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1. 風発「表層社会から内実社会へ」
                        飯田哲也(ISEP所長)

遅い挨拶となりましたが、あらためて本年もよろしくお願いいたします。

さて、日本人や日本社会を知る人なら誰でも了解しているように、日本はタテ
マエ社会だ。国会でも、国や地方自治体の審議会でも、意思決定を演じる人た
ちが事務方の舞台回しどおりに演じ、実質のところは事務方がしっかりとカバ
ーする、そういうかたちでこの国は回されてきた。ところが、昨年を振り返っ
てみると、大きな政治話題から自分たちが取り組む実務に至るまで、「実質」の
ところが腐りつつあり、ただでさえ底の浅い「表層社会」が地滑りを起こして
いるのではないか、そういう懸念を覚えた。

まずは、イデオロギー論争に回収されてしまった感のある教育基本法の「改正」
がその筆頭だろう。もとより「ノスタルオヤジ」による戦前懐古的な教育基本
法「改正」は論外だが、たとえば野田正彰氏が問い続けるように、文科省と教
育委員会による異常ともいえる教員管理などがもたらす教育現場の質の低下の
方が、これからの日本社会の実質に与える影響という意味で、はるかに深刻だ
と思う(「子どもが見ている背中」(岩波書店、2006年)などを参照されたい)。
教育の専門家でもない人寄せパンダ的な著名人を集めた「教育再生会議」では
飲み屋談義がせいぜいであり、ウラを支える文科省は原因そのものである。イ
デオロギー論争は棚置きして、質の良い研究者を揃え、質の良い実証研究を踏
まえて、子供と教員の立場からの実質的な教育再生こそが望まれる。

また、昨年1年間を賑わせた耐震偽造問題も、地滑りを起こしている表層社会
ニッポンの代表例だ。一部の建築士や不動産業者の責任に矮小化されてしまっ
たが、張本人たる国交省の責任は不問とされ、新耐震基準以前の膨大な住宅も
放置されたままだ。しかも、偽造問題は耐震に留まらず、建坪率や容積率の誤
魔化しも常態化しているという(五十嵐敬喜・小川明雄「建築紛争」岩波新書)。
ましてや、OECD諸国で唯一義務ではない断熱基準などは、野放し状態と言
えよう。そもそも、購入した瞬間に3割もの価値が目減りをする低質住宅を、
個人の無限責任で購入させる構図の日本の住宅政策自体が、住まい手の立場で
はなく、住宅産業界と金融業界のためにあると言っても過言ではない。

その他、高校必修単位未履修問題や発電所データ改ざん問題などもあったが、
こうしたメディアを賑わす「社会問題」は、もちろんどれも重要であり、適切
な対応が必要であることは当然だ。しかし、むしろあらゆる分野で日々日常的
に進行している膨大な公共政策の方が、一つひとつは「問題」ではないとして
も、じつははるかに影響が大きいと思うのである。たとえば、小職も国や地方
自治体などで委員会に呼ばれることがある。多くの場合、委員会はタテマエ的
で、政策の裏付けはコンサルのやっつけ仕事、そして政策のアウトプットでは、
実効性よりも関係者の了解のもとで形式が整えられることに力点が置かれる、
というパターンが典型だろう。その典型が、初めから破綻が内定していた「京
都議定書目標達成」だろう。現在、中央環境審議会と産業構造審議会の合同部
会での検証が進行しているが、シロウト談義とガス抜きが飛び交い、ここでも
「表層」が崩れている。その崩れた表層の内実を、経団連自主行動計画という
「無理」が埋めているという構図だ。

もう、そろそろ「表層」を取り繕うことを止め、「内実」を真剣に創造する社会
に転換しなければ、日本全体が21世紀社会で大きく立ち後れると思うのであ
る。

                        飯田哲也(ISEP所長)


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2.特集「2007年の展望を語る」

 今号と次号に分けて、各界の方々から、2007年の展望についてご寄稿い
ただいた。環境問題を考える上でも、京都議定書削減目標年次まであと1年と
いうことだけでも重要なテーマを抱えた年ということになる。
 本メールマガジンの読者の方々も、さまざまなテーマを抱え、展望を切り開
こうとしているのではないだろうか。
 寄稿していただいた方々には、あらためて感謝いたします。

1) The tipping point
         末吉竹二郎(国連環境計画金融イ二シアテイブ特別顧問)

2007年は地球温暖化問題が火を噴きます。気候変動など、温暖化の被害が
一層進み、その現実を誰も看過できなくなってくること。それに、IPCC(気
候変動に関する政府間パネル)の第四次レポートの驚くべき内容が楽観論を打
ち砕き追い討ちをかけます。加えて、京都の第一次約束期間開始を翌年に控え、
欧米を中心に温暖化への対応策がビジネスの世界で一層ひろがること。などが
予想されるからです。
 あの米国ですら温暖化への取り組みが急速に始まっている中、なぜか、我が
国では遠い国や、遠い将来の話をしているような「のんびり感」が漂っていま
す。明らかに危機感欠乏症に陥っています。
 アル・ゴアは即時対応の重要性を“A tipping point"と表現しました。この
時期を無為に過ごすと取り返しのつかないことになってしまうと。でも、今す
ぐ動けば間に合う、上手く対応すれば希望は持てると言う願いを込めて。
 2007年は、まさに地球社会の選択の時です。希望に向かって歩みはじめ
るのか。それとも、、、


++++++++++
2)風力発電から始まる、地域と人、人と人の結びつき
              丸山康史(グリーンエネルギー青森 理事長)

 昨年は、風力発電をとりまく状況がさらに悪化している印象がありました。
電力会社の対応は相変わらずですし、政策的な後押しも期待できそうにありま
せん。自然環境や景観への影響から反対運動が起こる例も目立ちました。
 けれども、これは大半の風力発電事業が地球温暖化の防止のみをメリットと
するような現状が招いたものでもあると考えています。市民風車には、こうし
た現状を変える大きな可能性があり、これを最大限引き出すことが私たちの使
命だと感じています。
 青森の「市民風車わんず」が注力してきたことは、風力発電による利益を市
民で共有するだけではなく、これを地域と人、人と人との結びつきに発展させ、
そこから新たな事業や意欲を引き出すことです。これまでも地場産品の販売な
どに取り組んできましたが、今年はいよいよリンゴの剪定枝を利用したバイオ
マス事業を本格的に展開できそうです。こうした取り組みの総体としての未来
への希望を、自然エネルギーを後押しする力に変えていきたいと思います。


++++++++++
3)炭素税の06年動向と今後の行方
    足立治郎(「環境・持続社会」研究センター(JACSES)/炭素税研究会)

 炭素税に関する06年の動向として最も大きなものは、年末に、自民党で環
境部会・農林部会・経済産業部会・国土交通部会が合同で07年以降検討する
ことが決まったことだ。環境省・農林水産省・経済産業省・国土交通省は、そ
れぞれの部会をデータ提供など様々な面でバックアップしている。従って、今
後、炭素税の検討が経産省・国交省でもより進む可能性がある。07年、「炭素
税」と経産省所管の「石油石炭税」、国交省所管の「道路特定財源」との調整議
論もより活発化しよう。

 ただ、それによって炭素税導入がすぐそこになったか、というとそうではな
い。上記4部会/4省庁の考え方には、まだ大きな隔たりがある。さらに、炭
素税導入賛成にもかかわらず、消費税増税論議を優先したい(消費税増税と炭
素税導入を同時におすのは、納税者の反発を呼ぶことを懸念)との思惑も見え
隠れする財務省の議論の本格参加には至っていない。上記4部会だけで財務省
や国民も納得できる炭素税の制度案を構築することは至難の業だ。(注)

 環境省は、06年に行った税制改正要望で、炭素税(環境省は「環境税」と
呼ぶ)導入も掲げたが、同時に道路特定財源見直しやその他いくつかの温暖化
対策のための税制グリーン化スキーム(バイオ燃料支援のための揮発油税等の
非課税化等)も掲げた。それも、炭素税導入議論はいずれ本格化するがそれは
まだ先で、まずはとれるところからとっていこうとの思考故であろう。

 今年の京都議定書目標達成計画見直しの中に炭素税を組み込もうとの声も極
めて小さい。ただ、温暖化対策としての炭素税導入オプションへの理解は、経
済界などに徐々に広がっている。その典型が06年1月に出された、炭素税導
入にも好意的な経済同友会による提言「環境配慮型の税体系を考える-地球環
境を保持する国民的ビジョンの構築に向けて」の発表であった。(これは、一部
の産業界リーダーの強力なイニシアティブによるものであった。日本にも、立
派な産業界のリーダーはいるのである。)

(注)特に、温暖化防止のための環境税/炭素税をすでに導入した国々と同様
に、経済/雇用や低所得者への影響を考慮し、「バッズ課税・グッズ減税」の考
え方に基づき、炭素税導入とともにその他の税や社会保険料の軽減を行う方法
(税収中立)を採る場合、上記4部会/4省庁の合意だけでは無理で、財務省
の参画が欠かせない。もしドイツのように、その税収を年金保険料負担軽減に
充てるなら(炭素税研究会は、環境省の炭素税案よりも高税率の炭素税を課し、
その税収を温暖化対策費に加え、年金財源にも充当することを提唱)、自民党厚
生労働部会や厚生労働省との調整/合意も必要となろう。


++++++++++
4)今年こそは、気候変動防止への行動が起こる年に
                      大林ミカ(ISEP副所長)

 新しい年を迎えても、物理的な時間が経過したに過ぎず、何事も進展してい
ないような錯覚に陥りそうです。昨年の新年号では、2005年末のモントリ
オールでのCOP11/COPMOP1をとりあげ、昨年こそが地球温暖化防
止に向けた飛躍の年となることを願いました。しかし、日本の取り組みは何ら
進んでおらず、むしろ悪化しているようです。昨年10月末に英国政府が発表
したスターン・レビューは「気候変動の被害は両大戦以上におよび、政策に失
敗したら約900兆円もの損害があるが、今すぐに対応すれば45兆円=世界で
広告に使われている金額と同じ」としています。日本でももうすぐ、SEEN
でも何度か取りあげた「不都合な真実」が公開されます。程なくして、より深
刻化した状況を伝えるであろう気候変動政府間パネル(IPCC)の第四次評
価報告書が発表されます。今年こそは、もうこんなに時間がないという事実を、
より多くの人が共有し、行動が起こることを願います。


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3. 連載「光と風と樹々と」(15)
 ニューオーリンズのニュー・イヤー・イヴ??ミシシッピの旅
                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

■ひとり自由な場所で新年を迎える贅沢
 アメリカのニューオーリンズで送った2004年の大晦日は忘れがたい。こ
の年、8月から単身でミネソタ大学に滞在していた私は、クリスマスが近づく
頃、新年をどこで迎えようか、と楽しい空想にふけっていた。新年は米国内の
どこで迎えてもよかった。制約は何もない。所帯持ちの50歳の男性にとって、
再び人生でいつ味わえるかわからない貴重な「自由」の数日間である。アメリ
カの見知らぬ街を1人でぶらついてみよう。
 五大湖おろしの吹きすさぶミネアポリスは、クリスマス・イヴの夜にはマイ
ナス23度にも気温が下がった。ミシシッピ河は連日凍てついている。『大草原
の小さな家』の冒頭には、確かに、春になって氷が解け出す前に、凍結したミ
シシッピ河を馬そりで西に移住するシーンがあるが、本当に凍るのである。
 そうだ南に行こう、このミシシッピ河の最下流部の街、ニューオーリンズに
行こう。決意したのはイヴの朝である。

■川の流れのように??ミシシッピ河源流
 ニューオーリンズ行きを決断したので、12月28・29日は、かねてから
懸案だったミシシッピ河源流のイタスカ湖に向かった。夏は人気スポットだが、
ほかには2組しか客のいなかった真冬の源流まで単身で往復975キロをドラ
イヴした(東京・京都間の往復に匹敵するから、東海道五十三次の往復にほぼ
相当する距離ともいえる)。湖から流れ出した清流には、ミシシッピ河ここに始
まる、という感動があった。日本だと、源流は山峪奥深くに発するから辿り着
くのも容易ではないが、ミシシッピ河は高低差が少ない。
 イタスカ湖から、ニューオーリンズを経てメキシコ湾に注ぐまで、ミシシッ
ピ河は3,779キロを流れる(イタスカ湖での表示は2,552マイルで、
約4,000キロになる)。セントルイス付近で合流するミズーリ川を支流に加
えると、全長6,270キロ。ナイル、アマゾン、揚子江に次いで世界で4番
目に長い大河である。ちなみに日本最長の信濃川は376キロ、ミシシッピ河
の十分の一程度である。
 源流のイタスカ湖に降った1滴の雨は、メキシコ湾に注ぐまで、90日かか
るという。高低差が小さく、流れがゆるやかなためである。簡単に凍るのもそ
のためだろう。
 源流から私のすんでいたミネアポリスまでの流域は約400キロ、全長の1
割である。
 90日で3,779キロを割ると、1日あたり42.0キロ流れる計算にな
る。ほぼマラソンに匹敵する距離だ。時速 1.76キロ、1秒間に48.6セ
ンチづつ、1分間に29.2メートルづつ進む計算になる。源流のイタスカ湖
の緯度(北緯47度13分)はシアトルや南樺太の緯度に相当し、ニューオー
リンズの緯度北緯30度は屋久島の南にほぼ相当する。つまり稚内から屋久島
までの範囲の日本列島よりももっと南北に長い大河がミシシッピ河である。ミ
シシッピ河に、日本列島の南北の長さはすっぽり入ってしまうのである。緯度
1度分は111キロぐらいの長さである。 緯度にして19度分ぐらいに相当す
る、源流から河口までの直線距離は約2,000キロの長さになる。1秒間に
48.6センチづつ漂い続けて、90日かかって、屋久島よりさらに南でメキ
シコ湾に注ぐというのは、何ともロマンチックではないか。まるで人生そのも
ののようだ。

    霧氷林マリアのごとく湖(うみ)抱く
    生まれいづる四千キロの冬の川

 イタスカ湖では、約20句、俳句をつくった。真冬のイタスカ湖でこんなに
俳句をつくったのは世界ではじめてかもしれない。

■Tsunami
 12月31日朝、5時に起きて仕度をし、7時4分に予定の便に搭乗。7時
50分頃、離陸直後機内から見たバラ色の朝焼けが雲を染めてとてもきれいだ
った。太陽は、毎日、こうして人知れず夕焼けと朝焼けのドラマを繰り返して
いるのだ、と思う。乗り換えのダラス空港で、Tsunami の文字が突然目に入る。
12月26日に起こったスマトラ沖大地震による津波被害のニュースである。
死者総数22万人余とされる、史上最大の津波被害である。Tsunami は、英語
として通用している数少ない日本語の一つだが、この事件をきっかけに一般に
も知られるようになった。
 乗り換えたフライトは真ん中の席だったが、それでも最後の15分間は、空
からミシシッピ河を楽しむことができた。激しく濁流する「泥の河」である。
意外に太くない。工場群と湿地帯が続いている。2日前に見た源流に発するあ
の清流は、こうして次々と「資本」に陵辱され、汚泥や汚水にまみれて、海に
至るのだ。ガン街道と呼ばれる、ガン患者が続出する深刻な公害汚染地帯も、
この流域にある。
 
■大晦日なのに、A Happy New Year!
 14時30分頃、ようやくニューオーリンズに着く。空港は意外に小さくて、
拍子抜けするほど地味だ。
 ホテルにチェックイン。部屋は冷房になっている。戸外は椰子の木の茂る常
夏の世界だ。なるほど屋久島の緯度だ。ホテル中に、A Happy New Year の明る
い声が響いている。日本人の感覚ではまだ大晦日だが、英語だと、have a good
dayとか、have a nice weekend 的な感覚で、年末から、A Happy New Year と
いう表現になるようだ。
 フロントに案内のあったNew Year's EveのDinner Jazz Cruiseに乗ること
にする。何と言っても、ニューオーリンズはジャズ発祥の地である。70ドル。
18時乗船。

    船中にジャズの音溢るニューイヤーイヴ
    老夫婦ステップ踏みて年惜しむ
    ジャズ調の「蛍の光」年送る

 ジャズの演奏が始まって、バンドのリーダーが客席にどこからとたずねる。
オクラホマとか、オハイオとか、海外からもオーストラリアとか。私も大声で、
ジャパンと叫ぶ。
 70歳前後の太ったおじさんが、マイクに立って、自分は、5年間の居住を
経て2週間前にUS citizen になったんだ、今日は記念の乗船だという趣旨の
挨拶をして、拍手を受ける。曲をリクエストして、華やぎのある妻と上手にス
テップを踏んで見せた。さすが。
 客は夫婦連れがほとんどだった。燕尾服のカップルも。合い席はカリフォル
ニアからの夫婦が2組、インド人のカップルが1組。向かいの席の夫婦は、南
カリフォルニアのリバーサイド市から来たという。仙台市と姉妹都市だよと教
えてあげる。リバーサイド市は人口がどんどん増えつつあるという。
 どんどん霧が出てきて、また船上でのクルーズの説明もマイクが悪くてよく
聴き取れない。7マイルぐらい下って往復したのか。ジャズの最後の締めは「蛍
の光」。21時下船。
    
■狂乱、歓声、嬌声の中のカウント・ダウン
 下船後は、市内一番の賑やかな通りバーボンストリートへ。あちこちから、
ジャズやブルースやロック系やラップの音楽が聞こえてくる。完全に行列のよ
うな人混み、熱気。スペイン風の鉄レース細工のバルコニーの2階の客と路上
の客との間で、金や紫や緑色などのビーズのネックレスを投げあげたり、投げ
おろしたりして遊んでいる。たくさん集めて、どんどん首に巻き付けていくと
いう趣向。ニューオーリンズが wild な街だってこういうことだったのか。残
すところ、あと2時間ぐらいの一年を惜しんでいる。それにしてもすごい熱気、
狂乱だ。叫び声。歓声、嬌声。まるで、New Year が十年に一度しかないような。
 のぞいた店の中では、50歳代ぐらいの黒人女性のブルースが力強く、圧倒
的な迫力で感動的だった。なるほど「魂の叫び」だ。この実力だったら、日本
なら相当な人気だったろう。疲れも見せず、何曲も唄う。
 24時が近づくにつれて往来の喚声は、いよいよ狂おしくなっていく。踊ら
にゃそんそんの世界なので、私も、謝肉祭のときの仮面を買ってつけてみる。
途端に、wild な気分になる。若い男たちが、面白がって反応してくれる。

    ニューイヤーイヴ仮面つければロメオめく

 3人ほど、路上から投げあげられたビーズのネックレスを受け取るたびに、
胸をあらわにして、次のネックレスを催促する女性がいる。胸があらわになる
たび、フラッシュが光る。

    バーボンストリートに乳房もあらは年迎ふ

 カウントダウンは始まらないが、どこからともなく、拍手や叫び声が高まっ
て、24時に。新年の到来だ。
 
■河口はいずこ
 1月2日、重大な思い違いに気づいた。てっきり、ニューオーリンズは、ミ
シシッピ河の河口の街とばかり思いこんでいた。酒田と最上川、石巻と北上川
のように。古本屋で、ミシシッピ河の本を買い、河口の場所を教えてもらって
はじめて、河口まで、まだ170キロもあること、河口までは車ではいけない
ことを知った(普通のガイドブックには全然書いていなかった)。ヘリコプター
や小型飛行機をチャーターしないと、ミシシッピ河の河口を肉眼で見ることは
できないのだ。海水が河に押し寄せてきて、危険で、陸路では近づけないのだ
という。ワニも多い。
 源流に続いて、河口もわが眼で確かめることを楽しみにしてきたのだが。
 せっかくなので、行けるだけ行ってみることにする。約1時間程度、レンタ
カーで南に下ったが、5時10分頃には河霧がどんどん深くなってきて、視界
が利かなくなり、車で行ける最終地点まであと50キロ程度残した地点で断念。
ホテルに引き返す。
 このとき古本屋で買った15ドルのミシシッピ河の厚い本の口絵に、幸い河
口の写真が載っていた。湿地帯がひろがっていて、結局、海と河とは、渾然一
体となって、交わるようだ。
 島国的な常識では太刀打ちできないことを痛感したミシシッピ河の旅である。

■「欲望」という名のカキの店
 この街は、「欲望という名の電車」の舞台でもある。たまたま「desire」とい
う名のカキの店を見つけて、元日は、生カキなどを食べた。オイスター・バー
のバーテンダーが実にいい顔をしていた。宇野重吉のような味である。

    ニューオーリンズに「欲望」という名の牡蠣の店
    バーテンダーは名優の顔牡蠣啜る

    年明けの朝の空港ジャズ流る

■ハリケーン・カトリーナ
 私自身にとっては、一生に1回あるかないかの、盛大なお祭りのような、ニ
ュー・イヤー・イヴと三が日だった。
 この街が、ハリケーン・カトリーナによって壊滅的な打撃を受け、黒人を中
心に多数の死者を出すのは、それから8ヶ月後の2005年8月29日のこと
である。被災から2度目の新年を迎えて、街にはどの程度、賑わいが戻りつつ
あるのだろうか。

               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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4.「自然エネルギー20/20」キャンペーン始まる
      畑直之(自然エネルギー20/20キャンペーン委員会事務局)

 「2020年に自然エネルギーを20%に!」という大きな目標を掲げた「自
然エネルギー20/20」キャンペーンが、2006年11月末から始まりま
した。その概要をご紹介致します。
 「環境に良い自然エネルギーを大きく増やしたい!」ということが多くの
人々の願いであるにもかかわらず、日本では自然エネルギーが伸び悩んでいま
す。
 自然エネルギーを大幅に増やすためには政策・制度(法律・税制・予算等)
が極めて重要であることは、改めて言うまでもありません。この問題について
は、1999年以来、「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク(GEN)が
取り組んで来ましたが、残念ながら日本においては自然エネルギーを増やすた
めに効果的な政策が実現できていない現状があります。GENは自然エネルギ
ー政策に関して高い専門性を有するNGOですが、専門的であるがゆえに運動
としての広がりという点では十分でなかったともいえます。
 そこで、細かな専門的な点にはこだわらず、「2020年に自然エネルギーを
20%にする」というシンプルで大きな目標を掲げ、幅広いセクターの多くの
方々に賛同・参加してもらえるキャンペーンを展開しようということになりま
した。
 実施主体も、GEN/ISEPにとどまらないで、実行委員会形式として多
くのNGOなどに加わってもらう形としました。
 「自然エネルギー20/20」キャンペーンでは、次の「5つの目標」を掲
げ、各セクターの方々にそれぞれの立場で、これらのどれか1つでも取り組ん
でもらおうとしています。
1.国・自治体による「2020年・自然エネルギー20%」目標設定
2.自然エネルギーの普及に効果的な促進制度の導入
3.事業者による自然エネルギーの積極的な導入
4.自然エネルギーへの投融資の促進
5.市民や地域の率先した自然エネルギーの選択
 もちろんキャンペーンには、その趣旨に賛同すれば、個人・団体・企業いず
れでも参加できます。
 キャンペーンの狙いは、2006年秋から盛り上げを作り、2006年度中
の新エネRPS法の目標値見直しや、2007年度を通して行われる京都議定
書目標達成計画の見直しに際して「追加対策」として自然エネルギーの上乗せ
を目指すなどして、「5つの目標」の実現をはかろうというものです。期間とし
て当面は2007年中を考えています。
 2020年の「自然エネルギー20%」の内容・内訳はどうなるのか、実現
可能性はどうなのか、といった質問があると思います。エネルギーには、電力・
温熱(熱利用)・燃料(運輸用燃料)の3つの分野があります。本来、3つの分
野いずれにおいても、需要(消費)の20%を自然エネルギーでまかなうのが
目標です。ただ温熱と燃料の分野は検討が不足しており、20%の内容の数字
を出すことは現時点では困難です。そこで温熱と燃料の分野については、20%
を目指して普及拡大を進めること、今後それぞれの20%の内容について検討
を進めることを確認しています。電力分野については、ポテンシャルと時間軸
を考慮し全体として20%を達成できる内訳を示しています(詳しくはホーム
ページ掲載の資料をご覧下さい)。
 本キャンペーンでは、2006年11月30日に東京で立ち上げ集会を開催
し、同年12月16日に京都で気候ネットワーク主催「市民が進める温暖化防
止2006」の全体会第3部で「2020年自然エネルギー20%を目指して」
というセッションを持ち、まずはスタートを切ったところです。
 今後は、市民・自治体・事業者などが関われる「プラットフォーム」として
活動を展開し、「5つの目標」の実現をはかって行きます。多くの皆様のご参加
をお待ちしております。

◎詳しくは、自然エネルギー20/20キャンペーン委員会のホームページを
ご覧下さい。
http://www.renewable2020.jp/


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5.プロジェクトフラッシュ
 「飯田市での実践・その2 木質バイオマス事業とピークオイル」
                 竹村英明(おひさま進歩エネルギー)

 久々に飯田市・おひさまより竹村がレポートします。
 おひさま事業は、環境省のまほろば事業(環境と経済の好循環のまちモデル
事業)の3年度目。仕上げのリミットまであと3ヶ月を切ったところです。市
民出資を集めた「匿名組合契約」事業は太陽光発電と省エネ(ESCO)事業
の二つ。環境省の交付決定が、おひさまではなく別の事情で飯田市環境協議会
に下されない(つまり「おひさま」にも下されない)・・という「困難」と闘い
続けた省エネ(ESCO)事業も、大きな飯田市美術博物館という仕事を得て、
何とか事業達成ができそうです。出資者の皆さんにきちんと利益配分を行える
ものと思います。

■木質バイオマスペレットへの反応

 さて、おひさまでは、匿名組合事業とは別に「木質バイオマス事業」、すなわ
ち森林の間伐材を活用した木質ペレットによる熱サービス事業も担っています。
これも「まほろば事業」補助金の対象で、総額では5000万円程度の補助金
となる予定でした。今回はこの木質バイオマス事業の現状について報告したい
と思います。
 ときあたかも、「ピークオイル・パニック」がささやかれるこの時期、木質ペ
レットはさぞかしもてはやされているのだろうとお思いでしょう。灯油の価格
も1リットル当たり70円くらいまで上がってきて、ペレットの一般的な流通
価格の1kgあたり35円くらいでも、もうちょっとで同等というところまで
来ています。
 しかし営業状況を率直にお話しますと、これがさっぱりです。世間の人は「ピ
ークオイル」なんてお構いなし、まだまだ「目先のコストじゃー」という感じ
です。まあ、まったく商談が成立していないわけではなく、小型のペレットボ
イラーを入れるという話が進んでいる施設もあります。が、ここの場合は、責
任者が自然エネルギーをできるだけ増やしたいという、いわばコスト度外視の
応援団ということです。
 飯田市に生まれたペレット工場、南信バイオマスも設備能力1000トン/
年に対して、今年の生産(販売)は20%以下(去年はもっと悪い)で、ペレ
ットは売れていません。長野県も飯田市も、木質ペレットを普及させようと、
ペレットストーブ購入補助やペレット価格応援補助などをやっているのですが。
正直言って、広がっていないのが現実です。

■なぜ木質バイオマスは売れないのか

 一番のカギは価格にあると思います。いま石油という船は喫水線すれすれで
すが、でも浮いています。私たちは小さな船で、乗っている人たちに「おーい、
もうすぐ沈むぞ。こっちに乗り移れー」と叫ぶのですが、船上からは「何言っ
てんだよ。そんな小さい船の方が危ないよ。」と言われる。70円/リットルと
35円/kgではなく、80円/リットルと30円/kgになると、ここはド
ドーッと動きます。水は喫水線を超え、石油という船に入りはじめるからです。
逃げ出す人が続出してきます。
 私の相場観ですが、この状況は来年には来る・・と感じます。でも、今年で
はないのです。石油は高くなったり、また下がったり、今年はまだぎりぎりの
ラインを保っているようです。石油価格は言うまでもありませんが喫水線を超
えないように操作されていると思います。その見えざる力と、木質バイオマス
は闘っているのです。
 価格が同等になってもまだ障害があります。ペレットボイラーもストーブも、
石油のそれより高い。そして何より「かさばる」。バイオマスペレットは同じ木
質のチップに比べれば3分の1以下の体積に圧縮されていますが、液体の石油
に比べれば、どうやっても大きい。安定して長期に使うには石油タンクの数倍
の大きさのペレットサイロを用意しなければならないのです。飯田市のような
地方都市ですら、石油ボイラーを使っている施設の中に大きなサイロとペレッ
トボイラーを置けるスペースは、なかなかありません。完全な置き換えならま
だしも、既存のボイラーとの併用(出はじめ商品なので、運転管理への不安も
持たれる)ともなると、まず難しいのです。
 同じことは輸送や流通のシステムでも言えます。お家の建て方から、最後の
灰の処理の仕方まで、木質バイオマスに適したスタイルを確立する必要がある
のです。違うシステムとスタイルの中で、木質バイオマスを広げようとしてい
ることに無理があるわけです。

■ある温泉旅館の問題意識

 飯田市での実践では、こんなこともありました。飯田市内の某有名温泉旅館
のご主人は、新しいもの好きです。石油の枯渇や地球温暖化問題にもある程度
の意識を持って世界を見ています。だから本当は、ペレットボイラーを入れた
くてしょうがない。しかし、このご時勢、観光客も減っていますし、あまり高
額の投資はしたくない。そこで、私たちの、初期投資ゼロの「おひさまスタイ
ル」に興味を持ちました。
 ペレットボイラーを入れるべく、夏から設計を何度も繰り返し、そのかなり
複雑な構造物の中にペレットボイラーを入れられるよう工夫しました。不幸な
ことに、複雑な構造ゆえに工事費は通常の倍以上かかるものになりました。私
たちの熱サービスは、ペレットボイラーを売るわけではなく、設置をさせても
らって「熱」の代金をいただくものです。当然ですが、初期コストの高さは、
そのまま提供する「熱」の料金に反映します。ペレット価格プラスボイラーの
機器工事費プラスおひさまの維持管理費などです。
 それでも石油が高騰すれば、その料金の高さはすぐに吸収されるはずです。
ところが、このご主人は「リスクは負担しない」という理由で、機器工事費な
どの費用分は負担しないと言い出したのです。石油価格が高騰するのであれば、
ペレット価格との差額分で機器工事費分などはまかなえるはずであると。した
がって、自分はペレットを石油価格に連動させて、石油と同じ価格で買い取
る・・と。
 最初は何を無茶苦茶な・・と思いました。私たちは市民出資によって機器費
と設置費用をまかなうわけなので、出資者への返還は絶対に確保しなければな
りません。しかし石油が確実に高騰するのであれば、この温泉旅館から私たち
は大きな利益を得られます。いわば、石油価格とペレット価格の価格差の「先
物買い」です。そういうリスクとリターンを明示しての市民出資もありうるの
かなと思います。今回は、とても手が出せず頓挫しましたが・・。

■岡山の銘建工業を訪れて

 木質バイオマス事業の活路を求めて、このビジネスを成功させている銘建工
業を訪ねました。岡山県の中国山地の山懐、銘建工業のある真庭市は飯田市に
よく似た環境の土地でした。温泉と森林です。バイオマスがビジネスとして成
立するだけではなく、森林資源と人々の暮らしと産業がうまく結びつき、人々
が資源の活用で山を育てることによって、ますます山のパワーが大きくなる・・
という循環が生まれる可能性です。
 銘建工業はバイオマスビジネスをやろうとしたわけではなく、もともと建材
業なので端材を燃していました。ただ燃すのはもったいないと発電をはじめ、
工場のエネルギーは自前でまかなうようになりました。それでも端材が残るの
で、それを有価物である「ペレット」にしてみました。でも売れない・・とい
うのは、上に私が書いたことと同じです。銘建工業が違っていたのは、それな
らと需要をつくりはじめたことです。
 まず地元の温泉にペレットボイラーを入れるため、石油のボイラーメーカー
に電話をかけまくり、ペレットボイラーをつくってくれと説得したといいます。
その試作には自ら開発費を出し、いま5つか6つの温泉施設にペレットボイラ
ーが入っていると言います。さらに、おひさまの私たちが先だと思っていたビ
ニールハウスへのペレットボイラー導入もすでに実現し、なんと木質バイオマ
スイチゴが売り出されていました。今後の技術的課題だと思っていた、冷熱共
用のペレットボイラーも実現させていました。
 その結果、銘建工業のペレット工場はほぼフル稼働で安価に安定的にペレッ
トを生産できるようになりました。こうしてペレットが売れれば、投資は回収
できる。ビジネスの基本を教わったような気がします。

■GSS(グリーンサービサイジング事業)で開発にチャレンジ

 上で書いた、温室農家(ビニールハウス)への木質バイオマスによる熱供給
事業が、この夏に経済産業省のGSS補助金事業に採択されました。事業とい
っても、これはまだ実証段階で、銘建工業のようにボイラーの開発からはじめ
ています。温室ボイラーと言えばネポン社で、ネポン社自身もビニールハウス
のバイオマスによるグリーン化にはとても興味を持っているようですが、その
試作品はとてもとても高い。温室農家が、いま使っているボイラーはほとんど
50万円程度のものです。そこで地元の鉄工所にお願いして、なんとか100
万円を切れる温室用ボイラーをつくってみようとチャレンジしています。
 匿名組合からも、まほろば事業からも離れた事業ですが、飯田さんや山口さ
んが講師となって実施した、第1回起業セミナーから生まれた事業ではありま
す。まほろば事業に比べ、はじめは「ままごと」のようなものかなと思ってい
たのですが、これを指導する委員(がいるのです)の皆さんの厳しい指摘を受
けて、まほろば事業の考え方にも影響を与えるほどしっかりしたものに育って
きました。
 森林資源と人々の暮らしと産業の循環という考え方、そして冒頭の方で私が
書いた、木質バイオマスに適したシステムやスタイルを作り出すことの必要性
ということも、このGSSを実践する中で気がついたことです。銘建工業のN
さんは、森林はエネルギーだけじゃない、マテリアルでもある・・と語りまし
た。社会のシステムを木質バイオマスに適したものに変えて、木質がどんどん
活用されはじめたとき、私たちの未来には石油文化に変わる、第二の新しく洗
練された木質文化が待っているのかもしれません。決して「江戸時代」ではな
く。

                 竹村英明(おひさま進歩エネルギー)


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