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1. 風発 ガイアの勘違い逆襲
                        飯田哲也(ISEP所長)

10月29日の朝刊に、ジェームス・ラブロック博士へのインタビューを題材
にした広告記事(提供:財団法人日本原子力文化振興財団)が一面で掲載され
ていた。ラブロックといえば、1960年代に地球を一つの生命体とみなす
「ガイア仮説」の提唱者として知られ、新環境主義の教祖の一人であった。そ
のラブロックが、2004年に「原子力だけが(気候変動に対する)唯一のグ
リーンな解決法だ」という寄稿
http://comment.independent.co.uk/commentators/article61727.ece
を寄せて、環境コミュニティに論争と批判を巻き起こしている。原子力ムラは、
この思いがけない「転向者」の出現に大はしゃぎで、ついに日本にもご招待し
たと言うわけだ。

ただし、ラブロックには「前科」があり、急に転向したわけではない。
1973年にフロンはオゾン層に無害だと主張したり、1987年にはチェル
ノブイリ事故で深刻な放射能影響は出ないなどと発言している。1984年の
インタビューですでに原子力支持を主張しており、実は、筋金入りの「反環境
主義者」であり、「原子力推進者」なのだ。ラブロックの主張を見ても、エネ
ルギー政策への無理解が目立つ。とりわけ原子力の本質的な問題点と再生可能
エネルギーの近年の急進化については、まったく理解していないようだ。それ
はそうだろう。ラブロックは地球科学者であり、環境エネルギー政策ではシロ
ウト同然だからだ。同じ過誤が、たとえば日本の地球科学者である松井孝典東
京大学大学院教授の言説にも見られる。

それはともかく、こうした動きの背景には、「原子力ルネサンス」と呼ばれる
原子力ムラの機運がある。近年、欧州や米国で原子力発電の見直しと建設計画
の動きが見られる動きだ。具体的には、02年5月に原発増設を決めたフィン
ランドや米国ブッシュ政権による原子力新設計画と「グローバル原子力パート
ナーシップ」、フランスの欧州加圧水型炉(EPR)の建設計画、英国ブレア
政権による06年のエネルギーレビューにおける原子力再評価などを指す。

原子力発電は政治的な批判や一般市民からの不安感の根強さに加えて、電気事
業の民営化・自由化・規制緩和の流れの中で、経営面・投資面からも魅力を失
って、中国など一部を除いて原子力開発は停滞や脱原発に向かい、日本でも
90年代末から急速に停滞した。しかし、(1)米国で原子力発電所の統合に
よって規制緩和環境下で競争力のある原子力発電事業が登場したこと、(2)
地球温暖化防止や原油価格の急騰、エネルギー安全保障への対応策として見直
されたこと、そしてやはり(3)エネルギー既得権益の巣窟であるブッシュ政
権の強い後押しなどを背景に、原子力ルネサンスの動きが意図的に言説操作
(スピン)されたことが明らかだ。とはいえ、飛躍的な拡大というよりも、既
存原発の寿命延長や建て替えが主な市場に過ぎず、原子力の抱える根本的な課
題である巨大事故のリスクと核廃棄物の最終処分問題は何も解決されておらず、
原子力ルネサンスの内実は空っぽだ。

さて、晩秋の小春日和のもと、千葉県旭市の滝のさと自然公園で市民風車オー
プニングイベントに協力団体代表として参加した。三百名余りの参加者でこぢ
んまりとしていたが、白井貴子さんのミニライブも織り交ぜ、自然公園という
立地のおかげで子供たちや家族連れが目立つ、終始和やかな集まりだった。そ
の場で「かざみ」と名付けられた市民風車は、全国では9番目、関東では初め
てとなる。まだ日本の風車の1%、出資者も1万人に届かないが、出資した人
たちはコトの本質を見抜いている。ラブロックのような高見から人と社会を見
ない言説は打ち捨てられ、人と社会を都合良く操作(スピン)する原子力も衰
えていく。そして、人と社会に支えられた自然エネルギーこそが本流となる・・・
力強く回る市民風車を見ながら、あらためて確信したのである。

                        飯田哲也(ISEP所長)


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2.寄稿 米国内で進む、温室効果ガス排出削減の制度
                     井田徹治(共同通信社 科学部)

 米カリフォルニア州で、発電所や工場などに地球温暖化の原因となる温室効
果ガスの大幅な削減を義務付ける法律が成立した。新法は、2020年までに
温室効果ガスの排出量を現状から25%削減しで1990年レベルに下げ、
50年までには90年比で80%の大幅削減を目指す内容だ。発電所や工場な
どの大規模事業所に、12年から具体的な排出削減策の実施を義務付ける。
 これには、単なる米国の一州の取り組み以上の大きな意味がある。カリフォ
ルニア州の経済規模を他の国と比較すると、イタリアより大きく、世界第6位
になる。温室効果ガスの排出量では世界12位と言われているから、削減量は
決して小さくない。
だが、それよりも大きな意義は、米国内で温暖化対策に熱心な多くの州政府の
取り組みへの刺激になるという点だ。クリントン政権時代、国務次官補として
京都議定書の交渉にかかわったこともある米ピュー気候変動研究センターのア
イリーン・クラウセン代表は「米国の環境政策では州政府が先に進み、それが
後に連邦政府の政策となった例は少なくない」と言う。企業は州ごとに違った
規制が導入されることを嫌い、統一された環境対策を望む、というのが理由の
一つだ。
 米国内で温室効果ガスの排出削減目標を持つ州はカリフォルニアを含め、ニ
ュージャージー、オレゴンなど既に12州もある。中でもニューヨークなど北
東部の九州は、企業に排出削減を義務付け、事業所間で排出枠の取引を認める
という京都議定書そっくりの制度を共同で導入することを決めている。
 デュークエナジーやパシフィック・ガス・アンド・エレクトリックなど規模
の大きい電力会社などの中にも排出削減の義務付けや炭素税の導入を支持する
声が出始めた。早めに省エネなどを進めている企業にとっては、強力な公的対
策の導入はむしろプラスになるからだ。
 ある米国の議会筋は「相次ぐハリケーンの被害などもあって、有権者の温暖
化に対する関心が高まっている。議会内では共和党、民主党を問わず、ブッシ
ュ大統領の温暖化対策は不十分だとの考えが多数になっている。次期政権下で
思い切った温暖化対策法案が可決される可能性は十分ある」と話す。
 これらの米国の動きが示すのは「米国政府が温室効果ガスの大幅な削減に乗
り出す可能性は低い」との先入観で国際交渉に臨み、国内対策を議論するよう
な対応が誤りであるということだ。
 思い切った温暖化対策を進めることへの反対理由に米政府の消極姿勢をあげ、
米企業との国際競争で不利になることを指摘する声が、日本国内ではいまだに
ある。
 十年前、京都議定書の採択の時もそうだった。会議直前まで米国は大幅な排
出削減に難色を示し、国内の産業界も通商産業省(当時)もこれを根拠の一つ
に、大幅な排出削減で合意することに反対していた。だが、米国は会議にゴア
副大統領(当時)を送り込み、態度を転換して大幅な削減の受け入れを表明。
一挙に交渉をリードする立場に立った。米欧からのプレッシャーの中、日本は
当初の想定を大幅に超える6%の削減を飲まざるを得なくなったのだった。
 新たな議定書に法的な拘束力を持たせるべきかどうかが議論になった前年の
第2回締約国会議をはじめ、地球環境問題に関する国際会議の取材で「気が付
いたら後ろにいたはずの米国が先を走っていて、置いて行かれた日本が恥をか
きながらあたふたと譲歩を迫られる」という局面を何度も目撃した。
 こんな過去の交渉と同じ過ちを今後の国際交渉で繰り返さないようにするた
めには、行動をしないための言い訳を海外に探す姿勢を改めることが何より必
要だと考える。

                     井田徹治(共同通信社 科学部)


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3. 連載「光と風と樹々と」(13)
「ツラいけどホントの話」??敗北から成長したゴア元副大統領
               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


■映画「不都合な真実」

 10月24日夜にアル・ゴア元副大統領の映画「不都合な真実」を見て、と
ても感銘を受けた。来年1月からの本格公開に先立って東京国際映画祭の特別
招待作品として上映された折である。大林ミカさんも激賞している。あまり宣
伝もしていないにもかかわらず、六本木ヒルズ内の上映会場には若い人を中心
に約650人。当日は満席だった。
(公式サイトは
www.futsugou.jp/
時々試写会も開かれているようである。英語のDVD版、英語版の同タイトル
のゴアの著書もあります(アマゾンなどで検索できる))。

■選挙に弱い副大統領

 アメリカでは一般に副大統領は目立ちにくく、第2次世界大戦後60年の間
に選挙に勝って副大統領からそのまま大統領になったのは、レーガン政権の副
大統領だった父親のブッシュのみである(1989年就任)。副大統領から大統
領になったのはほかに4人いるが、トルーマン(1945年就任)、ジョンソン
(1963年就任)は大統領が亡くなったために(ケネディは暗殺された)、フ
ォード(1974年就任)はニクソンの辞任によって昇格した。ニクソンはア
イゼンハワー大統領の副大統領だったが、1960年の大統領選挙でケネディ
に敗れ、68年の大統領選挙で復活し当選した。
 日本のマスメディアは体制側は共和党寄りで、民主党政権に対して冷ややか
な傾向がある。体制に批判的な側は、アメリカの政治全般に批判的な傾向があ
る。そのため米民主党に対しては誰もが辛口である。アメリカの場合、共和党
と民主党では政策に大きな相違がないので、政権交代が容易なのだという、ア
メリカでは小学生にも通用しない「大きな誤解」もままある。小沢民主党と安
倍自民党、共和党と米民主党、どちらがより近いだろうか。政策の相違が明確
に説明できるという点では、共和党と米民主党の違いの方が大きいだろう。少
なくとも両政党の間を移籍した政治家は近年はほとんどいない。 映画に戻ろ
う。

■「ツラい現実」「ツラいけどホントの話」「耳の痛い本当の話」」

 原題は、An Inconvenient Truth。convenient は、その名詞形 convenience と
storeを重ねた convenience store がコンビニとして日本語化している。否定
形がinconvenient。「不都合な真実」という訳は、間違ってはいないが、あま
りパッとしない。受験生が、辞書を引きながら直訳したようだ。「辛い現実」や
「耳の痛い本当の話」というのが、原題のニュアンスであろう。好きな表記で
はないが、「ツラいけどホントの話」と訳していたら、もっとヒットするだろう。

 しかもこの映画では、An Inconvenient Truth が二重の意味で使われている。
温暖化問題と、2000年大統領選の敗北である。「ツラいけどボクは負けたん
だ」。フロリダの開票作業とその取扱いにはインチキがあったけど、政治の混乱
を避けるために、事態収拾のために「ボクは負けを認めたんだ」。

  ボクは敗北を認めて、温暖化問題に取り組む政治家として出直しを決意し
 た。アメリカ国民よ、君も、温暖化問題のツライ現実を認めて、直視して、
 温暖化対策に本気になろう。

 この映画を3行で要約すると、こうなる。「不都合な真実」だと、この二重の
意味がピントこない。

 しかしここにはもちろん、アメリカ国民は2000年大統領選挙で、選択を
間違えたではないか、という強烈なメッセージがある。大統領になるべきはボ
クだった。フロリダの開票でインチキをして、大統領になるべきでない人がな
ったために、イラク戦争が始まり、世界は混乱を拡大した。温暖化ガスの排出
量も増大し続けている。私が大統領になっていたら……。
 「ロッキー」に通じるようなアメリカ的な価値観が流れている。
 神がかり的なブッシュ政権は、真実を直視していない、という強いメッセー
ジも、ここにはあろう。真実から始めよう、という健康的な実証的精神も、ア
メリカ的な価値観である。「美しい国へ。」というアナクロのロマンティシズム
とはずいぶんレベルが違う。

■一皮も二皮も剥けた人間ゴア

 1948年生まれの二世議員のゴアは、1993年に44歳で副大統領にな
り、2000年の大統領選挙で敗れたときも、まだ52歳だった。現在58歳
である。国全体の得票数ではブッシュを上回ったが、選挙人投票制度というア
メリカ独得の制度のために、フロリダ州の得票でブッシュに敗れ(数え方の公
正さについて批判がある)、選挙人の数でブッシュを下回り敗北した。州の得票
が1票でも多い方が、州の選挙人をみなどりする方式だからである。「民主主義
の権化」を標榜し、他国に「民主主義」を押しつける国が、自国では非合理な
選挙制度に固執している。まず国連決議してほしい。「アメリカにこそ真の民主
主義を」と。


 2000年大統領選挙でのゴアの敗因としては、彼のエリート臭が指摘され
ている。クリントンにも、息子のブッシュにも、独得の庶民性と大衆性がある。
「冷たい秀才」というのが、ゴアの典型的なイメージだった。有能だけど、自
信過剰で、いかにもエリート然としているではないか。具体的には、テレビ放
映される大統領選挙のディベートで、ブッシュはわかっていないと、何度も舌
打ちしたり、あきれた、という態度をとったことが直接の敗因とされている。


 52歳のゴアには、上院議員を続けるとか弁護士とか大学の教授職とか、い
ろいろな選択肢が残されていただろうが、彼が選んだのは、環境派議員として
出発した原点に戻り、温暖化問題について、全米各地および世界を講演する、
人々と直接対話をするという道である。温暖化問題の「伝道師」としての役割
を選んだのである。ここにこの映画の魅力がある。

 庶民性の乏しさを指摘されてきたゴアが、1000回以上も草の根の民衆と
対話を続ける。自分の言葉で、最新の資料とkeynote(パワーポイントに対応
するMacのオリジナル・ソフト)を駆使して温暖化問題を語る。ユーモアも交
えながら。きわめて知的に、前向きに。一皮も二皮も剥けた人間ゴアの姿がこ
こにはある。

 ゴアが再び大統領選に挑戦することはないだろう。大統領選挙での復活を期
するならば、温暖化問題の草の根行脚は逆効果だし、こういう映画はつくれま
い。残念ながら、それが現在のアメリカの政治のレベルであり、アメリカ経済
のレベルである。アメリカのメディアのレベルでもある。
 ホワイトハウスからではなく、民衆に直接訴えかけよう、膝を交えて談義し
よう。私の話を聴いてほしい。

 この映画によって、ゴアは、大統領にしたかった、大統領になるべきだった
政治家として、いつまでも高く評価されるに違いない。おそらく史上最低の不
人気で「危ない」大統領として、ブッシュは残り2年の任期を終えるだろう。
ゴアのこの映画は、現政権に対する痛烈な批判にもなっている。
 映画の最後の方で、ゴアが、政治家こそ、renewable だよというジョークを
言うシーンがある。投票で政治は変えられる。政治家は置き変えられるという
意味である。

 もちろん温暖化問題について考える教材的な映画としてもきわめてすぐれて
いる。冒頭には、彼の愛する故郷テネシー州の美しい自然が出てくる。レイチ
ェル・カーソンの『沈黙の春』を意識して、まだ「沈黙の春」ではない、まだ
ゆたかな春があると訴えているかのようだ。そして、この景色がやがて本当に、
「沈黙の春」になってしまうではないかと。

 しかしこのように、この映画は、ひとりの政治家の成長の物語としても見る
ことができるのである。敗北を糧に、人はどう生きるべきか、という永遠のテ
ーマがここにはある。

 はたして日本に、こういう本物の環境政治家はいるのか。自分の言葉で、人
びとに温暖化問題を語れる政治家が一人でもいるのか。スクリーンの向こうに
私たちが見るのは、こういう問いかけでもある。

               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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4.NGOの視点 核カードを最初に放棄すべきは誰か
                     大林ミカ(ISEP副所長)

10月9日に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政府が地下核実験を行ったと
発表して以来、日本で国防論が高まっている。北朝鮮の行動は、核の廃棄を約
束した2002年の日朝ピョンヤン宣言や2005年の六ヶ国共同声明を裏切
るものであり、東アジア地域の平和を揺るがす断じて許されない行為である。
厳重に抗議するのは当然で、核軍備解体に向けて、あらゆる手段が執られるべ
きである。ただし、圧力も必要だが、捨てるもののない崖っぷち外交に走って
いる北朝鮮に対しては、何とか議論のテーブルにつかせることが最初だろう。

しかし、日本の様子を見ると、米外交へ依存しているばかりで(米国が最大の
圧力国であることはいうまでもないが)、国内では、北朝鮮の核に対抗していた
ずらに日本の軍備強化を唱える声が目立つ。その先鋒が、政権を握る自民党の
政調会長や日本の外交的顔である外務大臣であり、こぞって日本の核武装論議
を始めようとする発言を繰り返しているのだから、米国の外交努力で六者協議
に復活したばかりの北朝鮮を説得できる状況ではないことは確かである。

安倍総理は「我が国の核保有という選択肢は全く持たない。非核三原則は一切
変更がないということをはっきり申し上げたい」(2006年10月10日 、
衆議院予算委員会)と発言しているが、過去に核武装を発言したこともあり、前
述の二人の発言を言論の自由という一般論で擁護し通そうとしていることから
も、日本の核武装論を容認していると言ってよい。

では、果たして日本が核武装すれば、北朝鮮への圧力となるのだろうか。核抑
止論は、核兵器を所有することによって敵対する相手に、こちらも核兵器で攻
撃するという脅しをかけて核攻撃という最終手段を執らせない、つまり核戦争
に発展させないという考え方から発しているので、現在の北朝鮮のように瀬戸
際に追い詰められた相手に突きつけても有効ではない。日本が核武装すればな
おさら相手を刺激するだけのことで、核攻撃によって失うものが多いのは北朝
鮮より日本の方であり、核抑止論は働かない。ピョンヤンと東京が核攻撃され
た場合を比較想像しただけでもわかる。

そして、日本の核武装に対する国際的反応は北朝鮮の比ではないだろう。「北朝
鮮と違って」周辺国の核レースを煽ることは明らかであり、わたしの周辺の韓
国人数名に聞いても、韓国が核武装するとしたら北朝鮮のせいではなく日本が
核武装した時、と答える。このような状況は、中国にとって大きな懸念だろう
し、明らかな敵対国として日本をつぶしにかかるだろう。現在、日本の核武装
に技術的な障害はほとんどないと言ってよいだろうが、実際に核武装するため
には、IAEA(国際原子力機関)の査察を欺く核物質の確保(あるいはIA
EAの査察の拒否)、核物質の軍事転用を禁じる日米原子力協定の不履行(ある
いは協定の破棄) 、NPT(核兵器不拡散条約)からの脱退などなどが必要に
なる。北朝鮮が歩み、国際社会から非難されてきた道のりを、日本ほどの経済
大国、外交的に北朝鮮の比ではない影響力を持つ国が歩むことになる。そう考
えると、国内からはよく見えないが、自民党の政調会長や現外務大臣はキム・
ジョンイル以上の過激な主張をしているのだ。浅はかな発言にすぎないとはい
え、即刻やめさせるべきである。

一方で、核武装して半世紀以上たった英国では、唯一の核戦力である潜水艦発
射弾道ミサイル「トライデント」を2010年以降更新するかどうかを巡って、
核保有の是非を問う議論が過熱している。ブレア政権は「独立した核抑止力」
を堅持することを前提に、年内に新たな核戦略を展望する白書をまとめるとし
ているが、与党内でも労働党左派からや市民団体からは、核廃絶を含めた幅広
い検討が必要であるという声が上がっている。支持母体である英国労働組合会
議も国民を交えた広い議論の場を設けるべきとしている。

英国に限らず現在の核軍備は、数十年前の冷戦構造の中で発展してきたもので
ある。国際的な安全保障の状況は大きく変化し、大国の核保有こそがテロや拡
散した核による脅威を増幅しかねない。すでに核抑止論の通らない国際状況下
での日本の核武装は、外交的にはもちろん、経済的にもマイナスはあってもプ
ラスはない。国際的な尊敬を集め、日本の外交に資する唯一の道は、世界の核
廃絶を訴えつつ、北東アジアの非核化に向けて、建設的な提案をしていくこと
しかない。今こそ冷静になって、日本こそが核のカードを捨て、力で相手を押
さえ込めると考える野蛮な抑止論ではなく、新しい世界秩序のモデルに向けた
議論を、北東アジアから始めていくべきではないか。

                     大林ミカ(ISEP副所長)


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5.韓国のエネルギー政策の動向と今後の課題
                 ソン・ボンソク(ISEPインターン)

 韓国は日本と同じく、国内消費エネルギーのほとんどを輸入でまかなってい
る国だ。
 2001年にはエネルギーの輸入依存度が97.4%に達した。原油とLN
Gの輸入量はそれぞれ世界4位と2位に位置づけられている。
 韓半島戦争後(注:日本で朝鮮戦争と呼ぶ)、韓国は産業を興し高度経済成長
を成し遂げるため、膨大なエネルギーを外国から輸入し始めた。1960年代
はエネルギーの大部分を国内の石炭や水力で賄えたものが、2001年時点で
は前述の通り。その中でも石油は77%を中東地域から輸入しており、韓国の
経済は中東地域の政情が握っていると表現しても過言ではない。
一方再生可能エネルギーは、全体消費量の中でわずか2.03%に過ぎない。
しかもそのうち69.2%は廃棄物エネルギー、23.95%は水力発電(大
型を含む)であり、風力発電と太陽光発電はそれぞれ0.29%、0.06%
である。つまり、発電していないのと同じような値だ。
再生可能エネルギーの開発のための予算も2006年現在4310億ウォン
(約560億円:1ウォン=0.13円で換算、以下同)、全体国家予算のわず
か0.25%を占めているのみである。
OECD加盟国のひとつであり温室効果ガス排出量世界第10位である韓国は、
京都議定書の第2次約束期間(2013~2017年)には削減義務の対象国
になると予想されている。これに備え、韓国政府は現在どんな取り組みをして
いるのか。

 韓国政府は2002年12月、「第2次国家エネルギー基本計画」を立てた。
 エネルギーの安定的な供給を目標として、原子力発電を成長させる中(現在
19基を稼動、今後6基を追加建設)、石油依存度を2011年までに47%、
2020年までに42%の水準に下げるのが骨子である。また、新しいエネル
ギー源の開発に拍車をかけると主張しているが、そのエネルギー源というのが
水素エネルギーとメタンハイドレートであり、非常に非効率的で持続不可能で
ある。なぜなら、水素を分離するとき必要な莫大なエネルギーは原子力で充て
ることになり、メタンハイドレートは海底に浅く広い範囲で存在するため、投
資額に比べその便益が非常に少ないからである。今まで全世界で2000件の
開発が行われたが、成功したのはたった3件だった。

 再生可能エネルギーに関してはどうなのか。
 1987年に制定された「代替エネルギー開発促進法」が、その後3回の改
正を経て現在の「新・再生可能エネルギーの開発・利用及び普及促進法」
(2004年改正)となっている。電力総生産量のうち再生可能エネルギーの
比率を2011年までに7%まで上げることを目標として、政府主導で技術開
発への投資や、プロジェクト型事業に力を入れている。
 この法律の中で特に目立つ項目の1つとして、「発電差額支援制度」というも
のがある。
 代替エネルギー発電より供給される電気の発電源別に基準価格を告示し、取
引価格が基準価格を下回る場合には15年間政府が差額を補填する制度だ。
 この法律によると、太陽光発電の基準価格は1kWh当り716.40ウォ
ン(約93円)、風力発電は107.66ウォン(約14円)、廃棄物発酵ガス
発電は65.20ウォン(規模20kW以下、約8.5円)と定められている。
 一見ドイツの固定価格購入制度と同じようなものと思うかもしれないが、実
は実効性を持っていない。需要者の立場から見ると、あまり利益が出ないから
だ。
 第1に、わざわざ太陽光パネルを設置し電気を売るより、むしろ銀行で預け
て利子をもらう方がもっと利益が出る。しかも申し込みに必要な書類も30種
類を越えるわずらわしさがある。また、政府は2006年10月から太陽光発
電の基準価格を677.38ウォン(約88円)に下げる予定である。
 政府の再生可能エネルギーを増やすという政治的なコミットメントがあるに
もかかわらず、政府の現実の行動がこれほど違うと、誰も再生可能エネルギー
で発電しようとしないのはもちろん、市場の拡大も空虚な山びことして終わる
だろう。

 現在石油の価格はたった3年の間に2倍に増えた。今後値段が下がる見込み
はない。
 政府は未だ原子力発電に幻想を抱えているらしいが、原子力発電は放射能の
危険性もあり、持続可能なエネルギーではないことから、未来の代替エネルギ
ーとしては望ましくない。水素エネルギーの場合も、水素を取り出すのにかか
る莫大なエネルギーを充てる方法がない。
 したがって、地球温暖化を防止するための結論は、韓国においても再生可能
エネルギーであると考える。
 韓国エネルギー技術研究院によると、韓国の再生可能エネルギー潜在量は石
油換算で年間に太陽エネルギーが116億トン、風力が1億6000万トン、
バイオマスが1000万トンである。韓国の2004年の最終エネルギー消費
量が1億6000万トンであることを勘案すると、充分に賄えるのだ。

 韓国にもはや選択の余地はないだろう。京都議定書第2次約束期間が迫って
おり、韓国もまた、他の国と同様に、一刻も早く再生可能エネルギーを拡大す
る必要がある。
 「発電差額支援制度」というすばらしい制度があるにもかかわらず、それをき
ちんと生かせないのはもったいない。より果敢な補助金を与えるのはもちろん、
基準価格もさらに上げるべきだ。再生可能エネルギー発電が市場で競争力を持
つまで、投資を怠ってはいけない。なぜなら再生可能エネルギー事業は、単に
環境を守るためだけではなく、地域経済の活性化、雇用創出にもつながるとい
う理由もあるからだ。
 1人当り国内総生産が2万ドルを越えられず、先進国の寸前で無様な姿でも
たもたしてる韓国にとっては、この危機が絶好のチャンスでもある。
 政府の先見の明が、再び光を発するときだ。

                  ソン・ボンソク(ISEPインターン)


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6.プロジェクトフラッシュ

1)環境配慮活動活性化モデル事業
(グリーン・サービサイジングモデル事業)に取り組んで
                   牧内文隆(おひさま進歩エネルギー)

 環境配慮活動活性化モデル事業は経済産業省が募集した事業です。これに対
し、当社は「温室農家ビニールハウスへの地産地消のバイオマス熱エネルギー
供給サービス事業」という内容で4月に応募しました。40余りの団体の応募
があった中、一次審査⇒ヒアリング審査を経て、5団体が採択され、当社はそ
の中の一つとして選ばれました。

 そもそもこの事業を募集するきっかけになったのは3月に開催された起業セ
ミナーです。グループごとに事業計画を立てる、というものがありましたが、
このセミナーにこれらていた追手門学院大学の今堀さんからグリーンサービサ
イジング情報をいただき、私のグループにて「100万本のバラプロジェクト」
というタイトルで起案されたものが発展し、この事業へとつながりました。

 グリーン・サービサイジングは、従来型の「製品販売を前提としたビジネス」
と異なり、サービスを提供型のビジネスのことを指します。
 モノではなく、サービスを提供することで、製品の生産から流通、サービス
まで効率化が促進され、より高い環境負荷低減効果が期待されています。
 たとえば、照明器具は、照明という「商品」が必要なのではなく、「明るさ」
が必要なために購入しますが、必要以上の明るさや無駄な電球を買ってしまう
ことがあります。「明かり」というサービスを買えば、供給側に無駄をなくすイ
ンセンティブが働き、省エネルギーになり地球環境に与える影響が少なくて済
む、という考え方です。

 当社はこの事業において、地域の木質バイオマス資源を使って、熱供給サー
ビスを提供します。提供先は、現在重油ボイラー等で熱をまかなっているハウ
ス栽培農家です。
 当社と関連の深いNPO法人南信州おひさま進歩が所有するバイオマス・ス
トーブボイラーを、ハウス栽培の温室農家に設置し、バイオマスペレットの供
給、ボイラーメンテナンスを含めた、グリーンな環境価値と熱供給サービスを
提供するというものです。

 これにより、供給農家の燃料費の削減だけでなく、エネルギーの地産池消に
よる持続可能な農業の発展と、その農作物の地産地消PRや農業体験を通じて、
エネルギーや食や人の循環を通じて、豊かな地域づくりに資するビジネスの実
現を目指します。

 ペレットの価格、ペレットストーブボイラーの改良など課題はまだまだあり
ますがこの事業が成功するように頑張っていきたいと考えます。


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2)備前市役所にペレットストーブ設置しました
                  井筒耕平(備前グリーンエネルギー)

10月10日、ペレットストーブ導入第1号として、備前市役所ロビーにペレ
ットストーブを設置しました。このストーブは、ドイツのwodtke社の商品です。
wodtke社は、薪、ペレットストーブストーブの分野で歴史が長く、国内製に比
べ技術面だけでなくデザイン面にも優れているため導入いたしました。

このストーブの年間ペレット使用量は、約700kgと見込まれています。こ
れは、灯油約300リットルのエネルギー使用量に相当し、二酸化炭素削減量
は750kgとなります。一般家庭のエネルギー消費(冷暖房、給湯、照明な
ど)による世帯当り二酸化炭素排出量は、年間約5400kgですので、スト
ーブ1台を設置すれば約13%の削減効果が得られるのです。

ストーブに利用されるペレット燃料は、岡山県内の工場で生産されたものを利
用する予定です。この工場は集成材を作る工場であり、その端材(おがくず)
を木質バイオマス発電およびペレット製造に利用しています。木材をマテリア
ル利用し、不要になった端材を直接燃焼により熱利用することは、「カスケード
利用」と呼び、木質バイオマスの非常に有効な利用方法です。その一連の流れ
の一端を担うペレットストーブは、単に地球温暖化防止だけでなく、木質資源
の有効利用、地域の雇用創出など社会的意義のある燃焼機器ともいえるのです。

さて、このストーブが設置された備前市役所のロビーは、備前グリーンエネル
ギーの実績の1つでもある省エネ改修工事の対象となっており、既に照明が改
修されています。そのため、今回のストーブ導入によって、ロビーが明るくな
った上、オシャレな演出が加わり、壁に並んだ備前焼も映えるようになりまし
た。お金をかけて市庁舎全体の新築を行う自治体もありますが、備前市はわず
かなお金と工夫により、環境とデザインを向上させており、そのお手伝いをで
きることを誇りに感じております。ストーブへの問い合わせも増えてきている
ようで、事業成功へ向けて、また一歩進んだストーブ設置となりました。


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