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1.風発:「新しいルール」の創造必要
                       飯田哲也(ISEP所長)

 ■緑の分権改革

 日本全体に疲弊感や後退感が漂っている。短期的な要素としては、リーマン・
ショックから立ち直る間もなく襲いかかったギリシャ発の世界経済不安もある
だろう。だがやはり、戦後、工業製品の輸出一辺倒でやってきた「ものづくり
日本」がここにきて世界に通用せず、自信を失って立ちすくんでいるようにみ
える。「ガラパゴス」という皮肉交じりの比喩(ひゆ)がその象徴だろう。しか
も経済の回復は、輸出産業という「旧いビジネスモデル」に頼らざるを得ない
と考え、ますます日本経済がモノカルチャーの度合いを増すという悪循環に陥
っているのではないか。さらに、地方のそれは輪をかけてひどく、場所によっ
ては「荒廃感」も漂う。これは欧州の地方都市のにぎわいや高質な景観と対比
すれば歴然としており、一部ではアジアの都市にも「負け」つつあるという感
想を耳にする。

 ◆縦割りと規制の壁

 そうした中、原口一博総務大臣の肝いりで、「緑の分権改革」がスタートした。
自然エネルギーをはじめとするそれぞれの地域資源を最大限活用する仕組みを
地方自治体と市民、NPO(民間非営利団体)などの協働・連携により創り上
げていくことで「地域から人材、資金が流出する中央集権型の社会構造」を「分
散自立型・地産地消型社会」「地域の自給力と創富力を高める地域主権型社会」
へと転換することを目指すとしている。

 まことに「わが意を得たり」の取り組みであり、委員も拝命したので全力で
取り組みたいと考えているが、この先の道の険しさは容易に想像できる。エネ
ルギー分野は、ただでさえ閉鎖的かつ独占的な市場となっているほか、国自ら
の強固な縦割りと不透明な裁量規制があり、進める地方自治体にも鏡写しのよ
うな縦割りがある。何よりも地方行政には変革を構想し、突破し、実現する「変
革マネジメント」の経験を積んだ人材が乏しい。こうした困難が重なり、容易
には実現しないのだ。

 ◆自然エネルギー普及のために

 ほぼ同時期に、行政刷新会議に設置された規制・制度改革分科会のうち、グ
リーンイノベーションにも参画したのだが、残念ながら、緑の分権改革との連
携は乏しい。むしろ逆行しているかもしれない。

 例えば、風力発電や地熱開発に対する自然公園法や温泉法の「規制緩和」が
強調して取り上げられた。もちろん、風力発電や地熱発電を一層普及・拡大す
ることは大賛成なのだが、他方で地域では「風力発電からの低周波騒音」や「地
熱によって源泉が影響を受ける」といった不安があることも確かだ。地域の目
線に立って、そうした不安にも向き合いながら、地域で望ましい開発のあり方
を探る必要があるのだが、どうも、かつての市場原理的な規制緩和が色濃い。
このように、規制改革でも「新しい哲学」が見いだせていないのだ。世界で最
も「風車密度」の高いデンマークでは、風車に反対する声はほとんど聞かれな
い。2つの理由がある。第1に、デンマーク全土が風力発電に関して、地域社
会の合意のもとで土地のゾーニングが行われているからだ。これで大半の紛争
は予防的に回避できる。第2に、ほとんどの風車は協同組合や土地の所有者な
ど地域社会のオーナーシップとなっているため、「外からの開発」ではなく「マ
イ風車」という感覚なのだ。

 「緑の分権改革」が指し示すとおり、今後、小規模分散型である自然エネル
ギーは地域社会に急速に普及していくことが期待されているし、そうでなけれ
ばならない。その「新しい現実」には、デンマークに倣った「新しいルール」
を必要としている。ちょうど携帯電話やインターネットが普及する前には存在
しなかったルールを今、私たちが受け入れているように。

SankeiBizより転載
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/100604/ecc1006040501000-n1.htm

                       飯田哲也(ISEP所長)
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2.連載「光と風と樹々と」(26)─ 元気な町・葛巻のエネルギー
                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

■ないもの探しから、あるもの探しへ
 「新幹線もない、高速道路もない、ゴルフ場もない、リゾート施設もない、
温泉もない、「有名人」がいたわけでもない」。それなのに、岩手県葛巻町は元
気な町だ。50歳代半ばの町長はじめ、森林組合の参事、畜産開発公社のふれ
あい交流室長等々、みんな溌剌として、この町に誇りを持っている。6月4日
から6日まで、久しぶりに葛巻町を訪れた。なぜこの町は元気なのか。環境社
会学会のセミナーに参加した110余名がほぼ共通に抱いた疑問だ。

■年間50万人の入込客数──自然エネルギーのメッカ
 葛巻町は、人口7678人、世帯数2890の北上山地の高原の町だ。新幹
線の沼宮内駅(東京から最速で2時間40分)から町の中心部までバスで約
50分、盛岡駅からバスで1時間40分。酪農と林業の、この町を一躍有名に
したのは風力発電と木質バイオの自然エネルギーである。長年この町をフィー
ルドにしている岩手大学や岩手県立大学の研究者によると、脚光を浴びるよう
になったのはこの10年ぐらいだそうだ。現在年間約50万人の入り込み客数
があり、そのうちの30万人はエネルギー関係の人たちではないかという。役
場の農林環境エネルギー課は、昨年は年間約200回、一昨年は300回、視
察に対応したという。

■山間高冷地での風力発電のパイオニア
 葛巻林業が木質ペレット製造を始めたのは1981年。日本のペレット製造
の草分けである。
 風力発電は、袖山高原に、町も出資する第三セクター、エコ・ワールドくず
まき風力発電所の400kWの発電機が3基ある。1999年6月に稼働。
1000mの山間高冷地での商業用発電の日本初のケースだった。トラブルが
多く、稼働率はそれほど高くないという。上外川(かみそでがわ)高原では、J
パワー(電源開発)の1750kWの風力発電機が2003年12月から12基
稼働している。年間想定発電量は前者が約200万kWh、後者が約5400
万kWh(稼働率は約29%ときわめて高い)。合計5600万kWhは、1世
帯あたりの年間の電力需要を3500kWhとすると、1万6000世帯分の
需要に相当する。一般家庭での電力需要でいうと、町の全世帯数の5.5倍の
電力需要をみたしうるだけの設備量である。固定資産税は双方で3300万円。
町全体の固定資産税収入が3億円というから、その11%は風力発電機が稼い
でいることになる。
 大規模な風力発電を行うには、風況データと高圧送電線とアクセス道路が必
要だが、幸いなことに、1975年から北上山地で大規模酪農開発が行われた
際に、これらが基本的に準備されることになったという。
 2000kWの風力発電機25基づつ2サイトを建設しようという計画はあ
るが、2003年4月から施行された新エネルギー特別措置法によるくじ引き
がここでも足枷となり、計画の実現を阻んでいる。

■多彩な自然エネルギー事情
 家畜の糞尿から電気と熱を取り出す畜ふんバイオマス・システム、木質バイ
オマスガス化発電設備、ペレットボイラー、冷暖房を地中熱で賄うゼロエネル
ギー住宅など、町に設置された自然エネルギー施設の種類は多い。町が紹介し
ている自然エネルギー施設は、16箇所にも及ぶ。経産省「新エネ百選」(20
09年4月)にも選ばれた。
http://www.town.kuzumaki.iwate.jp/images/library/File/エネルギーマップH21_3_1.pdf
 基盤にあるのは、第三セクター葛巻畜産開発公社による酪農事業である。町
内・関東方面の酪農家から生後3ヶ月から6ヶ月までの雌の仔牛を2年間預か
り、妊娠牛で返す事業を行っている。預かり料は1日1頭あたり500円。
2000頭を預かっているから、これだけで1日100万円、年間で3億65
00万円の安定的な収入になる。
 酪農をもとに、ヤマブドウを使ったワイン醸造、自然エネルギーによる地域
づくりへと展開してきた。風力発電で町が有名になることによって、酪農やワ
イン醸造にもイメージを高め、需要を拡大するプラスの波及効果がある。「北緯
40度ミルクとワインとクリーンエネルギーの町」が町のキャッチフレーズで
ある。
 東京豊洲のららポート豊洲内に、「キッザニア東京」という子どもたちが本物
そっくりのユニホームなどを着て職業体験できるテーマパークがある。5月
26日からは、葛巻町森林組合による、葛巻町のナラをつかった枝打ち体験パ
ビリオンの常設出展も始まった(同森林組合が参加するNPO法人・オフィス
町内会による出展)。一次産業の出展は初めてである(2010年5月21日付
岩手日報)。

■市民・地元女性によるプロジェクトも
 これらは町主導のプロジェクトだが、吉成信夫氏らによる分校の廃校をリニ
ューアルしたエコ・スクール「森と風のがっこう」のような市民的なプロジェ
クトや、地元の女性による、水車で回す石臼で挽いた地元産のそば粉を使った
農家レストラン「森のそば屋」など、魅力的な取り組みが多い。
「森と風の学校」
http://www5d.biglobe.ne.jp/~morikaze/
「森のそば屋」
http://www.pref.iwate.jp/~hp020102/morinosobaya/index.html

■六ヶ所村のもう一つの可能性
 葛巻町を移動し、高原を見下ろしながら思うのは、この町と対照的な、むつ
小川原開発と核燃料サイクル施設に翻弄され続けてきた青森県六ヶ所村のあり
ようである。両者に部分的に共通する本州離れした高原状の景観は、内発的発
展という、ありえたかもしれない、もう一つの六ヶ所村の可能性を想起させる。

                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)
3.青森エネルギー紀行(8)「W杯と津軽半島で感じたこと」
                     森治文(朝日新聞青森総局次長)

 いきなり私事で恐縮だが、6月後半から7月にかけて、やたらとせわしない。
参議院選挙の報道が本格化し、また、弊紙主催の高校野球地方大会の準備も並
行して進めるのは業務だから致し方ないとして、もう一つ、サッカー狂として
は4年に1度のW杯(ワールドカップ)がおのれの首を絞めている。
 開催国の南アフリカとは時差7時間。1日の仕事が片づくころから試合が始
まり、好ゲームとなれば、夜中に起き出し、未明のテレビ中継に釘付けという
ことにもなってしまう。あ~やれやれ。困った「趣味」だが、テレビを長時間
見続けているうちに、ピッチを囲むスポンサー企業の広告でソニーやコカコー
ラなどと並んで、あまり見慣れない名称を見つけた。Yingliとある。
 どんな企業かと調べてみたら、「英利」という中国の太陽光発電メーカーだっ
た。そう言えば4年前のW杯は開催国がドイツだっただけに、「環境にやさしい
イベント」を売りに、「カーボンオフセット」が大はやりだった。日本が試合を
したカイザースラウンテルンのスタジアムの屋根も太陽光パネルで覆われ、会
場の電気をまかなっていた。その太陽光発電のメーカーが実は英利だった。そ
れから4年、大枚をはたいてW杯大会の公式スポンサーにまで成長したことに、
世界の潮流がうかがえる。
 さて、青森である。先日、青森市内から約2時間、津軽半島の先端、竜飛崎
まで文字通り車を飛ばした。その日は恐ろしく風がなく、先を急ぐ国道の右手
に見える陸奥湾は波もほとんど静かで鏡のよう。竜飛崎も「べた凪」状態の絶
好の観光日和だった。
 しかし、平均風速毎秒8メートル、竜も飛ばされるというその地には「竜飛
崎ウインドパーク」という風車群がかつてあった。先端から数百メートル離れ
た山中に東北電力が92年以降、11基を立てて実証実験に使った場所のこと
である。つまりは、それぐらい実は風況に恵まれた地でもあるということだ。
しかし今では実験の役目を終えたということですべて撤去され、これとは別に、
「ホテル竜飛」という突端にある観光ホテルが、ホテルで使う電気の一部を相
殺するかのように03年から稼働させた750キロワットの風車1基だけがぽ
つんと孤立するだけだ。
 下北半島に林立する風車とくらべて、風では見劣りしないのに寂しい限りな
のだが、ようやく新たな胎動の芽が出始めた。地元の外ケ浜町が出資した第三
セクター「津軽半島エコエネ」による風車が2基立つのだ。ホテル竜飛の風車
のすぐそばにあり、この地を訪れた先日は来年2月の稼働めざして、土地を平
らにならすためのショベルカーがあった。
 青森にとって風力発電を専業にする地場産業の誕生である。2基で計
3350キロワットの出力があり、計画している年間発電量は1216万キロ
ワット時。13年で初期投資を回収する算段という。
 中央の大手風力発電事業者が進出してきても地元に落ちるカネは固定資産税
と土地の賃貸料ぐらい。そうした地位に甘んじてきた青森がようやく「目覚め
た」。以前からこのコラムでも繰り返してきたように、自らの資源を有効活用す
る取り組みはもっともっと広がるべきだと思う。
 ただ、この「地場産業」もウインドパークであった変電設備などを譲渡する
契約を東北電力と結び、また、同電力に発電価値はすべて買ってもらうという
前提があってこそ、成立した。こうした「特約」抜きには現行制度では、拡大
はおいそれとはいかないだろう。
 世界のビッグイベントのスポンサーに新興国の太陽光発電メーカーが名乗り
出るという地球規模の流れと、日本の最も風況に恵まれた地域で風力の地場産
業が産声を上げたばかりという、この「落差」。竜飛崎に風車が林立するのを見
る日はいつのことだろう。
 
 ところで、六ヶ所村の再処理工場について書いた前回のこの欄で、高レベル
放射性廃液の入った炉内に天井からはがれ落ちたれんが片を回収する作業が困
難を極めており、その様子をまるで目をつぶった「UFOキャッチャーゲーム」
に例え、「廃炉」にもつながりかねない危機と指摘した。が、その後、メルマガ
発行後の6月17日に無事回収されたと日本原燃が発表した。れんがを取り出
す器具の改良を重ね、回収に成功した方々の努力には素直に敬意を表したいと
思う。
 ただ、れんが片の回収はいわば、核燃サイクルの「ゴール」を考えれば、自
らのミスでボールを相手に奪われ、あわや失点という場面を何とかクリアした
に過ぎない。ミスを重ねての防戦一方でシュートを許さないのは「健闘」かも
しれないが、今の戦いぶりでは得点はまだ遠いという状況に変わりはないとい
う気がする。

                     森治文(朝日新聞青森総局次長)
4.世界風力エネルギー会議レポート
        古屋将太(Aalborg University PhD student/ISEP fellow)

前回の欧州風力エネルギー会議に続き、今回は6月15~17日にトルコのイ
スタンブールで行われた世界風力エネルギー会議に参加した様子をお伝えしま
す。今回は、国際レベルの自然エネルギー開発の議論と地域レベルの自然エネ
ルギー開発の議論の2点に注目してきました。

■GET FiT Program
"Symphony of the Renewables session"では、国際再生可能エネルギー機構(I
RENA)事務局長 Helene Pelosse、世界風力エネルギー協会(WWEA)事
務局長 Stefan Gsanger、国際水力発電協会(IHA)事務局長 Richard Taylor、
国際太陽エネルギー協会(ISES)会長 Dave Renne、世界バイオエネルギー
協会(WBA)事務局長Karin Haaraを含む、国際レベルで自然エネルギー推
進に取り組む主要な団体が登壇し、それぞれの自然エネルギー技術の普及の進
捗が報告されました。
それに引き続き、"Towards a global feed-in tariff program session"では、
ドイツ銀行持続可能な投資 主任アナリストSilvia Krelbiehlから、4月に発
表された「GET FiT Program(Global Energy Transfer Feed-in Tariffs for
Developing Countries)」の提案についてのプレゼンテーションがありました。
このプログラムは、固定価格制を通じて国際的な支援基金を着実に途上国の自
然エネルギー導入につなげることを想定し、「地域プロジェクトへの直接投資」
「リスク緩和戦略」「技術支援」などを分析した上で、スキームを提示していま
した。ディスカッションでは、それぞれの国で異なる政策・制度構造とどのよ
うに調整するのか、また、PPP(Public-Private Partnership)によって行
うとしてるがIRENAや国際自然エネルギー同盟(REN Alliance※)などの
機関とはどのような関係で行っていくのかなどの質問が続出しました。GET FiT
Progamは、現在ドラフト段階のため、こうした議論を通じて今後より精緻化さ
れて実行に移されることが期待されます。

※ REN Alliance:WWEA、IHA、ISES、WBAに国際地熱協会(IG
A)を加えた5団体がパートナーとして組んだ組織。これまでに気候変動・自
然エネルギー政策や持続可能な発展に関する主な国際会議で自然エネルギー促
進の声明を発表しています。

■Community Power Workshop
国際レベルの議論が行われる一方で、地域レベルの取り組みの経験を共有し、
地域にとってより良い自然エネルギー普及のあり方を模索する"Community
Power Workshop"も開催されました。ワークショップでは次のような事例が報告
されました。

-ドイツ・ダルデスハイムの100%自然エネルギー
-キューバの地域プロジェクト開発
-デンマーク・ティステッドの風力とCHP
-カナダ・オンタリオ州のグリーンエネルギー法
-アメリカ・州レベルの政策動向

これらの中でもカナダ・オンタリオ州のグリーンエネルギー法の事例は、さま
ざまな地域のステークホルダーとの地道なコミュニケーションと戦略的なプロ
セスの構築によって州レベルの固定価格制を実現しており、地方自治体レベル
の自然エネルギー政策形成の事例として重要な示唆を含んでいました。
そして、これら世界の事例に混じって私も日本の市民風車や地域エネルギー事
業の経験を報告してきました。会議全体の進行が遅れたため、ディスカッショ
ンの時間がまったくとれず、「なんらかの形でCommunity Powerの定義を模索す
る」というワークショップの当初の目的まで達することはできませんでしたが、
暫定的には「地域のオーナーシップによって経済的な利益が地域に分配される
こと」が各事例を通じた共通点として浮かび上がりました。

国際レベルでは制度・資金・技術に関する具体的な支援策の議論が進み、地域
レベルではそれらを実際に社会に組み込んでいく方法の議論が進んでいます。
こうした2つの議論の全体像を理解し、日本の国・地域がそれぞれの領域でど
のような貢献ができるのかを考え、実践し、このような国際会議でフィードバ
ックしていくことが重要なのだと思いました。

■参考URL
World Wind Energy Conference 2010
http://www.wwec2010.com/

REN Alliance
http://www.ren-alliance.org/

GET FiT Program
https://www.dws-investments.com/EN/docs/insight/GET_FIT_Program.pdf

Ontario Sustainable Energy Association
http://www.ontario-sea.org/

         古屋将太(Aalborg University PhD student/ISEP fellow
5.「ベルリンの風」第1回─ベルリン自由大学環境政策研究所
                       山下紀明(ISEP研究員)

 6月からのベルリンは、サッカーワールドカップ(W杯)で持ち切りです。
ほとんどのレストランやカフェにテレビが設置され、多くの人が試合を楽しん
でいます。ドイツの試合がある日には黒、赤、金のドイツカラーに身を包んだ
人々が街を行き来し、ファン・マイレ(Fanmeile)と呼ばれるパブリックビュ
ーイングでは試合展開に大歓声と大絶叫。点が入るとまさに狂喜乱舞で、飲み
かけのビールも宙を舞います。ドイツが快勝した日には、帰りの電車内や駅で
も応援歌を歌ったりでこれまた大騒ぎ。一方でニュースでは政治や経済の話題
が少なくなり、新大統領の誕生という一大イベントも霞んでしまっているよう
です。

 そんな6月のベルリンで、私も同級生達とW杯を楽しみつつも、諸々の手続
きを済ませ無事にベルリン自由大学(FU:発音は「エフ・ウ─」)政治・社会
科学の博士候補生としての登録を終えました。大学の図書館や学内用インター
ネットでのデータベース検索等も可能となり、いよいよ本格的な勉強の為の環
境が整ったところです。そこで今回は、私が主に滞在する環境政策研究所(F
FU:「エフ・エフ・ウ─」)について紹介します。

 FFU設立に大きく貢献した初代所長は「成功した環境政策 エコロジー的成
長の条件」で有名なマルティン・イェニッケ氏(Martin Jaenicke)。現在の所
長はミランダ・A・シュラーズ氏(Miranda A. Schreurs)であり、私の指導
教官でもあります。米国出身のシュラーズ氏は、「地球環境問題の比較政治学─
日本・ドイツ・アメリカ」を書いた著名な比較政治学者であり、英語、日本語、
ドイツ語を自在に操ることも彼女の強みです。また自然エネルギー研究で著名
なルッツ・メッツ氏(Lutz Mez)が長く活動していることから世界でも有数の
研究拠点となっています。
 FFUでの研究活動の特徴的な仕組みとして、コロキウム(Kolloquium 英
語ではColloquium)があります。毎週水曜日の18時から、一人が研究テーマ
の構想や進捗状況について45分程度のプレゼンを行い、1時間ほど全員でデ
ィスカッションを行います。ただし、日本のゼミのような堅い雰囲気ではなく、
軽食と飲み物を用意し自由な雰囲気で行うサロンのようです。これまで私が参
加したコロキウムでの発表テーマは下記です(※()内は筆者の補足)。

 1.「韓国とドイツにおける自然エネルギー政治」(特に風力発電の社会的合
意形成について)
 2.「REDD(森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減)に関するUN
FCCC(国連気候変動枠組み条約)交渉におけるEUのアクター能力の分析」
 3.「省エネ証書 政策の選択と設計における専門家の知識の役割」
 4.「自然エネルギーイノベーションの政治的誘因 地熱発電開発の過程」

 これらはISEPでの研究や活動と重なる議論も多いため、双方への有意義
な情報提供を行えると確信しました。

 博士課程の研究プロジェクトは長く、紆余曲折があるものです。コロキウム
でも、そうした悩みがしばしば投げかけられます。その際にミランダ氏が常に
問うのは、「What is your puzzle?」(何があなたにとっての謎なのか?)です。
その謎は時としてとてつもなく単純であってよい。例えば、なぜドイツでは地
熱発電が進まないのか。次にその謎が社会的に重要な問題である(Is it
relevant?)かが問われます。重要であるからこそ研究に取り組む価値があり、
その成果が社会にも貢献するものとなるということです。その謎を適切な研究
設問に洗練させ、理論と方法論をもって仮説を検証していく。これが博士課程
でなすべきことであり、研究過程で行き詰まったときに、理論や方法論を付け
替えることに傾きがちですが、その端緒であるpuzzleについて常に心に刻んで
おかねばならないということでしょう。私自身も今、「東京のような大都市の先
進的な気候変動政策はどれほどの意義と重要性を持ちうるのか?」という私に
とってのPuzzleを改めて確認しています。

 FFUでの学びと人々との出会いはこれから10年、20年と経つにつれ、
ますます重要になっていくことでしょう。ドイツに居る期間は他の学生の半分
以下ですが、彼らと切磋琢磨しつつ、社会に貢献できる研究に仕上げていくつ
もりです。

FFUウェブサイト(英語サイト)
http://www.polsoz.fu-berlin.de/en/polwiss/forschung/systeme/ffu/index.html

                      山下紀明(ISEP研究員)
6.映画「ミツバチの羽音と地球の回転」
       ─上関原発に反対する祝島の人々が気づかせる本当の幸せ
                       竹村英明(ISEP顧問)

・「ハート形」の島
 「ミツバチの羽音と地球の回転」は、瀬戸内海の西、山口県の南端に中国電力
が建設を予定している上関原発と、それが破壊する貴重な自然、生態系、漁業、
そして原発建設に反対する人々の暮らしをそのまま取材したドキュメンタリー
である。
 建設予定地は瀬戸内海の生態系がほぼここだけ残されているホットスポット。
魚介類、海藻、昆虫そして植物も絶滅危惧種のオンパレード。スナメリの貴重
な生息域でもある。沖縄の普天間基地移設が予定される辺野古のジュゴンと共
に上関・長島の海のスナメリも、日本の自然にこれ以上人間が手を入れぬよう、
静かに主張している。
 予定地の対岸には小さな島がある。空から見るとハート形のその島は「祝島」
というめでたい名前をしている。漁業と農業だけで生きている島である。周辺
の海は魚介類が豊富で、島はその加工品を全国に配送している。島の漁協は漁
業権を売っていない。5億4000万円という漁業保証金も突き返し、漁場を
守ろうとしている。

 原発の計画が持ち上がったのは28年前。2基270万kWという巨大な発
電所はバブルに向かう前の当時は「現実的」だったかもしれないが、電力需要が
伸び悩む現在では必要性は疑わしい。公式な数字とは別に裏費用を含めた建設
費用は1兆円を超えるだろうし、中国電力に取って負担でしかないと思われる。
なぜこんな愚かなことが続けられているのだろうと、改めて考えさせてくれる
映画である。

・原発は温暖化対策か
 中国電力だけではない。この愚かな計画は、山口県知事が埋め立てを許可し
ないと決断すれば止められる。が、知事は祝島の漁民の気持ちはわかると言い
つつ埋め立てを許可。それからは埋め立て工事のための強引な海洋調査が、原
子炉設置許可が出ていないにもかかわらず、はじめられようとしている。
 原子炉設置許可を出すのは資源エネルギー庁。計画の必要なしと言えば止め
られるのだが、エネルギー政策基本法などの政策でむしろ強要している。いま
都合良く使われているのが「地球温暖化」である。鳩山元総理の二酸化炭素削減
方針が原発推進の大号令に使われている。資源エネルギー庁は今後、「温暖化対
策」として2030年までに14基の原発を増設するのだという。
 地球温暖化は2030年まで止まっているわけではない。何もしないで、こ
れから10年もかけて原発をつくっているうちに状況は決定的に悪化するだろ
う。14基にかかる費用は周辺工事を含めて1基5000億円と見積れば、総
額7兆円を超える。自然エネルギーにつぎ込んで、2メガの風車が2億円で建
設できるようにすれば3万5000本も建つ。1基の年間発電量を控え目に
400万kWhとすれば、総発電量は1400億kWh。新設原発の年間発電
量はせいぜい90億kWh(稼働率80%以上)で1260億kWhにしかな
らない。本気になれば、風車の方が数年で実現できることだが。
 風車だけではなく、小水力や地熱、バイオマスに太陽光と7兆円を投資すべ
き先はたくさんある。映画はスウェーデンの取材も交えながら、原発ではない
エネルギーの解決先をきちんと示してくれている。
 仮に14基がちゃんと建設できても、日本は活断層だらけの国である。直下
型地震に見舞われると柏崎刈羽原発のようにほぼ使用不能になる。再稼動でき
てもそれまでに何年もかかる。その間は石油に頼り二酸化炭素を倍加させる。
地震は必ず起こる。それを前提にすると原発は必ず二酸化炭素を増やす。どう
してそのことに気づかないのだろう。

・幸せの新しい尺度を教えられる
 映画は山戸孝くんという若い青年が、祝島に戻り暮らしはじめるところから
はじまる。孝くんは島の原発反対運動の中心である山戸貞夫さんの息子だ。で
も反対運動に魅力を感じず、島を出て働く。島の生活は漁業と農業だが、ひと
たび抗議行動や選挙などになると、それを中心に生活が回る。島の暮らしは反
対運動そのものなのだ。
 若者がそんな暮らしに嫌気を感じるのは当然。父親も反対運動を強制せず、
子供の生きたいように生きて良いと願った。そして島を離れて10数年。孝く
んは結婚相手を連れて島に戻る。外から客観的に「原発ハンタイ運動の島」を眺
めながら、自分が生きて行く場所は「この島」だと悟った。
 島に仕事はない。いまさら漁業を担うたくましさはない。島のおばちゃんた
ちがはじめた海産物の通販の仕事を、得意のパソコンを操りながら手伝いはじ
める。そして子供が生まれ、親子3人が暮らすにはギリギリの収入で、それで
もとても自信を持って力強く生きている。奥さんのお腹には二人目の子ができ
た。孝くんに迷いはない。
 孝くん以外にも、大学の先生を辞めて島に戻り養豚をはじめた人など、何人
かのUターンした人々が紹介される。養豚の豚は荒れ地の開墾もしてくれる。
この方の親は原発推進派であったという。親が亡くなり、その畑を耕しに「原
発ハンタイの島」に戻った。
 反対運動28年という月日は長い。山戸貞夫さんのように人生の大半を反対
運動の中で生きている皆さんが大勢だ。反対と賛成で島が二分され、日常もお
祭りなどの祝い事もズタズタにされたことも経験している。それでも、この徹
底的に闘う漁師さんやおばちゃんたちの姿に、生きることが抵抗というあっけ
らかんとした明るさ、楽しさ、真の自立というものすごさを感じる。だからこ
そ、島に戻る人が生まれはじめているのだろう。
 その人たちに向かって「もう皆さんも年寄りばかりだ。跡継ぎもいないでし
ょう。原発をつくれば皆さんの暮らしも良くなるんですよ。」と、埋め立てのた
めの測量を強行する船上から呼びかける(おそらく人の良い)中国電力社員の
「頑迷な古い尺度」との落差に、一種爽快な滑稽さを見た。そんなすごい映画
だった。

以下に東京周辺での上映会

日時:2010年7月24日(土曜日)
場所:ベルブホール(多摩市立永山公民館) 多摩市永山1─5
042─337-6661
TAMA映画フォーラム特別上映会「ミツバチの羽音と地球の回転」
http://www.tamaeiga.org/
参加費:前売・インターネット予約1000円
    当日:大人1200円 当日こども500円
主催:TAMA映画フォーラム実行委員会 *詳細が決まり次第、随時お知らせ。
問合せ先:http://www.tamaeiga.org/modules/contact/

日時:2010年7月25日(日曜日)
 昼の部:12時30分 開演(12時受付)、夜の部:17時開演(16時30分受付)
 各回上映後、トークセッション!
会場:座・高円寺(B2F/第2ホール)JR総武線「高円寺」駅北口徒歩5分
「ミツバチの羽音と地球の回転」上映&スペシャルトークセッション!in座 高円寺
http://www.connectedcafe.org/
ゲスト:藤村康之(非電化工房)、Yae(半農半歌手)、中村隆市(ウィンドファーム代表)、鎌仲ひとみ監督
参加費:予約1500円、当日1800円(未就学児は無料)
※ 地域通貨『ナマケ』『アースデイマネー』300円分使えます。
主催:『ミツバチの羽音と地球の回転』7.25上映実行委員会
共催:ナマケモノ倶楽部、スロービジネススクール、種まき大作戦実行委員会、Connected Cafe事務局、自治市民'93
問い合せ先:「ミツバチの羽音と地球の回転」7.25上映実行委員会
要予約:メールにて連絡:mitsubachi0725@gmail.com

                       竹村英明(ISEP顧問)
7.事務局長から見たISEP
                      春増知(ISEP事務局長)

 ISEP事務局長の春増です。1年半前に押しかけ女房ならぬ押しかけ事務
局長として強引に飯田さんを口説いてISEPに入りました。SEENの編集
長から「1年以上経ったのだから事務局長として何か書けば」と言われ「はて、
何を書けばいいのかな?」と考えた結果、読者の皆さんの普段の記事ではあま
りお目に届かないISEPの内部事情(?)ならぬ事務局長の雑感を書いてみ
たいと思います。
 この1年半を振り返ると、まずISEPの注目度や飯田所長のメディアへの
露出度が格段に高まっています。メディアからの取材以来、各方面からの講演
や執筆依頼が毎週のようにISEPの代表メールアドレスに届きます。この背
景には飯田さんの切れ味鋭い発言、提言があるのですが、世の中全体が気候変
動問題や自然エネルギーに大きな関心を持つようになってきた現われのひとつ
だと思います。勿論、ISEPの活動(意見表明や研究発表、シンポジウムや
イベントの開催、自治体との共同検討会、など)が社会の各方面から注目され
評価されてきた結果ではないかと思います。
 さてそのような活動を裏方として支えるのが事務局ですが、私の最重点目標
は自立的かつ自律的なISEPの組織運営が出来ることです。財政的にも、広
報や人材育成の面でも、日常の活動全てにおいて研究所のスタッフ(研究員、
研究フェローやインターン)が効率よく気持ちよく協働して活動が出来る仕組
みと雰囲気を作り維持すること、と言えるでしょう。
 私が40年近く勤めた外資系の会社も比較的個人の考えや行動を尊重する組
織風土はありましたが、ISEPのほうがあるかに個人と組織のダイナミズム
がうまくかみ合っていると感じます。勿論ISEPはパートタイムのスタッフ
やインターンを入れても20人程度の組織なので当然かもしれませんが。それ
でも課題はたくさんあります。
 そのうちの1つは会員をはじめISEPの活動を物心両面で支援していただ
いている人たちとのコミュニケーションです。このSEENもコミュニケーシ
ョンの手段の1つですが、もっと双方向の「対話」が必要ではないかと感じて
います。また発信するコンテンツの質と発信の頻度をきちんと維持していくこ
とも重要だと考えています。そしてコミュニケーションの先にはより多くの支
援者を獲得するマーケティングの課題があります。
 このたび昨年秋からJREPP(日本再生可能エネルギー政策プラットフォ
ーム)の皆さんと取り組んできた「自然エネルギー白書」が完成しました。自
然エネルギーの現状と動向について政策も含めて書かれた日本で始めての本で
す。SEENでも「自然エネルギー白書」を紹介する記事が掲載されますが、
SEENの読者の皆さんも是非お求め頂いて読んで下さい。
 これからも裏方から見たISEPの姿をもう少し具体的にお伝えして以降と
考えています。読者の方々の反応があれば、ですが。私の雑文だけではなく、
SEENの他の記事についてもご感想やご意見をinfo02@isep.or.jpまで是非
お寄せいただきたいと思います。お待ちしています。

                      春増知(ISEP事務局長)
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