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1. 風発 「オール電化住宅」2元論を越えて
             ・温熱政策からの総合評価の提案
                       飯田哲也(ISEP所長)

 このほど気候ネットワークから、「オール電化住宅は地球温暖化防止に寄与
するのか?」と題するレポートが公表された。短期間で限られた調査にも関わ
らず、基本的な論点を押さえた好レポートである。最近の急増ぶりが気になる
オール電化住宅について、社会全体で少し立ち止まって考えるための重要な一
石を投じたのではないか。
レポート:http://www.kikonet.org

 この機を活用して、「オール電化住宅」の是非2元論を越えた総合評価を提
案したい。エコロジー先進国としてしばしば参照されるスウェーデンは、ほぼ
全戸が「オール電化住宅」である。ところが、同じエコロジー先進国として知
られる隣国のデンマークは、北海の天然ガス田を持ち、天然ガスネットワーク
が整備されているために、ガスコンロが標準だ。ただし、両国と日本との決定
的な違いは、地域熱供給による暖房と給湯の有無である。日本とは比較になら
ないほど厳しい断熱基準も義務づけされている。さらにスウェーデンでは、原
発の過剰建設で電気が余り気味だった1980年代初頭に電気暖房を拡大したこ
とを、いまでは「間違いだった」と政府が認めている。

 これらの対比が示唆しているように、本質的な論点は「オール電化の是非」
ではなく、暖房や給湯などの「温熱政策のあり方」なのである。そもそも日本
では、電力・温熱・交通・産業というエネルギー用途毎にあるべき方向性を示
す「エネルギー政策」が欠落しており、エネルギー「業法」があるだけだとい
うのが、かねてよりの私の主張である。限定的な地域熱供給事業を除いて「エ
ネルギー業界」を持たない温熱分野が、その狭間にあって、既存のエネルギー
業界の草刈り場になってきた。その結果、(電気+ガス+石油)×(ストーブ
+ファンヒータ)という種々雑多な暖房器具が溢れかえる、見苦しくて生活の
質の低い温熱環境が形成されてきたのである。

 温熱政策を考えるとき、基本的な原理は「エクセルギー」である。エクセル
ギーとは、エネルギーによる有効仕事量を指し、質を伴うエネルギー価値であ
る。たとえば電気のように価値の高いエネルギーを暖房のような価値の低い用
途に使うことは、「電気ノコギリでバターを切る」ように無駄なことだとされ
る(ヒートポンプに関する詳細な議論は省くが大筋は変わらない)。

 暖房に関しては、すでに「無暖房住宅」が実証段階に入っている。そこまで
は無理な場合でも、「断熱・気密→パッシブソーラ→低エクセルギーの自然エ
ネ利用」という「エクセルギーのピラミッド」を基本として考える必要がある。
これは給湯も同じだ。その上で、無原則・無秩序に展開してきたこの国の住宅
温熱環境の現実を見据え、20年以上をかけて、少しずつ「あるべき方向」に近
づけていくことが求められよう。

住宅におけるエネルギー利用のあり方は、集合的にみれば社会全体のエネルギ
ーのあり方を規定する。同時に、適切な温熱環境は、一人ひとりの生活の質を
向上させる。したがって、住宅の温熱環境のあり方は、エネルギー事業者の販
売戦略や十分な情報や知識を持たない個人の選択だけに委ねられるべきではな
い。温熱政策が求められる所以である。

無原則・無秩序・無策による遠回りは、もうやめようではないか。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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2.寄稿「科学的知見を政策へ反映させよう」
                 三橋規宏(経済・環境ジャーナリスト)

・ 異常気象が世界中を暴れまわる

この夏も異常気象が世界中を暴れ回っています。先日、スウエーデンに一時帰
国しているナチュラル・ステップの日本代表、高見幸子さんから近況を知らせ
るメールが届きました。今夏のスウエーデンは、地中海のような気候で、8月
に入ってからも日中25度で快晴、雨は2ヶ月も降っていない異常振りだそう
です。通常なら8月に入ると、気温は15度ぐらいに下がり、秋を感じる季節
になるのだそうですが、その気配はまったく感じられないようです。バルト海
は富栄養化が進み、毒藻が大量に発生し泳げない海岸が増えており、スウエー
デンやデンマークでは水温が上がりコレラに感染する人がでて話題になったそ
うです。スペインやニューヨークは40度近くの熱波に襲われ、中国の内陸部
は旱魃の被害に泣かされ、シベリアのタイガの火災も頻発しています。

・二つの科学の融合は可能か

温暖化による脅威が年毎に高まり、その対策が急務になっているのにもかかわ
らず、環境税ひとつ、日本では導入に踏み切れない状態です。多くの科学者が
現状を続ければ、温暖化による異常気象で人類の生存条件が根底から失われる、
と警告しているにもかかわらず、その警告がいっこうに政策に反映されない。
その理由のひとつとして、日本の場合、自然科学と社会・人文科学のコラボレ
ーションがうまく機能していないことが指摘できるように思います。いうまで
もなく、自然科学の研究対象は自然現象であり、人間の介在は一切排除されま
す。それに対し社会・人文科学は研究対象が人間そのものです。人間の心理、
欲望、行動原理などの解明が目的です。これまでは、二つの科学はそれぞれ住
み分けて、独立に存在してきたように思います。しかし、地球環境問題の解決
のためには、二つの科学の協力、融合が欠かせません。

・科学的知見を尊重した政策づくりに挑戦

自然科学が解明した自然界の原理、原則は人間がいなくても不変です。それに
対し社会・人文科学が解明した人間行動原理は、人間がいなくなれば存在理由
を失います。このことからいえることは、人間の行動原理は、時代によってた
えず変化するということです。地球の環境許容限度に余裕があった時の行動原
理と許容限度に余裕がなくなった時の行動原理は、当然違ってきます。「このま
まの状態で進めば、地球温暖化は人類の生存条件を奪ってしまう」という科学
的知見を尊重することが危機回避の唯一の道です。そのために人間の行動原理
をどのように変化させていかなければならないかを解明し、科学的知見が示す
危機を回避するための政策を法制化まで高めるために、社会・人文科学者の奮
起が期待されます。

                 三橋規宏(経済・環境ジャーナリスト)


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3.連載「光と風と樹々と」(11)
         大気汚染と公害の南アフリカ・ダーバン
               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

・貿易・リゾート・犯罪・公害??国際都市ダーバンの幾つもの顔

 4年に1回、サッカーのワールドカップと同じ年、しかも決勝戦と同じ7月
に、社会学のワールドカップ、世界社会学会議が開かれる。今年の大会開催地
は、2010年のワールドカップに先駆けて、南アフリカ共和国のダーバン
だった(7月23日から29日まで)。フライト時間はシンガポールとヨハネ
スブルク乗り換えで計約20時間、待ち合わせ時間も入れるとホテルから仙台
の自宅まで約30時間の長旅である。

 このメルマガの読者に興味深いだろうことは、現地の公害問題の深刻さだっ
た。7月27日の「エコロジー・ツアー」と、翌28日「環境と社会」研究部
会が独自に企画した、地元の環境運動グループが案内してくれた公害視察ツア
ーに参加した。

 ダーバンは人口約330万人、南アフリカではヨハネスブルクに次いで2番
目に大きい、インド洋に面したアフリカ最大の港湾都市である。石炭の積み出
し港でもあり、輸入原油の港でもある。
 南半球のため冬にあたる6月から8月は乾季でとくに雨が少なく月平均30
~40mm 程度である(年間降水量は約1000mm)。水力発電のためのダ
ム建設の是非も、2004年のボンでの自然エネルギー会議で南北間で議論に
なった論争的問題である。 ダーバンは幾つもの顔をもっている。シンガポー
ルのようなヨーロッパナイズされた貿易都市。日照量が多く、一年中太陽がま
ぶしい、サニー・ダーバンと呼ばれるような、避暑地・避寒地としてのリゾー
ト地としての顔。ヨハネスブルクほどではないが、25ー40パーセントという高
い失業率に規定された犯罪都市としての顔。世界社会学会議の参加者にとって
最大の不満は、治安が悪いために、男性でも昼間街中をひとり歩きできない、
会議のためのシャトル・バスやタクシーで、ホテルと会場を往復するだけとい
う隔離された状態だった。地元紙にも、「ホテルの中の囚人」と形容されたほど
である。

 そして公害都市としての顔である。

 毎日晴天の続く冬は、他方で風がないために、大気汚染のひどい季節でもあ
る。港の周囲や空港の周囲に並ぶ石油タンク群。2つの大きな古びた石油精製
所、製紙工場、地場産業ともいえる砂糖きびの精糖工場、そして自動車などが
原因である。とくに27日の「エコロジー・ツアー」の日はひどく、湾から対
岸が見えにくいほどだった。帰路のダーバン上空も、ヨハネスブルク上空も、
褐色に汚れていた。空港も、港近くも、石油精製所近くも、臭いがすごい。
「昔の四日市、川崎の臭いだ。キシレンやトルエン系だろうな」と同行の寺田
良一さん(明治大学・環境社会学)がつぶやく。

・環境権はあれど

 南アフリカ共和国の憲法第24条には「何人も、健康や福祉を損なわないよ
うな環境の権利を有する」と環境権が明記されている。しかし、大気汚染など
についてヨーロッパ並みの排出基準はあるがモニタリングが機能していないの
だ、という説明だった。東南アジアなどでもよくあることだが、制度をかたち
のうえで移植することは可能でも、実効的に機能させることは容易ではない。
裁判もしているが、判決は期待薄だという。

・全児童の52パーセントが喘息

 大気汚染はしばしば土壌汚染、地下水汚染をともなう。ここでもそうだ。
 汚染がとくに深刻なのは、インド系やズールー族の人たちが多くすむ南ダー
バン地区である。1946年操業のBP系の石油精製所から700mのところ
にある小学校では、2000年に全児童の52パーセントが喘息に罹患してい
たという。付近では、ガン患者も多いという。

 空港に近いシェル石油系の石油精製所の煙突からもずっと炎が出ていた。揮
発性のガスが燃えているのである。このような flaring は日本では禁止されて
いる。二酸化硫黄や硫化水素が大量に排出する。シェル石油のデンマーク国内
の石油精製所が排出する二酸化イオウは年間1000トン以下だが、ここでは
1万3000トン、13倍以上も排出している(2000年)。二酸化炭素も6
倍以上である。先進国と南アフリカとの間で、石油資本はダブルスタンダード
を使い分けているのである。

 40年以上も経って老朽化したパイプラインからのオイル漏れも頻発してい
る。シェル石油系の石油精製所付近で、2001年6月には100万リットル
もの大量のオイル漏れ事件が起こっている。

・はだかの廃棄物処分場の衝撃

 衝撃的だったのは Umlazi 処分場である。1986年から、化学・医療系の
廃棄物や生活ゴミなどを集積しているが、水銀などを含む有害廃棄物が集中し、
危険なために97年に反対運動の成果で閉鎖された。しかしただ山積みされて
いるだけで、何の覆いがあるわけでもない。マスクもつけずに、無防備なまま
の守衛がひとりいるだけだ。しかも、道路ひとつ隔てて、黒人たちの住宅があ
る。小学校も近い。ちょっとした風でも、ほこりや粉塵となって空中に舞って
いく。

 environmental racism や environmental justice (環境正義)という概念が
ある。アメリカ合州国で発達したものだが、ともに、環境問題は黒人や native
american (先住民)などの人種的マイノリティの多い地域に集中しがちである
こと、環境問題は、人種差別と深く結びついていることを告発した概念である。
南アフリカでは、environmental racism や environmental justice という観
念が、切迫したリアリティをもっている。
                        (2006年8月3日)

               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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4.「お笑い原子力ムラ敦賀」(12)
                   日野行介(毎日新聞大阪社会部記者)

 まずは長期にわたり休載をしてしまい、読者の方々、そしてSEENの編集
の皆様にご迷惑をかけたことをお詫び申し上げます。今年4月以降、本業が急
に忙しくなり、まとまって執筆する時間が取れなくなったこと、そして敦賀か
ら離れて1年以上が経ち、ネタが少なくなってきたのが理由です。いずれにせ
よ、私自身の勝手な都合であり、重ねてお詫びいたします。

 さて終戦の日の8月15日、小泉純一郎首相の靖国神社参拝に批判的なコメ
ントを繰り返していた加藤紘一衆議院議員の実家が放火によって全焼した。こ
の文章を書いている段階で理由ははっきりしないが、実家付近で腹を切って倒
れていた男性が右翼団体に所属していたことから、火災が加藤代議士の言動に
対する「テロ」だったことが想起され、問題は今後も尾を引きそうだ。

 私もこの連載に対して、政治団体と思われる団体名を名乗る男性から複数回
にわたり勤務先に質問状が送りつけられた。会社の了承を取って連載している
ことや報酬を受け取っていないことを上司が返答したが、どうやら納得してい
ただけなかったらしい。そもそも筆者の勤務先に一方的に質問状を送りつけ、
「誠意ある回答」を求めるような卑怯な手法に憤りを覚える。何が目的なのか
理解に苦しむ。

 昨今、HP上で政治的発言を明らかにすると、中傷としか思えないような批
判が集中して書き込まれ、やむなくHPを閉鎖するケースも多いと聞く。こう
した状況を「炎上」と言い、こうした書き込みを繰り返す人々を「ネット右翼」
などとも言うらしいが、こうした中傷を恐れて「口をつぐむ」傾向が強まると
したら、社会全体が暗くなっていると言うほかない。

 これまでにも何度か書いたことだが、原子力は「靖国」と同様、どのように
発言しても批判を受けやすく、タブー視されがちな分野である。そんな原発の
集まる地域で原発反対運動をする人々は、他の住民から白眼視され、経済的に
も圧迫されてさぞ大変であろうと、虐げられながら闘っているのではないかと
思われがちだ。

 確かにそんな面はある。40年に及ぶ原発反対運動の歴史を聞くと、さまざ
まな嫌がらせを受けたり、商売上の不利益を受けたなどという話には事欠かな
い。だが原発立地から40年が経ち、反対運動を取り巻く環境も変化している。

 まず反対運動を担う人々が高齢化した。「原発銀座」とよばれる福井県の若狭
湾岸地域でも運動の中核は60~70代で、運動に加わる若者もいない。そも
そも若者は、原発を取り巻く閉鎖的な社会に辟易としてか、職を求めて次々と
都会に出て行く。地元には人気ある進学先もないため、社会全体の高学歴化が
若者の流出に拍車をかけている。

 そして、何度も書いたことだが人口流出も手伝い、地元経済は原発産業への
依存を強めている。地元の雇用は定検の下請け作業員と原発マネーでハコモノ
を作る建設業界に次第に集中していく。経済的な依存が強まれば強まるほど、
反対運動も先細りが避けられなくなるのは自然の流れだろう。

 では、地元の大半を占めるいわゆる「原発推進派」は「反対運動」が弱体化
したことを本心で喜んでいるのだろうか。

 現在は埋め立てなどの基礎工事が続く日本原電の敦賀原発3、4号機の増設
工事。この着工までの経緯を振り返ると奇妙なことに気付く。

 建設工事に伴う特需を当て込み、喉の渇きに喘ぐ人が水を求めるかのように
早期着工を求める地元の経済界。一方、製造業の国外移転に伴う電力需要の長
期低迷を受けて、電力会社は何度も計画を先送りし、着工予定時期を書き換え
た。将来への不安から腰が引けているようにすら見えた。

 40年前の原発黎明期、電力会社は巨額の工作資金を地元に投下し、反対が
強い地元住民を切り崩して建設までこぎつけた。カネを使い、地元にへりくだ
って建設をお願いしていたのだ。今も形のうえでは電力会社が地元に対して建
設を「お願い」する構図だが、3、4号機増設計画の経緯を見る限り実態は完
全に逆転している。

 そんな変化を知る地元の建設会社の幹部はこう打ち明けた。「本当は6対4
でわずかに推進派が多いくらいが丁度いい。もう少し反対派が強くないと、原
電(電力会社)が我々(推進派)のことを大事にしてくれない」。


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5.NGOの視点より:「不都合な真実」
                      大林ミカ(ISEP副所長)

「An Inconvenient Truth:不都合な真実」。米国大統領候補で、クリントン
政権の副大統領だった、アル・ゴアの書籍・映画のタイトルだ。どちらも静か
なブームを起こし、全米に広く拡がりつつある。書籍(現在英語版のみ)は、
話題になると同時にネットで購入していたが、映画は、先日米国に行った際に
ようやく観る機会を得た。残念ながら日本での公開はもう少し先、2007年
新春だという。

内容は、地球温暖化問題をライフワークとして活動するゴアの、地球温暖化問
題と現在起こっている影響についてのレクチャーである。

と書くと、まったく退屈に響くが、実際には、月から見た地球、アルプスの氷
河が融解していく様子など、有名な写真や豊富な図を駆使しつつ、テンポ良く
わかりやすく説明していくので、全然飽きることがない。

書籍も映画も、デザイン的に非常に優れた画像で人目を惹きつける。しかし、
そこで明らかにされる地球温暖化の深刻な影響が大変衝撃的だからこそ、目が
離せないのである。この、最新の科学的データと共に次々に明らかにされる事
実は、多くの人々にとっては、信じがたい出来事でもあるだろう。

タイトルの「不都合な真実」とは、未だに地球温暖化は起きていないと否定し
続ける政府や産業界などの、国際政治で大きなパワーを振るう人々にとっての
「不都合さ」であるし、わたしたち一人一人が、自覚しつつも直視していない
現実を表す言葉でもある。

英国政府の報告書「危険な気候変動を避けるために」("Avoiding Dangerous
Climate Change,” Hans Joachim Schellnhuber, 2006)では、地球温暖化
の進行した状況を、次のように分析している。

◆産業革命前に比べ1℃~2℃の気温上昇:世界レベルで危険性がかなり高ま
る。生態系のうち10%が影響を受ける。氷河の溶解による南米大陸での飲料
水、エネルギー、農業への深刻な影響。 グリーンランドの氷の溶解開始により
数世紀にわたる7メートルもの海面上昇、など。
◆産業革命前に比べ2℃の気温上昇:危険性が一気に高まる。夏のあいだ北極
海の氷が完全に溶解、北極熊やセイウチが絶滅する。珊瑚礁の97%が消失す
る。砂漠化が進行、食料・水不足、貧困が進み北アフリカで大量の気候変動難
民が発生する、など。

そして、すでに0.6℃の温度上昇を招いている現在、取り返しのつかない異
変が起き始めている。

ここ一、二年にまとまりつつある世界の科学のコンセンサスは、2050年ま
でに、世界全体で60~80%の温室効果ガスの削減が必要というものである。
一方で、日本の状況をみると、つい先日発表された日本の京都議定書第一約束
期間5年間における割当量は、約59億トンであるという。割当量とは、この
量を超えてはならない枠を示すものだ。また、2004年度の総排出量(約1
3億5500万トン)は1990年基準年の総排出量(約12億6100万ト
ン)と比較して約7.4%増となっており、公約である6%を削減するために
は、これから13~14%の削減が必要とされていることになる。

世界の自然エネルギー普及を牽引するドイツは、基準年に比べてすでに19%
の削減を達成(ドイツの目標値はマイナス21%)、自然エネルギーだけで
8300万トンの二酸化炭素を削減している。単純には比較できないが、前述
の日本の基準年と現在の排出量の差が9400万トンだから、ドイツと同じよ
うに自然エネルギーで二酸化炭素が削減できたと仮定すると、その多くが自然
エネルギーで達成できたことになるし、増加分は0.8%にとどまったという
言い方も出来る。

もちろん省エネルギーも重要な両輪であり、あらゆる手だてを尽くして地球温
暖化防止に立ち向かう必要がある。日本では今秋から新エネ利用特措法の
2014年の目標値を議論する審議が開始され、来年は京都議定書目標達成計
画の見直しの年である。議定書の公約だけではなく、これから中長期の日本の
温暖化防止政策の礎となる年にしなくてはならない。

ゴアの書籍の副題は「地球温暖化による惑星の緊急事態とわたしたちにできる
こと」である。映画の最後には政策的取り組みで社会を変える必要性と、一人
一人にできることが紹介される。より多くの人に、不都合な真実を直視し、日
本にもできることが沢山あることに気づいていただきたい。

See the Truth:
http://www.climatecrisis.net/
(英語のHP。資料など豊富。予告編のダウンロードもあり)
http://www.futsugou.jp/
(日本語のHP。字幕付予告編をみることができる)

                      大林ミカ(ISEP副所長)


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6.プロジェクトフラッシュ
  暑くて熱い「備前エコフェスタ」
                 井筒耕平(備前グリーンエネルギー)

夏真っ盛りの8月5日、事務所が所在する備前市役所吉永総合支所近辺で「備
前エコフェスタ」を開催しました。気温36度という酷暑の中、たくさんの家
族連れやまほろば事業に興味のある地元の方々およそ300名にご参加いただ
きました。

会場では、地元の方の参加によるフリーマーケット、水島工業高校によるBD
F(バイオ・ディーゼル燃料)車試乗会、木を使った子どもの遊び場、花炭体
験(花や葉を炭化させたもので、観賞や消臭に利用)などが開催され、特にお
子様には大変喜ばれておりました。

ところでイベントといえばゴミも問題になるのですが、今回のお弁当はリユー
ス食器を利用し、ジュースもリターナブル瓶を利用しました。昔ながらの瓶ジ
ュースは、乾いた喉を潤してくれました。お弁当の他におにぎりも出品されま
したが、こちらは地元の自然素材である朴葉に包まれており、なんともいえな
いいい香りを漂わしていました。このような工夫により、ゴミ減量に成功した
だけでなく、来場者のみなさまに自然素材の豊かさを感じていただくことがで
きたのではないか、と思っております。

スタッフも奮闘しました。今回のイベントには、備前グリーンエネルギースタ
ッフの他に、大阪外大のインターン学生や地元の畜産農家の若いボランティア
の方に初めて参加していただきました。地元の方の中でも若い方の参加はこれ
までに無く、若いセンスと強い発信力による事業の更なる発展を期待しており
ます。さらに、地元の方であれば、口コミでの広がりも期待できますので、次
回以降は二人、三人と巻き込んでいけたらよいなと思います。

最後に今後のイベントについての展開ですが、今回のイベントはこれまで各地
で開催されている環境イベントと比較して、それほど変化の無いものでした。
今後は、「環境」という枠にとらわれず、「和風」「北欧」「地元の素材」「食」
「自然環境と音楽」「写真」など、暮らしの提案をテーマにしたような一風変わ
ったイベントを展開できたらおもしろいかと思います。切り口を変えることで、
地元の人たちにおもしろがって参加していただき、まだまだ知られていない備
前まほろば事業を応援していただけるよう仕掛けていきたいと考えています。
始まったばかりの備前のイベントプロジェクト、今後も目が離せません。


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7.インターン報告
   インターンシップを通じて学んだこと ~「主体性」を持つ~
        堀優基(ミシガン大学天然資源環境大学院修士課程2年生・
         ISEP・おひさま進歩エネルギー有限会社インターン)

 2005年5月~2006年8月の間、フルタイムのインターンとして、長
野県飯田市で市民出資を用いて38の太陽光発電所と省エネルギー(エスコ)
事業を展開しているおひさま進歩エネルギー有限会社で働かせていただきまし
た。
 インターンを開始する以前は、米国ミシガン大学の環境スクール修士課程に
在学し、政策的な視点からエネルギー問題について学んでいました。在学中に
ビジネス視点からの興味も強くなり、夏休みを利用してのインターンシップ先
を探していたところ長野県飯田市で自然エネルギープロジェクトが行われてい
るという情報を聞き、インターンとして関わらせていただくことになりました。

 インターンを通じて学んだことは数え切れないほどありますが、改めて振り
返ってみると自分で考え、自分の意志・判断によって、みずから責任をもって
行動する態度で行動する「主体性」を伸ばすことが出来たことが最も大きかっ
たのではないかと思います。

 2005年5月のインターン開始からの数ヶ月は、「主体性」を伴わないス
タイルでの作業をこなしていました。業務は、契約書の作成から、営業資料の
作成、エスコ事業の営業、エスコ事業の診断、イベントの運営管理等、次々に
新しいことを経験させていただきました。社会人経験が無く、好奇心旺盛と自
他供に認める(?!)私にとっては、仕事内容に関わらず、未体験の仕事がで
きるということだけで楽しく、意気軒昂と働くことができていました。ところ
が、インターンを始めて数ヶ月経つと、日々の仕事に何か物足りなさを感じる
ようになりました。仕事は山積みで、働こうと思えばいくらでも働ける、しか
し、モチベーションが上がらない。仕事内容のバライエティーはあるものの、
コミットメントの低い仕事しかできないことに、不満を感じ始めていました。

 何故そうなってしまったのか。それは「主体性の欠如」が原因でした。イン
ターン先のISEPやおひさま進歩エネルギーが行なうプロジェクトは属に言
う「ベンチャー」的位置づけで、事業内容的(自然エネルギーという未開拓の
分野)にも、多くのことを無からつくりあげなければなりません。そのような
環境において、主体性の無い仕事を与えられるのを待つスタイルでは、スキル
も経験も少ないインターンが、庶務や補助作業等割り当てられるのは必然です。
そのような仕事が意味の無いわけではなく、事業達成においては重要な仕事で
あることには違いありませんが、スキルでも何でも少しでも多くのことを身に
付けたいと考えたため、受け身のままで残りの期間を過ごすことに危機感を覚
え、「受身」の仕事スタイルから「主体的」仕事スタイルへと徐々に意識を変
えていきました。ISEPでは、インターンという肩書きは関係なく、「主体
的」に行動すれば、最大限のチャンスを与えてもらえます。そのおかげか、イ
ンターン後半では、非常に充実した期間を過ごすことが出来ました。

 主体的に関わることの好き嫌いとその良し悪しは人それぞれで、受身の仕事
スタイルであれ、達成の喜びが得られるという点は共通でしょうが、主体的に
行動し得る喜びは私にとってはより満足度の高いものでした。

 ここで話は変わりますが、日本人は出された指示を忠実に実行することに長
けているといわれますが、旧来、企業ではこういった人材が好まれ、詰め込み
型受験勉強を象徴とする教育システムもそういった人材の育成を後押しして来
たように思います。インターンの前半で見られた受け身の仕事スタイルに見ら
れるように、そのシステム下で育った私もこういった典型的な「日本人」でし
た。

 世間では、長い経済の停滞が大きな問題となっていますが、経済のグローバ
ル化が進み、国内外での企業間の競争の激化や、資源の需給逼迫や枯渇問題等
の激しい変化を伴う時代において生き残るためには、典型的な日本人に見られ
る従来の従属・他律型スタイルから脱却し、自律的に行動できる人材が必要と
いわれています。このような中、時代を生き抜くために自律的な力を身につけ
るという目標の下、平成14年以降、小・中・高校で「総合的な学習の時間」
が導入されたのはご存知の通りです。このプログラムが有益な結果を生んでい
るのかどうか定かではありませんが、私にとってISEPでのインターンシッ
プは、まさしく意味ある「総合的な学習の時間」だったように思います。

 ISEPやおひさま進歩エネルギーの人々を含む、化石燃料依存型の社会か
ら自然エネルギーを利用する持続可能な社会への移行という社会構造の「改革」
を担う人々は、「主体性」を持つパワー溢れる人々であることはいうまでもあり
ません。

 今という時代を生き抜くために、そして持続可能な社会への改革を担う人材
に強く必要な、自分の中の「主体性」の芽を大きく育てられたことが、インタ
ーンシップを通じての一番の成果ではないかと感じています。

 自己の努力が前提にあることはもちろんですが、チャンスを与え、多くの失
敗に対しても寛大にバックアップし、温かく見守ってくださった多くの人々の
おかげで、約一年のインターンシップを有意義なものにすることが出来ました。
ISEPそしておひさま進歩エネルギー有限会社の皆様、本当にどうもありが
とうございました。

 インターンを通じて具体的に得られた環境エネルギー事業に関する知見は、
残りのミシガン大学での研究生活に生かしていく所存です。

※ なお、本稿中では私が関わっていたおひさま進歩エネルギー(有)の事業内
容の説明は割愛させていただきました。事業内容については、こちらのURL
をご参照いただければと思います。
http://www.ohisama-energy.co.jp/


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