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1.  風発
「中国の旅」         飯田哲也(環境エネルギー製作研究所所長)

ここしばらく、中国を訪れる機会が続いた。いずれも北京だが、そのダイナミ
ズムに圧倒されている。もちろん、見かけでも都市開発はすさまじく、立ち並
ぶ高層ビルと建設ラッシュが視覚的に圧倒してくる。街は全体に土ぼこりと排
気ガスでくすんでおり、その中を自転車とベンツがひしめいている光景は、軽
い違和感がある。日本だと、オートバイや小型軽四の時代を経て進化したモー
タリゼーションを一気に早送りしているかのようだ。空港や街角ではスターバ
ックスを自然に見かけ、モダンなホテルなどでは中国語を話す外国人も目立つ。
北京は(おそらく上海や他の主要都市も)完全にコスモポリタン都市となって
いる。

しかし、中国のダイナミズムは、たんに都市化や経済開発の状況だけではない。
世界的な、少なくとも東アジアの政治経済の中心的な存在として、急速に地歩
が固まりつつあるとともに、相対的に日本の存在が薄くなりつつあり、優劣や
主客が逆転を始めているというのである。そのことをほぼ同時に、3人の異な
る論者による指摘を読み、自ら体感したのである。

前号でも紹介した歴史家の溝口雄三は「中国の衝撃」(東京大学出版会)の中で、
「脱亜によってリードしてきたはずのアジアから、逆にリードされ始めて」お
り、「日本は再び環中国圏の中で周辺化される」と指摘している。テッサ・モー
リス・スズキは、「過去は死なない」(岩波書店)の中で、「日本の新しい歴史教
科書を作る会」などは、グローバリゼーションの時代が引き起こす不安感への
対応として、「ナショナリスト的な修辞のバリケードを築いてその陰に引きこ
もるという現象」だと指摘している。しかも、溝口雄三によれば、もはや中国
の知識人にとってそれは中国の問題ではなく、歴史への真摯さに対する日本の
問題(つまり、国際社会から見て責任ある対応が取れなければ、日本が無視さ
れるだけ)だと言い切るのである。さらに、ジャーナリストの田中宇氏は、「6
00年ぶりの中国の世界覇権」(http://tanakanews.com/) の中で、覇権国に向
かう中国と日本の地滑り的な衰退への懸念を指摘している。

今回、清華大学で、BPの寄付講座として設立された多分野協働のクリーンエネ
ルギー研究センターを訪ねた。原子力と自然エネルギーを普及対象とする、い
かにも中国の今日性を象徴するようなセンターだが、そこで、中国政府が極め
て真摯に新しい自然エネルギー促進法を策定している状況を知ることができた。
産業育成を考慮して安定した固定価格法が採用されたこと、水力発電など対象
とすべき自然エネルギーの定義一つ一つを丹念に議論していることに加え、そ
うした一連のプロセスに、ドイツ政府や英国政府、そして米国からはNPOの資
源解決センター(CRS)などがコンサルタントとして参加し、自らの知見を提供し
ているのである。密室で、しかもあまりに粗雑な議論の果てに策定された日本
の「新エネルギー利用特別措置法」とは何と異なった政策プロセスであること
か。引き続いて参加した中国自然エネルギー協会(CREIA)の会合では、英国政府
が主導する「自然エネルギー・エネルギー効率化パートナーシップ」(REEEP)
に積極的に参加し、東アジアのコーディネータを務めているCREIAのリーダー
シップぶりが見事で、「お上」や電力会社の顔色を窺う日本の産業界とは対照的
だった。いったい、どちらが資本主義・民主主義の先輩なのか、まったく逆転
しているのだ。

こうした中国に対して、日本はどれだけきちんと向き合おうとしているのだろ
うか。政冷経熱の「政」に近い環境エネルギー分野では、あまりまともな言説
は見られない。たとえば、中国などの途上国の成長のために石油を温存するた
め、原子力開発が必要だといった、およそ無意味でナイーブな資源保全論があ
る。これは、原子力教信者に多い。また、中国が地球を食いつぶすといった強
迫的な中国脅威論もある。最近の鉄鋼好況や原油高騰などを見ると一面の真理
かもしれないが、アメリカを筆頭とする環境的不公正や中国の経済成長を加速
しているのが日米欧の企業立地や投資であるという構図を忘れた無責任な議論
である。そして、一歩ウラに回れば田舎だといった、ある種の中国軽視論や中
国蔑視論も根強い。

先進国日本という尊大さが見え隠れするこうした妄言を脱却し、東アジアの中
で、日本と日本人はどのように生きていくのかを構想し、日本が果たすべき責
任と開かれたパートナーシップの可能性について、根本的に再考するときでは
ないだろうか。

               飯田哲也(環境エネルギー製作研究所所長)

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