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1. 風発 日本に溢れかえる「不都合な真実」
                        飯田哲也(ISEP所長)

前号で取り上げられていたアル・ゴアのドキュメンタリー映画『不都合な真実』
の試写を見る機会を得た。この映画は、少なくとも「3層構造」でできあがっ
ている。第1層は、手遅れになりそうな勢いで人類が気候に影響を与えている
事実が、科学的裏付けをもって、分かりやすく示されていることだ。今年2月
にNHKが制作・放映して好評を博した『気候大異変』がこの第1層だけで構
成されていることを考えれば、ほとんどの人は、これだけでも大きな衝撃を受
けるだろう。

第2層は、その科学的に明らかな事実がいかにしてねじ曲げられているのか、
その政治工作のウラ側が示され、その「ウソ」が徹底的に暴かれていることだ。
一見奇妙に聞こえるこの映画のタイトルの所以である。振り返って見れば、日
本は「不都合な真実」だらけである。エネルギー政策には何の役にも立たない
核燃料サイクル然り、プルサーマル推進の国策捜査の生け贄となった佐藤前福
島県知事辞任然り、「高く不安定な新エネ」という神話然り、風力発電排除の屁
理屈でしかない系統影響然り、既得権益維持のための「日本型」電力自由化然
り、破綻が約束されている京都議定書目標達成計画然り、けっしてクリーンで
はないガス会社潰しのオール電化住宅然り、である。

そして、この映画の第3層は、観る者に「ミッション」という感覚を強く伝え
ていることだ。ゴアが気候変動問題に取り組んできた半生を振り返りながら、
息子の重大事故を契機にして、単なる「環境派議員」から、議員という仕事を
通じて「ミッション」を果たす存在への昇華が描かれる。終盤に、女性参政権
やベルリンの壁崩壊など「人類の進歩」の歴史が次々にフラッシュされ、最後
に気候変動問題を人類が解決できないはずはないというメッセージが突きつけ
られる。心ある人なら、誰でも自分自身の責任を自覚する場面だろう。

日本に溢れかえる「不都合な真実」に対して、正確な情報や正しい道を示すだ
けでは、タコツボの一つに留まってしまう。そのウラ側を暴くだけだと、単な
る批判者として遠ざけられる。社会的なミッションを掲げ、共感者を増やし、
人々と社会を動かすこと。「原子力立国計画」など、日本のエネルギー政策が狂
気の時代に入りつつある今だからこそ、あらためて自分たちの仕事に自信と進
むべき方向性を再発見させてくれたアル・ゴアの映画に感謝したい。

                        飯田哲也(ISEP所長)


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2. 連載「光と風と樹々と」(12)
           「国際的な文脈でみる安倍政権」
               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

「戦後もっとも保守的な首相」

 「戦後もっとも保守的な首相」と英紙に評されたように、9月26日、きわ
めて保守色の強い安倍新政権が発足した。筆者はたまたま安倍晋三と同年で、
偶然、誕生日も近い。しかし例えば女系天皇に否定的な彼の意見を耳にすると、
自分と同じ世代の政治家が、これほど頑迷に保守的であることにはリアリティ
として信じがたいものがある。例えば首相補佐官に任命され、「教育再生」を担
当するという山谷えり子は、国会で、ヒステリックに「性教育」や「ジェンダ
ー・フリー」を攻撃してきた人物である。まるで日本版ブッシュ政権のような
趣きがある。
 この安倍、山谷らの友人という男が、現在、仙台市の市長を務めており、こ
の男も私と同年の生まれである。この男の挨拶を直接2度ほど聞く機会があっ
たが、「市民」という言葉がまったく出てこない。この市長は、「市民」という
言葉が嫌いなのだという。市民にとってこれほど迷惑な市長はあるまい。裸の
王様のようなマンガ的なエピソードがたくさんある。市議会で、「市長満足度日
本一」と揶揄されるほどに、政治手法も粗雑で乱暴である。心ある市職員は、
安倍政権の誕生を機に、この男の「転校」を願っている。ミニ石原のような輩
がいつのまにか、跋扈している。
 日本がこれほどまでに、保守化してしまったことに愕然とせざるをえない。
メディアの責任はきわめて大きい。「41年ぶりの男子誕生報道」しかり。
 「美しい」「品格」「風格」「凜」といった言葉が、まるで「陵辱」されたかの
ように、安売りされている。反論したいのは、「美しい」や「品格」という言葉
の方であろう。
 
「団塊の世代」の人材の乏しさ

 安倍政権が示しているのは、自民党における「団塊の世代」の人材の乏しさ
でもある。60歳代から52歳に一気に若返ったが、新党三役にも50歳代後
半の団塊の世代がいない。18人の閣僚の中で、団塊の世代は2人だけである。
 民主党は、菅直人が1946年生まれ、鳩山由紀夫が47年生まれだが、と
もに「賞味期間切れ」という印象が強い。
 自民党の場合、大学紛争世代は、そもそも自民党入りした者が少なく、かつ
鳩山のような、93年の自民分裂の際の、自民党離党者の影響もあろう。
 社会学の場合には、橋爪大三郎、上野千鶴子、今田高俊など、1948年生
まれはとくに論客が豊富なのだが。

政治的リベラリズムの時代??冷戦後

 政治的な保守化は、21世紀初頭の大きな流れである。
 ヨーロッパを中心に大づかみにいうと、1989年11月のベルリンの壁崩
壊から2001年9月11日の同時テロまでが、冷戦終結を背景とした政治的
リベラリズムの高揚期だった。1998年9月にドイツで、保守のコール政権
に代わって、社会民主党と緑の党の連立政権が発足した頃は、当時のEU15
ヶ国のうち、スペインとアイルランドをのぞいて13ヶ国が左派ないし中道左
派政権だった。1996年4月にはイタリアに「オリーブの木」政権と呼ばれ
た中道左派連立政権が誕生した(2001年5月まで)。続いて、97年5月に
はイギリス労働党のブレア政権が誕生。社会民主主義的な政権主導型の中道左
派による「第三の道」路線が基調になった。フランスでは、1997年6月社
会党を中心とする、緑の党も政権に参加した左翼連立内閣のジョスパン政権が
誕生し、保守派のシラク大統領のもとでの保革共存政権となった(2002年
5月まで)。
 1993年1月から2000年1月までの、アメリカの民主党クリントン政
権も、大きくは、この系譜の中に位置づけることができる(政官財とNHKな
どのメディアの人脈が共和党よりの日本ではクリントン政権に対する評価が低
いが、アメリカの大学人やニューヨークタイムズやワシントンポストなど主要
紙ではクリントン政権への評価は比較的高い。戦後の民主党政権としてはケネ
ディ政権に次いで評価されている)。
 自民党が分裂し下野した非自民の連立による細川政権(93年7月から94
年4月まで)も、反小沢を軸とした、自民党と社会党・さきがけの連立政権(9
4年6月から98年6月まで、村山内閣は96年1月まで)も、大きくは、こ
の流れの中でとらえることができる。この時期自民党政調会長・幹事長を務め
た加藤紘一は、政治信条からも、自民党の中のリベラルな路線を象徴する政治
家といえよう。
 このように列挙してみると、わずか数年前と現在との、「オセロゲーム」のよ
うな様変わりに、読者は大きな感慨をもつのではないか。
 
保守主義の勃興

 2006年9月末現在、旧EU15ヶ国の政権地図を描きだしてみると、中
道左派政権がブレアの労働党を含んで7ヶ国である(ドイツの大連立は除く)。
13対2から7対8へ、と大きく様変わりした。2001年9月11日の同時
多発テロが起こる直前は、11対4だった(オーストリアとイタリアで政権交
代があったため)。同時多発テロ以降、2001年11月にデンマークで保守政
権が誕生、02年5月にフランスに保守中道政権が誕生、オランダでも保守中
道政権が誕生した。このほかポルトガル、04年3月にギリシアで政権交代が
あった。05年9月の総選挙でドイツが保守政党と社民党との大連立となり、
06年9月にもスウェーデンで総選挙があり、中道左派から中道右派に交代し
ている。左派が勝利し政権を取り返したのは、04年3月のスペインと、06
年4月のイタリアにとどまる(僅差での勝利だった)。筆者の知る限り、政権に
とどまっている緑の党は、皆無となった。こうしてみると、退陣目前にさしか
かってはいるものの、3回の総選挙に勝利し、97年5月から続いてきたイギ
リスのブレア政権が、いかに安定的に強かったがわかる。ちなみにブレア首相
は1953年生まれで安倍よりも1歳上だが、同世代とはいえ、またイラク戦
争に固執し墓穴を掘ったとはいえ、対イラク問題をのぞくと、安倍とブレアの
政治感覚は好対照である。
 こうしてみると、2000年4月に森政権が誕生して以来、小泉・安倍と続
く、福田赳夫の流れを汲む保守的な政権は、世界的な保守主義の流れの中にあ
ることがわかる(日本のメディアは、こういう見方をほとんどしていないが)。
 そのなかでも主要国の中で、もっとも右翼的で好戦的な政権がブッシュ政権
であることは、衆目の一致するところだろう(2001年1月から)。

保守主義の背景

 ではなぜ、これほど、保守政権が跋扈するようになったのだろうか。
 同時多発テロやその後の続発するテロ事件が、「危機管理」やセキュリティへ
の関心を高め、世論全体を保守化させているという面は否定できない。しばら
く前からアメリカ合衆国では、どの空港でもセキュリティ・チェックのために
靴を脱がされるようになった。私の経験では、合衆国外の空港で、靴を脱ぐこ
とを求められたことはない。ヨーロッパでも、カナダでも、メキシコでもそう
である。合衆国に国外から乗り入れる飛行機は毎日何千というオーダーだろう。
純粋にセキュリティ・チェック上の問題ならば、国内の空港で靴を脱ぐことに
はほとんど意味がないのではないか。しかし靴を脱がせることには、政治的な
意味があろう。空港で靴を脱がされるたびごとに、アメリカ国民と旅行者は、
アメリカがいかにテロの危険に曝されており、ブッシュ政権がいかに用心深く
テロ対策を行っているかを、「実感」させられるからである。靴を脱ぐ度ごとに、
人々はテロ対策を受け入れるのである。
 拉致問題も、同様の政治的な効果をもっている。安倍政権は、拉致問題を政
治的に利用してつくりあげられた内閣であるといってもよい。
 ヨーロッパに共通する背景としては、EU統合、EU拡大にともなう移民労
働者問題、失業問題がある。
 一般には、経済や情報通信におけるグローバル化の進展が、その反動として、
文化的・政治的ナショナリズムを増幅させるというメカニズムがある。
 私の知る限り、オランダの田園風景は「美しい」。ドイツの田園風景も、デン
マークの田園風景も「美しい」。大味で単調なきらいはあるが、合衆国のそこか
しこにも「美しい」場所はある。「美しい」のは、むろん日本だけではない。む
しろ東京の都市景観などは、国際的にももっとも低いランクなのではないか。
最近できた、旧汐留駅付近を再開発した品川駅近くのビル群をみると、よくぞ、
こんなにひどいものをつくったと、目を背けたくなる。1つ1つのビルは、美
しいつもりのようだが、ほかとの関係がまったく意識されていないかのようだ。
景観としての美しさを省みることなく、自己陶酔しているかのごときが、多く
の日本の高層ビルである。「美しい国」を率先して破壊してきたのは、歴代の自
民党政権であり、大手ゼネコンであり、建築家である。
 「美しい国づくり」という言葉に騙されるほど、国民はやわだと思っている
のだろうか。
 「美しい国」は、一種の自己満足であり、自己陶酔である。グローバル化し
た時代だからこそ、センチメンタルな自己陶酔が求められるのだろう。どこの
国でも。

保守政権と環境政策

 現ブッシュ政権が典型例だが、歴史的にみても、国際的にみても、一般に保
守的な政権ほど、環境政策に冷淡という傾向がある。環境問題への社会的関心
の頂点は、1972年のストックホルムと92年のリオデジャネイロの国連の
二つの環境会議であり、国際的には、その前後に、環境研究も活性化している。
しかし2001年9月の同時多発テロ事件以降、温暖化問題をのぞくと、国際
的には環境運動は「冬の時代」を迎えている。アメリカでは2004年秋に、
民主党系のシンクタンクが発表した「環境主義の死」というタイトルの論文が
話題を呼んだほどである。
 2002年5月に誕生したオランダの保守中道政権は、環境大臣を環境庁長
官に格下げし、オランダは、もはや環境先進国の道を追求しないことを政策と
している。
 今度の安倍政権でも、環境大臣の影はきわめて薄い。

 安倍政権を国際的な文脈で論じるためには、韓国・中国との関係が不可欠だ
が、それは別の機会にしたい。

               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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3.NGOの視点「G8サミットと市民参加」
                     大林ミカ(ISEP副所長)

9月初め、イギリスのチャタムハウスが主宰する、グレンイーグルズ・ダイア
ログのフォローアップ会議へ参加した。昨年イギリスで開催されたグレンイー
グルズG8サミットで合意されたG8諸国と主要途上国間が京都議定書の将来
枠組みについて話し合う「気候変動、クリーンエネルギー、持続可能な開発に
関するダイアログ」を受けて、イギリス政府を囲んで、メキシコで10月に開
催される閣僚級会議へのNGOの意見を話し合うものだった。

G8サミットは、日本、フランス、イギリス、米国、ドイツ、イタリア、カナ
ダ、ロシアの先進国八ヶ国が集まる首脳会議で、毎年回り持ちで開催される。
表面的な外交の場として批判されることも多い会議だが、各国首脳と公的意見
交換の場が少ない日本にとっては、重要な意見調整の場と言えるだろうし、先
のグレンイーグルズ・ダイアログのように他の国際交渉にも影響を与える取り
組みも生まれている。昨年はイギリスで気候変動と貧困が取りあげられ、今年
はロシアでエネルギー安全保障がそれぞれ中心議題として議論され、来年はド
イツ、再来年は日本での開催が決定している。

G8では、「シェルパ」(登山の道先案内人)と呼ばれる各国の政府担当官たち
が、サミット(山頂)に向けて、国々の意見調整などの準備作業を事前に行う。
最近の傾向では、主宰国シェルパは各国を巡回し、政府だけではなく市民社会
と意見交換をすることが慣例となっている。昨年は、ISEPを含めたエネル
ギー・気候変動関係のNGOは、日本を訪れたイギリス政府シェルパと、G8
で取りあげるべき気候変動問題の論点について意見交換を行ったし、本番のサ
ミット開催以前に、チャタムハウスの主宰する会議に日本からもNGOが招か
れ、受け身ではない市民参加の機会が設けられた。

今年のロシアのシェルパとは、日本政府との連絡が上手く行かずに残念ながら
意見交換ができなかったが、今回は、ロシア現地で二度にわたって「シビルG
8」が開催、世界中から500を超えるNGOが政府によって招聘され、エネ
ルギー気候変動からもISEPが参加した。シビルG8の運営では、世界中か
ら「普通のNGO」が多数参加したが、政府系NGOと「普通のNGO」との
確執が存在したし、議論された内容はプーチン大統領や各国シェルパに届けら
れるに留まり、本番のG8へ直接意見を反映する届けることはできなかった。

2回目の本番直前に開催されたシビルG8で、プーチン大統領との直接の意見
交換の場が設けられた。世界中からの数百の活動家が集う会場に姿を現した大
統領は、同じ円卓に座り、エネルギー気候変動、遺伝子組み換え問題、貧困、
人権など、市民社会からのそれぞれの意見について、2時間にわたって意見交
換を行った。内容面では「地球温暖化は科学的に証明されていない」と発言す
るなどの大きな隔たりが目立ったが、意外に気取らない様子は、少なくとも市
民社会に好印象を与えた。実際、チェルノブイリから10年にあたる今年に改
めて原発の推進を打ち出す大統領の持論に対して、ウクライナの活動家たちが
無言で椅子に立ち上がって反対の意思を表した時に「どうぞお座りください。
それともそのまま立っていてもいいですよ。そのままにしておきましょう、彼
らは彼らの意見を言うためにここにきているのだから」と言って慌てずに話を
続けた大統領は、NGOの間で明らかに株を上げたのである。

来年開催予定のドイツでは、すでに市民社会が活発化し、連合体が組織され、
これから半年の間にも、大臣も参加する複数の国際市民集会が予定されている。
ISEPも10月中旬にベルリンで開催されるG8: Energy Agendaに参加を
予定している。そして、2008年の日本のG8については、開発系のNGO
を中心に市民連絡会を組織する動きが始まっている。先のグレンイーグルズ・
ダイアログは、日本での結果報告が予定されているため、京都議定書の第一約
束期間の始まる2008年の日本のG8では、気候変動問題は、単なる議題の一
つを超えて主要な議題として取りあげられる必要があり、エネルギー気候変動
系も、政府との話し合いを開始している。

日本だけの課題ではないだろうが、今まで日本で開催されたG8では、政府との
意見交換は表面的なもので情報提供はセレモニーであり、実際のG8へのイン
プットは皆無、市民社会そのものも連携して効果的な活動が出来たとは言い難
いと聞く。日本政府には、せめて他の国々と同じように、各国にシェルパを送
り、市民社会と直に意見交換する場を設けて欲しい。国内についても、できる
だけ早く、政府横断的な定期意見会合の場を設け、率直な意見交換を実施し、
2008年へのプロセスを透明にすることを望みたい。そして、NGOも、そ
れぞれの活動分野が深化され焦点化するように努力するだけではなく、分野横
断的に市民社会全体の底上げを念頭に置いて活動すべきである。市民参加が健
全に機能することこそが持続可能な社会の基本となる。

Gleneagles G8:http://www.g8.gov.uk/
St. Petersburg G8:http://en.g8russia.ru/
Civil G8:http://en.civilg8.ru/

                     大林ミカ(ISEP副所長)


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4.「Reform Group Salzburg Meeting 2006への参加」
                      山下紀明(ISEP研究員)

オーストリアのザルツブルク郊外に位置し、背後に美しい湖と山を望むレオポ
ルツクロン城において、Reform Group Salzburg Meetingが8月28日から9
月1日にかけて開催された。エネルギー政策に関する研究者によるワークショ
ップであり、当研究所所長の飯田も運営委員の一人である。

今年の大テーマは「Climate Protection, Energy policies, and Wind Power
Innovation Courses in Comparison(気候変動防止、エネルギー政策、風力発
電の革新過程の比較」であり、セッション毎にチェルノブイリ以降の原子力、
カスピ海地域のエネルギー政策などのテーマで発表が行われた。例えば後者の
セッションでは以下のようなタイトルが並んでいた。

・西ヨーロッパの石油及びガス供給におけるカスピ海地域の影響
・EUとカスピ海地域の石油及びガス分野での協力
・カスピ海のガス資源とEUのエネルギーセキュリティ
・石油の政治経済とアゼルバイジャンの石油国家化
・中国にとってのカスピ海地域のエネルギー資源の重要性

ここでのキーワードは地政学的要因(geopolitical factor)であった。カスピ
海地域はヨーロッパと中東に近いがゆえのエネルギー供給のチャンスとリスク
があること、さらに今後は中国においてもエネルギーセキュリティ上の重要な
地域となりえることなど、現代はグローバル化の時代と言われるが、やはり地
理的な距離が政策や政治そのものに与える影響を強く意識した。

当研究所からは、筆者とインターンの古屋(法政大学大学院2回生)が若手研
究者のセッションにおいてプレゼンテーションを行った。筆者は「日本の地方
自治体の再生可能エネルギー戦略の新しい潮流?東京都のケース」として、今
春発表された東京都再生可能エネルギー戦略の先進性とその影響について、古
屋は「日本における市民風車とコミュニティエネルギープロバイダーの発展と
その社会的影響」として市民風車などの出資者と事業者や地元関係者が作り出
す新たな関係性について述べた。

今回のワークショップでは、化石燃料と国家の体制との関係も活発に議論され
ており、アゼルバイジャンの参加者は自国が一部のエリートにより利権がコン
トロールされる国家になるのではないかと危惧していた。筆者は普段の業務に
おいては日本の自治体の自然エネルギー政策などに関わっているが、エネルギ
ー、特に化石燃料と国家体制や戦争という世界の大きな問題を強く再認識する
こととなった。

自然エネルギー2004ボン国際会議において、開催国ドイツのウィチョレク
ツォイル経済協力開発大臣が「太陽へのアクセスをめぐる争いはない」として
自然エネルギーが持続可能な発展に貢献する中心的な役割を果たすことを宣言
したことが思い起こされ、その推進の重要性を感じた。

※今回のワークショップへの参加は平成18年度地球環境基金の助成を受けて
います。

                      山下紀明(ISEP研究員)


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5.デンマークから学ぶ持続可能なエネルギー社会
                  第二回 低エネルギー社会のすすめ
        細川和朗(ISEPインターン 神戸大学国際文化学部)

前回はサムソ環境エネルギー事務所のソーレン・ハーマンセン氏に伺ったサム
ソ島の再生可能エネルギー100%供給の取り組みを紹介した。今回は、環境
エネルギー政策研究所の顧問でもあり、『エネルギーと私たちの社会-デンマー
クに学ぶ成熟社会-』(新評論/2002年/飯田哲也訳)の著者でもあるデン
マーク工科大学教授のヨアン・ノルゴー氏に伺った低エネルギー社会について
紹介したいと思う。

まず、同じエネルギー問題を考えるときにでも、「供給」と「需要」の2つの視
点で見るとアプローチの仕方が異なってくる。例えば、気候変動対策として化
石燃料の消費削減が挙げられるが、サムソ島のように再生可能エネルギーの普
及を試みるのは「供給」側からのアプローチである。しかし、逆に「需要」側
からの見てみると、対処の仕方は異なる。つまり、省エネルギー対策の促進な
どを通じてエネルギー需要自体を減少させることが「需要」側のアプローチと
なる。

この「需要」側のアプローチをまず進めるべきだと、ノルゴー氏は考える。も
ちろん彼は再生可能エネルギーの普及を完全に否定しているわけではない。た
だ人々がより少ないエネルギーを求めることになればより少ないエネルギーを
供給すればよいわけだから、供給に至るまでの各段階における従来の環境影響
はその分減少することになり、さらに新規発電所の建設等の必要性がなくなり
資源・エネルギーの節約になるということを主張する。つまり、理想とすると
ころは、エネルギーに対する需要をできるだけ減少させ、必要不可欠な部分を
再生可能エネルギー源から供給するということになるだろう。

そのひとつの手段として、ノルゴー氏は「パッシブソーラー」(Passive
Solar)という例を挙げてくれた。太陽エネルギーを利用するソーラーシステム
のうち、集熱器のような特別な装置で太陽熱を濃縮したり太陽光パネルで電力
に変換したりするのがアクティブソーラーで、これに対して、建築の工夫によ
って太陽エネルギーを活かす仕組みをパッシブソーラーという。窓の採光・断
熱の効率性、壁の断熱構造、建築全体を考慮した風通しや採光など包括的にパ
ッシブソーラーの考えで捉えられた建築は、その空間内で必要とするエネルギ
ーを従来建築の10分の1に抑えることが可能であるという。

ただ問題として指摘されるのが、経済的余裕がなければ誰も建築の改善に取り
組まないし、また取り組むだけの資金をなかなか確保できないということ。さ
らには経済的余裕が生じたとしても、それぞれ個人の選好によって、ある人は
より充実した家具を揃えたがるだろうし、ある人は趣味のガーデニングに力を
入れるだろうということ。つまり、すべての人が揃って省エネルギー対策に投
資することはなかなか考えがたいということである。だからここで重要となる
のは、パッシブソーラーなど省エネルギー対策に対して補助金を出すなど経済
的なインセンティブを働かせる政策手法やESCOのような経済的利益を生み
出すビジネスモデルだと思われる。

もちろんパッシブソーラーなどの省エネルギー対策のみが低エネルギー社会に
向けた取り組みではない。低エネルギー社会への挑戦は、私たち個人の生活や
日々の選択にも大きく関わってくる。何度かノルゴー氏のお宅を訪問し、食事
もご一緒させていただいたが、その生活の中にヒントは隠されていた。例えば、
食事。市販の加工食品は加熱や冷凍、保存のためにエネルギーや添加物を必要
とするので選ばない。無農薬のものや自家製がほとんどである。また、移動。
自動車や飛行機は最終手段である。これら日々の生活に関わることは、自らの
ライフスタイルを見直すことや自らが消費する財やサービスのライフサイクル
を考慮することで、おのずと改善すべき点が見つかるはずである。"いかにエネ
ルギー消費を抑えて生活の満足性を維持もしくは向上させるか、"これは私の低
エネルギー社会へ向けた日々の挑戦である。

前回のサムソ島における再生可能ネルギー普及、そして今回のノルゴー氏の考
える低エネルギー社会、供に今後の目指すべき社会に必要不可欠な要素である。
最終回の次回は、未来を自分達で選び取るという政治の必要性を力説してくれ
たフォルケセンターのプレーベン・マガード氏の取り組みを紹介したいと思う。

        細川和朗(ISEPインターン 神戸大学国際文化学部)


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6.プロジェクトフラッシュ

1)エコツアー開催:「びぜこツアー<自然エネルギー編>」
                  岡山咲子(備前グリーンエネルギー)

備前みどりのまほろば協議会では、9月16日・30日に備前市民を対象に「び
ぜこツアー<自然エネルギー編>」を2日間に渡って開催しました。自然エネ
ルギーの利用施設を見学し、自然エネルギーを身近に感じて、そのパワーを実
感してもらうことを目的としたエコツアーです。昨年度には、「備前エコ体験シ
リーズ『自然のエネルギーを実感・体験しよう!』」と題して同様のツアーを行
いましたが、今回は両日あわせて延べ60名の参加者とともに、より身近でこ
のまほろば事業にも関連のあるテーマをとりあげて、岡山県内の木質ペレット
と太陽熱システムを利用した施設を見学しました。

まずは岡山県北西部にある真庭市に向かい、ペレット製造・バイオマス発電で
有名な『銘建工業株式会社』に行きました。ここは木材を輸入して製材する工
場ですが、製材過程で出る製材屑を使って木質ペレットを生産しているほか、
木質バイオマス発電に取り組んでいます。係の方の説明を聞きながら、工場内
をまわり、ペレット生産やバイオマス発電機などを間近に見学することが出来
ました。

次は、『真庭市美甘庁舎』に行きました。ここの庁舎はすべて地域産の木材を利
用して作られており、建物の中は木のイイ匂いがしました。また真庭市ではペ
レットの利用を推進しており、庁舎内には11個のペレットストーブが設置さ
れておりました。参加者は自由に庁舎内をまわり、木の温かさを感じながらペ
レットストーブを見学しました。

続いて向かったのは、今年オープンしたばかりのペレットボイラーを利用した
温水プールがある『真庭市勝山健康増進施設(水夢)』でした。ボイラー室内で
は大きなボイラーを2機、それから大量のペレットを保管する保管庫も見学し
ました。

最後は、太陽熱温水システムを利用した温泉『のとろ温泉天空の湯』に訪れま
した。巨大な太陽熱温水パネルで太陽熱を集熱し、源泉32℃を数度上昇させ
て温泉を運転しています。参加者は太陽熱で温められた露天風呂に景色を楽し
みながらゆっくりと入りました。

丸一日のツアーで、備前市に帰り着いたときには参加者の方もお疲れの様子で
したが、充実して満足できるツアーだったことを思わせる感想がたくさんあり
ました。「市役所、プール、温泉といった街の施設が、自然エネルギーによって
本当に運営されていることに感動しました。」「お風呂と違って温泉は後から後
からじわじわ温かくなる。太陽熱だから尚更かな」「今日はほんとにたくさん勉
強させてもらいました」「前回も参加して楽しかったからまた参加しました。楽
しませてもらいました。」

備前みどりのまほろば協議会・備前グリーンエネルギー株式会社では、環境啓
発活動を通して、今後も市民の方々の新たな発見・感動となるようなツアーや
イベントを企画していきたいと思っています。


++++++++++
2)南信州のメガソーラー事業が採択
                   南原順(おひさま進歩エネルギー)

 10月にも入り、飯田の街にふく風も涼しくなって、朝夕は肌寒いくらいに
なってきました。ですが日差しは相変わらず燦々と照っていて、冬も好天がつ
づく飯田市では、これからのおひさま発電所の発電も楽しみです。
 この程、おひさま進歩エネルギーでは、環境省の補助事業であるメガワット
ソーラー共同利用モデル事業(地域での共同利用で計1MW=1000kWを
こえる太陽光発電を設置し、事業所等での太陽光発電設置を促進するモデルと
なる事業に対して補助を行う)に「南信メガワット共同利用プロジェクト」と
して応募し、採択されました。
 すでに平成16年度にまほろば事業の一環として飯田市内38ヵ所の施設、
計208kWの太陽光発電を設置し、事業を行っていますが、今回モデル事業
に採択されたことで今後3年間でさらに1000kWの設置に挑戦することに
なります。
 このプロジェクトでは、飯田市内だけでなく、広く長野県南部地域を対象と
しており、金融機関やガソリンスタンド、コンビニエンスストアなど支店形態
の店舗や、保育園や幼稚園を含む自治体の公的施設などへの設置を計画してい
ます。マスコットキャラクターのさんぽちゃんも更にいろいろな園に登場して
子どもたちと環境について学びます。
 この新たな事業で、太陽光発電設置の対象地域も、規模もまほろば事業より
拡大することになります。省エネルギー(エスコ)事業や木質バイオマス事業と
ともに、南信州のエネルギーの地産地消に向けて少しずつ歩を進めています。
みなさまもぜひぜひ応援してください。

[参考] 環境省報道発表
メガワットソーラー共同利用モデル事業の採択について
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=7495


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