上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
1.風発:環境エネルギー革命のグランドデザインを
                       飯田哲也(ISEP所長)

 環境エネルギー分野が賑やかになってきた。まずは、金融危機・気候の危機・
エネルギー危機という「3つの危機」に対する処方箋として期待されるグリー
ン・ニューディールだ。就任後、1ヶ月も経たないうちにグリーン・ニューディ
ール政策を議会に提出したオバマ米政権に続いて、日本もようやく「日本版グ
リーン・ニューディール」を取りまとめた。
 そのオバマのグリーン・ニューディールの目玉の一つであるスマートグリッ
ドも、にわかに脚光を浴びている。スマートグリッドとは、インターネットな
ど情報通信技術と太陽光・蓄電池などの分散型エネルギー技術を活用して、電
力ネットワークシステムを革新するもので、大きな構造変革の芽として期待さ
れているものだ。
 2月に経済産業省が突然打ち出したフィードインタリフも話題を集めている。
太陽光発電からの余った電気を電気料金の2倍で買い取るという提案で、ドイ
ツなどで大成功してきた制度だ。7年前に、大論争の末に異なる制度を選んだ
ときの因縁から、経済産業省がずっと議論すら避けてきた制度なのだが、かつ
ては普及も生産も世界一を誇った日本の太陽光発電の退潮がはっきりと誰の目
にも見えてきた結果、導入に踏み切らざるを得なくなったものだ。
 そして、官邸に設置された検討会で議論されている中期目標。京都議定書の
「次」の目標を定めるものだが、議論は真っ二つに割れている。「京都の失敗を
繰り返さない」よう、低めの目標水準で頑張る経済界と経産省に対して、国際
的に求められている最低限の水準を目指す環境派と環境省。しかし、「科学的」
と言いながら、実は旧い経済モデルを前提とする現実味のないエネルギー経済
モデルのパラメータサーベイを提示しているだけであり、とても国家戦略の議
論とは思えない。
 こうした全体を眺めてみると、それぞれがバラバラで、しかもその場限りの
ツギハギ的な対応に終始していることが気にかかる。フィードインタリフだけ
を見ても、従来の支援法の特例(太陽光発電のみ2倍の扱いをする)を残した
まま、今年から復活させた補助金も残し、地方自治体毎の補助金に期待しつつ
も、電力会社の自主的な余剰電力の買取を大前提としている。「部分最適」にす
らなっておらず、「局所最適」が継ぎ接ぎされた制度では、統一性がなく複雑極
まりない上に、今後の見通しも不安定だ。
 日本の環境エネルギー政策および環境エネルギー市場は、このようなツギハ
ギではまったく対応できないほど、制度疲労を起こし、時代遅れとなっている。
今日の独占的で中央集中型のエネルギー市場構造は、インターネットどころか
コンピュータもほとんど見られなかった時代に、重工業中心の高度成長期には
大きな役割を果たしたことは確かだ。
 しかし今や、情報通信技術が高度に発達してきたことに加え、経済のあり方
も、金融・財政の分離や郵政民営化・4分社化に見られるように、既得的な独
占が認められてきた時代から、規制緩和一辺倒の時代を経て、役割に応じた経
済主体の分化と説明責任の時代へと展開してきている。エネルギー市場、なか
んずく電力市場における経済主体の分化は、あらためて議論されてもよいだろ
う。
 また、長く重厚長大の経済産業に軸足を置いてきたエネルギー政策のあり方
も、地球温暖化問題と分散型の自然エネルギーやエネルギー効率化を中心とす
る環境エネルギー政策へと、大きく転換するグランドデザインが必要ではない
か。現在は100年に1度の危機だが、同時にまったく新しい産業と新しいエ
ネルギー市場構造が誕生しつつある「100年に一度のチャンス」でもあるの
だから。

                       飯田哲也(ISEP所長)


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
スポンサーサイト
2.寄稿:地球温暖化の中期目標~ナンセンスを見抜き、日本人の英知を結集しよう
               平田仁子(気候ネットワーク東京事務所長)

 現在、国内で、地球温暖化の中期目標の議論が盛んだ。
 温室効果ガスを“2050年に世界で半減”するといっても、2050年
に向かって今から大胆な行動に取りかかって削減を進めていく道もあれば、革
新的技術に期待して当面はゆるやかに行動し、2030、40年頃から急激に
削減するという道もありうる。また自国はあまり何もせず他国の努力に委ねる
道だって描ける。しかし、対策を先延ばしにするほど累積での排出量は多くな
り、また、他国に依存するほど国内の低炭素社会づくりは遅れる。長期の目標
に至る、日本としての削減経路を直線的に引いていくことが気候リスクを小さ
く抑えるために必要となる。

 政府の中期目標検討委員会は4月、2020年の中期目標の6つの選択肢と
して「+4%」から「-25%」までの幅で示した。5月16日まで国民の意
見を聞いた後、麻生首相が6月中にも目標を定めるという。
 しかし、このプロセスはナンセンスなことばかりだ。
 例えて挙げれば、京都議定書より弱い目標の選択肢を平然と入れ込んでいる
こと、鉄の生産量や自動車利用の増加を前提にしていること、既存の経済構造・
エネルギー供給構造はいじらないで、個人の活動規制などをちらつかせ、経済
への悪影響を強調していること、「限界削減費用」という指標を決め打ち的に使
用して日本の削減を小さくおさめ、他国で多く削減してもらおうとしているこ
と。そうして、既存のエネルギー多消費経済社会の延長にしがみついて作られ
た結果、野心的な目標ほど日本経済に不都合であるように描かれた。
 この歪んだ土台でつくられた結果から一つを選びなさい、とは、国民もずい
ぶん軽んじられたものである。

 これらの整理の中に、政府自らが呼びかける「低炭素革命」の思想は見られ
ない。
 革命なら革命にふさわしい、新しい時代を築く大胆な発想と、先見性を持っ
た思い切った決断と行動が備わっていいはずだ。たとえば2020年までの期
間に、低炭素型の産業構造への変革へ向けた思い切った産業政策をとったり、
クルマ依存を大きく減らすまちづくりを仕掛けたり、地域分散型のエネルギー
システムへの抜本転換を位置付けることもできたはずだ。しかし、野心的な目
標に向かって低炭素“革命”を起こす、そんな2020年の姿は、今回は描か
れなかった。

 NGOは2020年に1990年比30%削減を提案している。この目標は、
IPCCが示す科学が気温上昇のリスクを小さく抑えるために必要だとするレ
ベルに最も忠実に従ったもの、すなわち、将来世代と生態系のリスクに対する
現代世代としての最も責任ある行動の提起である。
 一方、今議論されているのは、どう気候を守るかではなく、いくらまでお金
を出すかばかり。さみしい限りだ。お金がかかるから出来ない、ではなく、問
題解決にあたって直面する困難や負担をどう乗り越えるかの知恵を出し合うべ
きだろう。
 今、国民に意見を求められているこの課題に対し、私たちは、目の前に示さ
れたナンセンスを見抜く力を持ち、「低炭素革命」にふさわしい行動に向けた決
意を示すことが求められている。
 一部の利益団体の動員による心ない主張は論外として、それ以外の真摯な意
見の中に、日本人の英知の結晶が見られることを望みたい。

               平田仁子(気候ネットワーク東京事務所長)


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
3.COP15・コペンハーゲン会議へのリレー(2)
   「COP15に向けて、日本政府はリーダーシップを」
                      牛山泉(足利工業大学学長)

 地球温暖化対策について、本来であれば日本政府は強力なリーダーシップを
発揮すべきだと思うのですが、まったくできていません。例えば、国内排出権
取引制度についても、EUでは事業者に参加を義務付けていますが、日本では
参加も目標設定も自主的なものにとどまっています。
 日本は世界トップレベルの技術を持っているのであれば、世界をリードする
ことができますし、そのチャンスだと思うのです。しかし、むしろ逆の状況と
なっています。はっきり言って、恥ずかしいですね。
 日本はエネルギー自給率が先進国中で最も低い。ですから、資源がなくても
がんばっているという国の姿勢を見せていくべきです。
 それから中期目標については、政府として何%削減するのかを先に決めるべ
きです。厳しい目標を設定することで、わが国の環境技術が進んでいくと思い
ます。
 進化論を唱えたダーウィンはこんなことを言っています。「生き残ってきた生
物は、変化に対応できた生物である」と。世の中のニーズがどこに行こうとし
ているのかを見極めることで生き残っていきます。
 (グリーン・ニューディールに関しては)実は中国ですら、景気対策の予算
の4分の1が再生可能エネルギー開発です。また、韓国では2012年に向け
て、再生可能エネルギーの研究者として修士、博士合わせて1万5000人を
養成する方針です。韓国の企業の現代では大型の風力発電設備の製造に乗り出
しました。
 これまで、RPS制度によって再生可能エネルギーを電力会社に義務付けて
きましたが、目標値が低すぎて十分な開発が行われていません。RPS制度を
導入している英国では、2015年に14%という目標を設定しています。日本
とは1桁ちがっています。また、政府は固定価格買取制度の導入をようやく決
めましたが、これも太陽光発電のみです。風力や地熱、バイオマス、小水力と
いった多様な再生可能エネルギーがあるにもかかわらず、です。
 短期的に、日本がもっと積極的に開発しやすいのが、小水力発電です。日本
には3万本もの河川があり、年間1800mmという降雨があります。しかも、
最近は小型で設置しやすい水車も開発されました。新エネルギー財団ではハイ
ドロバレー計画に取組んでいます。
 風力発電は変動が大きいと言われています。しかし日本は気象の予測も発達
しています。アメダスが全国にこれほど設置されている国はありません。電力
会社が需要予測をするように、気象予測に基づいて太陽光や風力の発電量予測
も可能なのです。
 21世紀は環境の時代と言われています。その点、欧米のキリスト教文化で
は自然と人間は対立するものでしたが、東洋の文化は自然の中に人間がいると
いう思想です。したがって環境共生という意味からも、日本は環境の分野をリ
ードできるはずです。
 以前、大阪のコンピュータ会社では、社員が和歌山県の新宮市にある森林で
林業を手伝い、同時にリフレッシュするということを行ないました。このよう
に、都会の人を送り込み、自然と触れてもらうこと、地方と中央で人が交流す
るということが必要だと思います。
 こうした発想を取り込みながら、再生可能エネルギーを開発していったらい
かがでしょう。エネルギーの開発だけではなく、自然との触れ合いや人々の交
流があれば、経済性だけではなく、二酸化炭素排出削減と地域活性化というメ
リットが得られます。地方自治体は足元を見ながら、現実と結びつく計画を立
てていくことが必要でしょう。

                      牛山泉(足利工業大学学長)


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
4.(新連載)あおもりエネルギー紀行 第1回「これほどトラブルが多いとは。」
                   森 治文(朝日新聞青森総局次長)

 青森県六ケ所村の日本原燃・使用済み核燃料サイクル施設からは、排風機が
故障しただの、蒸気ボイラーが緊急停止しただの、といった「発表」がしょっ
ちゅう聞こえてくる。お恥ずかしいことだが、東京にいたときには気づかなか
った。全国ニュースにはならなくても、ローカルでは報道されていることがた
くさんあった。
 もちろん、それが直接重大な事故につながるとか思っていないし、いわゆる
フェールセーフとしての措置であることも理解している。また、どんな小さな
トラブルも情報も開示しなければ、国民の理解が得られなくなるという意識も
たしかに伝わってはくる。
 だが、こうした類の「ヒヤリ・はっと」が積み重ねられれば、いつしか大き
な問題が発生するのでは、という危惧を抱いてしまうのは素人の浅はかさか。
少なくとも東京のメディアには乗らなくても、青森の県民はいつもこうした情
報を耳にしながら生活している。もしかしたら、小さなトラブルは「耳たこ」
になってしまって何を聞いても驚かなくなってしまったのか、それとも圧倒的
なカネの力に、黙っているしかないのか……。
 それにしてもいくつものトラブルを抱え、少なくとも情報開示は進んできた
ようにみえるが、もっと素直になれないものかと思ったのが、4月30日にあ
った日本原燃の児島伊佐美社長の会見だった。
 相次ぐトラブルや5件もの保安規定違反の原因について、伝え聞くところで
は、「スケジュールをめぐる議論が現場へのプレッシャーになった」と話したと
いう。つまり、トラブルによって繰り返し延期をせざるを得なくなったことが、
これ以上延ばすわけにはいかないという焦りを生み、マニュアルの手順通りの
トラブル処理を怠り、手を抜いたということだ。だから、これからは安全を最
優先にするという。
 と言いながら、ガラス固化の不具合などで試運転の中断が長引き、5月再開、
8月に試運転終了というシナリオがだれが見ても崩れているのに、延期すると
いう話は「今は議論する時期にない」というのだ。
 それは、また延期に次ぐ延期を言い出せば再びプレッシャーが生じるという
配慮なのだろうか。でも、「安全最優先だから、屁の突っ張りみたいなスケジュ
ールは返上して、もっとゆっくりやりまっせ」と言った方が、現場の肩の荷が
下りると思うのだが、そうとは言えない事情の方が重いということなのか。
 青森県は、4月19日に鹿内博・新市長が誕生した。「核燃料廃棄物搬入阻止
実行委員会」の共同代表だった人である。市長選に出るにあたって、共同代表
を降り、市長として反核燃を訴えることはないというが、「反対の気持ちが薄れ
たわけでもない」「市民の安全のために言うことは言う」とする。
 だから、市長選で電力業界は相当、反鹿内票を集めるために動いたとあちこ
ちで話を聞いた。だが、5期20年務めた現職市長の評判が悪すぎたこともあ
って、最後はさじを投げたらしい。
 市に核燃施設があるわけではないが、何と言っても県庁所在地だ。核燃料リ
サイクルの今後に、その重みはきいてくるような気がする。市民が反核燃に一
票を投じたわけではなくても、意識はするだろう。

         ◇

 4月に東京から青森に赴任しました。原発だけでなく風力も全国一というエ
ネルギー集積地から月一回、みなさんに何かしら示唆に富むお話を提供できた
らと思っています。よろしくお願いします。

                   森 治文(朝日新聞青森総局次長)


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
6.シリーズ「自治体のエネルギー政策」(2)
  再生可能エネルギー10倍拡大に向けスタートアップ
                   ~横浜市の再生可能エネルギー政策
         田中信一郎(横浜市地球温暖化対策事業本部政策調査役)

 横浜市では、2008年1月に「横浜市脱温暖化行動方針(CO-DO30)」
を策定し、2025年度及び2050年度の削減目標を定めました。いずれも
2004年度を基準として、2025年度までに市民一人当たりの排出量を
30%以上、2050年までに同じく60%以上の削減を目指しています。
 これと合わせて、2025年度までに再生可能エネルギーの利用を10倍に
していくという目標も立てています。再エネ10倍化とは、2004年度の
1.7PJに対して2025年度にはおよそ17PJにしていくことです。
 これはどのようなことを意味するのでしょうか。シミュレーションをしたと
ころ、太陽エネルギーならば、戸建てで新築・既築を併せて1.4~1.8万
件程度、公共的施設は2025年に導入可能なすべての施設に導入するなどの
レベルを意味することが分かりました。
 これを実現するためには、固定価格買取制度などの強力な経済的手法、適切
な支援を前提とした導入義務付けなどの規制的手法、公共率先導入の加速化な
ど、高い導入ベースを実現する政策が必要となります。
 そこで、再エネ10倍拡大へのスタートアップとして、次の政策や制度を実
施していくことにしています。

〈固定価格買取制度の社会実験〉
 自治会町内会館に太陽光発電を設置し、市民への普及・PR拠点とするとと
もに、固定価格買取制度の社会実験を行います。これを踏まえて、国へ要望を
行うとともに、必要に応じて自ら制度化を検討していきます。

〈導入検討報告制度の実施〉
 2010年4月より、2000m2以上の新築建築物に対して、再エネの導
入を検討し、その結果を市に報告することを義務付けます。これにより、再エ
ネの導入機会が拡大すると想定しています。

〈情報提供義務の導入〉
 戸建て住宅を新築する市民に対しては、再エネの情報提供を行うこととしま
した。具体的には、住宅展示を行う事業者に再エネの情報提供を義務付けまし
た。

〈設置補助の拡大〉
 横浜市ではかねてより太陽光発電設備への設置補助を行っていましたが、
2009年度よりこれを大幅に拡大(2008年度:4000万円→2009年度:1億円)し、さらに対象を太陽熱利用システムにも広げました。

 なお、政策や制度、補助事業の詳細については、横浜市地球温暖化対策事業
本部のホームページをご覧ください。
 http://www.city.yokohama.jp/me/kankyou/ondan/

         田中信一郎(横浜市地球温暖化対策事業本部政策調査役)


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
5.シリーズ「自然エネルギーの現在」(1)
                  地熱発電に関する研究会始まる
       野田徹郎(日本地熱学会、産業技術総合研究所、
                    日鉄鉱コンサルタント株式会社)

 地熱発電は,国内に豊富な資源があり,電源の安定性や温暖化対策など環境
問題に対応していくためには,非常に重要な方式である。ところが,国内では,
八丈島の3000kWの発電所建設を最後に,10年間,企業ベースの新しい
発電所の建設が途絶えている。その原因は様々であるが,適切な政策が不在で
あったことも理由として大きい。
 昨今のエネルギー環境問題への関心の高まりと,それに対応する政策必要性
の認識の後押しにより,「地熱発電に関する研究会」(以下,地熱発電研究会)
が,資源エネルギー庁電力基盤整備課を事務局として設置されることとなり,
第1回が2008年12月1日に開催された。地熱発電に特化した政策に関連
した議論を行う公的な会合が持たれるようになったのは絶えて久しいことであ
る。
 地熱発電研究会には,関連産業界,学識経験者等のメンバーが集まり,京都
大学芦田譲名誉教授を座長として月1回のペースで,4月までをめどに開催さ
れる。地熱発電研究会の主題は,地熱発電の現状と課題の整理を行い,今後の
地熱発電の開発促進を図るための方策について検討を行うことであり,検討結
果は報告書としてまとめられる予定である。
 空白の10年間(ノーキャスト)から,フォアキャスト,やがてはバックキ
ャストへ向けての,最初のターニングポイントになることを期待している。

           野田徹郎(日本地熱学会、産業技術総合研究所、
                    日鉄鉱コンサルタント株式会社)


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
7.自治体環境エネルギー政策の最新動向
                      山下紀明(ISEP研究員)

 前回のSEENでは世界的な視点での自治体の環境エネルギー政策の最前線
を紹介しましたので、今回は昨年度にISEPが行った自治体環境エネルギー
政策の最新動向について紹介したいと思います。
 自治体における戦略的な気候変動政策とは何でしょうか?端的には、長期か
つ大幅な目標値を持ち、明確な未来像を示すコンセプトを掲げ、その実現に向
けての政策や仕組みをしっかりとパッケージで持つことと考えています。これ
は現状を延長するフォアキャスティングではなく、将来像から進むべき道を定
めるバックキャスティングの考え方に基づいていると言えるでしょう。
 今回の調査では最も基本的な二酸化炭素および自然エネルギーの目標値とそ
の内容などについて、全国都道府県および政令指定都市の動向を調査しました。
主な調査項目は次の5つです。(1)二酸化炭素排出削減目標 (2)自然エネ
ルギー目標値 (3)グリーン電力・熱証書についての取り組み (4)具体
的な温暖化対策・自然エネルギー普及政策 (5)温暖化対策推進主体と連携、
です。

 順に見ていきたいと思います。
(1)自治体の二酸化炭素削減目標値は着実に高まっています。これは環境エ
ネルギー政策への取組みが活発になっていることの表れでしょう。京都議定書
の目標値に合わせ、2010年前後に-6%前後に設定している自治体が大半
ですが、東京都や横浜市など一部の自治体が率先して長期の高い目標値を設定
しています。これは地球温暖化対策地域推進計画や実行計画の策定・改定や環
境モデル都市の申請などにより長期かつ大胆な目標値が検討されていることが
大きく影響していると考えられます。
(2)自然エネルギー導入の目標値も確実に高まっています。自然エネルギー
目標値の設定方法は様々であり、設備導入量、エネルギー生産量、分野ごとの
シェア、供給側と需要側などが主です。二酸化炭素排出削減目標と同じく
2010年前後の目標設定が多いのですが、東京都(2020年20%利用)
や佐賀県(2020年10%)など2桁のシェアの目標値を持つ自治体が見ら
れます。前回も紹介した通り、東京都は、ISEPが提唱してきた「需要プル」
の考え方に基づいた需要側の目標設定を行っており、他自治体でも同様の考え
方での記載が増えています。
(3)グリーン電力・熱証書を活用した支援制度の立上げが各地で行われ、独
自の先進的な制度が生まれています。各自治体で独自の先進的な環境エネルギ
ー政策の開発を進めるとともに自治体間での統一したスキームや連携が期待さ
れます。
 グリーン電力証書はイベント等への利用が中心ですが、さらに、公共施設へ
の一定割合のグリーン電力証書の調達義務付け、電力の競争入札時の加点項目、
太陽光発電の補助スキームとしての利用など新しい仕組みが開発されています。
また東京都ではISEPが概念開発してきたグリーン熱証書を都の政策の中で
実現し、ISEPとともに環境省やグリーンエネルギー認証センターなどに働
きかけ、制度構築に大きな役割を果たし、2009年度からの太陽熱支援制度
に利用しています。
(4)調査項目の中では太陽光発電設備への補助が最も一般的な自然エネルギ
ー普及政策です。温暖化対策計画書制度は創設・改定検討中のものを含め、採
用自治体が増加しています。新築建築物への自然エネルギー導入・省エネ計画
の策定義務はいくつかの自治体で導入・検討が進められています。
(5)では横浜市の温暖化対策事業本部のように連携・推進を担当する組織も
あり、これまで環境部署のみによる環境行政から、全庁的な取り組みが求めら
れることを体現していると言えます。
 これらの調査を通して、今後求められることとして、まず自治体間・地域間、
国との連携推進、政策連携が挙げられます。ISEPとしてもグリーンエネル
ギー購入フォーラムなどを立ち上げて自治体間の連携を推進しており、より一
層の自治体環境エネルギー政策研究の推進を行っていく予定です。さらにポー
タルサイトなどによる自治体の環境エネルギー政策に関する情報提供も有用と
考え、ポータルサイト「自治体グリーン政策の窓」を立ち上げました。
 これらの情報は別記事にて様子が紹介されている3月28日のシンポジウム
において報告を行い、「自治体グリーン政策の窓」でもご覧になれます。
 早速地球温暖化防止条例の一覧があれば非常に有用であるというご意見をい
ただいており、他にもこうしたデータが欲しい、あれば活用されるはずだ、と
いうご意見があればぜひお送りいただければ幸いです。
 ちなみに、前回のSEENを自分で読んでみたところ、あまりに堅苦しいの
で、今回はですます調にしてみました。

参考リンク
自治体グリーン政策の窓
http://www.climate-lg.jp/

                      山下紀明(ISEP研究員)


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
8.「「協創」と「連携」~自治体気候変動政策の新たな可能性~」
                     大戸航(ISEPインターン)

 2009年3月28日(土)、シンポジウム「自治体が主導する気候変動政策~「協創」と「連携」による実効的な仕組み作り~」がISEPの主催により
行われた。
 同シンポジウムは、部署の壁を越えて総合的に施策を創造し推進していく「協
創」と、お互いに良いものを取り入れて発展させていく「連携」をもとにした
自治体における気候変動政策を紹介するという主旨のもので、東京都、埼玉県、
神奈川県、川崎市、横浜市から環境行政の担当者が参集し、それぞれに報告、
討論を行った。
 シンポジウム冒頭の講演にて、ISEP所長の飯田は「気候変動政策におけ
る自治体の新しい役割」として、自治体による政策は、深く広く構造を変える
効果、すなわち「政策イノベーション効果」に力点を置く必要があると述べ、
変革の起点としての自治体の役割を強調した。
 パネル討論では、各自治体は共通して、 自治体内の縦割り行政による弊害を
軽減するために部署横断的な温暖化防止推進組織を設置し、部署間の連携の向
上に努めていると述べた。
 また、自治体の取り組みを促進する要因について、東京都環境局都市地球環
境部部長大野輝之氏は、ディーゼル規制等、他に先立って対策を打ってきた経
験の蓄積が、東京都の取り組みを活発化させたとした。「今始めれば、将来にも
埋め込まれる」。氏がこのように述べたことには、環境行政に好循環をもたらす
「率先行動」の重要性がよく表れている。
 さらに、横浜市地球温暖化対策事業本部田中信一郎氏は、地球温暖化という
前例のない問題に際して、自治体は「Try and Error」の姿勢で、積極的に取り
組んでいくことが重要であるとした。
 傍聴者との質疑応答では、自治体間、または国家と自治体の間での制度面に
おける連携不足の指摘がなされた。この指摘に対して、横浜・田中氏は「連携
していないようにみえるのはステージの違い」と応答し、またISEP飯田は
首都圏の自治体においては連携が進んでいる点を強調した。
 自治体気候変動政策の「協創」と「連携」への道は、徐々に開かれつつある。

                     大戸航(ISEPインターン)


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
9.瀬戸内発エコネットワーク懇談会が発足
           井筒耕平(備前グリーンエネルギー株式会社)

3月15日、瀬戸内海に浮かぶ犬島にて、「瀬戸内発エコネットワーク懇談会」
の設立総会とシンポジウムが82名を集めて行われました。

犬島は、人口50~60名程度の小さな島ですが、昨年春に財団法人直島福武
美術館財団が犬島アートプロジェクト「精錬所」の第1期工事として、インス
タレーションを中心とした現代アートの美術館を、銅の精練所の跡地に建てて
おり、既に現代アートの島として有名となった直島とともに、非常に注目の集
まっている島です。

当懇談会のメンバーは、岡山県、岡山市、岡山大学環境理工学部、中国四国農
政局、中国四国地方環境事務所、中国経済産業局という行政メンバーと、犬島
の地元企業・岡山化学工業株式会社、犬島再発見の会、財団法人直島福武美術
館財団、そして、われわれ備前グリーンエネルギー株式会社という構成です。
代表は、沖陽子岡山大学教授です。

意図としては、私の理解では、犬島を「場」として、いわゆる「環境」に関す
る調査研究、教育と、地域づくりなどを絡め、交流していこう、という意図だ
と考えます。3月15日はその設立日であり、渡航のためには定期船の利用が
必要であるにも関わらず、総勢82名の方が参加があり、非常に盛況でした。

今回、今や地域づくりには外せない「エネルギー」分野のプロとして、関係者
から声がかかりメンバーとして参加いたしました。

さて、今後の犬島ですが、「方向性」の面で岐路に立っています。犬島は、高齢
化が非常に高く、65歳でも十分若い世代です。そして、30年もすれば、人
口ゼロになるであろう島と考えられます。
「方向性」とは、これを問題とするかしないか、というシンプルかつ重要な2
つの方向性の議論が存在します。これは中山間地域にも全く同様に当てはまり
ます。

そして、何とかしようという方向性の中での、「この島を環境技術を結集した特
別な島にする」、または、「島民が持続可能な形で暮らしていける島」とするの
か。など、発信、地域活性化、地域沈静化など、さらなる方向性の分化の議論
も存在します。

私としては、まずは島民と語ることが大切であると考えます。いくら帰ってき
てほしいと外部の者が考えていても、「せっかく育てて都会へ出したのだから、
わしがおる間は帰ってくるな」という主張は、中山間地域にはよくあることで
す。

また、当日は「エネルギーを自給する」という概念について、お話しました。
「エネルギーを自給する」という話はみなさん初めてだったそうで、エネルギ
ーと環境、といえば、すぐに「太陽光!」「風力!」といった議論になりやすい
ですが、まずはエネルギーを身近に感じることが大切であり、そうなると、い
かに生態系から浮き上がった生活なんだ、ということに気づき、生態系で生き
ることの難しさを知るようになるのです。

犬島での新たな取り組みのスタートには、今後も関わっていきたいと考えてお
ります。

2010年に「瀬戸内国際芸術祭」を迎える瀬戸内海の島々。
今後にご注目ください。

               井筒耕平(備前グリーンエネルギー株式会社)


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
10.(連載)デンマーク・オールボーから(2)
     古屋将太(オールボー大学PhD student/ISEP海外インターン)

 Beyond Kyoto オーフス会議
今回は、3月5日・6日にオーフスで行われた会議「Beyond Kyoto: Addressing
the challenges of climate change」への参加から得られたデンマーク国内の
最新の動向をお伝えしたいと思います。
Beyond Kyoto: Addressing the challenges of climate change
http://www.klima.au.dk/dk/forside/konferencebeyondkyotoconferen/

■会議概要
このオーフス会議の目的は、12月にコペンハーゲンで開催されるCOP15
に向けての議論を活性化することであり、特に京都議定書以降の気候変動対策
の枠組みにアメリカおよび中国・インド等の新興国やアフリカ諸国がどのよう
に関与する可能性があるのかという点について、議論を深めることに力点が置
かれていました。
会議はオーフス大学を中心に、オーフス市、中央デンマーク開発フォーラム、
DONGやGRUNDFOS等のエネルギー企業、独立シンクタンクのCON
CITOなどの協力によって組織され、オープニングセッションと7つの分科
会という形で構成されていました。
オープニングセッションでは、1987年の“Common Future”で持続可能性の
理念を広く認知させたことで知られるグロー・ハーレム・ブルントラント氏に
よる講演、デンマーク・開発協力大臣のウーラ・トーネス氏による講演、
1994年から2001年までデンマーク環境エネルギー大臣を務め、90年
代に「環境パイオニア」としてのデンマークの環境エネルギー政策の基盤構築
に貢献したスベン・オーケン氏らによる講演があり、この会議がCOP15に
向けて非常に重要なステップであるというメッセージが発信されていたように
思えます。
ここでは、そのオープニングセッションでの議論の中で浮かび上がってきた3
つのキーワードと、クロージングセッションでまとめられた「オーフス声明
(Aarhus Statements)」における2つのキーワードを軸に、COP15に向け
たデンマーク国内での議論を見ていきましょう。

■Realistic
オーケン氏は、COP15での合意に向けて、第1にアメリカのコミットメン
ト、第2にEUのリーダーシップ、第3にその他の先進国、新興国、途上国の
参加の3つを考える必要がり、これらの要因には多くの不確実性があるため、
「私たちはCOP15での到達点について、「現実的(realistic)」でなければ
ならない」と述べていました。
「現実的」というキーワードは、ジョン・D・ホフマイスター氏(Citizen 
Affordable Energy)が今後のアメリカの動向について語った講演にも通底し
ていました。ホフマイスター氏は、オバマ政権が大胆な自然エネルギー利用拡
大の政策を掲げてはいるものの、これを実践していくには議会をはじめとして
国内のさまざまなアクターの協力が必要であり、現実的に考えていくことが必
要であるといった懸念がありました。

■Optimism
「現実的」というキーワードと共にCOP15での合意形成に向けて重要とな
るのが「楽観主義(optimism)」でした。「楽観主義」という言葉は、ブルント
ラント氏の講演の中で強調されていたのですが、その背景には、COP15で
の議論の複雑性、困難性に直面しても議論を後退させてはいけないというメッ
セージがあったように思えます。具体的には、(1)アメリカを含む先進国の具
体的なコミット、(2)中国をはじめとする新興国のコミット、(3)アフリカ
をはじめとする途上国の貧困問題も含めた位置づけなど様々な課題があり、決
して合意形成は容易ではないことが予想されるのですが、それらの課題に対し
て「現実的」に考えながらも「楽観主義」のもとで合意形成を目指すことが重
要であると述べられていました。

■Grass-roots
オープニングセッションのほぼすべての講演がアメリカの今後の動向に言及し
ていましたが、そのアメリカについてのホフマイスター氏の発言で頻繁に使わ
れていた言葉が「草の根(grass-roots)」でした。オバマ大統領の誕生におい
て、インターネットの活用と若者のボランタリーな選挙運動といった「草の根」
的な運動戦略が非常に大きな要因であったことは記憶に新しいところですが、
こうした「草の根」的な運動の展開は、分散型の自然エネルギーやスマートグ
リッドなどの技術の普及と高い親和性があると考えられます。オバマ政権の誕
生を機に、ブッシュ政権下で忘れ去られていたアメリカの伝統的精神としての
「草の根」が国民の間に再興しつつあり、これが持続可能なエネルギーの普及
を加速させるひとつの要因になる可能性が考えられます。それは、同じく「草
の根」の伝統的精神をもつデンマークの風力発電の普及の歴史にも傍証されて
います。

■Aarhus Convention
クロージングセッションでは、7つの分科会のそれぞれの成果が「オーフス声
明」にまとめられ、COP15への提言として政府に直接提出されることにな
りました。この中で重要なキーワードの1つ目が「オーフス条約(Aarhus
Convention)」であり、声明ではオーフス条約の内容をCOP15での合意形成
プロセスに反映させることが提案されています。
オーフス条約は、国連欧州経済委員会(UNECE)で作成され、1998年
6月の第4回環境閣僚会議で採択され、2001年10月に発効しています。
具体的には、環境に関する情報へのアクセス、意思決定における市民参加、司
法へのアクセスを保障することを約束するものであり、2003年には本条約
第5条9項にもとづいて化学物質の排出・移動データを収集・公表するPRT
R議定書にもつながっています。
いわゆる「環境民主主義」や「インフォメーショナル・ガバナンス」の根拠と
なるオーフス条約が提言に加えられたことは、COP15での合意内容に直接
影響を与えるわけではありませんが、プロセスの形成には大きな影響を与える
と考えられます。

■Carbon Currency
もう1つの重要なキーワードは、第7分科会:統合的エネルギー対策の議論に
基づいて提案された「炭素通貨(carbon currency)」です。
具体的には、国や地域の二酸化炭素長期削減目標と二酸化炭素クオータ(割り
当て)を管理する二酸化炭素中央銀行を設立し、炭素通貨市場の中で二酸化炭
素削減技術の導入にインセンティブをもたせるという構想が提案されています。
この提案の背景には、この十数年の間にさまざまな二酸化炭素削減技術が開発
されてきてはいるものの、そうした技術の普及具合は決して十分ではなく、ま
た、EU-ETSなどの排出量取引制度も決して効果的ではないという現状認
識があり、こうした状況を変えるために適切なインセンティブを備えた枠組み
が必要である、という議論がありました。

■まとめ
今回のオーフス会議から、大きくまとめると(1)アメリカの政権交代による
マクロなディスコースの変化、(2)より効果的な二酸化炭素削減のための枠組
みの具体化という2つの動きを見てとることができました。
2001年以降、保守政権のもとでデンマークの環境エネルギー政策イノベー
ションの勢いは衰えていました。しかし、オーフス条約の反映や炭素通貨など
の提案が出されていることを考えると、デンマークには、バックラッシュを経
てもなお、歴史的な議論の積み重ねの総体としての「環境ディスコース」がし
っかりと根付いているようです。

■参考リンク
・オーフス条約
http://www.unece.org/env/pp/
http://aarhusclearinghouse.unece.org/index.cfm

     古屋将太(オールボー大学PhD student/ISEP海外インターン)


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。