が開始されれば負債となること
が明らかなため、「過去にさかのぼって」資金回収をしようというものである。
ただし、この試算そのものが低いという指摘もある。3.2万トンの処理は、工
場がフル稼働した場合の想定である。すでに六ヶ所再処理工場では処理できな
いとされている使用済み燃料3.4万トンの取り扱いについては、不思議なこと
に再処理の大義名分は適用されず、現時点では中間貯蔵しか記述されていない。
いずれにしても、このまま事業が進められれば、さらに大きなコスト負担を強
いられるのは確実だろう。
 その上、ここに来て、コスト問題だけでなく、核兵器に転用可能な核物質で
あるプルトニウムを取り出すことで著しく高まる核拡散性の問題が、世界的に
大きく注目を集めている。
 今年1月、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は、新しいウラ
ン濃縮と再処理事業の開始を5年間凍結し、核燃料を国際管理するという構想
を打ち出した。単なる事務局長の個人的構想ではなく、IAEAは昨年8月から専
門委員会を組織、2005年5月にニューヨークで開催される核拡散防止条約(NPT)
の再検討会議で提案するため、新しい核の国際管理に向けた議論を行っている。
 そして、去る22日、IAEAは、専門委員会報告書の全容を明らかにした。報
告書では、核燃料サイクル施設の国際管理によって「拡散のリスクが抑えられ
る」とされ、新規に始められる事業については、5年後の次の2010年のNPT再
検討会議まで凍結し、その間に国際的な管理体制を整えるという。先の六カ所
再処理工場の取り扱いはどうなるのか、大変興味深いが、報告書には、六ケ所
を東アジアの中核施設として国際的な共同管理下に置くことで、日本が域内の
濃縮・再処理事業を担うセンターとなる、という可能性も想定されているとい
う。2月28日から開催中のIAEA理事会でも報告書についての議論は行われて
いる。理事会のペランド議長は「多くの核施設を保有し、国際的なプロジェク
トである国際熱核融合実験炉(ITER)の誘致など国際的な取り組みに熱心な日
本は、(使用済み燃料の処理問題などで)韓国や台湾など周辺諸国のリーダーに
なれる」(2005.2.28.共同通信)と発言、日本がアジアの再処理ビジネスの中核
になるという、ぞっとするような未来に期待を寄せているようだ。
 しかし、一方では、究極的には濃縮ウランやプルトニウムなどすべての核兵
器転用可能な物質がなくなるべきであるとするエルバラダイ事務局長の発言も
ある。今回の提言は、喫緊には六カ所再処理工場の凍結、さらには、従来から
指摘されてきたNPTの条約上の不備である、核の軍事は禁止するが商業利用は
奨励し結果として核拡散を招いてきた現状に対する根本的見直しにつながる可
能性も残されている。
 国会での法案審議にあたっても、六カ所再処理工場がアクティブ試験に入る
前に、世界的安全保障に与える日本の再処理事業開始の影響について、大いに
議論が行われるべきである。

                      大林ミカ(ISEP副所長)


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