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京都議定書目標達成と排出量取引制度」
             鮎川ゆりか(WWF Japan 気候変動担当)

 温暖化防止のため、先進国がはじめて数値目標を掲げて温室効果ガス排出削
減を約束した京都議定書は、京都で採択されてから、7年を経て、ついに2月16
日に発効することになった。
 今も脳裏に焼き付いているのは2001年3月29日、アメリカのブッシュ大統
領による、京都議定書離脱表明のときの「もはや京都議定書は死んだ」という
新聞の見出しだ。4カ月前には、気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP
6)が決裂したばかり。その矢先のアメリカの離脱だった。

 アメリカの離脱は、世界の国々に危機感をもたらした。アメリカ抜きでも先に
行けるかどうかが問われ、ボンで開かれたCOP6.5会合は困難な交渉となった。
それでも最終的にEUが日本に対し譲歩し、また先進国の資金援助を強硬に求
めていた途上国も、気候変動特別基金と適応基金を設けることで合意、譲歩した。
ボン合意は、こうして、ようやく成立した。アメリカが離脱しても、地球温暖化と
いう脅威に、協力して取り組もうという世界の国々の強い意志が示されたのだ。
京都議定書の発効は、アメリカ、ブッシュ政権の一国主義に対する勝利である。

 さて、京都議定書が発効となると、日本も、いよいよ本腰を入れて京都議定書
の目標達成を確実に行なわなければない。日本は世界で4番目に多くCO2を排
出している。小さな国なのに、先進国ではアメリカに次いで多いのだ。その意味
で、責任は重大である。その日本の温室効果ガスは、2003年度で、90年レベルか
ら8%増大している。また、2010年の見通しとしては、5%以上増大するとの予
測が出されており、6%削減するという京都議定書の約束を達成することの困難
性が指摘されている。
 こうしたことから、現在、見直しが行われている地球温暖化対策推進大綱に
おいて、2005年の第2ステップからは、新たな、追加的な政策措置を導入する
ことが明らかに必要だ。日本のCO2排出を部門別に見ると、最大排出部門は、工
場など産業部門で、4割。また排出主体別に「家庭」と「企業・公共部門」に分けて
みると、全排出量の8割が企業・公共部門に由来する排出であり、家庭は2割で
あることがわかる。新たな追加的な政策措置は、こうした現状を踏まえたものに
していかなければならない。

 追加的な対策は、京都議定書の目標達成を可能にし、そのコストを最小限に
することが求められる。こうした条件にかなう経済的手法としては、環境税と
国内排出量取引制度があるが、今対策の議論の俎上に載っているのは環境税の
みだ。そもそも温暖化政策とは、さまざまな政策措置を組み合わせた、総合的な
ものであるべきだが、日本では、そうした議論がまったく行なわれておらず、他
国に比べて非常に遅れている。

 WWFは昨年9月、追加的な対策の一つのオプションとしてドイツのエコ研
究所に委託した「日本での排出量取引制度の概要」を発表し、国内排出量取引制
度、いわゆるキャップ&トレードを提案した。

 キャップ&トレード型の排出量取引制度は、総排出量を決め、それを排出企業
に割り振り、それぞれ削減できたところ、過剰に排出したところが、取引を行な
い、全体として定められた排出総量を守るという制度である。こうすることによ
り、最も削減コストが安いところで削減することが可能となる。また、削減量の
確実性も高く、京都メカニズムとリンクすれば、企業はより低い削減コストな
どに向けて、CDM/JIに取り組むきっかけにもなる。
 試算では、制度の導入で20~50%のコストが削減され、EUやその他の海外
の排出量市場とリンクさせればさらに10~20%のコスト削減が可能だと推測
される。

 EUは2005年1月から排出量取引制度を開始した。カナダも独自の国内排出
量取引制度を設立する予定であり、EU市場とのリンクも検討されている。ア
メリカにおいてすら、州レベルでは制度が形成されつつある。もしこれらが実
現すれば、日本以外の先進国の大部分で市場ができることになる。こうした国
際的な動向も、排出量取引制度の検討をすべき要因といえるだろう。
 WWFは国内排出量取引制度だけで日本の温暖化政策すべてをカバーできる
と考えてはいない。あくまで他の政策との組み合わせの中で、考えられるべきも
のであり、特に、本制度ではカバーされず、また排出量が伸びている民生(家庭・
業務)、運輸部門や小規模排出源については、環境税など別途対策が講じられる
べきだと考えている。

 しかし日本経団連を始めとした産業界は、環境税はもとより、国内排出量取
引にはなおさら「断固反対」を唱えている。しかし、日本の長期的な利害を考
えるとき、これは損をする態度だ。省エネ技術開発に優れた日本は、炭素制約社
会になれば、むしろ世界市場をリードできる立場にあるはず。70年代のオイル
ショックもそうして乗り越えたし、現に今、例えばハイブリッド車が世界市場を
席巻しようとしている。世界の流れは、温暖化防止に向かっており、確実にC
O2排出がコストになる時代がやってくる。京都議定書発効を契機として、環
境税や国内排出量取引などの新しい挑戦に挑んでいくことは、これからの世界
で競争力を維持し、さらに日本の技術力によって世界をリードするようになる
ために欠かせないことなのである。

 京都議定書発効を機に、長期的視野にたった、脱温暖化社会の構築への一歩
が踏み出されることを望んでやまない。

             鮎川ゆりか(WWF Japan 気候変動担当)

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