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1. 「風発」


日本のエネルギー政策は「空っぽの洞窟」
所長 飯田哲也


東京電力のすべての原発が一時は全機停止に追い込まれ、原発批判
派すら想像も出来なかった「関東大停電の危機」がいよいよ現実味
を帯びつつある。


しかしこの電力危機は幕開けに過ぎず、日本のエネルギー政策を見
渡してみると、全方位的に崩壊しつつある状況と、その中心には、
金融システムや公共事業にも共通する、無責任な日本型システムの
「空っぽの洞窟」をはっきりと読みとることができる。


その崩壊の過程で、国民にさらなる負担を押しつけて既得権益を維
持しようとする「古い構造」と、さすがにこのままではまずいとい
う危機感を持った変化の動きという、従来の原発推進・脱原発とは
異なる亀裂が生じている。


● 自滅が招いた電力危機
そもそも、なぜこのような事態に陥ったのか。言うまでもなく、昨
年8月29日に明らかとなった「東京電力の原子力発電所における
自主点検作業記録の不正問題」(以下、「不正問題」)がことの始
まりだ。東電の福島第1原発、第2原発、柏崎刈羽原発で、1980
年代後半から90年代にかけて、東電の委託を受けた米国検査会社
(GEII社)が実施した自主点検作業において、シュラウド、蒸気乾燥
機、ジェットポンプなどの機器のひび割れやその徴候等の発見、修
理作業などが不正に記載されていた、という事件だった。


その2年前に米国検査会社(GEII社)の検査員が旧通産省へ東京電力
の不正を告発したが、この告発は放置されたまま原子力安全・保安
院に引き継がれ、その後も当事者である東京電力に本人を特定でき
るかたちで事実照会するなど、一貫して緊張感を欠いた対応を取っ
てきた。


それどころか、東京電力の重役を中心に据えて維持基準の導入準備
を進めるなど、官民ぐるみで「落としどころ」を用意してきたフシ
がある。昨年7月に福島第二発電所の定期安全レビューを受け取っ
たときも、すでに不正事件を知っていたにもかかわらず、「高いレ
ベルの安全水準にある」といったんは認めるなど、「国」の対応は
あまりに不自然だった。


8月29日に不正事件が報道されるや、一転して国は「正義の味方」
を装い、維持基準の導入を「落としどころ」として突っ走りはじめ
た。健全性評価によって「ひび割れ」を容認する維持基準の考え方
には一定の合理性は認めるものの、「不正が起きたのは国の基準が
新品同様を要求したからだ」という論理だけで不正事件に片を付け
るのは子供だましにも劣る。


この不正事件は、虚偽の記載という東京電力の不正だけが問題なの
ではない。 (1)なぜ「ひび割れ」(応力腐食割れ、SCC)が改良材
のステンレス鋼にも生じたのか、(2)シュラウドや再循環系配管以
外の重要部材に問題はないか、(3)「国」や東電の検査および品質
保証の体制や能力は信頼に足るのかといった、より本質的な問題が
きちんと解明されていない。


案の定、その後、福島第一発電所第1号機で圧力容器の気密漏洩試
験データの不正が発覚したり、超音波を使った傷の検査方法の誤差
が著しく大きいことが東北電力で発覚し、維持基準の前提となるデ
ータの信頼性が崩れるなど、今日の自滅的な状況を自ら招いている。


つまり、東京電力の不正事件が問うたものは、「国」と電力会社の
原発の安全性に関する当事者能力である。とくに不正事件発覚の直
後の発言:「原発は安全で、定期検査の前倒しは必要ないと今でも
思っている」(原子力安全・保安院山下弘二原子力防災課長、2002
年9月5日)、「520万キロ・ワット(の出力の原子力)を止めるのは常識
的に異常だ」(松浦祥次郎原子力安全委員会委員長、2002年9月5日)
を見る限り、「国」の安全規制の当事者能力はまったく期待できないこ
とがわかる。


【論座2003年8月号掲載原稿】(掲載文章とは一部異なります)
【全文はISEPライブラリをご参照ください】

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