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4.インターン報告 おひさまインターンで学んだこと
        西井勢津子(ISEPインターン、おひさま進歩エネルギー)

 私の住む名古屋市から飯田市まで、高速バスで2時間の距離である。普通な
ら通勤範囲とは言えない距離だが、自然エネルギービジネスの市場性や可能性
に惹かれ、技術も経験も持たず、飯田所長に薦めていただくままに高速バスに
飛び乗った。1年間、名古屋での仕事と両立させながら週1回か2回のインタ
ーンだったが、今はその2時間の距離におひさま進歩エネルギー(以下、おひ
さま)があったことをとても幸運だと思っている。

 おひさまでは、環境省「まほろば事業」の最終年度である3年目を迎えてい
た。私は、ISEPが包括契約により経営に参画しているこの事業を、環境と
地域経済課題の処方箋となるような普遍的なビジネスモデルの一端でも学べれ
ばと考えていた。この事業をビジネスモデルとして、疲弊し困難を抱える地域
に落とせば、文字通り「環境と経済の好循環」を創造できるのではないか、そ
してそれは私の田舎でも可能なビジネスなのではないかと。

 実際には、ビジネスモデルの一端を捉えるどころか、おひさまが編みこまれ
ている地域のネットワークや市政を含む飯田のまちの魅力に、驚かされること
ばかりだった。おひさまが先進的に生み出したこの3年間の結果というのは、
もちろん、豊富な日射量という自然環境条件、大規模な補助金、自治体との協
働、技術者や戦略を送り込むISEPの参画といういくつもの強みが要因とな
っている。だが、こうした環境条件を整えるだけでは不十分なのだ。インター
ンとして私が学んだことは、飯田市という人口10万人の地域に流れ、おひさ
まを支えた、社会関係資本(ソーシャルキャピタル)の豊かさである。

 行政との協働でいえば、同じテーブルにつき業を担うことで「協働」をうた
い、手段が目的化する失敗をよくみかけるが、飯田では、市政を担う人々がテ
ーブルの向こう側にいるのではなく、隣に座っている感覚のようだった。向か
いあうのではなく、同じ目的と方向を見つめて隣にいるという、本来の協働の
姿を肌で感じた。

 忘年会には、おひさまの有給職員の5倍にのぼる関係者が集まった。省エネ
事業に関わる業者も、環境活動を行う団体のメンバーも、地域の有力者も、そ
して歴代の環境課の面々も。名刺こそ違えど、環境と地域づくりに長い時間を
かけて取り組んできた豊かなネットワークだった。飯田市にとって、自然エネ
ルギービジネス事業を興すことは、目的ではなくひとつの手段に過ぎないのか
も知れないと思った。

 往復5時間、滞在時間6時間。活況を呈する名古屋経済圏から飛び出して何
があるのかと周囲に驚かれることもあった。通い続けたのは、飯田市には名古
屋にはないものがたくさんあったからだ。名古屋での自分の仕事や社会活動の
責任の大きさに伴いインターンを終了させていただいたが、おひさまをビジネ
スモデルとして仰ぐには、もうすこしこの豊富なソーシャルキャピタルを丁寧
に解きほぐさなくてはならない、というのが現在の心境である。高層ビルの隙
間から、これからの飯田市のまちづくりを羨望のまなざしと心からのエールを
送りたいと思う。

 最後に、名古屋からという無謀な申し出を受け入れていただき、インターン
としての隔たりなく職員同様に扱っていただき、最後まで私の意志を尊重して
くださったおひさまの皆さまに、心から深い感謝の気持ちを表したい。本当に
ありがとうございました。


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1. 風発:ブーム=バースト
                       飯田哲也(ISEP所長)

【当研究所のメルマガおよび風発の発行をしばらく中断しており、ご迷惑をお
かけしました。今号からリニューアルして再開しますので、ご期待ください。
今後ともよろしくお願いいたします。】

ジョージ・ソロスは、市場にときおり生じる、いわゆる「バブル現象」を「ブ
ーム(暴騰)=バースト(暴落)理論」として説明した。この市場におけるブ
ーム=バーストは、その上昇トレンドが市場参加者の潜在的な期待バイアスを
強化してますます暴騰し、その期待が懸念に反転した瞬間に暴落が生じる不連
続な動きである。1987年のブラックマンデーや1997年のアジア通貨危
機、そして日本のバブル経済もまさしくそうであった。

さて、日本の自然エネルギーもこのブーム=バーストの歴史をたどってきた。
1980年代初頭に、太陽熱温水器がにわかにブームとなり、一転、売上げが
急減した後は、現在に至るまで長期低迷傾向にある。風力発電は、1998年
に電力会社が導入した「長期購入メニュー」によって、意図しない「小さなバ
ブル現象」が生じたものの、新エネRPS法の施行された2003年あたりを
ピークに、市場が低落しつつある。そして、太陽光発電も、政府の補助金の打
ち切られた2005年をピークに、ついに2006年には初めての前年比減を
記録したのである。つい先日まで、「日本は太陽光で世界一だ」と見栄を張って
いたのも、今は昔。今や、累積でもドイツの約半分(日本が約150万kW、
ドイツが約300万kW)、単年度の市場規模ではドイツの四分の一程度に過ぎ
ず、生産でもドイツの企業は急成長している。

世界の自然エネルギー市場は、2004年に世界全体で約3兆円規模が、
2005年には約5.5兆円規模へ、そして2006年には約8兆円規模への
急拡大している。こうした世界のトレンドから、日本は一人取り残されている。
世界的に急成長する自然エネルギー市場が、逆に冷え込みつつある国は、少な
くとも先進国の中では日本以外には、見あたらない。

自然エネルギー市場は、世界を瞬時に駆けめぐるグローバル金融市場やグロー
バル株式市場とは違って、「政策市場」と呼ばれる。それぞれの国や地域の「環
境エネルギー政策の政策環境」が市場に強く影響する自然エネルギー市場の動
きは、ソロスの「ブーム=バースト理論」では説明できない。むしろ、アメリ
カの風力発電市場と同じく、「ゴー=ストップ市場」に近い。アメリカでは、連
邦政府が風力発電への支援策(とくに生産税減税)が頻繁に中止されたり再開
されるために、それに応じて風力発電市場も普及したり滞ったりするなど、不
安定な連邦政府の政策に強い影響を受けてきた。

日本は、政治的に不安定なアメリカの自然エネルギー市場に似ているが、もっ
とお粗末で、より深刻である。太陽熱市場も風力発電市場も、そして太陽光発
電市場でさえも、けっして慎重に練られた支援策のもとで普及したのではなく、
「思いがけない政治的偶然」によって急激に普及したというのが、出発点であ
る。ところが、新興市場が成長するにつれて、既存のセクターがさまざまな巻
き返しに出る。太陽熱温水は、既存のエネルギー三事業(電力、ガス、石油・
LPG)の厳しい競争の中で排除され、風力発電は、電力会社による「系統に
制約がある」という口実で締め出された。太陽光発電も、風前の灯火となって
いる。

年金問題や臨界事故隠しなど、国内では「偽装社会」の化けの皮が次々に剥が
れつつあるが、国際社会から見ても日本は「ロストワールド」となりつつある。
2050年に二酸化炭素半減を目指す安部首相の「美しい星」も、内実の欠落
と下品な思惑が見透かされていて、国際社会からは、まともに相手をされてい
ない。こうした環境エネルギー問題だけでなく、国際捕鯨委員会で『水産庁の
対応は子供じみた癇癪』と世界にあきれられたり(グリーンピース)、従軍慰安
婦問題では、米紙ワシントン・ポストへのお粗末な意見広告で逆に批判の声を
高めたあげくに米下院外交委員会決議が可決された。

知日派の米国人学者が最近相次いで出版した好著がある。レナード・ショッパ
(ヴァージニア大学教授)の『「最後の社会主義国」日本の苦闘』(毎日新聞社)
は、少しキワモノっぽいタイトルながら、「見返りの乏しい社会改革に努力する
よりも逃げる方が容易いために、企業と女性の離脱が進行している」という日
本の社会分析を提示している。マイケル・ジーレンジガー(UCバークレー客
員研究員)の『ひきこもりの国』(光文社)では、日本にしか存在しない「ひき
こもり現象」を写し鏡にして、日本の停滞と社会的な機能不全を見事に分析し
ている。

日本が「バースト」する前に、再生できるか。ジーレンジガーが紹介している
韓国再生のエピソード「危機の原因は自分たち自身の内部にあった」は示唆に
富んでいる。逃げず、ひきこもらず、「ムラ」から「開かれた社会」へと、自分
自身が変わっていくしかないのだろう。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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2. 連載「光と風と樹々と」(18)
      市民協働か、都市成長か――本当は対立軸がある
               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

■「小さな石原慎太郎」が跋扈する
 3月5日に、仙台市議選立候補予定の75名(最終的な立候補者は76名に
なった)に、仙台市政と仙台市議会に関して、郵送による質問紙調査を行った。
大変面白い結果が出たので、本メルマガの読者にもポイントを紹介したい。
 仙台市長は2005年7月に、3期12年を務めた藤井前市長が勇退したあ
とを受けて、彼が後継者として指名した、経済産業省の元官僚の梅原氏が当選
し、市長に就任した。
 藤井前市長は、教育長などを務めた社会教育畑出身の元市役所職員で、前任
の石井市長が汚職事件で逮捕されたために、急遽、市長に担ぎ出されることに
なった。何かと話題の多かった、パフォーマンス好きの浅野前知事ほどの派手
さはないが、「市民協働」を旗印に、市職員のバックアップを受けて、ほぼ安定
した12年間を務め上げた。仙台市のNPO活動が全国的にみても活発で評価
が高いのは、NGO側のリーダーの貢献度が大きいが、この市長が政策的にバ
ックアップしてきたことも見逃すことはできない。
 しかし後継のはずの梅原新市長は、市長に就任するや早速、市長室に「日の
丸」を掲揚、独自路線を突っ走り始めた。市の中堅職員や幹部職員から、私自
身、直接いろいろなエピソードを聞かされ唖然とするばかりだ。わかりやすく
いうと「小さな石原慎太郎」である。
 選挙時の市長の公約は「市民満足度日本一」だったが、市議会で、議員から
「市長満足度日本一」ではないか、と揶揄されたほどである。この市長の挨拶
を、直接何度か聞いたことがあるが、「市民」という言葉は、ほとんど出てこな
い。「市民活動サポートセンター」とか、固有名詞の一部として出てくるのみだ。
市民という言葉を辞書に持たない市長を有する市民ほど不幸なものはなかろう。
 これは私の住む仙台市の例だが、今、「小さな石原慎太郎」が全国で少しづつ
跋扈しはじめているのではないか。私はこのことを何よりも憂うる。
 ただしわが仙台市の救いは、これまでのところ、この市長が市役所の中でも
孤立気味で、心ある職員は市長に批判的で、地元のメディアも批判的なことで
ある。市議会でも、唐突に提案されるそのユニークな政策をめぐって論争が巻
き起こり、浅野時代の県議会とは異なって、ここ何年も惰眠をむさぼっていた
議員たちを活気づかせることになった。
 石原を見習って、市長が打ち出した思いつきの中でも、とくに市民の反発を
呼んだのは、財政難を理由にした「エルパーク仙台」という19年続いてきた
男女共同参画センターの突然の廃止提案である。女性グループが反対署名を集
め、リコール運動も辞さずという構えをとったことで、事実上、市長は、提案
を棚上げせざるをえなくなった。
 しかし市議選が近づくにつれて私が残念に思ったのは、これだけ問題のある
市長であるにもかかわらず、真っ向から市長批判、市政批判を掲げて市議選に
出馬表明する立候補者が、共産党などをのぞくとほとんど見当たらないことで
ある。「少数激戦」ではあるが、市長の路線を肯定するのか、否定するのかも曖
昧で、現市政の是非はどこかに隠れてしまい、表向きは「無風」状態に近くな
ってきた。国政への「転校」を断念し、「お殿様」としての政令市の市長職の面
白さに目覚めてしまい、再選を狙いはじめた市長も、「市長満足度日本一」と揶
揄した議員含め、共産党をのぞく全会派の候補者の選挙事務所を陣中見舞いし
はじめた。
 そこで市民グループの人たちとも相談し、かつて東北大学で教鞭を執られ、
仙台の幾つかの NGOのリーダーでもある新川達郎(同志社大学教授・行政
学・地方自治論)とともに、私が中心となって企画し、実施したのが、市議選
立候補者へのアンケート調査である。調査票と主な調査結果は、私のウェブに
掲げてある。
http://homepage.mac.com/hasegawa3116/Sendai2007.htm
 主な質問項目は、立候補者の政策認識、議会改革認識、仙台市政およびその
政治手法への評価、藤井前市政への評価、村井県政への評価、分権化、NPO・
NGOとの協働についての認識などである。表面的には隠れかけていた選挙戦
の争点を、調査をつうじて、明確にしようとした試みである。
 候補者たちができるだけホンネで答えやすいように、回答は無記名にした。
 3月14日まで議会開会中であり、告示を目前に控え、回収率が危惧された
が、最終的には47名から回答が得られ、回収率は62.5%だった。

■「市民感覚に乏しい」市長
 興味深い知見が幾つも得られたが、梅原市政を肯定的に評価する候補者も、
否定的に評価する候補者も、梅原市長を藤井前市政の継承者とは見ていない。
梅原市政は、藤井市長の後継者として誕生はしたが、藤井前市政とは政治手法
や政策目標が異質なものと見なされている、ということがデータの裏づけをも
って示されたことも、この調査の重要な貢献である。
 梅原市政を肯定的に評価する主な理由(問6a複数回答)は、「改革への意欲」
「市政のめざす方向の明確性」(ともに8人、評価する候補者の61.5%)、
「リーダーシップへの期待」(6人、同46.2%)であり、藤井前市長の後継
者であることを理由にあげた者はわずか1名にとどまった。
 梅原市政を評価しない主な理由(問6b複数回答)は、「市民感覚に乏しい」
(24人、評価しない候補者26人の92.3%)、「政策に共鳴できない」(1
3人、同50.0%)、「議会軽視が目立つ」(10人、同38.6%)であり、
藤井前市政との継続性の乏しさを理由にあげた者も8人(30.8%)にとど
まった。与党系・野党系含め、評価しないと答えた26人の候補者のうち、2
4人から、「市民感覚に乏しい」と指摘される市長をいただく市民の哀しさ、市
職員の哀しさを想像してほしい。

■「市民協働志向」と「都市成長志向」――市政評価を規定する2つの因子
 私の予想を超えて、もっとも興味深かったのは、梅原市政の重点施策10項
目と市議会、市役所職員との関係をたずねた次の12項目への回答(評価する
/どちらかといえば評価する/どちらともいえない/あまり評価しない/評価
しないの5段階評価)を因子分析(潜在的な構造や潜在的な規定因子を抽出す
る代表的な統計手法)した結果、2つの対立軸が得られたことである。
(1)安全・安心のまちづくり/(2)シティ・セールスへの取り組み/(3)
歴史的町名の復活/(4)政策調整局の新設/(5)仙台都市総合研究機構の
廃止/(6)地下鉄東西線の着工/(7)地下鉄東西線本体工事にともなう青
葉通のケヤキの移植/(8)エル・パーク仙台の廃止提案/(9)市民協働の
まちづくり/(10)藤井前市政の継承/(11)現市長と市議会との関係/
(12)現市長と市役所職員との関係/
 これらへの回答パタンから、因子分析によって「市民協働因子」と「都市成
長因子」の2つの因子が得られ、回答者および6つの会派と無所属を、この2
軸上にプロットすることができた(本メルマガでは残念ながら図は表示できな
いので、前述のウェブページ上で、図1・2・3を見てほしい)。
 第1因子は、政策調整局の新設(4)、市民協働のまちづくり(9)、藤井前
市政の継承(10)、市役所職員との関係(12)、エルパーク仙台の廃止提案
(8)、歴史的町名の復活(3)などの評価と密接に関連する因子であり、梅原
市政の政治手法に関わる因子である。市民協働や下からの合意形成に肯定的か
否定的かという軸と解釈でき、「市民協働志向因子」と名付けた。これは、様々
なアクター、利害関係者(ステイクホルダー)との合意形成過程や協働を重視
しようとする、ガバナンス(協治)に関わる因子ともいえる。
 第2因子は、地下鉄東西線の着工(6)、シティ・セールス(2)、安全・安
心のまちづくり(1)などに関連する因子であり、梅原市政の政策目標・政策
内容に関わる因子である。政策目標としての都市成長に肯定的か否定的かとい
う軸と解釈でき、「都市成長志向因子」と名付けた。
 市民協働に賛成か反対か、都市成長に賛成か反対か、を直接たずねたのでは、
八方美人的な回答しか得られまい。仙台市政で論争的な項目をたずねることを
とおして、間接的に、しかも明快に浮かび上がってきたのが、この対立軸であ
る。

■都知事選の対立軸と民主党の位置
 3月28日のプレス発表で、私がついでに補足的に述べたのは、梅原市政を
石原都政と読み替えれば、東京都知事選における基本的な対立軸ととらえるこ
ともできるのではないか、ということである。仙台市政を超えて、県庁所在地
や政令指定都市などにおける、現代の地域政治の新しい対立軸と解釈すること
もできるのではないだろうか(もちろん他都市での検証が不可欠である)。例え
ば、静岡空港建設の是非、神戸空港建設の是非などの争点が思い出される。自
民系会派対社民党・共産党という構図にも基本的に対応しているが、「保守とリ
ベラル」という伝統的な対立軸との関係を明確化することが今後の課題だろう。
 もう一つ興味深かったのは、候補者個々人の因子得点を会派別に集計して平
均得点を計算してこの2軸上にプロットしてみると、民主党系会派の位置がも
っとも原点に近かったことである(図3)。そもそも因子得点には全回答者分を
合計すると原点になるという性質がある。つまり、保守系もリベラル派もいる
民主党系の候補者の平均値が結果的に原点に近くなったということである。
 それは、地方議員選挙における民主党および民主党系会派の性格の「曖昧さ」、
位置どりの不明確さを示してもいる。地方議員の立候補者レベルでの回答結果
をもとに、この点は、はじめて実証されたのではないだろうか。
 さて、都知事選およびわが仙台市議選の開票結果はどうなるだろうか。
 (2007年4月6日記す)
 
■付記 開票結果を受けて
 東京都知事選は、浅野史郎らに110万票以上の大差をつけて、石原慎太郎
が3選をはたした。最大の敗因は、民主党側の準備不足であろう。言うまでも
なく、知事選は4年ごとに確実にやってくる。石原3選をどうすれば阻止でき
るのか、という明確な方針も戦略もないままに漫然と4年近くをやり過ごし、
告示直前に、前宮城県知事を突然担ぎ上げてにわかブームをあおって「無党派
層」を取り込もうとしても限界があるのは当然である。
 「民主は……対立軸を示すまでには至らなかった」(朝日新聞4月9日付1
面)とされるが、対立軸はこのように歴然とあるのである。対立軸が意識され
ていないことこそ、問題であり、寄り合い所帯の民主党の場合、合計すると「中
性化」してしまう、ということも大きな問題である。
 仙台市議選は民主が3議席(計9議席)、社民が1議席(計6議席)増え、諸
派・無所属がその分減っただけで、自民(10議席)・公明(8議席)・共産(6
議席)は現状を維持した。当選した市議の勢力図には大きな変化はなかった。

               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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3.プロジェクトフラッシュ

1)自然エネルギー・省エネルギー起業講座を開催して
                  柳沼佑貴(おひさま進歩エネルギー)

3月15〜17日、長野県飯田市においてNPO南信州おひさま進歩主催で「自
然エネルギー・省エネルギー起業講座」を開催しました。文字通り自然エネル
ギー・省エネルギーでの起業を志す方々を支援することが目的で、昨年に引き
続き2度目の開催となる。平日金曜日から始まる2泊3日の講座にもかかわら
ず、全国各地から約40名の方々の参加していただき、講座は大いに盛り上が
りました。

参加者は昨年同様、熱く、志が高い方々ばかりで、主催者側としても各人のそ
の想いは刺激的なものばかりでした。我々の事業としても今後チャレンジして
みたいと思っていたことや、またそれを凌ぐ斬新なアイディアの持ち主が大勢
いて、講座を通して行われたディスカッションはとても創造に富んだものにな
っていたのではないかと思います。

講座の内容は、参加者の起業のアイディアをいくつかピックアップし、グルー
プを組んでその起業アイディアの具体的なプランを完成さていくというワーク
ショップ型。一つのグループ5人から10人程度で、各グループ一テーマで行
ないました。また、ワークショップの合間には、現在の自然エネルギー・省エ
ネルギーの状況などの講演や、おひさま進歩エネルギーが飯田市で実践してい
る事業の視察ツアーが催された。そして最後はコミュニティービジネスの先駆
者である片岡勝氏(市民バンク代表)から10個以上の起業への心得なる格言
を頂き、また片岡さんはふんだんなユーモアとともにお話されるので、参加者
一同笑いとともに起業に対する前向きな勇気を頂けた貴重なお話を聞かせてい
ただきました。

さて、今年のワークショップで議論された起業プランは5つ。自然エネルギー
への投資プラン、菜の花栽培によるBDF生産プラン、新規就農者向けのサポ
ートビジネス、ワークショップ型グリーンツアーによる地域活性化ビジネス、
地域の資源を利用した地域活性化プランです。自然エネルギー・省エネルギー
がメインテーマでありながら、それぞれが地域コミュニティや地域産業、そし
て農林業と、どのプランもそれらに大きなかかわりがあるものばかりで、結果
的には地域の自然資本への期待というものが浮き彫りにされたという形になっ
ていたのではないかと思います。
講座の最後には各プランのプレゼンがありますが、はじめはまだ構想段階だっ
たプランたちも、グループディスカッションと通して、商品設計からマーケテ
ィング、損益計画・投資計画等を練り上げることによって、発表段階では一段
も二段も深まったすばらしい起業プランが出来上がり、講座を通してとても有
意義な学習や交流ができたのではないかと思います。
今後もこの企業講座は毎年開催する予定でおります。南信州おひさま進歩とし
ても、同じ有志を持った方々の起業を手助けするとともに、今後もネットワー
クを生かしつつ、日本各地に眠る自然エネルギー・省エネルギーの芽を大事に
育てていくことに協力できればと思います。


++++++++++

2)「永続地帯研究会」の一年目が終了して
     馬上丈司(千葉大学人文社会科学研究科 ISEPインターン)

 1980年に発表された「世界保全戦略」において、「持続可能な開発」
(Sustainable Development)の概念が公表されて以降、社会の持続可能性をど
のようにして確保するかが全世界的な関心事となっている。永続地帯
(Sustainable Zone)とは、再生可能な更新性資源を基盤とした経済社会への
転換を進めるための指標であり、ある区域内で分散的に得られる資源によって、
その区域におけるエネルギー需要および食糧需要のすべてを賄うことが出来る
区域として定義されるものである。更に、永続地帯のサブ概念として「エネル
ギー永続地帯」と「食糧自給地帯」という二つの概念が提示される。永続地帯
指標の社会的な役割や意義については別稿(「永続地帯―更新性資源ベースの地
域経済指標」計画行政 第29巻 第4号 P10)に譲るとして、今回は私が従
事した2006年度の永続地帯研究会における、エネルギー永続地帯の研究に
ついて述べさせていただく。

 エネルギー永続地帯とは、その区域における自然エネルギーのみによって、
その区域におけるエネルギー需要をすべて賄うことが出来る区域である。この
研究会では、エネルギー永続地帯概念にかかる指標の推計方法の検討に始まり、
実際に日本国内の全市区町村のエネルギー需要および自然エネルギー供給につ
いてデータ収集を行い、暫定的ながらエネルギー永続地帯指標の推計値を算出
するに至った。エネルギー需要として家庭や業務用の民生部門の電力、自然エ
ネルギー供給については発電施設に限定して指標の推計を行った。今回の研究
では、自然エネルギーによる電力供給手段として、太陽光発電、風力発電、地
熱発電、バイオマス発電、小水力発電を対象とし、この中で私自身が担当した
のは、区域内の自然エネルギー供給量のうち、一般住宅用太陽光発電、事業用
太陽光発電、事業用風力発電、地熱発電の四種類のデータ収集である。この四
種類については、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)やNEF
(新エネルギー財団)、RPS管理システムなどで設備所在についての詳細な資
料が公表されているため、自然エネルギー供給設備をリスト化する作業は行き
詰まるということはなかった。問題は、供給設備からそこで実際に生み出され
るエネルギー量を推計する作業である。自然エネルギーの発電設備では、事業
用でも実際の発電量が公表されていることが少ないため、設備容量から発電量
を推計しなければならない。例えば、太陽光発電では年間日照時間や日射強度、
風力発電では風況をはじめとし、推計のために勘案すべき条件は多岐に亘るこ
とになる。更に、それを国内の全市区町村で行うのである。研究会では幾度も
議論を重ねて推計式を組み上げ、半年を要して自然エネルギー供給については
一応の完成を見ることが出来た。自然エネルギー供給の部分における今後の課
題としては、可能な限り多くの設備データを収集し、実際の供給実績量に近く
なるような推計式を組み上げることにある。

 今回、国内の全市区町村の自然エネルギー供給のデータに触れることとなっ
たわけであるが、整理された設備容量の数字だけを見ても、各々の地域におけ
る自然エネルギー利用の現状が見えてくる。例えば、風況の良い場所には既に
大規模なウィンドファームがあり、日照時間の長い地域ではやはり太陽光発電
設備の導入が盛んであるし、人口に比べて設備数の多い地域では行政の補助政
策や市民による普及活動が進められていた。このような特徴をいち早く見いだ
し、より伸ばす方向へと向かわせる意味でも、永続地帯指標は意味を持つので
はないだろうかと感じている。


++++++++++++
3)新たに動き出す備前プロジェクト
                  井筒耕平(備前グリーンエネルギー)

いよいよ4月、新年度を迎えました。
2007年度の備前プロジェクトは、これまでの継続事業であるまほろば事業
の最終年度を迎えると同時に、新たなプロジェクトも動きつつあります。今回
は、特に新たな動きについてのあらましをご紹介したいと思います。

まず、継続事業であるまほろば事業ですが、いよいよ3ヵ年の最終年度を迎え
ます。2007年度は主力事業であるESCOサービスに注力し、備前市内の
事業所や福祉施設、宿泊施設、工場、倉庫を対象として営業を展開してまいり
たいと思います。市内の民間施設については、まだまだ営業の手を広げられて
いない施設や企業も多く、残りの1年でしっかり浸透させていきたいと考えて
います。グリーン熱ストーブに関しては、夏〜秋にかけてキャンペーンを行う
予定であり、事業所やご家庭に向けてより一層ストーブの炎を広げていきたい
と考えています。

一方、新年度からの新たな動きについてですが、ESCO事業の市外進出や、
ソーラーシステム(太陽熱温水器)および太陽光発電システムなどの近隣地域
展開を予定しております。近隣地域とは、兵庫県姫路市から西側の播磨地域、
および岡山全県を対象としています。
すでに、ソーラーシステムに関しては、モニターを3名募集し導入を進めてお
ります。当社が取り扱うソーラーシステムは、長府製作所の落水式システムを
推奨しています。これは、これまでの自然循環式とは異なり、タンクが床置で
屋根への負担が減らせること、加圧ポンプによってこれまでと使い勝手が変わ
らないこと、意匠への影響が少ないことなどの特徴があります。電気も使いま
すが、年間2,000円程度ですのでそれほど大きな影響はございません。
ESCO事業に関しても、和気町や瀬戸内市、赤穂市などへの営業展開も始め
ており、ますます事業拡大へと歩を進めております。

このような新たなプロジェクトに挑戦する備前グリーンエネルギー。
常にチャレンジャーとして、2007年度も事業を進めていきたいと考えてい
ます。


++++++++++

4)「自治体から始めるエネルギーのグリーン購入」
                      山下紀明(ISEP研究員)

日本における自然エネルギー普及の鍵は、自治体にある。

今回のセミナーではこの認識が共有されたのではないか。東京環境局副参事の
小原氏は講演の中で、今回のイベントをフランス革命の端緒となったバスチー
ユ牢獄の襲撃になぞらえ、今後の大きな展開への期待を述べた。

2007年3月23日(金)に「自治体から始めるエネルギーのグリーン購入 
―地球温暖化防止に向けた地方自治体の再生可能エネルギー戦略」が東京都、
グリーン購入ネットワーク(GPN)、ISEPの共催により行われた。

当日は自治体職員の方をはじめとして200名以上の方にご参加いただき、関
心の高さがうかがえた。今回のセミナーで紹介すべきポイントは大きく2つあ
った。

1)エネルギーのグリーン購入
物品のグリーン購入は広く行われているが、グリーン電力証書などのツールを
用いて、エネルギーもグリーン購入ができる。
2) 「自治体から始める」ことの重要性
温暖化対策が喫緊の課題となっている現在では、自治体「のみ」の率先行動で
はなく、民間や国にも広げることを視野に入れた自治体「から」始める戦略的
な率先行動が必要である。

最初の講演では、ISEP所長の飯田が「地方自治体から始めるエネルギーの
グリーン購入の可能性」として、これらの内容を紹介した。

東京都環境局副参事小原昌氏は「東京都における電気のグリーン購入」として、
2007年度から東京都が大規模施設において始める電気のグリーン購入の概
要と有効性について話すとともに、こうした取組みを各地域と共同で進めるこ
との重要性を訴えた。

パネルディスカッションでは、佐賀県、中野区、福島県、横浜市から各自治体
の温暖化対策および自然エネルギーの取組みの紹介を、イクレイ日本とグリー
ン購入ネットワークからはそれぞれのネットワークを生かした活動の紹介やエ
ネルギーのグリーン化を用いた今後の展開が述べられた。

さらに、エネルギーのグリーン購入の費用負担について意見交換が行われた。
東京都では、電力自由化に伴う競争入札による費用削減により、電気のグリー
ン購入によるコスト増加を抑える形を取っている。その他にも、省エネと組合
せるなど、全体の費用負担を減らしつつ電気のグリーン購入を行う方法は幾通
りも考えられる。そして、このグリーン電力の購入は、環境対策や委託費とし
てではなく、光熱水費として計上することが肝要である。現在認められていな
い企業のグリーン電力証書購入の損金計上につなげるためである。

また、自治体から始めるというポイントに関連してイクレイ日本の宇高氏とG
PNの佐藤氏から示唆があった。自治体の率先行動の意義は大きく3つ考えら
れる。(1)普及啓発効果(2)グリーン電力証書の信頼性向上(3)需要の創
出である。現在1800あまりの自治体があり、地域によっては最大の事業者
となっている。それらの自治体が5%の電気のグリーン購入を行えば、影響力
は非常に大きい。今でこそ物品のグリーン購入は広く行われているが、滋賀県
が最初にできるかぎりのものをグリーン購入すると宣言したことから、急速に
広まったことも自治体から始める率先行動の力を示している。

セミナー終了後、自治体の方と今後エネルギーのグリーン購入に関するネット
ワークを作ることが話題となった。グリーン電力の需要拡大、民間がよりエネ
ルギーのグリーン購入を行いやすくする制度作り、熱や燃料のグリーン購入へ
の拡大などを進めるため、こうしたネットワークは必須であり、ISEPも主
体的に貢献していく。

講演や各自治体の取組みなどの当日資料、エネルギーのグリーン購入について
の情報は下記のウェブサイトから入手できます。
http://www.isep.or.jp/event/070323seminar.html


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