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1. 風発:よくわかる自然エネルギー(1)
                       飯田哲也(ISEP所長)

・今なぜ自然エネルギーか

 世界中で「グリーン・ニューディール」政策が進む中、その柱として注目さ
れているのが自然エネルギーである。自然エネルギーとは、太陽光発電や風力
発電、地熱発電など自然界でほぼ永続的に資源が再生されるエネルギーを指す。
 自然エネルギーは、第1に枯渇しない純国産エネルギーであり、エネルギー
自給率がわずかに4%しかない日本にとって、最も重要なエネルギーである。
第2に、今や待ったなしの地球温暖化問題に対して、温室効果ガスの主因であ
る二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギー源であり、これも2020年
までに25%削減を掲げる日本にとって最も力を入れるべきものである。
 第3に、新しい産業経済の柱として期待されており、とりわけ風や森林や農
業用水など地域の資源を利用してエネルギーを生み出す分散化技術であるため、
地域の活性化に役立つ。世界全体で見ても、自然エネルギー市場は、過去5年
以上もの間、年60%もの成長を遂げ、今や約12兆円もの市場に達しており、
10年後には自動車産業に匹敵する産業に成長するとみられている。
 だが、日本がこの市場を占める割合は2%に過ぎず、世界の潮流から大きく
取り残されている。かつて世界をリードした太陽光発電も、市場が急成長する
につれて、「ウサギと亀」の寓話よろしく、追い越され、今や取り残されつつあ
る。なぜか。
 自然エネルギーを野球にたとえると、日本では未だに、将来の期待された補
欠選手くらいにしか認識されていない。しかし日本を除く世界では、走攻守揃
った大リーガーのイチローと捉えている。それがこの違いを生んでいるのだ。
ちなみに、走とは成長の早さ、攻とは経済効果、守とは温暖化防止とエネルギ
ー自給効果である。
 以下、自然エネルギーを巡って急激に変貌しつつある最新動向や足踏みする
日本の課題を探り、日本再生の展望を示す。

・自然エネルギーとは

 自然エネルギー(もしくは再生可能エネルギー)とは、自然界でほぼ永続的
に資源が再生されるエネルギーを指すもので、中心は太陽エネルギーだ。これ
には太陽光発電や太陽熱利用はもちろん、太陽エネルギーから生み出される水
力・風力・バイオマス(生物資源)なども含まれる。その他に、地下のマグマ
に由来する地熱や温泉熱利用や月の引力に由来する潮力も自然エネルギーだ。
 もう少し正確な定義では、特に水力発電とバイオマスの扱いが論点になる。
いずれも自然エネルギーだが、大型の水力発電は河川環境や地域社会に大きな
影響を及ぼし、バイオマスは森林破壊や大気汚染の懸念がある。このように他
の側面の悪影響が大きい利用形態?すなわち大型ダム式の水力発電と非効率な
バイオマス利用を除いたものを「持続可能な自然エネルギー」と呼び、これが
国際的には徐々に定着しつつある。
 日本では、石油ショックの時に定めた「新エネルギー」という法律定義を長
く引きずった。これは省エネルギー技術まで含む定義で、国際比較もできない
「ガラパゴス用語」だった。
 過小評価されている自然エネルギーの資源量だが、じつは膨大にある。太陽
エネルギーだけでも、全世界で使われている石油・石炭など化石燃料の約1万
倍が降り注いでいる。そのうち化石燃料の数千倍程度は現実的に利用可能と推
計されている。つまり自然エネルギー100%社会は、「できるか」ではなく「い
つまで」の問題なのだ。
 自然エネルギーの最大の特徴は「小さな技術」ということだ。小さくて主力
のエネルギー源にならないと思われがちだが、これは大きな間違いだ。小規模
分散型の技術は、作れば作るほど安くなり、加速度的に普及拡大していく。待
ったなしの温暖化対策や石油対策に、省エネルギーと共に、唯一間に合う可能
性を持つ。
 問われているのは、自然エネルギーを加速度的に普及させるための政策の力
だ。

・地球温暖化と自然エネルギー

 地球温暖化問題の最大の原因は、現代文明を支える石油や石炭などの化石燃
料を燃やすことで放出される二酸化炭素だ。つまり地球温暖化問題とはエネル
ギー問題であり、それを自然エネルギーに転換することは、省エネルギーと並
んで根本的な解決策といえる。
 ところがこれまで自然エネルギーは、地球温暖化対策の中で、あまり重視さ
れてこなかった。なぜだろうか。
 第1に、風力発電や太陽光発電などのように小規模な技術であるため、化石
燃料を代替するものとして充分な量をすぐに確保できないと思われてきたこと
がある。現状、世界全体のエネルギーの約10%が自然エネルギーで賄われて
いるが、その8割が薪などバイオマスの伝統的な利用によるもので、2割が大
型ダム式の水力発電を占め、いずれも問題の多い使い方である。風力発電など
新しい自然エネルギー技術は、まだ2%程度にすぎない。
 第2に、まだ技術開発の途上で、コストも高いと思われてきたことである。
しかし事実は、確かに太陽光発電はまだコストの高い技術だが、昨年に一気に
4割もコストが下がり、競争力が出てきている。風力発電などは、ほとんどの
国で石炭火力発電よりも安くなっている。
 ここにきて一気に状況が変わってきた。
 一つには、自然エネルギーが小規模分散型の技術であるが故に、幾何級数的
に拡大する現実が、ドイツなど欧州や米国、そして中国でも出現してきたこと
だ。その普及拡大に連れて、技術改善とコストダウンも進み、時間との競争に
なっている温暖化対策の唯一の解として期待されるようになったのだ。
 また金融危機と原油高騰に対して、自然エネルギーが代替エネルギーの主力
であると同時に、新しい産業と雇用を生み出すエースとして躍り出てきたこと
も、大きな追い風になっている。
 昨年12月にコペンハーゲンで開催されたCOP15は世界全体で削減する約束
の難しさを見せつけたが、拡大することがさまざまな問題を解決していく自然
エネルギーは、政治的にも突破口となるかもしれない。


「聖教新聞」2010年1月8日号、1月25日号、2月7日号掲載

                       飯田哲也(ISEP所長)
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2.温室効果ガス80%削減、前提の検証が不可欠
                三橋規宏(千葉商科大学大学院客員教授)

 民主党政権は、温室効果ガス(GHG=グリーン・ハウス・ガス)の排出量
を2020年に1990年比25%減、2050年には同80%減という野心
的な目標を公約に掲げている。すでに所管官庁の環境省では専門家による作業
部会を設け、目標達成のためのロードマップ(工程表)づくりのための準備を
進めている。そのためには、これから50年に向けて日本がどのような姿に変
わっていくのか、日本の新しい国家目標は何か、さらに目標を達成するための
基本的な考え方と有効な手法は何かについて明確なビジョンを示す必要がある。
この点について3つの注文をしておきたい。

(以下、続きは次のサイトで読めます)
http://www.jcer.or.jp/environment/pdf/col100701.pdf
(「日本経済研究センター」2010年7月号掲載)

                三橋規宏(千葉商科大学大学院客員教授)
3.青森エネルギー紀行(9)「ねぶたのエネルギー」
                     森治文(朝日新聞青森総局次長)

 今年の東京は猛暑と聞く。7月の終わり、私用で東京に帰省した時は確かに
参った。ただでさえ汗かきで、しかも青森の気候に慣れた身には夜でさえ歩く
と汗がじわーっとにじみ出た。
 青森も昨年に比べれば暑い。でも木陰は涼しく、夜になれば「天然冷房」の
風が吹き抜ける。
 家でもエアコンをかけるのはごくまれ。日中、職場にいることが多いせいも
あるが、夜中は窓を開け放てば、風が室内をやさしく通り抜ける。「青森の人は
必要もないのに見栄でエアコンを家につけている」と言われるほどだ。
 今冬には東京から新幹線が開通する。厳冬は敬遠したいが、夏は「すずしい!
あおもり」というキャンペーンでも張り、避暑地として多くの観光客でも招き
入れれば、真夏の都心で全開する冷房のエネルギーがわずかでも減るのではと、
なかば本気で思ってしまう。

 その青森の人々を熱狂させるのが、毎年8月初めに各地で繰り広げられる夏
祭り。青森市では「ねぶた祭」、弘前市は「ねぷたまつり」、五所川原市は「立
佞武多(たちねぷた)祭り」などと、表現が微妙に異なるのはその土地土地の
プライドかもしれない。ちなみにねぶたやねぷたは津軽地方の祭りで、南部地
方の八戸市の夏祭りは「三社大祭」である。
 なかでも最も大規模かつ全国的に名を知られている青森市の「ねぶた祭」に
は、針金で作った骨組みに和紙を張り合わせ、武者絵などを描いた大型ねぶた、
子どもねぶた計30数台が登場、毎晩、市内を2時間かけて練り歩く。大型ね
ぶたは幅9メートル、奥行き7メートル、高さ5メートルもあって、その迫力
に目を見張る。ねぶたの前を浴衣、たすき姿の跳人(はねと)が文字通り跳ね
ながら踊り、後ろから太鼓や笛の囃子が続く。夏が短い分だけ、凝縮して楽し
もうというその迫力と熱気は、だれもが一度は見て損はないと感じさせる。

 毎年作り替える大型ねぶたの制作費や祭り期間中に繰り出すための人件費や
食費などで1台当たりの年間費用は2千万円ともいわれる。そのお金を捻出す
るため、多くのねぶたには企業がお金を出している。パナソニック、東芝、日
立、三菱といった電機関係の企業が結構多い。ねぶたは、夜空を焦がすと表現
されるほどの光で内側から照らす。近くで見ると目映いほどで、そこに使われ
る電球などの関係もあってスポンサーとなっているのだろう。
 電球や蛍光灯などは20ワットから100ワットタイプまで少なくとも約
1000個。それだけの光源を確保するため、各ねぶたには約1.5トンの発
電機が取り付けてある。市内を練り歩くのはおおむね午後7時過ぎから午後9
時まで。準備の時間も含めて明かりをつけるのは1日2時間半ほどになる。そ
の際、発電機を動かすのに使う軽油は直接聞いたところ、ねぶたによってまち
まちで1回の運行で少ないところで13.4リットル、多いところで20~
30リットルと言う。
 これでもかつては1日40~50リットルに上ったことがあったという。そ
れよりも減ったのは、以前はほとんど電球を使って代わりに蛍光灯が多くなっ
たから。加えて今年は少なくともパナソニック、東芝がスポンサーのねぶたに
LEDが採り入れられた。

 パナソニックのねぶたは電球が400~500個、電球型蛍光灯が約700
個、蛍光灯約20本、LEDが約200個。東芝は電球が約130個、電球型
蛍光灯が約600個、蛍光灯が数本、LEDが約200個という。東芝のねぶ
たの関係者は「祭りも最近はごみを出さないようにするなど、エコが求められ
ている。省エネもこれからもっと進むだろう」という。
 それなら、すべてLEDや蛍光灯にできないものかと聞くと、「アート」との
兼ね合いが難しいのだという。蛍光灯は全体の色が白っぽくなり、LEDは電
球のように全方向に光がまんべんなく散らばらず、一定方向に強くなるため、
せっかくの武者絵がきれいに浮かび上がらない。ねぶた制作のリーダーである
「ねぶた師」がうんと言わないそうだ。そこで青白っぽく光って構わない刀の
部分は蛍光灯にするとか、絵の小さなパーツにLEDを使うなど、作品の出来
映えを損ねないように工夫を凝らしているという。

 確かに、数ヶ月かけて制作した力作をきれいに見せたいという思いを「省エ
ネ」のひと言で裏切りたくない。和紙には電球の出す昼光色が似合う気がする
し、何よりも青森が最も輝く日々に傾ける人々の情熱、ほとばしるエネルギー
を、「エネルギーのムダ遣い」と切って捨てるほど無意味なことはない。

 それでも、祭りの効果を損なわないようにしながら、わずかでも省エネの光
を使う努力が進んでいることに、宣伝効果をねらう企業の意図も当然あるだろ
うが、技術革新の意義を感じる。
 LEDが祭りなどさまざまな場で利用されることでさらに進歩をとげ、生活
に完全に溶け込む日も近いだろうと、ねぶたにこだまする「ラッセラー」のか
け声を聞きながら考えた。

                     森治文(朝日新聞青森総局次長)
4.自然エネルギー政策研究・実践のコミュニティ
        古屋将太(Aalborg University PhD student/ISEP fellow)

7月半ばから日本に一時帰国しています。北欧の快適な気候に比べて湿度の高
い日本の暑さを再確認しています。
今回は、これまでの私が経験的に見聞きしてきた海外で自然エネルギー政策研
究・実践にかかわる人々や組織のコミュニティの一部を挙げてみようと思いま
す。

■デンマーク
デンマークの自然エネルギー政策研究コミュニティとして、もっとも人材が集
積しているのが、オールボー大学の「持続可能なエネルギー計画管理グループ
(Sustainable Energy Planning & Management Group)」です。エネルギーシス
テムモデリングツール「Energy PLAN」開発者のヘンリク・ルンド(Henrik Lund)、
制度経済学と文化人類学のアプローチで自然エネルギー政策の分析を行うフレ
ッド・ヴェルプルンド(Frede Hvelplund)の2人を代表として、豊富な研究・
教育の実績があります。
実践コミュニティとしては、フォルケセンター(Nordic Folkecenter for
Renewable Energy)が中心的役割を果たしています。ここには、自然エネルギ
ーの政策・技術・ビジネスについて学ぶことを志す人々が世界中から集まり、
プレーベン・メーゴー(Preben Maegaard)の教えを受けています。
もうひとつの実践コミュニティの中心がサムソ・エネルギー・アカデミー(Samso
Energy Academy)です。ここでは、自然エネルギー100%を実現する上でのノウ
ハウを学ぶことができます。
ちなみにディレクターのソーレン・ハーマンセン(Soren Hermansen)はオール
ボー大学の非常勤講師も務めています。

■スウェーデン
スウェーデンの自然エネルギー政策研究コミュニティとしては、ルンド大学
iiiee (International Institute for Industrial Environmental Economics)
が代表的です。前ディレクターのトーマス・ヨハンソン(Thomas B. Johansson)
をはじめとして、現在スウェーデン・エネルギー庁長官を務めるトーマス・コ
バリエル(Tomas Koberger)も非常勤講師として所属しています。
その他に、チャルマーズ工科大学(Chalmars University of Technology)のス
タファン・ヤコブソン(Staffan Jacobsson)による産業・科学技術政策分析ア
プローチも豊富な研究実績を生み出しています。

■オーストリア
オーストリアでは、ザルツブルク大学のフォルクマー・ラウバー(Volkmar
Lauber)による自然エネルギー政策の比較政治学が有名です。特にEUレベル
の政策形成プロセスに関して注目すべき研究実績が多くあります。(ちなみに、
彼のPhD学生とデンマーク国内での大学講義で同席したことがあります。)

■ドイツ
ドイツの自然エネルギー政策研究・実践コミュニティは、あまりにも広大なの
ですべてをフォローしきれませんが、現在山下主任研究員が所属しているベル
リン自由大学環境政策研究所(Forschungsstelle fur Umweltpolitik)には所
長ミランダ・シュラーズ(Miranda Schreurs)、ルッツ・メッツ(Lutz Mez)を
代表として豊富な研究・教育実績を生み出しています。(ドイツについては山下
主任研究員が詳細を取り上げてくれることを期待しています。)

■カナダ
北米のなかでもカナダのオンタリオ州は、現在もっとも研究・実践の集積が進
んでいる地域です。前回も取り上げたOSEA(Ontario Sustainable Energy
Association)の事務局長クリストファー・スティーブンス(Kristopher
Stevens)は、コミュニティ・パワー運動の牽引者としてオンタリオでの実践を
推進しています。
また、同州のヨーク大学にはJose Etcheveryを中心として、自然エネルギー政
策研究・実践の人材が集積しており、クリストファーや昨年TOLRECで来日した
リリー・リアーヒ(Lily Riahi)もヨーク大学の出身です。

■ 韓国
東アジアでは、韓国のキョンポク国立大学のキム・ジョンダル(Kim Jong-Dall)
による政策研究が代表的です。先日も彼と学生のグループがISEPを訪問し、
東アジアでの自然エネルギー政策研究・実践について知見を交換しました。

これらの人々や組織は必ずしも相互につながっているわけではないのですが、
その多くが「小規模分散型の自然エネルギー普及」や「地域の自立的な取り組
みの推進」といった自然エネルギーの根底にある価値意識のようなものを共有
しています。
個人的には、こうした人々や組織を通じて知識や各地の情報を得るだけでなく、
彼らにとっても意味のある研究・実践の成果を還元していきたいと思います。

         古屋将太(Aalborg University PhD student/ISEP fellow)
5.「ベルリンの風」第2回 ハンブルク 2011年欧州環境首都
                       山下紀明(ISEP研究員)

 日本では猛暑が続いているそうですが、ベルリンでも7月の半ばに一週間ほ
ど30度を超える時期がありました。こちらでは普通の家はもちろん、大半の
カフェやレストランにも冷房設備がありません。知り合いに会えば、今年は本
当に暑いね、が挨拶代わりでした。(一方で昨年の冬は百年に一度と言われるほ
どの寒さだったそうです。)
 そんな暑い最中の7月10日、ベルリン自由大学では博士課程のワークショ
ップを開催。近隣の大学からも若手研究者が集まり、下記4つのセッションで
発表と討論を行いました。
1. 気候変動ガバナンスの科学と知識
2. 環境政策形成におけるプライベート・ビジネスセクター
3. 気候変動と適応メカニズムの影響
4. 気候変動政策形成における地域・準国家レベル
 濃密な一日でしたが、自身の研究へのヒントと刺激をもらい、同様の研究テ
ーマに取り組む学生と知り合う良い機会となりました。終了後のBBQでは、
研究の話とサッカーワールドカップ(W杯)の3位決定戦(ドイツ対ウルグア
イ) で大盛り上がりでした。ドイツ中が熱狂したW杯も終わり、気温も25度
前後に下がり、バカンスの時期に突入とあって、騒がしかったベルリンも有名
な観光スポット以外は落ち着きを取り戻したようです。私も大学、州立図書館、
家にこもって具体的な調査のための資料集めを始めています。
 そこで今回は研究テーマである「都市の気候変動政策形成過程」での調査候
補地の一つ、ドイツ北部に位置するハンブルクについてご紹介します。ベルリ
ンから高速列車ICEで北西へ2時間弱、人口170万人(都市圏全体では
430万人)が住むドイツ第二の都市であり、欧州でも10本の指に入る大都
市です。エルベ川沿いの港湾都市として商業的に発展し、ハンザ同盟で有名な
自由都市としての歴史を持つため、一つの都市でありながらドイツ連邦の16
の州の一つでもあるStadtstaat(Stadt=街、Staat=州)という特別な市です。
(他にベルリン、ブレーメンが特別市)実際に訪れてみると、水と緑が多く、
街の活気もあり、なんといってもベルリンと比べて魚介類が多いのが嬉しいと
ころです。
 そのハンブルクは、欧州委員会により2011年欧州環境首都に選ばれまし
た。欧州環境首都は気候変動や交通、廃棄物処理といった10項目を総合的に
評価して選定されます。ハンブルクは気候変動、廃水処理、環境マネジメント
の項目で最高点を獲得。デンマークのコペンハーゲンやドイツのミュンスター、
フライブルクという有名都市を押さえ、総合1位となりました。そうした環境
対策の実績がある上に、さらなる改善のための野心的な将来計画を持っている
ことも高く評価されたのです。
 気候変動対策について見ると、ハンブルクではすでに二酸化炭素を減らしは
じめています。現在は1990年比にして一人当たり15%の削減を達成。さ
らに2020年には市内の全排出量の40%、2050年には80%の削減目
標を定めています。市内1500以上の企業との環境パートナーシップ推進、
欧州最大規模の再開発プロジェクトHafencity(Hafen=港)での環境配慮も特
筆すべき点でしょう。またほとんどの市民が自宅から300m以内で公共交通
へアクセスできることは都市開発の点からも重要な施策です。
 ドイツは国として自然エネルギー政策を中心に据えた気候変動対策を強力に
推進しています。その中で自治体がより積極的に政策を進めることは、日本と
は違った意味での挑戦という側面があると考えられます。なぜハンブルクにお
いてその挑戦が成功しているのか。制度や権限の違いがどのように影響するの
か、ISEPのようなNGOの協力はあったのか。それらを明らかにし、東京
やもう一つの調査候補地であるバルセロナとの差異と共通点を見いだすことを
目標に調査を設計しています。

参考資料)
1.ハンブルク欧州環境首都2011ウェブサイト(ドイツ語、英語)
http://hamburggreencapital.eu/
2.変革のチャンス ドイツの自治体が取り組む地球温暖化防止戦略(社団方針 気候同盟作成)
http://www.klimaschutz.de/fileadmin/klimaschutz/inhalte/downloads/LGCP-Solutions-for-Change_jp.pd

                      山下紀明(ISEP研究員)
6.再生可能エネルギー政策シンポジウムに参加して
                   石川陽香(ISEPインターン)

 7月1日、パシフィコ横浜にて自然エネルギープラットフォーラム(JRE
PP)主催の「再生可能エネルギー政策シンポジウム」が開催され216名の
方がご参加されました。再生可能エネルギー(以下、再エネ)導入を進めるア
クターが、現実に抱える問題意識を共有し、望ましい制度に向けて切り込んだ
質問や切実な要求と提案がみられ、示唆に富んだシンポジウムとなりました。

 第1部は、各国の再エネ政策を達観し、国内の再エネ政策に対する批判的思
考と改善意識を共有する良い機会となりました。
 第2部の熱エネに関するパネル討論では、住宅規模や気候、意思に応じて、
多様な再エネ導入の選択肢の一つとして熱エネルギーの提案がなされました。
そして、グリーン熱証書といった「みえる化」の動きに対し好意的な意見交換
がなされました。
 第3部の円卓会議では、海外の事例を用いて再エネ導入が小規模分散的に拡
大し、固定価格・全量買取で制度設計した場合の長期的コストが提示されまし
た。そして、固定価格買取制度について余剰買取か全量買取かについて議論が
なされました。たしかに、全量買取は初期投資がかかり、電力会社の系統規制
と縦割り規制の撤廃の必要があるが、50万件の住宅を考慮した余剰買取制度
より、1000万件以上の衡平性と再エネ選択の自由を担保できるコストベー
スの全量買取制度にすべきという意見が印象的だった。さらに、コスト負担に
関して、補助金ありでの再エネ導入か否かによる差異ある国民負担と「みえる
化」の促進、系統規制の撤廃・新たな送電システムの構築による効率性の確保
といった提案が目立ったので、2020年に向けて進むべき道筋が、固定価格・
全量買取制度実施の方向で示されたように思います。

 なお、本シンポジウムの参考資料として販売を受け付けた「自然エネルギー
白書2010」はこちらのページからお申込み頂けます。
http://www.re-policy.jp/jrepp/JSR2010/index.htm

                   石川陽香(ISEPインターン)

*本シンポジウムを特集したSEEN特別号は、8月10日付けで配信しまし
た。以下のサイトでご覧になれます。
http://www.re-policy.jp/sympo20100701/SEENEx100806JREPP.pdf
    ★特集:再生可能エネルギー政策シンポジウム開催報告★

 去る2010年7月1日、「再生可能エネルギー政策シンポジウム」が自然エ
ネルギー政策プラットフォーム(JREPP)と環境エネルギー政策研究所(I
SEP)の共催によりパシフィコ横浜で開催されました。延べ216人の参加
者で会場は満席になり、再生可能エネルギー政策への関心の高さが伺われまし
た。
 今回のSEENは特集として、この記念すべきシンポジウムの開催報告をお
届けします。

■シンポジウムの概要

 ●開催日時:2010年7月1日(木)10:00─17:30
 ●会場:パシフィコ横浜 アネックスホールF204
 ●主催:自然エネルギー政策プラットフォーム
http://www.re-policy.jp/
     環境エネルギー政策研究所
     http://www.isep.or.jp/
 ●Webサイト:議事録も掲載予定
 http://www.re-policy.jp/sympo20100701/
 ●動画サイト:録画(USTREAM形式)の一部がご覧頂けます。
 http://www.ustream.tv/channel/isep

【シンポジウムの主な内容について】
       松原弘直(自然エネルギー政策プラットフォーム事務局
                        /ISEP主席研究員)

 世界で再生可能(自然)エネルギーが主役に躍り出る中、日本国内の再生可
能エネルギーの普及は足踏み状態が続いている。地球温暖化対策や新成長戦略
の切り札として、日本国内でもようやく本格的な普及に向けたシナリオが描か
れ出したが、固定価格買取制度などを始めする再生可能エネルギー政策は、未
だにその方向性が不透明な状況が続いている。そのような状況の中、この「再
生可能エネルギー政策シンポジウム」の前半では、海外の最新の再生可能エネ
ルギー動向を俯瞰するために、最新レポート「自然エネルギー世界白書201
0」が紹介され、IEA(国際エネルギー機関)やIRENA(再生可能エネ
ルギー国際機関)の最新動向と共に、日本国内の自然エネルギーの最新動向をま
とめた日本初の「自然エネルギー白書2010」も紹介された。後半のパネル
討論では、電力に比べ遅れている熱政策にも焦点を当てつつ、自治体や関係す
る諸団体による自然エネルギーによる熱の普及に向けた検討が行われた。続い
て、今、もっとも注目されている国定価格買取制度に関する円卓会議が開催さ
れ、経産省が発表したオプション(選択肢)に対して、環境NGOの立場から
ISEPが各論点に対する提言を行い、その後、各論点に対する議論が円卓会
議に参加した様々なステークホルダーにより活発に行われた。これらの議論は、
今後の日本の再生可能エネルギー政策に対して重要な示唆を与えるものになる
と考えられる。自然エネルギー政策プラットフォームの活動も今後、さらに重
要となってくると思われ、環境エネルギー政策研究所としてもその活動を全面
的に支援していく。

     松原弘直(自然エネルギー政策プラットフォーム事務局
                        /ISEP主席研究員)
【第1部 「国内外の自然エネルギー政策の動向」】
                     石川陽香(ISEPインターン)

 今年7月にREN21から発表された最新の「自然エネルギー世界白書20
10」によると、2009年も引き続き自然エネルギーへの投資や、自然エネ
ルギー設備の導入は世界的な伸びを示しており、特に2004年頃から各国で
の固定価格買取制度などの政策の導入により発電設備容量が指数関数的に増加
していることが示されている。こうした状況は今後とも続くと考えられており、
IEA(国際エネルギー機関)は2050年までに発電の50%を再生可能エ
ネルギーにするブルーマップシナリオを発表している。その実現に向けて、今
年発足したIRENA(再生可能エネルギー国際機関)では、これまで先進国
を中心に蓄積されてきた再生可能エネルギーのノウハウを、途上国を含む全世
界に広げるための基盤づくりを行っている。世界的な再生可能エネルギーの急
成長に対して、「自然エネルギー白書2010」では、日本国内の政策や導入の
現状を真摯に見つめ、将来のビジョンや地域のポテンシャル等を示している。


■基調講演:「Global Status of Renewable Energy Markets, Industry and Policies and Prospects for Japan」
講演者:Eric Martinot(Lead Author;REN21 Renewables Global Status Report,ISEP/WWI)

 ISEP研究部長のEric Martinot(エリック・マルティノー)氏からは、自
ら編纂をし、REN21から今年7月に公表された「自然エネルギー世界白書
2010」の内容をベースに世界の再生可能エネルギーの最新動向が紹介され
た。昨年1年間の再生可能エネルギーの発電能力に対する投資の増加により、
太陽光発電や風力発電などの発電設備容量の大幅な伸びが見られ、それらを促
進する各国・各自治体の政策が紹介された。そして、IEAが2008年に発
表した長期シナリオ(ブルーマップシナリオ)は、2050年までに、世界の発
電の約50%が再生可能エネルギーになるという低炭素シナリオを描いている
ことも示された。自然エネルギービジネスの雇用創出効果により、地域経済が
発展し、産業の競争力を高めることができる。今後、太陽光発電の買取価格が
さらに下がり、電気自動車なども取り込んだスマートグリッドでのエネルギー
貯蔵技術等の開発がされることにより、今後5年から7年はこの分野の成長が
続くと楽観的に捉えることができるという見解も提示された。

・発表資料(英語)
http://www.re-policy.jp/sympo20100701/101Martinot.pdf
・REN21:自然エネルギー世界白書2010(英語)
http://www.ren21.net/globalstatusreport/g2010.asp


■講演:「IRENAと再生可能エネルギーの動向」
講演者:Hugo Lucas(Program Manager,IRENA)

 IRENA(再生可能エネルギー国際機関)プログラム・マネージャーのHugo
Lucas(ヒューゴ・ルーカス)氏から、IRENAの体制や活動を中心とした紹介
があった。IRENAは、多くの発展途上国を含む加盟国に対して再生可能エ
ネルギーを導入する際のポテンシャルや政策立案などについてアドバイスを提
供しようとしている。そのために、IEA、UNEPなどの国際機関の専門家
と連携して情報を収集し、技術ロードマップを作成する。IRENAでは、国
際的に固定価格買取制度の普及を促進する活動を行っており、ドイツ、スロベ
ニア、スペインなどでの固定価格買取制度についての成功事例や失敗事例など
について各国の政権担当者へ情報を提供している。政策動向についても経過を
追って、トレンドを含んだ情報を各国の政権担当者へフィードバックすること
が重要であるとの認識を示した。

・発表資料(英語)
http://www.re-policy.jp/sympo20100701/102IRENA.pdf
・IRENAホームページ(英語)
http://www.irena.org/


■講演:「世界の再生可能エネルギーの技術展望と普及シナリオ」
講演者:Hans J. Koch(IEA RETD)

 IEAの再生可能エネルギー技術部門(RETD)の責任者で、デンマーク
気候エネルギー省のハンス・ヨルゲン・コッホ氏は、再生可能エネルギーの技
術が世界中に普及する可能性について言及した。世界の平均気温の上昇を2度
までに留めるという共通の目標を実現するには長期エネルギーシナリオ(RE
TDシナリオ)に従って、地球上の様々な社会がそのコストを負わなければな
らないという認識を示した。このシナリオ実現のためには市場の力だけでは無
理であり、電力供給と暖房冷房などの熱供給、そして交通の3つの分野での導
入メリットの定量化や、国際間の協力と政策の枠組みが必要であるとした。ま
た、系統電力拡充のための長期計画やその性能の向上、電力会社を含めたステ
ークホルダーの対話、教育の活動も重要であるという認識が示された。

・発表資料(英語)
http://www.re-policy.jp/sympo20100701/103IEA-RETD.pdf
・IEA RETDホームページ(英語)
http://www.iea-retd.org/


■報告:「日本国内の動向~自然エネルギー白書2010より~」
講演者:松原弘直(ISEP/JREPP事務局)

 最後に、ISEPの主席研究員である松原弘直氏から自然エネルギーに特化
した日本初の「自然エネルギー白書2010」について紹介が行われた。主要
な点は以下のとおりとなる。
 国内の自然エネルギーの導入の中で、太陽光発電については2006年度以
降、導入が伸び悩んでいるが、補助金の復活や新たな余剰買取制度の影響で昨
年度から盛り返している。国内で最も普及が進んでいる小水力発電(出力1万
kW以下)は、近年はほとんど導入されていないという状況である。最近注目
されているバイオマス発電は廃棄物発電の割合が非常に大きい。国内のポテン
シャルが大きい地熱発電は2000年以降新規の設備導入は無い。世界の再生
可能エネルギーに対する投資と発電容量は伸び、そして積極的な政策実施が行
われている一方で、日本は自然エネルギー導入状況の立ち遅れを今後どう取り
戻していくのか、政策上多くの課題がある。

・発表資料
http://www.re-policy.jp/sympo20100701/104JSR2010.pdf
・自然エネルギー白書2010
http://www.re-policy.jp/jrepp/JSR2010/

                    石川陽香(ISEPインターン)
【第2部 報告とパネル討論「自然エネルギー熱分野 政策の課題と可能性」】
                    田中信一郎(ISEP客員研究員)

 自然エネルギーの熱分野について、その潜在力は非常に大きいと考えられて
いる。ところが、電力分野と比較して注目度が低いために、国や自治体におけ
る政策も電力と比べて十分に進んでいない。そのため、普及スピードも電力分
野に比べて遅れたものとなっている。そこで、自治体の政策担当者や関係する
事業者による報告とパネル討論により、政策の課題と可能性を議論することと
した。

当日の報告者(討論参加者)は次のとおりである。

・自治体:
小林省二氏(東京都環境局都市地球環境部)
       [説明資料]
       http://www.re-policy.jp/sympo20100701/201TMG.pdf
・エネルギー事業者
岡村俊哉氏(東京ガス株式会社リビング企画部)
       [説明資料]
       http://www.re-policy.jp/sympo20100701/202TG.pdf
・建築分野
三浦秀一氏(日本建築学会気候変動対策小委員会)
       [説明資料]
       http://www.re-policy.jp/sympo20100701/203AIJ.pdf
・太陽熱
時岡義雄氏(ソーラーシステム振興協会)
       [説明資料]
       http://www.re-policy.jp/sympo20100701/204SSDA.pdf
・バイオマス
岡田久典氏(バイオマス産業社会ネットワーク)
       [説明資料]
       http://www.re-policy.jp/sympo20100701/205BIN.pdf
・地中熱
笹田政克氏(地中熱利用促進協会)
       [説明資料]
       http://www.re-policy.jp/sympo20100701/206GEOHPAJ.pdf
・コーディネーター
田中信一郎氏(ISEP客員研究員)

 東京都環境局の小林氏からは、住宅用太陽熱の大規模な導入補助、中小企業
向けの太陽熱減税制度、建築への再エネ導入検討義務等、東京都で導入した先
進政策が報告された。

 東京ガスの岡村氏からは、再生可能エネルギー利用の難しかった集合住宅に
ついて、集合住宅用太陽熱温水システムの普及を進めようとしていることが報
告された。

 日本建築学会の三浦氏からは、建築のエネルギーについて熱利用が重要であ
ること、並びにその考えを取り入れた実証住宅「山形エコハウス」について報
告がされた。

 ソーラーシステム振興協会の時岡氏からは、太陽熱普及の課題として、ソー
ラーシステムの効果の見える化、施工・メンテナンス体制の構築、グリーン熱
証書等の普及支援策が必要との報告がされた。

 バイオマス産業社会ネットワークの岡田氏からは、バイオマスでは発電より
も熱利用が有効であることと、政策も含めてバイオマス全般に関わる人材育成
が重要であるとの報告がなされた。

 地中熱利用促進協会の笹田氏からは、地中熱利用の潜在力が大きい一方で、
認知度の低いこと、実証事例の少ないこと、普及支援策の不十分なこと等の課
題について、報告がなされた。

 続いてのパネル討論では、政策のあり方、市場拡大方策、マーケティング方
法について議論が行われ、特に政策のあり方について多角的な議論がなされた。
そして、報告とパネル討論を通じて、1)コスト低下の方法(コストが下がる
までの間の対策)、2)認知度の上げ方(消費者の選択肢に加えるための施策)、
3)技術の一般的な普及(成熟技術の見極めと人材育成)の3点が、共通する
課題として明らかになった。また、熱分野の潜在力を強く意識すること、熱分
野の異なる機器を組み合わせて考えることが、政策立案で重要なことも明らか
になった。

                    田中信一郎(ISEP客員研究員)
【第3部 「望ましい固定価格買取制度(FIT)への円卓会議」】
                     井田瑞(ISEPインターン)

 この「円卓会議」には、各省庁や自治体の関係者、電力会社を始めとして金
融機関、各自然エネルギー発電事業者、消費者関連団体、環境NGO等の専門
家、総勢17名が登壇し、ISEPとしても空前の規模の円卓会議となった。
まず、民主党政権が地球温暖化対策基本法案や新成長戦略の中で掲げている全
種全量の固定価格買取制度について、経産省のプロジェクトチームでの検討結
果をもとに、経産省資源エネルギー庁の斎藤圭介氏より、後に議論される基本
的な制度のオプションが示された。その後、主催団体でもある環境エネルギー
政策研究所 所長の飯田哲也氏は、世界で急激な発展を遂げている再生可能エネ
ルギー市場の概況と、日本における市場拡大の必要性について述べ、経産省オ
プションに関する様々な論点や課題を指摘した。

・経産省説明資料
http://www.re-policy.jp/sympo20100701/301METI.pdf
・ISEP説明資料
http://www.re-policy.jp/sympo20100701/302ISEP.pdf

 以上の説明に対して国家戦略室の平竹雅人氏からの新成長戦略に関わるコメ
ントを皮切りに、朝日新聞の竹内敬二氏がコーディネーターを務めて、固定価
格買取(FIT)制度の重要な論点について2時間以上に渡り17名の登壇者
による議論が行われた。
 この「円卓会議」の登壇者は次のとおりである。

・行政
増山壽一氏
 (経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部政策課長)
立川裕隆氏(環境省 地球環境局地球温暖化対策課調整官)
平竹雅人氏(内閣官房 国家戦略室)

・自治体
谷口信雄氏(東京都環境局 都市地球環境部)

・電力会社
影山嘉宏氏(東京電力株式会社 環境部長)

・金融機関
竹ヶ原啓介氏(株式会社日本政策投資銀行 CSR支援室長)

・消費者関連団体
辰巳菊子氏(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 常任理事)
麹谷和也氏(グリーン購入ネットワーク 事務局長)

・太陽光発電
田中良氏(株式会社NTTファシリティーズ ソーラープロジェクト本部)

・風力発電
永田哲朗(日本風力発電協会 代表理事)

・地熱発電
安達正畝氏(日本地熱開発企業協議会 評議員)

・小水力発電
中島大氏(全国小水力利用推進協議会 事務局長)

・バイオマス発電
泊みゆき氏(バイオマス産業社会ネットワーク 理事長)

・環境NGO
池原庸介氏(WWFジャパン 気候変動オフィサー)

・市民出資関連団体
鈴木亨氏(NPO法人北海道グリーンファンド 事務局長)
飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所 所長)

・コーディネーター
竹内敬二氏(朝日新聞社編集委員)

<議論1 買取価格の考え方>
 FIT制度の導入においては買取価格および買取期間の設定が重要である。
太陽光、風力、地熱、小水力、バイオマスの事業者団体から各発電源の特徴と
コスト、適切な価格や期間についての具体的な数値が提示された後、日本政策
投資銀行の竹ヶ原氏から、ローリターン・ローリスクのビジネスとしての再生
可能エネルギーの実現のためのFIT導入に、期待を寄せるコメントがあった。

・太陽光発電 事業者説明資料
http://www.re-policy.jp/sympo20100701/303NTTF.pdf
・風力発電 事業者説明資料
http://www.re-policy.jp/sympo20100701/304JWPA.pdf
・地熱発電 事業者説明資料
http://www.re-policy.jp/sympo20100701/305GEO.pdf

<議題2-1 他の制度面のポイント─全量と余剰>
 現在既に実施されている住宅用太陽光発電の余剰買取制度と、ここで議論さ
れた全種全量買取制度の整合性や、全量か余剰のどちらが制度として望ましい
かなどの議論があった。東京電力の影山氏は、余剰買取制度における家庭での
省エネインセンティブを利点として指摘したが、それに対して飯田氏は余剰買
取が引き起こす不公平性が問題であるとした。

<議論2-2 他の制度面のポイント─環境価値の行方>
 環境価値取引の具体的な政策として、キャップアンドトレードやグリーン証
書などが挙げられた。一方で、経済産業省資源エネルギー庁増山氏の、日本で
自然発生的、草の根的に生まれた環境意識を大切にしたいという思いは、多く
の登壇者が共有していたようである。環境価値には、二酸化炭素削減以外にも
様々な価値が含まれる。個人の意思に基づいて多様な価値を選択できるような
政策の必要性を、東京都の谷口氏が指摘した。

<議論3 系統制約と系統整備>
 全量全種の買取を行うにあたって最も大きな課題の一つが、電力系統の整備
である。日本風力発電協会の永田氏は、電力会社と事業者の電力系統について
の情報の非対称性が、風力発電等拡大のハードルになっていると述べた。さら
に優先接続、優先給電導入による再生可能エネルギー普及拡大の可能性に言及
した。北海道グリーンファンドの鈴木氏の話では、風力発電に非常に有利な地
域である北海道でも、風力発電の建設が抽選制になっているなど、系統制約が
大きな問題であるという現状が伝えられた。
 
・北海道グリーンファンド説明資料
http://www.re-policy.jp/sympo20100701/306HGF.pdf

<議論4 国民負担の考え方>
 負担に対する消費者の納得をいかにして得るか。消費者の代表として、日本
消費者生活アドバイザー・コンサルタント協会の辰巳氏は「透明性のある国民
負担」が重要とし、消費者団体とISEPが共同で作成した「消費者と気候変
動問題コンセンサス文書」を紹介した。さらに、グリーン購入ネットワークの
麹谷氏は「理解しやすくシンプルな制度」を挙げ、WWFジャパンの池原氏は、
過度の負担を回避するために、制度導入後の頻繁な見直しが必要であるとした。

・消費者と気候変動問題コンセンサス文書
http://www.isep.or.jp/press/100528GEPFpress.pdf

<議題5 その他の議論─地域社会合意、金融支援>
 自然エネルギーは列島に偏在していることから、地域社会合意は導入のカギ
となる部分である。特に地熱発電は温泉や公園との社会合意が難しく、地熱の
ポテンシャルが活用されていない点について、日本地熱開発企業協会の安達氏
から伝えられた。経産省の増山氏、全国小水力利用推進協議会の中島氏、環境
省の立川氏からは、地域の人々を新しいプレーヤーとして巻き込む地域還元型
の事業を支える政策の方向性が示された。

 3時間に及ぶこのセッションでは、時には厳しい質問や意見が飛び交ったも
のの、FIT導入については各ステークホルダーが大筋で合意しているようで
あった。しかし、課題は多く残っている。谷口氏の言葉を借りれば、再生可能
エネルギーは我々が考える以上の豊かな価値を持っている。利害や感情の衝突
を越える、将来を見据えた慎重かつ積極的な制度設計への一歩として、ここで
の議論が活かされることを期待する。

                     井田瑞(ISEPインターン)
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