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1.『原子力政策円卓会議2010』の発足と問いかけ
                       飯田哲也(ISEP所長)

 環境エネルギー政策研究所では、昨年来から「原子力政策円卓会議2010」
(以下、円卓会議)の準備を進めてきており、この5月からは実際に円卓会議
としての会合を重ねてきた。このたび原子力委員会に飯田自身が招へいされ、
その場で、同円卓会議の名の下に「原子力政策大綱の見直しをすべし」との提
言を行った。
 本稿では、円卓会議の背景や想い、問いかけた内容について、簡単に報告す
る。

■円卓会議の背景
 1年前の政権交代で民主党を中心とする政権が発足し、鳩山首相(当時)が
国連の場で「90年比25%削減」を国際公約し、自然エネルギーでも「全量
買取制度」をマニフェストで掲げるなど、環境エネルギー政策が大きく転換す
るかと思えた。
 ところが原子力政策については、現政権のマニフェストでははっきりとした
見直しの方向も論点もなかったにも関わらず、アラブ首長国連邦(UAE)へ
の原発輸出を巡って韓国に敗れた2010年初あたりから、タガが外れたよう
な前のめりの推進姿勢へと代わった。
 ところが足元を見ると、日本の原子力は問題山積みである。六ヶ所再処理工
場のトラブルに次ぐトラブルは言うまでもなく、なし崩しに進むプルサーマル
と核燃料サイクル、まったく進展しない高レベル廃棄物処分、中越沖地震の直
撃を受けた柏崎刈羽原発の再起動問題や耐震基準見直しとそのバックチェック、
そして既存の原発の低迷する稼働率などだ。原発輸出にしても、各種リスクが
ほとんど検証されたフシはなく、そもそもおよそ現実性がない。
 日本の原子力政策が、こうした状況に陥っているのは、ひと言でいえば、旧
式の「二項対立」に陥ったまま、現実の問題が、事実に基づく合理的・論理的
な議論が開かれたかたちで行われてこなかったからではないか。いわゆる「両
極からのシャドーボクシング」が続いてきたからだ。
 すでに冷戦が終わって20年が経過し、インターネット革命とさまざまなグ
ローバル化が進む中、原子力推進・反対という軸だけで割り切れない多様な考
えを持つ人が広がってきている。リスク社会という認識からは、原子力は重大
な「サブ政治」の一つであり、今日あるべき開かれた参加型デモクラシー社会
においては、当然、熟議を要するものだ。
 こうした問題意識から、円卓会議では、「旧い二項対立」に留まっているよう
に見える日本の原子力政策の議論を解凍し、一歩でも前に進めるために、政策
の合意ではなく、まずは問題の共有を意図して、呼びかけたものだ。

■円卓会議の狙い
 かつて1994年(平成2年)に、政府も市民サイドもそれぞれのイニシア
チブで「原子力政策円卓会議」を開催し、いずれもが多少なりとも開かれた議
論をする契機となった。市民サイドの活動は、当時、「対立から対話へ」を標榜
するNPO「市民フォーラム2001」で、エネルギー研究会の世話人であっ
た飯田自身が発案者・発起人となって、「市民によるエネルギー円卓会議」を開
催した。この市民円卓会議には、国の官僚も審議会委員も東京電力も反原発団
体や環境NGOも集まり、「対立する原子力を議論せず、エネルギー政策に関して
『合意』できるところを探す」という方針で開催した。今から思えば素朴だが、
対話できたことと、合意できたことで、参加者全員がある種の興奮に包まれて
いたことを覚えている。
 今回の円卓会議では、まず世話人でバランスを取るように気をつけて、消極
派の飯田と吉岡斉九州大学教授だけでなく、原子力に関わっている澤田哲生東
工大准教授と長崎晋也東京大学教授という顔ぶれで、各方面の参加者に呼びか
けていった。
 その結果、年齢層は30代から60代の幅で、政治家、中央政府官僚、研究
者(大学、研究機関)、NPO(環境系、脱原子力系)メンバー、弁護士、会社
経営者、地方政治家、地方行政官、シンクタンク研究員、作家、アーティスト、
ジャーナリストなど約30名に参加してもらうことができた。
 円卓会議では、原子力政策に関して、推進・消極・否定の立場を超え、事実
と論理と合理に基づいた議論を目指し、原子力政策が直面している課題や政策
アジェンダを幅広い立場から洗い出すことを目的(政策の合意ではなく、政策
論点の合意を目指す)とした。2010年5月から5回の会合を重ね、9月に
原子力委員会および社会全般に向けた「提言書」を、まずは取りまとめた。

■「提言書」の概要
 円卓会議の最初の「提言書」は、原子力政策大綱の見直しに関するポイント
に焦点を当て、なぜ見直しが必要かについて、以下の8つ理由あげた。
(1)商業原子力発電政策について、原子力発電の段階的縮小を含む複数の政
策選択肢を対象とした政策総合評価にもとづいて、最善の選択を提言すべきで
ある。
(2)核燃料サイクル政策について、同様の方法にもとづいて、最善の選択を
提言すべきである。前回の策定会議の作業については不十分な点が多い。
(3)原子力政策大綱の策定後、原子力委員会の頭越しに、原子力政策に関す
る重要な決定が行われている。それらについて検証し、是非の判断を下すこと
が必要である。
(4)現行の原子力政策大綱の策定後、原子力事業の状況は、全体として停滞
状態が続いている。それらを踏まえた政策の見直しが必要である。
(5)現行の原子力政策大綱の策定後、原子力をめぐる国際的状況が大きく変
化している。それらについての分析と、政策的対処が必要である。
(6)原子力委員会の政策評価部会は、政策大綱が正しいことを大前提として
審議しており、政策大綱見直しにつながる検討を行っていない。
(7)日本では2009年9月に政権交代が起こり、民主党主導の連立政権が
誕生した。政治主導の行政をよしとする観点からは、政策大綱を見直すことが
不可欠である。
(8)多くの政策および事業について、誰が責任をもつのか、不明瞭な記述が
多い。その明確化を図るべきである。

■円卓会議の今後
 今回の「提言書」は、円卓会議における過去4ヶ月間に亘る助走的期間にお
ける議論の集約であり、終着点ではなく中間点である。
 円卓会議自体は、非常に良い雰囲気で建設的な議論ができる集まりとなりつ
つある。原子力政策大綱改定作業が始まってからも、円卓会議はそこでの議論
と並走しながら活動を続け、意見表明を行っていく予定としている。

                       飯田哲也(ISEP所長)
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2.連載「光と風と々と」(28):ポピュリズム─日米での動き方
                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

■小沢一郎強制起訴に
 民主党代表選は、予想どおり小沢一郎前幹事長が敗北し、菅改造内閣の支持
率は6月の発足当初の高水準に戻った。小沢支持票は、国会議員票では菅を6
人分下回っただけだったが、地方票や党員票では大きな差がついた。「選挙上手」
などと煽られてきた小沢のメッキは急速に剥げていくことだろう。
 6票差の国会議員票が示すように党内に多い小沢シンパと世論の求める「脱
小沢」のはざまで、菅内閣が微妙な舵取りを迫られている。
 鳩山前内閣の場合には、支持率は下降を続けたのみで1度も上昇に転じるこ
とはなかった。小泉純一郎が、旧橋本派に代表される「守旧派」との距離を演
出してみせることで高支持率を維持したように、菅内閣は「脱小沢」を演出す
ることで、支持率を維持するという戦術を見出した。前号で予測したように小
選挙区制などのゆえに、また副大臣や政務官のポストを小沢系に回したために、
小沢系が大分裂するような事態は考えられない。
 そして昨日(10月4日)、検察審査会の2度目の議決によって、小沢は強制
起訴されることになった。検察審査会という市民の判断によって政治家が起訴
される日本初のケースである。
 5日付けの朝日新聞の社説は小沢の議員辞職を、日経の社説は、民主党によ
る離党や除名勧告の処分を求めている。読売の社説も内容は不明確だが、小沢
と民主党にけじめを求めている。
 小沢の政治資金疑惑は、本人を刑事被告人として、法廷で決着が付けられる
ことになったが、代表選で小沢が負けたことによって、現職の総理大臣が政治
資金疑惑によって「起訴される」、あるいは、現職の総理大臣であるがゆえに強
制起訴を免れる、という醜態は回避できた。
 強制起訴が十分予想されたにもかかわらず代表選に立候補したこと事態、異
常な無神経というべきではないか(あるいはそもそも強制起訴を牽制しようと
するねらいの立候補だった可能性も高い)。また小沢に投票した議員諸氏はどの
ような政治感覚を有しているのだろうか。有権者は、選挙区内の民主党議員が
今回の代表選でどのような投票行動をとったのか、また強制起訴の事態に直面
して個々の議員が、有権者にそれをどのように説明するのかを銘記しておくべ
きだろう。

■中間選挙を迎えるオバマ政権
 11月2日(火)、アメリカのオバマ政権は中間選挙を迎える。任期6年の上
院議員の3分の1が改選され、任期2年の下院議員は全員が改選される。大統
領選挙から2年後に開かれる中間選挙は、事実上、政権運営について審判を受
ける機会とされている。Change を掲げて華々しくスタートしたオバマ政権だが、
経済不況のもとで苦戦を強いられている。
 最大の焦点であり長年の懸案だった医療保険制度改革は、3月に下院で、賛
成219対反対212の僅差で可決、大統領が署名して、ようやく医療保険改
革法が成立した。選挙中の公約のような、日本の国民健康保険のような公的医
療保険制度の設立は断念せざるをえなかった。ずっと穏健な、国民全員に民間
保険に加入するよう義務づけ、そのために加入条件を緩和し、保険加入を国が
補助するという内容の法律である。現在83%程度の医療保険加入率が95%
程度まで上がる見通しという。(加藤祐子「ついにアメリカが「常識」の国に
CHANGE、医療保険改革がついに 1・2」。
http://news.goo.ne.jp/article/newsengm/world/newsengm-20100322-01.html
 私たち日本人の感覚では、医療保険制度改革は政権前半の最大の成果として、
高く評価されていい。しかしながら、医療保険改革法の成立は、アメリカの文
脈では、ティーパーティーなどの保守系に「大きな政府」批判、オバマは「社
会主義的」という批判の口実を与える効果も持ってしまったようだ。
 9月24日に発表されたCNNの世論調査ではオバマ大統領の支持率は過去
最低の42%にとどまり、不支持率は54%と過半数を超えている。
 中間選挙を前に、上院は、今年7月、温室効果ガスの排出を制限する包括的
なエネルギー・温暖化対策法案の成立を断念した。中間選挙で民主党の苦戦が
予測され、1994年のクリントン政権と同様に、中間選挙での敗北によって
下院と上院双方で共和党が多数を占め、政権が立ち往生する事態も予想されて
いる。
 そうなると、オバマ政権の温暖化対策への積極姿勢はさらに難しくなり、
11月下旬からのCOP16でも、2013年以降の枠組みづくりに向けて、
大きな前進は見込み薄となるだろう。
 経済不況とポピュリズムは、オバマ大統領を誕生させた原動力だが、保守派
のティーパーティーの隆盛に見られるように、ポピュリズムが大きく右に振れ
つつあるのがアメリカの現状である。インターネットを駆使して小口の資金を
集めるティーパーティーの手法は、その限りでは、オバマの選挙戦術ともよく
似ている。
 当時の好況が90年代半ばのクリントン人気を支えていたのに対して、好転
の兆しの見えない現下の不況は、オバマ政権にとって大きな壁である。
 やや図式的に言えば、日本のポピュリズムは、政権交代を実現するとともに、
増税論を嫌って参院選では自民に大きな議席を与えたものの、小沢を批判し菅
の再選に貢献したのに対し、アメリカのポピュリズムはわずか2年で右に大き
く振れ、オバマ政権に立ちはだかっている。むろんティーパーティーについて
は、その草の根性を疑問視し、FOXテレビなどに代表される保守派に操作さ
れ、演出されたものだという批判も根強い。
 宗教的背景が乏しいだけに日本のポピュリズムは相対的に健全だが、キリス
ト教右派の信条に支えられたアメリカのポピュリズムはしばしば独善的で狂信
的である。

                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)
3.青森エネルギー紀行(10)~ペレット元年~
                     森治文(朝日新聞青森総局次長)

 今年は青森も「暑かった」。青森市で最高気温36.6度(平年値は「わずか」
28.3度!)を記録した8月6日の正午ごろ、最大電力を4年ぶりに更新し
た。
 エアコン(クーラー)がない家の多い青森では、夏に電力需要が伸びること
自体珍しい。4年前に最大電力を記録したのは11月24日である。気象庁の
統計ではその日の青森市の最高気温は3.9度。急に冷え込んだため、灯油で
はなく、手っ取り早くこたつや電気ストーブなど電力に頼った暖房が急増した
のではないかと推測できる。
 欧州もそうだが、寒冷地でのエネルギー需要は冬に多くなるというのは、み
なさんもご存じのところ。そんな冬のエネルギー対策が皆無に近かった青森で
ようやくペレットの活用が動き出した。
 仕掛け人は、五所川原市の建築会社社長の松野武司さん(60)。五所川原市
は津軽半島の中央部に位置し、作家太宰治のふるさとでもある。リンゴの栽培
が盛んな土地で、松野さんが代表を務める津軽ペレット協同組合のペレット工
場は、真っ赤なリンゴが収穫期を迎えた畑のすぐそばにある。
 同組合は今年8月、経産省が始めた「国内クレジット制度」のもと、ペレッ
トストーブによる二酸化炭素(CO2)削減事業が承認された。家庭で使うペレ
ットストーブがクレジットを生み出し、大企業などの削減目標達成に利用され
るのは国内でも初めてのことだ。当初は同協同組合がペレットを供給している
家庭8軒が対象で、今冬からスタート。ひと冬で1軒当たり1トンの削減量を
見込む。今年度中には60軒まで増やしたいという。
 山林の多い東北は、岩手などでペレットの利用が比較的進んでいる。一方、
青森は同協同組合のペレット工場が稼働を始めた2年前まで、ろくにペレット
を作る団体すらなかった。
 松野さんたちがペレットを生産しようと思ったのは、近くの老人ホームが使
っているペレットボイラーに供給するペレットを何と岡山県から秋田港を経由
して「輸入」していると知ったからだ。
 仕事柄、建築廃材の再利用を当初は考えたが、結局、廃材の量はわずかだし、
そこに含まれた薬剤なども心配。それよりも間伐材の7割が放置されていると
いう青森の森の現状を変えようと思ったという。建築廃材は、ペレットを作る
過程で乾燥させる際の燃料に使っている。
 ペレット自身を売るだけでなく、ストーブも販売しているが、石油が高騰し
た3年ほど前はよく売れたが、今はさっぱり。「値段だけの問題ではない」と説
明しても分かってはくれない。さらに、「二酸化炭素削減でお金になる」という
話になると、「CO2を何かに詰めて売るのか」という素朴な疑問も出るといい、
ペレットを使う意味を分かってもらうのは難しい、と松野さんも苦笑いする。
 松野さんによれば、青森には昨年時点で350台のペレットストーブがある
そうだ。そのうち100台は組合が売ったのだという。組合で生産するペレッ
トは1シーズン約900トン。このうちボイラー向けが700トンで家庭用ペ
レットストーブが200トン。しかし、この900トン、まだペレット市場の
小さい青森だけでの消費ではなく、300トンは岩手県に「出荷」している。
 いかにペレットを県内で普及させるか、そしてペレット生産が商売として成
り立つ1300~1500トンまで売れるようにするか、が直近の課題だ。
 ただし、松野さんらの努力が少しずつ報われようともしている。青森市が
10月からペレットストーブを購入する家庭に補助金をつけ始めた。他県では
とっくの昔にやられていることだが、青森の自治体としては初めてのこと。ま
た、県内の融雪道路の一部でペレットボイラーが使われることも決まった。
 青森にとって今年が遅ればせながらの「ペレット元年」と言えるかもしれな
い。松野さんの夢は、自前の「バイオマス発電」を建てることという。「バイオ
マスならリンゴの剪定による枝がいくらでもある。出力300キロワット規模
の発電ができれば、ペレット工場で使う電気をすべてまかなえる」。
 松野さんの試みはまだほんの1歩。8軒の削減量はたかが知れている。だが、
1人当たりの灯油使用量日本一の青森でペレットが普及する意味は決して小さ
くない。

                     森治文(朝日新聞青森総局次長)
4.代替フロン(HFCs)とヒートポンプ問題
                     船津寛和(ISEP主任研究員)

 フロン類は二酸化炭素の数百~数万倍の温室効果を持つ強力な温室効果ガス
(GHG)である。
 日本でGHGといえば、排出量の94.7%を占める二酸化炭素であり、排
出量1.2%を占める代替フロン(HFCs)に対して有効な政策が取られて
いるとは言い難い。
 しかしながら有効な対策が取られない場合、今後日本国内において、さらに
世界全体としてHFCs排出量の大幅な増加が予測されている。PNAS
(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of
America)の研究によれば、2050年の予測としては、BAUシナリオの場合、
世界の二酸化炭素排出量と比較して9~19%(二酸化炭素換算)、450
ppm─CO2安定化シナリオの場合、二酸化炭素排出量と比較して28~
45%を占めるとされている。世界のGHG排出の半分近くがHFCsとなる
可能性が指摘されている。

■国内の対策とその現状
 フロンは製品分野ごとに、フロン回収破壊法、家電リサイクル法、自動車リ
サイクル法により管理されている。しかしながら、フロンの出荷量とその回収
量を比較した場合、その80%以上が大気に放出されている。今後の市中スト
ック(いわゆるバンク)の増加とともに、この放出/漏洩量はさらなる増加が
見込まれている。

■エアコンのLCCP
 従来、エアコンにおいても省エネ、つまり電力消費量が重視され、フロンの
放出/漏洩は問題とされてこなかった。しかし、産業技術総合研究所の調査に
よると、エアコンの電力消費量は従来の想定値よりも大幅に少なく、フロンの
排出量が大幅に多いことが分かった。LCCP(Life Cycle Climate
Performance)を見ると、総排出量のうち57%がフロンによる。
 省エネが重要であることは言うまでもないが、エアコンに限っては、フロン
対策こそ最優先すべきことが初めて明らかとなった。

■エアコンおよびヒートポンプの問題点
1.高いCOP値を得るための意図的工作
 エアコンの省エネ効率を示すCOP値について、「隠しスイッチ」などを用い
て測定性能をかさ上げする「爆風モード」により、メーカーがその数値を意図
的にかさ上げしていた。
 経産省産業構造審議会化学・バイオ部会地球温暖化防止対策小委員会にて日
本冷凍空調工業会はこれが事実であることを認めた。

2.節電金額表示におけるJIS標準時間と実態との乖離
 JISでは、冷房3.6ヶ月、暖房5.5ヶ月、1日最大18時間エアコン
利用を基準としているが、一般家庭の実際の使用時間はこの5分の1から6分
の1程度にすぎないため、この利用時間を基準とした電気代のお得度は、過大
な表示となっている。

3.冷媒フロンの増量と漏洩
 省エネ効果を高めるため、エアコンに封入される冷媒フロンの量は増加傾向
にある。上述のとおり、フロンの大半は大気中に放出されている。

 環境エネルギー政策研究所など市民団体8団体は当件に関してエアコンメー
カー8社に公開質問状を送ったが、十分な回答が得られなかったため今年8月
に共同で「ヒートポンプ問題連絡会」を発足させた。
http://www.isep.or.jp/kiji/iida_heat_pon100820.html

 さらに大きな問題としては、政府の温暖化対策として、ヒートポンプの導入
推進が強調されている。冷媒のノンフロン化が実現しない限り、省エネ(省電
力、省二酸化炭素)を進めることが、省GHGにはつながらず、むしろGHG
排出量を増加させることになりかねない。
 また、フロンは化学物質としてのリスクも抱えている。
 政府は、最新の知見を基に大きな視野に立って、フロン全廃、市中バンクの
対策強化など、真の温暖化対策を取るべきである。

                     船津寛和(ISEP主任研究員)
5.ザルツブルク REFORM Group Meeting 報告
        古屋将太(Aalborg University, PhD student/ ISEP fellow)
                     山下紀明(ISEP主任研究員)


概要(古屋)
 9月6日~10日にかけて、オーストリア・ザルツブルクにあるレオポルツ
クロン城で第15回リフォームグループ会議が開催され、ISEPからは飯田、
山下、古屋が参加しました。リフォームグループ会議は、ベルリン自由大学環
境エネルギー政策研究所が中心となって組織され、毎年8月下旬?9月上旬にレ
オポルツクロン城で開催されており、1週間のプログラムには欧州の代表的な
環境エネルギー政策研究者をはじめとして、政策立案や国際交渉の実務者、エ
ネルギー産業界の代表者等、環境エネルギー政策に関係するさまざまなキーパ
ーソン数十名が集まり、活発な議論が行われています。今年の全体テーマは「世
界のエネルギーシステムの脱炭素化戦略(Decarbonising Strategies for the
Global Energy System)」でした。

9月6日:1日目(古屋)
Energy Perspective 2050:2050年に向けたエネルギーの見通し

 初日のセッションは、主に欧州を中心として、2050年を視野に入れた中
長期的な気候変動・エネルギー政策の動向が発表されました。COP15での
国際交渉におけるジレンマを反映して、欧州全体としての交渉カードは「やや
手詰まり」という印象は拭えないものの、依然としてドイツによるリーダーシ
ップは継続しているというのが全体的な論調でした。
 ベルリン自由大学環境政策研究所のMiranda Schreurs氏による発表では、自
身が委員を務める「ドイツ環境審議会(The German Advisory Council on the
Environment)」による2050年までの気候変動・エネルギー政策の検討内容
が報告され、改めて自然エネルギーと省エネルギーの推進が強調されました。
検討シナリオでは2050年にドイツの電力需要を100%自然エネルギーで
供給することを想定し、その際に考慮すべき論点が浮かび上がってきました。
 その中でも注目すべき点として、国内自給を前提とすることを政策課題の最
優先に起きつつも、変動する自然エネルギー供給を活かす上ではスカンジナビ
ア諸国との連携を現実的に考慮する必要があるということが指摘されていまし
た。具体的には、ドイツやデンマークの風力発電の変動をノルウェーの水力発
電との連携によって対応することが考えられているのですが、こうした連携は、
実際にはカナリア諸島のEl Hierro島ではすでに「島」というスケールで実現
しており(参考文献)、国同士の広域レベルでも検討に値するのではないかと思
います。また、現在デンマークでは風力発電の変動をヒートポンプとの連携で
対応する研究が進められており、「自然エネルギーには変動があるから導入は限
定的」という紋切り型の批判を超える「変動に対応して導入を推進する」とい
う方向性が確実に現れていることがわかります。
 翻って、COP15以降の日本の気候変動・自然エネルギー政策の動向を考
えると、「環境政治の空白」とも言えるような中でずるずると重要な政策が棚上
げになり、「2020年25%削減」で切り開いたモーメンタムが次第に失われ
つつある状態だと思います。現在検討が行われている固定価格制等の各種政策
は、国内だけでなく国際的な気候変動・自然エネルギー政策の議論にも影響を
およぼす試金石のひとつになると考えられるため、積極的な政策を期待したい
ところです。

参考文献
Radzi, Anis. 2009. “100% Renewable Champions: International Case
Studies.” Pp. 93-165 in 100% Renewable: Energy Autonomy in Action, edited
by P. Droege. London: Earthscan.

9月7日:2日目(山下)
Greening Energy in Europa:欧州のエネルギーのグリーン化

 この日はEUの気候変動政策、欧州自然エネルギー連盟の構想、省エネ策、
バイオマスの土地利用問題などの個別の発表とともに、エネルギー事業者を集
めたラウンドテーブルでの議論が行われました。
 気候変動交渉を先導してきた欧州においても、COP15以降の展望と今後
のEU議長国のエネルギー業界との関係性から、全体としての大きな進展を目
指すよりも可能なところが個別の進捗を積み重ねていく方が現実性が高いと認
識しているようです。
 ラウンドテーブルでは、2050年までの長期のエネルギー政策および事業
の展望について議論が行われました。参加者は欧州太陽熱産業協会会長である
Oliver Druecke氏、欧州風力発電協会のCEOであるChristian Kjaer氏、エ
ネルギーコンサルタントとしてJobst Klien氏、ガス事業者の立場からWim
Mallon氏という4名。Oliber Druecke氏は自然エネルギー熱の重要性を強調し、
今後20年にわたってはガス業界との連携も視野に入れたいと述べていました。
また風力発電については、今後の主要なエネルギー源となること、その際に地
域の役割がますます重要になると述べていました。一方Wim Mallon氏はガス事
業の重要性を強調していました。全体として大きな変革の方向性は理解した上
で、どのように実現に結びつけるかが重要であり、机上の計算や研究結果より
も実践に向けた効果的な働きかけを重視する実践的な視点での議論が行われま
した。

9月8日:3日目(山下)
Efficiency & Renewable Energy Strategies for Developing Countries:
途上国におけるエネルギー効率化・自然エネルギー戦略

 この日はアジア、中南米における自然エネルギープロジェクトが多く紹介さ
れ、特にバイオマスの持続可能な利用に関する議論に多くの時間を取りました。
他に主な発表内容は、エネルギーと貧困、太平洋・カリブ海地域のエネルギー
政策、地域エネルギー事業の機会、メキシコの自然エネルギー戦略などです。
 バイオマスの利用状況については3件の報告がありました。(1)「改良型バ
イオマス調理器の世界状況」Mary Louise Gifford, ベルリン自由大学・UCバ
ークレイ校(2)「地域でのバイオエネルギーシステムの最適化」Mirco Gaul, ベ
ルリン工科大学(3)「途上国でのジャトロファ・プログラム:状況と展望」Lutz
Mez、ベルリン自由大学。
 (1)については、途上国で多くのプログラムが進められている改良型バイ
オマス調理器についてレビューし、現状を分析したものです。80%を超えるプ
ログラムが目標を達成できておらず、技術面・社会面・金融面・制度面での障
害がありつつも、技術的な改良やマイクロファイナンスの台頭などのチャンス
があることも紹介していました。
(2)(3)についてはいずれもジャトロファを中心に取り上げていました。ジ
ャトロファは非木質バイオマスの一種で、成長が早く、非食用で食料との競合
が無いため注目を集めています。しかし、土地利用の観点からは限られた農地
の取り合いとなること、生産プロセス・エネルギー利用の仕方により大きな効
率の差が出るため、効果的な利用には全段階にわたる仕組み作りが必要なよう
です。
 途上国での自然エネルギー利用は今後の世界全体のエネルギー需要増への対
応から重要であることは言うまでもありませんが、先進国と異なる形の障害と
可能性を強く感じました。

参考)会議の発表資料はこちらからダウンロードできます。(英語サイト)
http://www.polsoz.fu-berlin.de/polwiss/forschung/systeme/ffu/veranstal
tungsarchiv/salzburg_2010_program.html

概要・1日目報告 古屋将太(Aalborg University,PhD student/ISEP fellow)
2日目・3日目報告            山下紀明(ISEP主任研究員
6.ベルリンの風 第4回 先進地域の光と影
                     山下紀明(ISEP主任研究員)

 9月の下旬、今回の滞在で初めてドイツの南部を訪れました。ベルリンから
電車で6時間、バイエルン州の州都ミュンヘンに到着。ベルリンを出てしばら
くは風車群をときおり見かけます。一方ミュンヘンに近づくと太陽光発電を載
せた住居が俄然増えていきます。自然エネルギー先進国であるドイツの中にあ
る地域性を再確認しました。ミュンヘンは都市としても気候変動対策に力をい
れており、昔オリンピック会場であった記念公園の近くには太陽熱の大規模集
合住宅もあります。
 この時期にミュンヘンを訪れた理由は、ドイツに詳しい方ならすぐおわかり
でしょう。ドイツ最大のビール祭として知られるオクトーバーフェスト、ある
意味では最もドイツらしいといえる場面を体験することです。公園には数千人
を収容できる特設テントが10以上も立ち並び、ドイツのみならず世界から押
し寄せた人々が語りながら、歌いながら、笑いあって1リットルジョッキでビ
ールを流し込むのです。それはとてもにぎやかで楽しい光景でした。
 しかしこのお祭りの時期、ホテルの値段は通常の3倍以上にも跳ね上がりま
す。地元の人からはビールの値段が高いし、騒々しいし、行かないよ、という
声も聞きます。華やかなものにも光と影が存在し、特に地元にいるからこそわ
かること、長く関わっているからこそわかることもたくさんあります。
 また10月3日はドイツ再統一20周年記念日でした。(昨年は壁崩壊20周
年)ベルリンでもブランデンブルク門前から6月17日通り(Strasse des 17.
Juni)一帯で大規模な催しが開かれていました。デメジエール内務省大臣は「こ
の20年間は大きな成功の歴史だが、もちろん影の側面もある」と語り、東西
の格差解消は随分進められてきたものの産業や失業などの問題が依然として残
っています。(die Zeit紙オンライン版9月22日記事より)ここにも光と影
が見えてきます。
 さて、研究の方でも、すでに行ったいくつかのインタビューから先進地域の
光と影を学んでいるところです。前々回紹介したハンブルクは、ほぼ全ての住
居から300m以内で公共交通機関にアクセスできることが高く評価されてい
ましたが、実際に住んでいる方からは「確かにそうかもしれないが、電車の環
状線が無いことはとても不便」というコメントがありました。(市内の中心部に
は地下鉄の環状線があります。)バスなどはあってもやはり電車の方が便利だと
いうことのようです。これは住んでいる方だからこその実感ということでしょ
う。また二酸化炭素削減は域内の発電所を移転したことが大きな要因であるた
め、使用する電力量自体は大して変わっておらず、その削減の意味に疑問符が
つくという意見もあります。一方でその電力供給会社については一度民営化を
進めたものの、再度公営に戻し自然エネルギーを増やす施策に向けることも想
定されているようです。
 またドイツ環境省も訪問する機会があり、国と地域の役割について少し意見
交換ができました。ドイツが気候変動政策を強力に進めている一方で、ボトム
アップの視点について尋ねると、「いくつか目立つ事例はあるものの、確かにト
ップダウンの側面が強く、そういう役割分担はそれほど想定されてこなかった。
興味深い研究テーマであり、成果をまた教えてほしい」という趣旨のコメント
をいただきました。インタビュー相手と新たな可能性に思い至ることはインタ
ビューの醍醐味の一つです。
 さらに前回ご紹介したバルセロナについても、太陽熱産業に長く関わってい
る専門家とじっくり話すことができました。「バルセロナは太陽熱義務化の発端
であり、大きな広がりを見せた。一方でチェック体制がないため、実際の導入
率は50%未満という報告もある。抜き打ち検査などの行政コストの低い利点
を保ったままでも改善が必要。」と指摘しています。一躍有名になったバルセロ
ナにも改善すべき点があるようです。
 今後も報告書や雑誌記事ではあまり言及されない影もしっかりと集めながら、
研究対象の実像に迫っていきたいと思います。

お知らせ
「自然エネルギーと省エネルギー」の章のナビゲーターを担当した「経済効果
を生み出す 環境まちづくり」(株式会社ぎょうせい)という本が出版されまし
た。章のはじめに概観を紹介しています。各地域での環境に関する多様な事例
を担当者自らが紹介しており、これから取り組もうと考えている方の最初の一
歩にお勧めできる本です。これまでISEPが協力してきた飯田市や青森の市
民エネルギー事業も掲載されていますので、ぜひご覧下さい。

アマゾンの商品紹介ページはこちら
http://www.amazon.co.jp/経済効果を生み出す-環境まちづくり-環境まちづく
り研究会/dp/4324091676/ref=dp_return_1?ie=UTF8&n=489986&s=gateway

                     山下紀明(ISEP主任研究員)
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