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1. 風発:環境エネルギー激動時代の羅針盤として
                       飯田哲也(ISEP所長)

明けましておめでとうございます。引き続きISEPをよろしくお願いいたし
ます。

2007年の振り返りから。昨年は、地球温暖化政策・環境エネルギー政策の
年であった。小職も委員として参加し、1年余かけて議論を重ねてきた国の京
都議定書目標達成計画見直しの合同部会は、12月21日の最終報告を行った
が、「規制的措置」(とくに国内排出量取引)は両論併記となり、事実上の先送
りで幕を閉じた。「嘘も百回言えば・・」の言葉のとおり、「業務や家庭の増加
が問題」「自主行動計画は有効」という産業界のプロパガンダがゴリ押しされた
かたちだ。

その合同部会の議論が始まったばかりの3月に、電力会社と経産省による「新
エネ春闘」の妥結として、国民的な議論がまったく行われないまま、新エネR
PS法の目標値「2014年までに1.63%」が決定された。年末になって、
あらためて再生可能エネルギーへの期待が盛り上がったものの、経産省に再議
の姿勢はいっさい見られない。

一方、7月に柏崎刈羽原発を襲った中越沖地震は、原子力ムラが捏造してきた
「原発神話」をことごとく砕き去った。電力供給の不安定さを浮き彫りにする
と同時にCO2も国家レベルで急増させ、国の耐震基準が信頼に欠けることを
誰の目にも分かりやすく示し、なすすべもなく燃え続けた火災が不安を掻き立
て、あげくに東電を赤字転落させたのである。

また、暮れのバリ会議(COP13)で、福田首相とブッシュ米大統領・カナ
ダのハーパー首相の顔写真がタイタニック号の舳先(へさき)に掲げられた全
面広告で、日本が米・加とともに最大の妨害国となっているさまが批判された。

こうして、国内的にも国際的にも日本の無策ぶりを露呈したまま、マイナス6%
どころかプラス6.4%(2006年度、速報値)でいよいよ京都議定書の約
束期間に入った日本で、唯一の変化の芽は、国の最終報告と同日の夕方に、排
出量取引の導入などを答申した東京都環境審議会と、前々日に新温暖化戦略を
提言した横浜市である。これらは、温暖化対策における政策イノベーションの
芽として期待される。

そして2008年は、情報洪水とも言える「地球温暖化特集」で幕が明けた。
一般市民の関心を高める上で、そしてわれわれ専門職にとっては政治的な優先
度が上がり、かつ政治機会も開かれるために、もちろん「良いこと」には違い
ないが、細心の注意が必要である。注目を集めた多くの社会問題でしばしば見
られることだが、旧来勢力によって「フレームアップ」(でっちあげ)や「スピ
ン」(情報操作)され、「間違った出口」に誘導されることへの注意である。

もう一つ、原油価格がついに1バレル100ドルを突破した。未だに日本のメ
ディアでは、「ピークオイル」(世界全体の原油の生産がピークアウトする状
況)がタブーに近く、ドル安やサブプライム問題から向かってきた投機資金の
側面からの解説に留まっている。これは、日本のメディアの体質によるもので、
数ヶ月以内に、ピークオイルが大きくクローズアップされることは間違いない。
確かに100ドルを超えた瞬間値は投機資金の影響が大きいものの、構造な問
題としてはピークオイルがある。しかも、生産のピーク以前に、輸出余力のピ
ークが顕在化する。このピークオイル問題が顕在化した場合、短期的・国民経
済的の影響とその情報ラッシュは、地球温暖化問題の比ではなく、(これも日本
のメディアのフレームアップする体質から)ほとんどパニック連鎖が懸念され
る。

こうして2008年は、いわば1970年代を再現するかのような「環境エネ
ルギー激動時代」の幕開けがが予見される。ただし、この「大きな問題」に対
して、1970年代のような「大きな答」(理想論としてのあるべき論)は、そ
れが「右」(政府や業界)であっても「左」(批判側、対抗勢力)であっても、
袋小路に陥ることは歴史が証明している。問題そのものを見ない政府や業界は
論外だが、「左」の「大きな答」にもリアル社会へのコミットメントと創造性が
欠けていたからだ。

ムラ社会の日本では、タテマエの空論のもとで、乖離したリアリティが放置さ
れてきた。バックキャスティングという言葉で示される「私たちの目指す理想」
(ビジョン)を掲げることは重要だが、同時に、それをタテマエの空論に留め
ず、リアリティを覆っている薄膜を引き裂き、日本社会のリアリティにこそ規
範性を注入する必要がある。

2008年の年初に当たり、環境エネルギー政策研究所(ISEP)は、こう
した歴史と社会認識を踏まえて、環境エネルギー激動時代の羅針盤の役割を担
っていきたいと考えている。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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2.連載「光と風と樹々と」(21)
         温暖化対策の10年――地域発の温暖化対策
               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

■京都会議から10年
 一昨日(12月3日、編集注:本原稿は昨年12月にご執筆いただきました)
から、インドネシアのバリ島で、国連の温暖化対策会議(COP13)がはじ
まった。1997年12月の京都会議からちょうど10年である。あれから1
0年も経ってしまったのか、と、当時の京都国際会議場の熱気とともに思い出
される。温暖化対策の歩みは、いかにのろのろした歩みだろうか。
 それでもノーベル平和賞の受賞者が、映画『不都合な真実』のアル・ゴア元
副大統領とIPCCに決まったように、来年2008年からの第1約束期間を
来年に控えて、今年ほど、温暖化問題への関心が一気に高まった年はなかった。
日本やニューヨークはじめ、北半球の異常な暖冬も後押しした。

■宇宙からみた地球
 11月には、1968年12月のアポロ8号の撮影以来、39年ぶりに月か
ら見た「地球の出」が撮影された。宇宙航空研究開発機構(JAXA)とNH
Kが共同で打ち上げた月を回る周回衛星「かぐや」がハイビジョンで撮影した
映像である。世界ではじめて撮影された「地球の入り」の映像も公開された。
灰色の月の大地の上に、まっくら闇の宇宙空間に浮かぶ青い地球は、とてもい
としく美しい。
http://jda.jaxa.jp/jda/p4_j.php?f_id=14479&mode=search&keyword=%C3%CF%
B5%E5+
 土星側から見た地球も印象的である。アメリカが1997年に打ち上げた土星探
査機「カッシーニ」(土星の4つの衛星を発見した17世紀の天文学者にちなん
でつけられた)は2004年から土星軌道を飛んでいるが、2006年9月1
5日に、土星側からみた地球の写真をNASAが公開している。地球は、青白
い小さな点である。とてもいとしい小さな点だ。Our only Earth を実感せずに
はおれない。人類の歴史のいっさいがっさいは、確かにこの小さな点の上での
出来事である。
 http://earthobservatory.nasa.gov/Newsroom/NewImages/Images/saturn_ca
s.jpg
 「小さな点としての地球(Dot Earth)」という発想からの、環境問題につい
ての興味深いコラムがニューヨークタイムズのブログとして大評判を呼んでい
る。その名も Dot Earth 、Andrew Revkin という記者のブログである。
 http://dotearth.blogs.nytimes.com/
 この原稿を書きながら、最新のブログ(12月4日)を見てみると、青空の
もとカリフォルニアの無数の風車群の写真。「次期大統領が温暖化を抑えるた
めにできる幾つかの(百の)事柄」というタイトルである。アメリカの次期大
統領が就任後100日以内に実行できる自然エネルギー導入策など300のス
テップを、コロラド大学の研究者などが中心になってまとめたアクション・プ
ロジェクトの紹介である。

■宮城県から61件、全国から1052件――地域発の多彩な取り組み
 さて日本。この10年で温暖化対策の何がどれだけ変わったのだろうか。こ
こにも、もう一つの「失われた10年」がある、とうそぶきたくもなる。経済
産業省や経団連、電力会社の対応ぶりを見れば。
 けれども、地域レベルではいろいろな取り組みがひろがりつつある。詳しく
は、新刊の『地域発! ストップ温暖化ハンドブック』(水谷洋一ほか編、昭和
堂)を参照されたい。例えば、市民風車をはじめ市民共同発電所の発展ぶりも、
この10年間の大きな変化といえるのではないか。
 今回紹介したいのは、都道府県レベルでの温暖化対策のコンクールである。
日本では、各道府県に地球温暖化防止活動推進センターが設置され(ただし東
京都・徳島県・鳥取県にはない)、県知事が地球温暖化防止活動推進員を委嘱し
ている。地球温暖化防止活動推進員は全国で約6000人が研修などを受け、
学校や地域の集会などで出前講座をするなど、主に啓蒙的な活動を行っている。
意欲があって、ベテランの推進員は、自分のことばで、温暖化問題を語れる「草
の根のアル・ゴア」といえる。
 この各道府県の地球温暖化防止活動推進センターが受け皿となって、「スト
ップ温暖化大作戦」という、地域での温暖化対策を表彰するコンクールを開催
している。都道府県レベルでの大会を実施し、さらに全国大会を行うという仕
組みである(私は2003年から、宮城県のセンター(ストップ温暖化センタ
ーみやぎ)のセンター長を務め、昨年7月からは、全国の地球温暖化防止活動
推進センター連絡会の代表幹事を務めている)。
 各都道府県の大会は、できるだけ各県の自主性・地域特性に委ねるかたちで
運営している。宮城県では「エコdeスマイルコンテストin みやぎ」の名のも
とに募集し、全国で2番目に多い61件の応募があった(応募は、団体でも企
業でも学校でも自治体でも個人でもいい)。9月上旬の第一次審査(書類選考)
で入賞20団体を選び、10月6日の「最終選考会」で9分ずつプレゼテーシ
ョンをしてもらった。
 昼食の休憩をはさんで審査時間も含めて、11時から16時までかかったが、
いずれもレベルが高く、まったく飽きない、あっという間の20団体の発表だ
った。
 パワーポイントを使った堂に入ったプレゼンテーション、小・中学生の大人
顔負けの発表、芝居仕立ての大学生の発表等々、ユーモアもあり、バラエティ
も豊かだった。内容的にも、バイオディーゼル燃料関連の取り組み、省エネ・
ゴミ減量活動、環境教育・啓発事業、地域活性化など、多岐にわたった。
 海・島・山・河川・温泉・農業、そして商都であり学都である仙台。登米市
や白石市、女川町などの自治体による全市的・全町的な取り組み。宮城県の地
域の総合力を再発見した大会でもあった。
 「環境問題に終わりはありません」という仙台市北六番丁小の6年児童の発
言に、心の中で喝采を贈った。同小のエコスクールの取り組みは、都市河川の
梅田川・商業地区宮町という同小周辺の地域環境を十分配慮したものだった。
朝顔の葉っぱの表と裏の温度差(2度もある!)をはかったり、東北工業大学
のスタッフの指導もあって科学する心にも満ちていた。全国的にみてもトップ
クラスのハイレベルなエコスクール活動である。
 お葬式や法事などで、必ず環境問題に触れるというエコ法話。お盆を仏式キ
ャンドルナイトと位置づけているという寺院の取り組みは、コミュニティの拠
点としての寺院の新しい可能性を示していた(入賞20団体の中に、寺院が2
つ入った)。
 ファッションビル・141ビルや東北リコーの徹底したゴミ減量の取り組み
は、商業ビルと企業の可能性を再認識させてくれた。障害者の自立支援とマイ
箸運動を結びつけた取り組みも好評だった。
 激戦を勝ち抜いて、10人の審査員の全員一致で宮城県知事賞に選ばれたの
は、塩釜水産加工業協同組合である。水産練り製品生産量日本一という「魚の
町」塩釜では、揚げかまぼこ製造時に出る年間54万リットルにのぼる廃食油
をバイオディーゼル燃料に転換し、運送用の車や市の公用車等で利用している
(プラントは2006年8月から稼働)、さらには島(松島湾に浮かぶ400の
島がある)との渡船の燃料にも導入を進めようと実験を開始している。海から
陸へ、陸から海へという地域循環型の広がりがある。温暖化ガスの削減効果は
年間約1200トンと試算されている。
 このような地域特性をふまえた各地での真摯で多彩な取り組みは、県や国の
温暖化対策に対して、「もっと真剣な政策的取り組みを」と、地域からボールを
投げ返すものともいえる。
 私は選考委員長を務めたが、試行錯誤の取り組みではあったが、募集から審
査までのプロセスをつうじて、市町村レベルの団体とのつながりが深まったこ
とも大きな成果だったと思う。
 ストップ温暖化センターみやぎのサイトを参照。
http://www.melon.or.jp/melon/contents/Global_Warming/index.htm
 全国では、予想を大きく上回る1052件の応募があった。環境大臣賞を決める
全国大会は、2月9・10日開催である。
http://www.jccca.org/daisakusen/
 ストップ温暖化大作戦メールマガジン 『すいマガ』も、毎週水曜日に刊行
されている(講読申込は、daisakusen@jccca.org)
 温暖化対策は、少しづつではあるが、地域レベルに着実に浸透しつつある、
といえるのではないか。そして、これが、温暖化という言葉が人びとに浸透し
たこととともに、この10年間のもっとも大きな変化ではないのか(2007
年12月5日)。

               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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3.プロジェクトフラッシュ

1) 備前で取り組むインターン生活
         田尻量平(備前グリーンエネルギー株式会社 インターン)

今年八月より備前市におきまして、省エネルギーや自然エネルギーを学んでお
りますインターンの田尻量平と申します。エネルギー問題、なかでも非化石燃
料の活用に興味が沸き、大阪から参りました。

「環境と経済の好循環のまちモデル事業(通称:まほろば事業)」の事業主体で
ある備前みどりのまほろば協議会、および備前グリーンエネルギー株式会社に
おきまして、教育・啓発のソフト面と機器導入などのハード面の両面の事業に
参加させていただいております。ソフト面では、地域の子どもたちを対象とし
た教育イベントや啓発セミナー等のサポートを行い、ハード面では、木質系燃
料・太陽光などの自然エネルギー事業だけでなく、空調や照明の省エネルギー
事業についても学んでおります。

ソフト面では、環境教材カードゲームの製作に携わり、「子どもが環境問題の用
語に親しみを持てるような教材ができないか」という観点で思案した結果、近
年子どもたちの間で人気を集めているカードゲームに着目し、まほろば協議会
のマスコットキャラクターである「びぜこちゃん」のカードゲームを開発しま
した。

概要を一言で説明いたしますと、
『迫り来る環境問題が蓄積してゲームオーバーにならないように、びぜこちゃ
んと環境問題を解決しよう』というゲームです。
「温暖化」や「大気汚染」といった用語がすぐに覚えられるようになっており、
環境イベント等での子どもたちの評判も上々で、なかなか手応えを感じていま
す。

まほろば事業の重要なコンセプトの一つに、『事業の環境効果&経済効果が循
環すること』が挙げられます。たとえば、省エネルギー事業においては、まほ
ろば事業の及ぼす備前市への環境的・経済的効果はめざましいものがあります。
新しい機器が導入され、光熱費削減の成果が数字で表れることで、実感として
社会が転換してゆく芽のようなものをみる思いがします。

そしてこの10月、まほろば事業は新たなステージを迎えます。周辺の4自治
体との共同事業として、これまで備前市内に限定されていたエリアを拡大し、
太陽光発電事業にも着手することになりました。備前から芽吹いた自然エネル
ギー・省エネルギーの潮流が、周りを取り巻いて、より大きなうねりとなって
きました。

残されたあと3ヶ月のインターン生活の中で、まほろば事業だけではなく、事
業に携わる様々な方々や、地元の皆様方との交流を通して最大限のことを学び、
自分の将来に活かせるように努力するつもりです。

*びぜこカードは10月1日より216枚1セット1200円で発売中です。
 お問い合わせは、備前グリーンエネルギー株式会社びぜこゲーム係
(TEL:0869−84−9500)まで。

         田尻量平(備前グリーンエネルギー株式会社 インターン)


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2)南信州で広がる地域エネルギー
              柳沼佑貴(おひさま進歩エネルギー株式会社)

飯田市を含む南信州地域で新しい地域エネルギーの動きが始まっている。
南信州の15自治体などが主体となり計画した「南信州・地球温暖化防止エコ
推進事業」が、10月1日に環境省の「環境と経済の好循環のまちモデル事業」
に採択され、10月18日、補助事業の受け皿となる南信州広域の地域協議会
が立ち上がった。協議会は南信州15自治体と南信州広域連合、県の出先機関
である下伊那地方事務所、そして環境NPOの南信州おひさま進歩、地域の金
融機関である八十ニ銀行、飯田信用金庫で構成され、官と民がパートナーシッ
プを組んで事業を行う、いわゆるPPP(パブリック・プライベート・パート
ナーシップ)事業という形をとり、南信州という広域で自然エネルギーや省エ
ネルギーを推進していく。

事業内容は主に自然エネルギーや省エネルギーなど地域に根ざしたエネルギー
の導入である。その導入方法として環境省からモデル性を買われたのが「市民
出資」と「サービサイジング」という二つの事業形態である。
そもそもこの事業形態は、南信州地域最大の自治体である飯田市が2004年
から2006年の3カ年にかけて行ったモデル事業の流れを受けており、飯田
市のまほろば事業の一部を請け負う形でNPO法人南信州おひさま進歩を母体
に誕生した「おひさま進歩エネルギー有限会社」が市内で太陽光発電と小規模
エスコ事業を行う際に取られた手法である。この市民出資というファイナンス
モデルを用いたサービサイジング事業は成功を収め、日本各地から大きな注目
を集めている。今回の広域での事業は、この成功事例が飯田市から近隣15市
町村へと波及する形となる。

市民出資というファイナンススキームの特徴は、市民から出資を募って事業を
行うことを通じ、身近なお金を社会貢献に結びつける仕組みである。銀行や郵
貯、国債など従来型の投資は資金の使い方が不透明で、場合によっては戦争や
環境破壊の資金調達に使われる可能性がある。市民出資はより直接的に投資先
を選べる方式であり、社会や環境のためにお金を回したいという「意志のある
お金」が社会で活かされる仕組みである。今回の市民出資は、全国市民の「温
暖化防止のために何かしたい」という想いを「持続可能な社会モデル」への投
資という形で実現させることになる。

サービサイジングの特徴は「モノ」を売るのではなく、「機能」や「効果」を売
るという形式にある。たとえば大手電機メーカーが行っている照明関係のサー
ビサイジング事業では、電球というモノを売るのではなく、「明かり」という機
能をサービスとして提供する、という考え方である。メリットは、サービス提
供者にとっては、機器を専門性の高い管理者に最適な維持管理をさせることが
できる点、利用者にとっては機能の維持やファイナンス面での支援など総合的
なサービスを受けられる点で、事業者及びサービスの利用者の双方に利益を生
じさせている。自然エネルギーや省エネルギーの導入には、利用者にとって様々
な課題が伴うが、この事業形態を取ることにより、専門家による総合的な支援
の提供と、地域での自然エネルギーや省エネルギーの最適な普及拡大が可能に
なる。

追加的な特徴として、今回の事業ではサービサイジングにおける初期投資に市
民出資のお金を使うことで、利用者は初期投資なしで自然エネルギー、省エネ
ルギーの導入が可能となり、地球温暖化防止対策を講じられる点が挙げられる。

「南信州・温暖化防止エコ推進事業」は10月22日から地域内での事業の公
募を開始し、協議会には応募案件が続々と集まってきている。いわば、地域エ
ネルギーの芽である。はじめにも述べたように、この協議会は官・民両方の主
体から構成されており、当然蓄積される情報も非常に豊富である。これまでの
経験と情報を生かして協議会が事業を推進するインキュベーターとしての役割
を果たして南信州一帯が持続可能な社会のモデルとして少しでも前進すること
を期待したい。

              柳沼佑貴(おひさま進歩エネルギー株式会社)


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4.ISEP研究活動報告
                 古屋将太(ISEP共同研究インターン)

ISEPでは、この秋から住友財団の環境研究助成を受け、「自然エネルギーを
巡る新しい対話プラットフォームの形成」というテーマで新たに研究プロジェ
クトを立ち上げました。現在準備を進めており、ここではその研究概要と、3
つの論点を提示したいと思います。

■ 研究概要
自然エネルギーには地球温暖化の防止、化石燃料依存からの脱却など、多くの
メリットがあり、一般的に肯定的なイメージでとらえられています。一方で、
導入量が漸増するにしたがって、問題点も浮上するようになってきました。風
力発電の鳥類や景観への影響はその代表的なものであり、風車の設置が地域社
会やステークホルダー間の紛争の種になってしまうこともあります。紛争化す
るケースでは、「風力 対 自然保護」という対立図式となり、風力発電が潜在的
にもっているメリット(経済的価値だけではない多様な社会的波及効果)が顕
在化されないまま失われてしまいます。これまで、こういった問題は「紛争化
→調停」という形で、その都度後追い的に解決が図られてきました。しかし、
今後さらに導入量を増やしていく上で、事後的な調停という解決方法には限界
があります。
以上の現状認識のもと、本研究では風力発電に関わるアクターの対話から、問
題の発生そのものを未然に防止するための仕組みを構想することを目指します。

■ 論点
第一に、「立地選定における手続きプロセスの透明性」を考える必要があります。
風力発電の事業化までには風況測定や環境影響評価をはじめとして多くの手続
きがあり、それらの透明性を確保することが信頼へとつながると考えられます。
第二に、「リスク・便益分配の公平性」を考える必要があります。デンマークで
は国内の風車の80%が地域住民やコミュニティーによる所有(出資)となっ
ており、その地域に吹く風の恩恵(売電による利益)はその地域の人々に還元
されます。同時に、風車をたてることによって生じるリスク(自然環境や景観
に影響が生じる可能性)も地域の人々が負うことになります。一方で、落下傘
的に企業の巨大な資本によって大規模ウィンドファームが建設されるとなれば、
その地域に吹く風の恩恵はその企業のみに還元されることとなり、地域の人々
にとっては一方的にリスクを負わされることになるでしょう。その場合、温暖
化対策といえども、地域の人々がウィンドファーム建設に反対するのは当然の
ことと考えられます。このような「オーナーシップ」という観点はあくまでも
一例に過ぎないのですが、風力発電事業の「リスク・便益分配の公平性」をい
かにして構築していくのかを考える必要があります。
第三に、「アクター間のコミュニケーション不足」を考える必要があります。風
力発電事業者、地域住民、行政、科学者にはそれぞれの世界があり、それぞれ
の役割を担っているため、自らの世界のことはよく知っていても、他のアクタ
ーがどのような世界でどのような役割を担っているのかについては必ずしも正
確に把握していないということがあります。そのためにコミュニケーション不
足が生じ、結果として不信をベースにプロセスが展開され、導入に失敗すると
いうことが起こります。継続的にアクターが情報を共有し、対話を行う「場」
を設けることで、こうしたコミュニケーション不足を解消することができると
考えられます。
以上は、「風力発電の社会的受容性」を拡大するための論点なのですが、これら
の考え方や「対話プラットフォームの形成」という手法は、風力発電のみなら
ず他の自然エネルギーにも応用可能であると考えられるため、本研究が有益な
成果をあげることができるようにがんばっていきたいと思います。

                 古屋将太(ISEP共同研究インターン)


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特集 COP13・バリ会議

 昨年12月、インドネシアのバリで、COP13(第13回気候変動枠組条
約締約国会議)、COP/MOP3(第3回京都議定書締約国会議)が開催され
た。そこで今回は、現地からのNGOメンバーによる報告を、特集としてお届
けする。
 最初にIPCCの第4次評価報告書の影響の下、特に数値目標についてどの
ように議論されたかということについて早川氏に報告していただいた。また、
その他の個別の注目すべき争点や日本政府の対応については、山岸氏が報告に
していただいた。
 北橋氏、三本氏、工藤氏、古野氏からは、ユースから見たCOPとして、そ
れぞれの論点や活動状況について書いていただいた。なかでも、貿易ルールを
めぐる議論はこれまであまり注目されてこなかった議論であるが、炭素制約社
会においては重要な議論になっていくと考えられる。
 そして報告全体をまとめると同時に、今年のG8開催を照準に、これからの
展開について大林が報告する。
 最後に、中環審・産構審最終報告書へのコメントも収録した。日本政府の抱
える問題や将来に向けての提案を示したものである。

  
1.IPCCとバリ会議
 早川光俊(地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)専務理事)

12月3日から14日までの予定で、インドネシアのバリで開催された気候変
動枠組条約第13回締約国会議(COP13)と京都議定書第3回締約国会合
(CMP3)は、2013年以降の削減目標と枠組み、それに至る具体的な作
業計画と交渉期間に合意することが最大の課題でした。また、隠れた最大の課
題は、今年2月から相次いで発表されたIPCCの第4次評価報告書(AR4)
を政策決定者である各国政府がどう受け止め、2013年以降の削減目標と枠
組みにどう活かすか、でした。

そのため、バリ会議では、2013年以降の削減目標と枠組みについての決定
に、IPCCが指摘した、温室効果ガスの排出量について、「今後10年から1
5年を排出のピークとして削減に向い」、「2050年までに1990年レベル
から半減し」、「先進国は2020年までに1990年レベルから25~40%
削減する」などの中長期目標を書き込むかが最大の問題となり、そのために会
期をまる一日延長することになりました。

こうした数値を書き込むことについては、アメリカ、カナダ、日本などが強硬
に反対しました。結局、条約のもとでの「長期的な共同行動についての対話」
についての決定では、こうした数値は記載されず、議定書のもとでの先進国の
2013年以降の削減義務に関する決定には、こうした数値が書き込まれるこ
とになりました。

日本のマスコミは、条約のもとでの決定にこうした数値が記載されなかったこ
とで、数値目標が落ちたと報道しましたが、先進国の2013年以降の削減義
務に関する決定に数値目標が記載されたことを評価していない報道は、ほとん
ど誤報です。

先進国の2013年以降の削減義務に関する決定にこうした数値を書き込むか
どうかについては、カナダ、ロシアが反対しましたが、途上国グループ、EU
などが次々と記述すべきだと発言し、結局、カナダ、ロシアが折れて、記述す
ることが決まりました。こうした記述に反対していた日本は、発言しませんで
した。聞くところによると、日本政府はこうした数値には合意していないと言
っているとのことです。外務省が発表しているCOP13、CMP3の「概要
と評価」にも、これらの数値が書き込まれたことは書かれていません。日本政
府代表団が参加していた会議で、反対の意見を言わずに決まった決定に、合意
していないなどというのは、話になりません。

今回のバリ会議では、IPCCの指摘したこうした数値を書き込むべきかどう
かの議論はありましたが、IPCCの指摘が正しいかどうかの議論がほとんど
ありませんでした。1996年のIPCCの第2次評価報告書のときは、IP
CCの報告書の科学性に疑問を投げかける意見が多く出されていましたが、今
回はこうした発言はほとんどなかったことは、今回のバリ会議の大きな成果の
ひとつだと思います。

IPCCは、これまで地球温暖化問題の国際交渉に大きな影響を与えてきまし
た。1990年の第1次評価報告書が1992年の条約を生み、1995年の
第2次評価報告書が京都議定書を生み、2001年の第3次評価報告書が京都
議定書の運用ルールの合意を後押ししました。今回の第4次評価報告書は、2
013年以降の削減義務と制度枠組みの交渉に活かされなければなりません。

アメリカの離脱を乗り越えて、議定書が始動し、将来枠組みについての議論の
プロセスが決まったことは国際社会の健全性を示すものです。こうした成果は、
IPCCなどの科学が政治を動かしてきたこと、そして何よりも世界の市民・
NGOが関心をもち、監視しつづけたことによると思います。

地球温暖化は急速に進行しています。今回、2009年末までに2013年以
降の削減義務と制度枠組みについて結論を得ることが合意されました。これか
ら2年の交渉が人類の未来を決めると言っても過言ではないと思います。

 早川光俊(地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)専務理事)


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2.バリ会議で合意された個別争点と日本政府の対応
             山岸尚之(WWFジャパン 気候変動グループ長)

■バリで合意された個別争点

今回のバリ会議で合意された「ロードマップ」では、メインであるプロセスの
設立に加え、4つの構成要素(building blocks)とよばれる個別争点分野に
関する合意もその重要な内容であった。その4つとは、「緩和」「適応」「技術」
「ファイナンス」である。

「緩和」分野に含まれる中心的な争点についてはここでは重複を避けるために
省くが、今回の会議に特徴的であったものとして、「途上国における森林減少か
らの排出量削減」、通称、REDDと呼ばれる争点があった。世界の温室効果ガ
ス排出量の約2割相当が森林減少に由来することから徐々に注目を集めてきた
この問題は、今回、森林国インドネシアでの会議開催ということもあってとり
わけ注目が高かった。いくつかの重要な論点について議論がされたが、この争
点はむしろ今後の交渉の中で特に重要な役割を持つことになる。

2つ目の「適応」については、昨年より引き続き議論となっていた適応基金の
運営主体に関する争点が一応の決着をみたことで、前進があったといえる。以
前より先進国側はこの基金の運営主体としてGEF(地球環境ファシリティ)
を候補に挙げていたが、途上国側は、先進国の影響が強くまた利用に関する手
続きが煩雑なGEFが運営主体となることには強く反対した。今回、妥協案と
して、適応基金理事会という新たな組織を運営主体として設立することで合意
がされた。

3つ目の「技術」という争点分野では、個別の争点として、技術移転に関する
指標の作成を決定した他に、技術移転に関する基金の設立を途上国側は行なっ
た。これには先進国側が難色を示し、最終的にはGEFの下での「戦略的プロ
グラム」の設立ということで妥協が図られた。

4つ目の「ファイナンス」については、これ単独では大きな進展はなかったが、
先の「適応基金」に関する合意や「技術」に関するGEFの「戦略的プログラ
ム」の合意という形で、他の争点分野の中で実質的な前進が見られたことにな
る。

このように、今回の「バリ・ロードマップ」では、メインとなった将来枠組み
の交渉プロセスの設立の他にも、それらを構成する重要な分野でも一定の進展
が見られた。ただし、適応基金をのぞけば、それらもやはりほとんどが「今後
何をするか」に関する合意であったことには留意する必要がある。

■日本政府の対応

今回、日本政府は当初から「アメリカ、中国、インドが入った形でプロセスが
設立されること」に最大の重きを置いていたようである。そして自らの役割を、
アメリカ、EU、そして途上国の間の調整役として位置づけていた。ただし、「調
整役」といえば聞こえはいいが、これは、国内の省庁間の合意や無いことや産
業界の強いロビーにより、積極的な立場を明確にできない事情を反映している
面があったことは否定はできない。

そうした曖昧さゆえ、京都議定書の下で採用された「総量での排出量削減」と
いう約束形式から逃げようとしていると解釈される提案を序盤に行ない、NG
Oから「今日の化石賞(Fossil of the Day)」を受け取る場面もあった。

特にその曖昧な立場が表れたのは、最終日のAWGの文書に合意の時であった。
最終日の会合で、IPCC第四次評価報告書から引いた「25~40%削減」
などの強い数字への言及がある文言に対して、カナダとロシアのみが反対を発
言したが、その後にほとんどの国々がそれを支持する発言をし、それら2つの
国々も最後には合意することになった。そうした中、日本は一貫して沈黙を守
っていた。このような重要な議題の最終局面で「発言をしない」という形での
立場の表明には、日本の消極性が目立つ結果となった。

2008年は、今回合意された交渉が本格的にスタートし、自らが議長国を努
めるG8が開催されるという意味で、日本にとっては自らの考え方を国際的に
示すチャンスであると同時に、その失敗は日本の国際社会での役割の更なる周
辺化を意味するという意味で危機でもあるといえる。その年に突入していくに
あって、自国の考えを前向きに示せなかった今回の会議が残した反省は大きい。

             山岸尚之(WWFジャパン 気候変動グループ長)


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3.Youthが見たCOP

1)地球温暖化に負けない、アツイ青年の活動
                       北橋みどり(エコ・リーグ)

今回のバリ会議では、40カ国から500人以上の青年が集まり、気候変動を
止めるため活動を行なっていました。その一端をご紹介します。

* 連日10以上の青年ミーティング
毎日2回の政府代表団に向けたパフォーマンス、政策提言、サイドイベント・
プレス会議の開催、オンラインメッセージ・署名集め等様々な活動を行なって
いました。毎日10個程度のミーティングが開催され、それは同時にインター
ネットを通じて、バリ以外にいる仲間とも共有され意見交換をしていました。

* COPのデイリープログラム
気候変動の交渉の中での青年の立場も変わりつつあります。ここ数回のCOP
やAWGの会合で青年によるスピーチが行われ(もちろん今回も)、COP13
からはデイリープログラムの中に青年の会合の時間が設けられるようになりま
した。

* 世界のネットワーク
それぞれ国の得意分野(日本の環境サークルによる環境削減プロジェクトはと
ても好評です)のノウハウ共有を行いながら、世界中の青年たちが一体となっ
て活動を促そうとネットワークを作る準備をしています。来年のCOP14に
向けた青年の国際的な準備委員会もすでに動き出しています。

 これからも青年の活動をご支援下さい!

                       北橋みどり(エコ・リーグ)


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2)温暖化対策と貿易ルール
               三本裕子(A SEED JAPAN)

WTO(世界貿易機関)と温暖化対策をテーマとしたサイドイベントが開催さ
れた。質疑応答の時間には途上国のNGOを中心としてWTOと温暖化対策の
ための貿易ルールの調整について、懸念する意見が続出した。IFG(グロー
バリゼーション国際フォーラム)のビクター・メノッティ氏は「地球温暖化の
解決策を貿易措置に求めるほど、地球規模の解決策の政策的余地(policy
space)は少なくなるだろう」と発言した。

サイドイベントやCOP13と平行して、12月9~11日に非公式貿易相会
合が開催された。この会合に先駆けて、米国・EUは43品目の「環境に配慮
した物品(風力発電用のタービンなど)」の関税撤廃などを提案した。貿易大臣
会合において、途上国は、COP13の交渉パッケージに含まれていた「技術
移転」の貿易障壁の緩和措置を求めたが、米国・日本ら先進国は「技術は知的
所有権であり、別の次元の話である」と反論した。また、バイオ燃料のエタノ
ールを環境物品にいれるべきだという主張も提案された。しかし、すでに米国
のトウモロコシ由来のエタノールの生産のために価格が上昇しており、途上国
における影響は大きいと予想される。また、WTOのサービス分野の協定では、
米国政府からエネルギー分野の市場開放がオファーされており、もしこの提案
が受け入れられれば、途上国などで米国の電力エネルギーサービスが展開され
る可能性もある。

温暖化の解決策として貿易の措置を調整するのは必要なことだろう。しかし、
その分貿易に関する強い協定を持つWTOとの関係・干渉も色濃くなってくる
ことを忘れてはいけない。だろう。2002年に南アフリカのヨハネスブルグ
開催された国連持続可能な開発サミット(WSSD)においては、貿易ルール
(WTO協定)と多国間環境協定(MEAs:気候変動枠組条約などを含む)
の位置づけが焦点の一つとなった。WTO協定に違反するとして国の環境協定
の規制を弱められてしまった事例もある。WTOにおいて温暖化の「解決策」
をとることで、温暖化によって影響を最も受ける脆弱な人々にしわ寄せが行か
ないこと、本当の解決策を見失ってはならないというのが、イベントに参加し
た感想である。

参考:International Forum on Globalization(IFG)
http://www.ifg.org/baliblog.htm

               三本裕子(A SEED JAPAN)


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3)CDMをめぐる議論のゆくえ
             工藤愛未(ISEPインターン 国際基督教大学)

今回の会議ではCDMをめぐって主に4つの議論がありました。

1つは二酸化炭素の回収・貯留のプロジェクトをCDMとして認めるか、につ
いては発生する炭素クレジットが大規模で炭素市場に与える影響が大きいこと、
現在の規定では対処できない問題が多いことなどから目立った進展は見られま
せんでした。これについては次回のCOP/MOP4で結論を出すことになっ
ています。

次に、HFC-23の破壊プロジェクトについての議論です。HFC-23と
は代替フロンHCFC-22の製造過程で副産物として発生する温室効果の高
い物質であり、それを破壊するプロジェクトをCDMとして認めるかどうかが
話し合われました。ここでは、発生する炭素クレジットが大きく非常に利益の
高いものとなるため、この破壊プロジェクトを実施するためだけに不必要なH
CFC-22の生産を促しかねないことが懸念されました。各国の意見の違い
が大きく、また、オゾン層破壊に関するモントリオール議定書などとの整合性
の問題もあり、結論は出ていません。

さらに、植林・再植林CDMについては“小規模”の定義が二酸化炭素吸収量
が年間8キロトンから16キロトンへ引き上げられました。小規模プロジェク
トは手続きが簡単という特徴があります。取引のコストを減らす事ではなく、
地域社会への利益が重視されるべきという主張が目立ちました。

また、CDMのしくみ全体については、第三者機関による十分なチェックがな
されていないという主張があり、環境十全性の観点等から全体的な見直しが提
案されましたが、各国の合意を得られず結局削除されてしまいました。

これらの議論が行われる前の全体会合で、日本はCDMに関して原子力の安全
性を強調、温室効果ガスを出さないクリーンなエネルギーとしてその開発プロ
ジェクトを提案しました。しかし、COP7において国際的な手段として原子
力を使わない事が決定されているにも関わらずこのような提案をすることは、
既に終わった争点を再び持ち出す事であり、疑問視される行為と言えるでしょ
う。

             工藤愛未ISEPインターン 国際基督教大学)


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4.いよいよ将来枠組交渉が開始、G8と日本の役割
                       大林ミカ(ISEP副所長
     2008年G8サミットNGOフォーラム環境ユニットリーダー)

COP13では、将来枠組のとりまとめに向けた交渉の行程表「バリ・ロード
マップ」が採択され、米国や中国も含めた交渉が開始されることになった。将
来枠組の議論は、2009年にデンマークで開催されるCOP15で合意する
ことが期待されている。今後わずか2年間で、京都議定書を大きく上回る各国
の責務を、どれだけ具体的な形に落としていけるのか、一つ一つの作業工程が
非常に重要な積み重ねとなる。今年7月に北海道・洞爺湖で開催されるG8サ
ミットにおける日本の役割も、自ずと重要な機会となる。

G8と将来枠組交渉といった括りで少し気になるのが、米国が現在提案・主宰
している「主要排出国会議」あるいは「主要経済国会議」(以下MEM)の行方
である。MEMは、昨年のドイツ・ハイリゲンダム・サミットに向けた日本の
「美しい星50」の提案に触発されるように、米国ブッシュ政権がサミット直
前に突然発表した、大量排出国が集まって地球温暖化防止について話し合う会
議である。昨年9月の国連ハイレベル会合の直後に開催された第一回会合は、
ブッシュ政権の相変わらずの後ろ向きな姿勢が、「まったく中身のない会議で
ある」として欧州や途上国から非難を浴びた。

今後MEMは、今年1月30・31日にハワイでの開催が予定される第二回会
合から翌月はパリと、毎月の開催が予定されていて、今年夏頃には首脳級の会
合を“日本で開く”という。首脳級会合は頻繁に開催できないため、日本のサ
ミットとの融合を想定しているのは明らかで、ブッシュ政権によるサミット乗
っ取り計画にも思えるのだが、実はむしろ日本政府側から生まれた構想である
という。

日本では、未だに、産業界が国内での削減義務政策の導入に強く反対している。
将来枠組のあり方としても、欧州や発展途上国などの主張する先進国の大幅な
削減と国別の削減義務化ではなく、電力や鉄鋼などの産業ごとに省エネルギー
の目標を設定するなどの「セクター別方式」を提案している。サミットとME
Mの同時開催という構想は、同じように温暖化対策に消極的な米国と共同歩調
をとりたいという、経済産業省の意向が働いているらしい。G8そのものへの
賛否は別として、8年に一度、国際政治的に大きな注目を集める稀な機会を、
米国に乗っ取ってもらうことで切り抜けたいというのは、まったく不思議な国
である。しかも、頼りの米国は、来年早々新しい政権が誕生し、現在の消極姿
勢から積極的な地球温暖化対策に転換することは確実視されている。

一方で、昨年末に、福田首相は、1月23~27日に開催されるダボス会議へ
出席し、日本の中長期目標の設定を発表することを明らかにした。相次いで、
高村外務大臣も、2020年頃を目途にした中期目標をG8までに発表する必
要があることを表明した。また、詳細は明らかではないが、報道では、G8で
日本は、各国を先進国、新興国などと分類し、各グループ別に中長期の温室効
果ガス削減の数値目標を算出する「日本新基準」を提案するという。先進国グ
ループ内では、各国の産業別に省エネ技術の進展度合いを加味して各国別の削
減目標を出し「日本の産業界に配慮」するそうだ。

先ほどのMEMの動きと重ねてみると、義務のない国別目標を掲げ、達成には
日本が有利になる計算設定をしたセクター別方式(こちらも目標を掲げるもの)
で対応する、というのが日本の方針だろうか。バリで政府が開催した「洞爺湖
への道」という大仰なタイトルのサイドイベントも、セメント・鉄鋼・電力・
自動車と日本の大産業が揃い踏みで参加しセクター別方式の優位性を説くもの
ではあったが、国別目標についてはさらりと言及されるに留まった。

しかし、目標ばかりを重ねても、具体的方策が無ければ達成できないことは、
現在の日本の状況が示している。まずは、国際的に義務を課された国別の目標、
バリで確認されたように、先進国は2020年頃に25~40%の削減が必要
である。更には日本国内では、現在東京都が準備をしているような産業界への
削減義務化、実効性のある自然エネルギー拡大政策、炭素を排出していること
にコストをかける排出量取引や環境税などの、政策ミックスの導入が必須であ
り急務である。議論の落ち着いた二年後にではなく、今すぐに準備を始めなく
てはならない。

COP13では、責務を負うことに後ろ向きな日本の姿勢は各国から批判を浴
び、すでに日本が国際的な議論をリードできない現状が明らかとなった。地球
温暖化防止に向けて高邁な理想を掲げ、G8で主導権を発揮するというなら、
他国を凌駕する決意を表す、義務を伴った高い削減義務目標と、具体的な方策
の数々を明らかにすべきである。努力をしない国が何を言っても説得力は持た
ない。

「主導権をとらないならこの道から外れてくれ」とは、CO13でパプアニュ
ーギニアが米国に対して放った言葉だが、日本に対しても向けられているとし
て肝に銘じるべきである。もしくは、諸外国からは、すでに道から外れてしま
ったどうでもいい国として見なされているのだろうか。今年のG8は、日本が
温暖化対策で内外に注目される決意を示すことができる、最後のチャンスかも
しれないのである。

                       大林ミカ(ISEP副所長
     2008年G8サミットNGOフォーラム環境ユニットリーダー)


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