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1. 風発:サムソ島の10年
                       飯田哲也(ISEP所長)

「自然エネルギー100%アイランド」のデンマーク・サムソ島に招へいされ、
雑事の合間を縫って、訪問してきた。計画から10周年を記念するワークショ
ップに呼ばれたのだが、当初から関係を保ち、幾度となく訪れ、自ら日本へも
紹介してきた経緯から、「10周年」に出席して感慨深いものがあった。

とくにデンマークは、2001年にブッシュと親しいラスムッセン政権に代わ
って以降、反環境イデオローグのロンボルグをアドバイザーに据えて、環境政
策、とりわけ再生可能エネルギー政策に対して、異常なまでの冷遇が今日でも
続いている。そうした社会環境のもとでは、再生可能エネルギー関連の団体は、
維持・継続だけでも困難で、多くの団体は、縮小や閉鎖に追い込まれている。
しかしサムソ島では、真新しいエコロジー建築でできた「エネルギーアカデミ
ー」という新しいプロジェクトに成功していた。2001年以降のデンマーク
には、ほとんど注目すべき社会イノベーションは見あたらないが、唯一、サム
ソ島だけは多くの環境知性が推奨する事例となっていることにも、それは表れ
ている。

さて、サムソ島の10年の成果はどうだったか。2005年に島内の自然エネ
ルギーで99.6%の自給に達しており(開始時の13%)、ほぼ「100%」
と言えるだろう。とくに電力については、11基の陸上風車と15基の洋上風
車(すべて島民出資)で100%をはるかに超える供給を達成している。熱は
40%強の供給だが、麦わら、木材チップ、太陽熱など地産地消かつ地域協働
型のエネルギー利用が進んだ。4カ所の小さな地域熱供給だが、もちろん
CO2フリー(中立)であるほか、麦わらが追加収入になり、化石燃料より安
く、出資を通じた収入があり、若干の雇用増にも繋がるという、「5重の配当」
である。交通部分は、まだ試験レベルに留まっているものの、総じて成功とい
えるだろう。

サムソ島を「成功」として知らしめているのは、こうした物理指標で見た側面
に加えて、さまざまな社会側面での取組みである。島民との合意形成や粘り強
いコミュニケーションを通じて「地域のオーナーシップ」による自律的なエネ
ルギーのあり方を維持する一方、対外的には、EUや日本など海外に拡がる社
会ネットワークの「核」となっている。世界で数多い「自然エネルギーアイラ
ンド」プロジェクトの中で、サムソ島は、物理側面と社会側面の両面で、おそ
らく唯一、実質的に「成功」を収めた例ではないか。これは、スポークスマン
であり、プロジェクトリーダーであり、そして島民であるゾーレン・ハーマン
センという卓抜なコーディネータのリーダーシップによるところが大きい。

これからの10年は、気候変動や石油需給(ピークオイル)、原子力ルネッサン
スなど、70年代以来、ふたたび「エネルギー論争の時代」に突入しようとし
ているが、サムソ島は、「デンマークの灯台」から「世界の灯台」として期待さ
れるのではないか。サムソ島のワークショップには、ちょうどinfoseヨーロッ
パ(リオサミットで結成された持続可能なエネルギー開発を目指す南北協力の
NGO)の15周年のワークショップを兼ねていたこともあって、じつに多彩
な人が集っていた。英国のCAT(Center for Alternative Technology)から、
カナリア諸島の環境エネルギー事務所から、マケドニアやポーランドの環境エ
ネルギー事務所から、欧州委員会から、デンマークエネルギー庁から、等々。
ここから、サムソ島の次の10年の歩みがはじまる。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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2.連載「光と風と樹々と」(20) 安倍晋三の「ぼくたちの失敗」
               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

   春の木漏れ日の中で
   君のやさしさに 埋もれていた
   ぼくは 弱虫だったんだョネ
      森田童子作詞 「ぼくたちの失敗」より(1993年)

 安倍晋三の突然の辞任劇は、歴史の常として、喜劇性と悲劇性に満ちていた。
アイスクリームが好物だという政治家への期待と人気は、アイスクリームのよ
うにたちまち溶けてしまい、政権はちょうど366日で幕を閉じた。

■十年遠のいた憲法「改正」――安倍政権の最大の成果
 安倍政権がもたらした「成果」は、実は幾つもある。
 もっとも大きなものは、憲法「改正」が少なくとも十年間は遠のいたとみら
れることである。自民・公明と民主が手を組めば国会の衆参両院の3分の2以
上の賛成で、憲法改正を発議できることに変わりはないが、
 1) 参院の与党の過半数割れは3年間続くし、3年後の参院選で自公で過半
数を奪回するためには、小泉人気のもとでの2001年の参院選並に、121
議席中75議席を得なければならない。現有は47議席しかない。それは至難
だろうから、与党の過半数割れ状況は今後6年間続く可能性が高い(参院はこ
のように大きな意味をもつのであり、参院不要論は民主主義の擁護という観点
からは大きな誤りである)。
 2) このような状況では、また参院選の教訓は、民主は自民と差別化した方
が有利だということであり、とくに重要争点では今後も「対決姿勢」を強調す
ることだろう。
 3)後続の自民の首相は、安倍の二の舞いを避けようとするから、憲法改正
を正面から打ち出しにくくなった。安倍政権は国民投票法の成立を置きみやげ
に、結果的に、憲法改正を十年間遠ざけたのである。憲法改正を実現するため
には民主党との大連立のような荒技が必要だが、それができる政治家が、自民
党の側にも民主党の側にもいるようには思えない。
 自ら「闘う政治家」を標榜し、「戦後もっとも保守的な首相」と英紙に評され
た人物が、しかも戦後最年少、戦後生まれ初という幸運に恵まれた政治家が、
精神的肉体的にはもっともひ弱な首相だったということを満天下に曝した、日
本の「保守政治家」の脆弱さを国民に学習させたことも大きな「成果」である。
「戦後レジームからの脱却」は、本気でそれをいうならば、アメリカ合州国の
反発や、韓国や中国からの反発も覚悟しなければならない。もともと胃腸の弱
い政治家が掲げるべき政策目標ではない。「戦後レジームからの脱却」を謳うに
は、あまりにも幼く、精神力も、体力も乏しかった。本人はもちろんだが、「戦
後レジームからの脱却」を焚きつけ、あおった「ブレーン」たちは自らの眼力
のなさを深く恥じ入るべきである。
 むしろ、国民的なレベルでの、戦後レジームの力強さ・健全さを示したのが、
7月の参院選で示された民意だったともいえる。

■リーダーの資質
 安倍政権がなぜこういう事態に陥ったのかは、8月下旬に出た上杉隆『官邸
崩壊』(新潮社)が説得的に描き出している。さもありなんというリアリティに
満ちている。
 塩野七生は、『ユリウス・カエサル ローマ人の物語IV』新潮社(1995
年)の冒頭で、イタリアの高校の歴史の教科書の一節を引用している。「指導者
に求められる資質は、次の五つである。知性。説得力。肉体上の耐久力。自己
制御の能力。持続する意志。カエサルだけが、このすべてを持っていた」この
五つのうちで安倍がもっていたのは何だろうか。
 
■国益を損なった首相の判断ミス
 それにしても判断力の乏しい首相であった。
 最大のミスは、誰もが後知恵的に指摘するように、参院選の大敗の責任をと
って、すぐに辞めなかったことである。私は地元のTV局の7月30日夜の選
挙解説で、視聴者向けに「安倍首相自身にとっても、今、辞める方が賢明であ
る。政権を続けて深手を負う前に、今退いておいた方が、まだ若いし、再登板
のチャンスも出てくる。」と述べた。安倍の力量で、老かいな小沢と対決して、
ねじれ国会を乗り切れないことは、周辺のベテラン政治家はよくわかっていた
のではないか。森や中川、青木といった人たちは、どうしてこのように本人を
説き伏せて安倍の傷や自民の傷を最小限にとどめ、かつ国益を守る努力をしな
かったのだろうか。このときに辞めていれば、「責任をとった」というかたちに
なって、再チャレンジの芽は残せた。「無責任」とか「政権を放り出した」とい
うことにはならなかった。7月30日夜の判断ミスが、私が予見したように、
自らの政治生命をも葬る結果になったのである(なぜこんな単純なことが予見
できないのだろう)。
 「多くの人は、自分が見たいと欲することしか見ていない」というのも、塩
野七生がよく引用するカエサルの言葉である。
 続投をいち早く進言した麻生前幹事長は、マンガは読めても先が読めないこ
とを露呈した。8月はじめ時点での福田政権の誕生を阻止し、いずれ安倍から
の禅譲を狙う算段だったが、見通しが甘かった。安倍政権はとうていもたない
ということを冷徹に見極めるべきだった。麻生の第2のミスは、よく指摘され
るように、辞任表明の2日前に、安倍から辞意を聞いていたことを口にしてし
まったことである。安倍の意中の後継者は自分だ、安倍は後事を自分に託した
いのだ、という趣旨で口にしたのだが、ではどうして知っていながら2日間放
置したのか、見殺しにしたではないか、という批判を浴びる結果になった。麻
生もまた「自分が見たいと欲することしか見ていない」ことを曝けだした。知
っていたということを述べたときの、党内のリアクションを予見できなかった。
それでは、首相は務まるまい。

■待てば海路の日和(ひより)あり
 したたかだったのは、福田康夫である。一見たなぼたにみえるがそうではな
い。彼の最大の勝因は、あまり指摘されていないが、実は、昨年の総裁選に早
期に出馬辞退を表明し実質的に安倍に譲ったことにある。日本の政治では、「譲
る」ことはとても重要である。取りに行くことと、譲ることとのバランスの間
に、日本の政治があるといってもいい。
 下手な政治家だったら、立候補を譲らずに、町村派を分裂させてしまったこ
とだろう。町村派を割らずに、安倍がつまずいたときには、派全体が、しかも
党内の反安倍勢力もこぞって自分について来るという読みが正しかったのであ
る。欲しがっている顔をしなかったことが、こういうときは福田だという流れ
をつくった。分を知らなすぎた安倍と、好対照である。小泉のあとに、地味な
自分では、参院選は戦えないということも、福田はよくわかっていただろう。
甘い安倍の失敗に賭けたのは、的確な読みだった。
 しかしもちろん権力の追求は自己目的であってはならない。首相になって、
どんな国をつくるのか。総裁候補になったあとから考えているようでは困る。
 リーダーの資質について、あらためて考えさせてくれたことも、安倍辞任劇
の大きな「成果」だが、71歳が登板しなければならないほど、この国のリー
ダーシップ・クライシスは、深刻である。ポスト福田のあとは……。

■下り坂の日本?
 安倍の突然の辞意表明を聞いた夜に私が思ったのは、この無様さは、今後の
日本の政治的社会的衰退の予兆ではないか、日本はどんどん下り坂をころげ落
ちていくのではないか、ということである。先の見えない安倍は、最悪のタイ
ミングでの辞任表明によって、日本の政治の国際的な信用失墜を招いてしまっ
た。2008年のG8開催国という絶好の立場も実質的に吹き飛び、温暖化問
題について、ポスト京都の枠組みを論議するにあたっても、日本の発言力は大
きく低下した。首相が突然政権を放り出すような国をどこの国も信頼しないの
は当然である。
 メディアがあまりとりあげない今後の焦点は幾つかある。私の関心の範囲で
は、
 1)小泉・安倍政権下での、各地での「ジェンダー・バッシング」をはじめ、
全般に保守に傾いた論調には、揺り戻しが来るのだろうか。
 2)石油会社の輸入課長の経歴ももつ福田は、エネルギー政策や温暖化政策
をどのように考えているのだろうか。甘利経産大臣にはあまり期待できないが、
原子力政策の見直し、自然エネルギーの振興策を含め、エネルギー政策の転換
をはかる可能性はないのか。
 3)閣僚の交代は最小限にとどめたものの、党や内閣の布陣は、消費税増税
を意識した構成になっている。環境税の導入に踏み切るのかどうかも、福田政
権の課題の一つである。
 与野党を問わず、長期的なヴィジョンと健全なリアリズムをもつ政治リーダ
ーを育てていくことは、最大の国益であり、日本政治のもっとも大きな課題で
ある。
(それにしても、日本のメディアも、ほとんど先が見えていないのではないか。
あまりにも既成事実追認的で、予見性に乏しい)

               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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3.「REFORMグループ ザルツブルグワークショップ」
                      山下紀明(ISEP研究員)

今年で12回目を迎えるオーストリア・ザルツブルグで開かれるエネルギー政
策に関するREFORM GROUPワークショップに参加した(注1)。所長
の飯田も理事メンバーであり、筆者は3年連続、インターンの古屋も2年続け
ての参加となった。今年のテーマは「Energy & Climate Policy -Supply Security
in international Comparison」(エネルギーと気候変動政策 ―国際比較で見
る供給の安全確保)(9月24〜28日)であり、プログラムは以下であった。

1日目 国際比較で見る気候変動政策
2日目 電力分野の規制改革、自然エネルギー政策と排出権取引
3日目 博士課程と若手研究者の日
4日目 石油と天然ガス市場 −カスピ海地域のエネルギー政策
5日目 原子力の展望、REFORMグループの研究アイデア

筆者は3日目に「東京都の気候変動政策の発展と国への政策移転」についてプ
レゼンを行った。前号のSEENで紹介した内容をもとに、古くは1950年
代からの大気汚染対策に始まり、2006年の再生可能エネルギー戦略、
2007年の気候変動対策方針の策定と先進的な取組みを行う東京都と国の施
策への影響について発表した。

国レベルの政策研究者による発表が多い中、座長のNicholas Watts氏(ロンド
ンメトロポリタン大学)からは、「都市レベル・中間レベル(intermediary
level)の潜在能力・可能性を示す興味深い事例である」とのコメントをいただ
き、「東京都は、米国におけるカリフォルニア州やEUにおけるドイツのように、
より大きな枠組みを動かしていくリーダーになってもらいたい」との期待が述
べられた。また、「なぜ都環境局が国をリードする姿勢を持ちうるのか?」「自
治体から国の規制を変えるグリーンエネルギー購入フォーラムの取組みの内容
はどうなっているのか?」などについて質疑が行われた(これらについては前
号、前々号のSEENを参照)。

古屋も同日、「日本の自然エネルギーにおける知識生産、技術と政策立案」とい
うテーマで発表を行った。1日目の気候変動政策でも話題になった「日本の国
レベルの政策は技術解に過剰な期待を寄せている」という点を指摘し、その一
方で、自治体レベルでは東京都が実効性の高い(feasible)健全な(robust)
自然エネルギー政策を立案していること、そして、それは長野県飯田市などで
行われている地域エネルギー事業の実践に裏付けられていることを、
"Cognitive praxis"という手法で分析し、斬新な視点からの考察が多くの参加
者の興味をひきつけていた。

今回のワークショップには筆者らを含め4人の日本人研究者が参加しており、
日本のエネルギー政策や電力市場についての発表を行ったが、国際的な議論の
中では日本の状況についてはいずれも少々自虐的に紹介することとなった。

ドイツは先進的であることにより利益を享受することができるという思考に基
づいた戦略的な自然エネルギー導入により、自国およびEUの目標値について
は達成できそうだが、原子力の停止に向けエネルギー需給を考えていく、とい
う更に大きな視点から、今後も継続的な推進が必要であることが議論されてい
た。元来自然エネルギーを促進すべき「新エネ等特別『措置』法」(RPS法)
が、「新エネ等特別『阻止』法」と揶揄される日本との彼我の差を感じてしまう
議論であった。

また、長期的な目標設定、規制、コミットメント、コスト効率的な施策設計な
どを組み合わせたカリフォルニアの政策などをはじめ、EU、英国、スロベニ
ア、カナダ、インドなどの分析を集中的に聞き、議論ができる貴重な場となっ
た。今回得た知見を政策提言に反映するとともに、こうしたエネルギー政策研
究者同士の情報交換の場に積極的に参加していく必要性を改めて感じた。

(注1)昨年のワークショップのプログラム、プレゼン資料はウェブサイトに
て公開。
http://web.fu-berlin.de/ffu/veranstaltungen/salzburg2006/index.htm

                      山下紀明(ISEP研究員)


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4.「地域発! 温暖化防止戦略を考えるセミナーを開催」
                       松原弘直(ISEP研究員)

地域の知恵や資源を活かした公民協働の環境エネルギーへの取組みが注目され
ています。まだまだ残暑が厳しい9月13日に開催された環境エネルギーセミ
ナー(ISEP主催)では、国内外の環境エネルギー政策を取り巻く状況や課
題を整理し、より具体的な2つの実践報告(横浜市、飯田市)や研究報告(永
続地帯指標)から、新たな地域発の温暖化防止戦略を会場にお集まりの70名
近い皆さんと探りました。

最初に、飯田哲也(ISEP所長)より国内外や地域の環境エネルギーを取り
巻く政策課題について以下の様な問題提起がありました。自然エネルギーの世
界市場が10兆円近い規模に拡大するなか、ドイツではこれまでの普及政策に
より風力発電の総設備容量が2000万kW以上に達し、風力産業の拡大や雇
用創出効果などを含め「3つの配当」を得ることに成功しました。さらに、太
陽光発電でも同様の効果が期待されており、EU全体では2020年までに
30%という再生可能エネルギーの導入目標値を設定しています。一方、日本
国内では従来型の補助金政策(供給・技術プッシュ型)が続いており、これを
需要側の市場や地域社会を主体にした「プル型」に変える必要性が指摘。欧州
での「環境エネルギー事務所」の事例や日本国内での市民風車や地域エネルギ
ー事業への取組みなどに注目しています。

続いて、環境省により3年前から行われている「環境と経済の好循環のまちモ
デル事業」を中心に、環境省環境計画課の大倉氏から基調講演があり、京都議
定書達成に向けた国の取組み状況と合わせてこのモデル事業などの紹介があり
ました。2004年度から始まり3ヵ年で全国19の地域で各地域の特徴を活
かしたモデル事業。林業が参加な地域での木質バイオマスの熱利用、都市部で
のヒートアイランド対策、省エネ事業や自然エネルギー(太陽光、BDFなど)
の導入整備事業が実施された。2004年度に事業がスタートした地域では2
006年度までの3年間で事業がすでに完了し、その評価が現在行われていま
す(飯田市もそのひとつ)。環境省では地域における自然資本の活用を重要して
おり、地域の特性を活かした都市計画の見直しや化石燃料に頼らず地域内で資
金や資源が循環する地域づくりに関する事業を来年度に向けて検討しています。

地域発の実践事例として横浜市で2003年にスタートした風力発電事業につ
いて横浜市環境創造局の関川課長から報告がありました。事業化のポイントは、
「目に見える“モノ”で示す」ための大型風力発電、環境教育による「次世代
に向けたメッセージ」、「最小の費用で最大の効果を得る」ための民間資金の活
用、そして「市民と共に取り組む」ための市民参加。もともと市役所内の起業
アイデアの募集の中で生まれたもので、住民参加型市場公募債(かざぐるま)
による資金調達(2億8000万円)とY(ヨコハマ)−グリーンパートナー
制度(年間4500万円の企業からの10年間の協賛)によるグリーン電力証
書の活用。昨年までに施設はすでに発電を開始しており、横浜港の新たな観光・
環境教育施設としても注目を集めています。

2つめの地域エネルギー事業の実践として、飯田市での公民協働事業である「お
ひさま進歩エネルギー有限会社」の挑戦とその成果について竹村氏から紹介が
ありました。飯田市では平成16年度に上記の「まちモデル事業」に採択され、
様々な普及啓発事業や木質バイオマス事業の他、太陽光発電と省エネ事業を民
間の事業会社への助成事業として実施した。省エネ事業では、「商店街ESC
O」として中小規模の施設に対する省エネの診断を行い、13ヶ所の施設の省
エネ改修をサービサイジングとして提供。中心市街地に隣接し、もっとも規模
が大きい飯田市美術博物館について、空調設備を高効率・省エネ型に更新し、
40%近い省エネを実現。また、市内38ヶ所の保育園などの公共施設に太陽
光発電設備を設置し、発電した電力を設置した施設に販売すると共に、グリー
ン電力証書の販売やマスコットキャラクター(さんぽちゃん)が登場するパネ
ルシアターによる環境教育を実践しました。

研究報告として千葉大学公共研究センターとISEPが共同研究を行った「エ
ネルギー永続地帯」の紹介が千葉大学の倉阪准教授よりありました。「永続地
帯」は、食料とエネルギーの自給が可能な地域を評価する指標で、市町村など
の地域でその自給率を評価する試み。2006年度の研究では市町村あるいは
都道府県毎に民生用電力需要対する再生可能な自然エネルギーの割合(自給率)
の計算を行っており、自給率が20%超える都道府県は大分県、秋田県、富山
県、岩手県の4県で、地熱発電や小水力発電の占めるウエイトが大きい。多く
の都道府県で小水力(1万kW以下の水路式)が大きなウエイトを占めており、
従来はあまり注目されて来なかった小水力の重要性を指摘。小水力は全国の自
然エネルギーによる発電量の約6割を占めていますが、地熱は大型の発電施設
が多く18%、風力が12%、太陽光発電が6%。エネルギーの自給率が10
0%を超える「100%エネルギー永続地帯」の市町村は76あるが、逆に需
要の大きい都市部では1%以下と自給率は非常に低く、グリーン電力証書の購
入の様な形が期待されます。

セミナーの最後には、飯田所長をコーディネータにパネル討論を開催し、講演
に対する会場からの質問などを受けて、引き続き各パネリストの方々から細か
い回答やコメントなどを頂きました。短い時間の中でしたが、国全体の政策か
ら、地域でのより具体的な事業の方向性や地域政策での指標の活用まで非常に
レンジの広い具体的な論点が取り上げられたパネル討論となりました。セミナ
ーのアンケートではセミナーの充実した内容を評価する一方、もっと多くの人
に参加してもらうべきとのご指摘もありました。ISEPでは、今回のセミナ
ーでの発表資料や議事録をWebサイトで公開すると共に、今後とも地域発の
環境エネルギー事業を支援し、その評価や成果の普及に取組んで行きます。

なお、セミナーで発表された資料や議事録の一部は、以下のISEPのページ
からダウンロード可能になる予定ですので、ご参照ください。

ISEP環境エネルギーセミナー(第2回):
           「地域エネルギーによる新たな温暖化防止戦略」
http://www.isep.or.jp/event/070913sympo.html

                       松原弘直(ISEP研究員)


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5.プロジェクトフラッシュ

1) おひさま発電所はどんどん広がります!
                南原順(おひさま進歩エネルギー有限会社)

 平成16年度に飯田市内38ヵ所に設置した、市民共同のおひさま発電所(太
陽光発電)は、太陽の光を受けて順調に発電を行っています。おひさま発電所
は、市民が力をあわせて自然エネルギーを普及していく取組みとして地域内外
で注目され、平成18年度からは新たに環境省の「メガワットソーラー共同利
用モデル事業」の補助対象事業に選定されました。この事業においては、20
年度までの3年間で約120ヵ所、計1000kWのおひさま発電所を、飯田
市を含む南信州地域を設置します。これにより、約160ヵ所のおひさま発電
所が地域に生まれることになります。
 すでに18年度には44ヵ所の設置を行いました。飯田市以外にも南信州地
域の15の町村、長野県の下伊那地方事務所の協力を得て保育園・幼稚園など
の公共施設に設置している他、地球温暖化防止という目的に共感してプロジェ
クトに参加した民間の事業所にも数多く設置しています。また、これらの施設
でも、これまでの飯田市内の施設と同じように、園児・児童への環境学習劇や
地域の方々との環境学習会など、普及啓発活動も行っています。設置施設の方
から、イベントでのおひさま発電発電所のPRや、施設スタッフにもできる省
エネの取り組みなどについて勉強会でレクチャーしてほしいと直接リクエスト
をいただくことも増えており、環境問題についての関心が増していると感じま
す。
 加えて、おひさま発電所となった農産物の加工所や農家では、地域の特産品
であるぶなしめじや市田柿(干し柿)、ジャムなどを太陽光発電の電気で作った
商品としてブランド化し、販売しようというプロジェクトも立ち上がっている
など、環境への取り組みを自らの商売や地域の活性化につなげていこうという
動きが積極化しています。また、9月4日には、NHK総合の朝の番組「おは
よう日本」でクリーンエネルギー特集の中で、市民が取り組み成功している事
業として取り上げられました。
 皆様の応援を得てスタートしたおひさま発電所は、飯田市を飛び出して、よ
り広い地域に広がっています。

                南原順(おひさま進歩エネルギー有限会社)


+++++++++++
2)自然に囲まれた備前で
         土井聡美(備前グリーンエネルギー株式会社 インターン)

私は、8月から備前でインターンを経験させて頂いております。社会の環境に
対しての意識が高まる中で、「環境」をテーマに活動する人々と関わりたいと思
い、ボランティアに参加していました。その活動の中で、備前グリーンエネル
ギーの方とお会いし、インターンの話を耳にしました。会社が地元密着で活動
していると伺い、何か新しい発見があるかも知れないと思い、インターンに参
加しました。

私は現在、京都で森林バイオマス普及・啓発の活動をしております。その中で
も環境教育に携わっており、一般の方々に持続可能な社会に関して興味を持っ
て頂こうと、イベントの企画担当をしています。実際に山に入って、山の手入
れをしたり、ビオトープ調査にも積極的に参加したりしていました。そのよう
な活動を通して私が感じたのは、このようなボランティア的な活動が、もっと
直接的に社会にインパクトを与える形態を作り出せないかということです。で
すから、備前みどりのまほろば協議会と備前グリーンエネルギーが連携して事
業を行っているということに非常に興味を持ちました。環境教育は、一般の方々
の環境意識向上において大切であり、今後も続けていく必要があります。しか
し、意識面のみの向上では、社会に対しての効果は小さいです。ですから、備
前グリーンエネルギーが、技術面でサポートすると聞いて、会社の形態として
非常にバランスがとれた事をなさっていると感じました。インターン中には、
西日本エコツアーで様々な団体や会社を視察・訪問していたのですが、「各団体
や会社は連携して物事を進めないと、社会に対しての大きな効果は得られない」
と痛感しました。ですから、その際も協議会と備前グリーンエネルギーの地域
に根付いた事業の重要性を感じました。

備前グリーンエネルギーは環境省のモデル事業として、グリーン熱サービス事
業と省エネルギーサービス事業に取り組んでおります。グリーン熱サービス事
業は、バイオマスを使用したエネルギーの普及を促すというもので、私の所属
するボランティア活動の内容と類似する点が多かったです。また、大学で建築
を専攻しているのですが、省エネルギーサービス事業のお手伝いをする際に、
設備機器の図面を見せて頂くことが多く、勉強になりました。

また、備前に滞在する機会に恵まれ、自然の美しい備前を肌で感じることが出
来ました。育てた野菜を収穫して食べたことも良い経験です。朝、備前は光と
共に美しい風景が目に入ってきます。そんな時、多くの自然に囲まれていると
感じるのです。自然の豊かな環境で生活しながらインターンをさせていただい
たことは非常に幸せなことであり、毎日が刺激的です。そして、多くの方々と
出会えることも魅力ではないでしょうか。インターンを通して、私の活動はよ
り活発なものになりました。今後も、自分の出来ることに全力で取り組んでい
きたいと思います。

         土井聡美(備前グリーンエネルギー株式会社 インターン)


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