上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
1. 風発 「新・国家エネルギー戦略を読む」
                       飯田哲也(ISEP所長)

 ちょうど1ヶ月前に、経済産業省から「新・国家エネルギー戦略」が公表さ
れた。総合資源エネルギー調査会総合部会を2月8日に立ち上げ、わずか4ヶ
月・5回の審議で取りまとめたもので、パブリック・コメントも行われなかっ
た。大仰な名前に反して貧弱な内容で、なぜこれを経済産業省が拙速に取りま
とめたのか、謎である。メディアでもほとんど注目されなかったので、ここで
主な問題点を拾ってみよう。

第1に、理念なき、空疎な言葉が踊っていることだ。のっけから「世界最先端
のエネルギー需給構造の確立」という意味不明が登場する。好意的に類推すれ
ば、「世界一の省エネ国」という風評(念のために言えば、これは正しくない)
を拡張しているのかもしれないが、「世界一お粗末な自給率」を含めた需給構造
のいったい何が「世界最先端」なのだろうか。その上に、「持続可能な成長基盤」
という、イマドキ、時代遅れも甚だしい標語を掲げ、「国民に信頼される」など
と、ストーカーもどきの勘違いをしている。他にも、「省エネルギーフロントラ
ンナー計画」を始め、大きい標語はいずれも内容が空疎である。仮に、これを
英文で国際的に発信したとしても、「アジア・世界のエネルギー問題克服への積
極的貢献」をリードできるような規範や理念になるどころか、理解すらされな
いだろう。

第2に、空疎な言葉の反面、危機感と根拠とリアリティに欠けていることだ。
原油価格高騰を背景に掲げながら、ピークオイル問題のコンティンジェンシー
を睨んだ危機対応や予防的な対応は見られない。「新・国家エネルギー戦略」で
は、数値目標を入れたことをウリにしているが、たとえば、2030年までに
石油依存度を50%から40%に下げるという自然体な目標にすぎない。石油
自主開発比率を15%から40%に向上させるという数値目標も、あれだけ失
敗を繰り返した石油公団なきあと、これを実現する根拠やリアリティはない。

第3に、その数値目標に、肝心の自然エネルギーがないのである。これは、2
重の意味で致命的である。今や、自然エネルギーは国際的に急成長している持
続可能なエネルギーである。そのため、純国産エネルギー資源として、高い目
標値を掲げ、適切な政策措置により、普及が図られているのだが、日本だけが
取り残されている。さらに、新エネRPS法の目標値見直しをこの秋に控え、
総合部会は、目標値を示すことが期待されていたはずなのだが、その期待も裏
切ったのである。その結果、理念もリアリティにも欠けた「新エネルギーイノ
ベーション計画」という、空疎な標語だけが掲げられている。

そして、第4に、時代錯誤の「原子力立国計画」である。これこそ、「国民の信
頼」からは対極にある。ウソにウソを重ねて、まったく無意味な国民の損失と
無用なプルトニウムを生み出す六カ所再処理工場のアクティブ試験に突入し、
2兆円を超える巨額の税金と40年も掛けて、ナトリウム漏れ火災で廃墟とな
った高速増殖原型炉「もんじゅ」しか生みだせなかった貧弱な技術力を振り返
ることもなく、「早期実用化」などと虚妄を繰り返す。しょせんは、「原子力ム
ラ妄想」にすぎない。

こうしてざっと見るだけでも、これが「国家エネルギー戦略」の名に値しない
ことは明白だろう。前号で取り上げたスウェーデンの首相直轄で始まった20
20年脱石油計画や、2020年に20%を目指す東京都再生可能エネルギー
戦略こそが、その名にふさわしい。

                       飯田哲也(ISEP所長)


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
スポンサーサイト
2.特集「北欧のエネルギー事情」
 北欧というと、まっさきに思い浮かぶのが、高負担高福祉を背景とした高い
成長率を持った国々というイメージだろうか。だが、それだけではなく、豊富
な森林を活用したバイオマスエネルギーをはじめとした、自然エネルギー利用
においても、野心的な目標と先進的な取り組みを行っている。
 今回は、こうした北欧の自然エネルギー事情をリポートする。


1) スウェーデンのバイオマスエネルギー事情
            -地域熱供給を中心として
                    松原弘直(ISEP客員研究員)

スウェーデンで二番目に大きい湖の畔にある南部の町ヨンショーピンで5月末
に開催された第2回ペレット国際会議(Pellets2006)に参加する機会を得た。バ
イオマスエネルギー国際会議(WorldBioenergy2006)と同時開催で、実際の現場
を見て感じることを重視して“Know-howからShow-howへ"と銘打った会期中の
見学会などで垣間見えたスウェーデンのバイオマスエネルギー事情について地
域熱供給を中心に紹介する。

ヨンショーピン近郊の村グレンナのペレット燃料による地域熱供給施設は地域
のエネルギー供給会社が5年前から運営しており、村の半分にあたる1200
世帯と契約して温水を供給している。施設は2MWの出力を持つペレットボイ
ラーを中心に45トンのペレットサイロ2基を持つ非常にシンプルな構成で、
その地域に合わせた設計がされているにも関わらず、コンテナを活用した建屋
などにより短期間での設置や移動が可能になっている。

スウェーデン首相の別荘地ハープサンド(Harpsund)にある農場においては、小
規模の地域熱供給施設が4年前から稼動している。農場にある16棟の建物に
温水を供給しており、1台のチップボイラー(250kW)、2台のペレットボ
イラー(400kW+30kW)、太陽熱温水器(327平米)および40立米
の蓄熱槽から構成されている。バイオマスと太陽熱を組み合わせた施設を政府
が率先して活用している持続可能なモデル事業として非常に興味深い。

人口2万人のエンショーピン市のCHP(電熱併給)施設は23MWの発電能
力を持ち、6年程前からバイオマス燃料に本格的に切り替えて、電力自由市場
での取引に加えて2003年施行のRPS法に基づくグリーン電力証書の取引
を行っている。熱供給については135MWの供給能力があり、74kmに及
ぶ配管網で市内1300箇所に熱供給している。施設から排出される水に含ま
れる窒素や重金属を、施設周辺で栽培しているエネルギー作物(Salix)に吸収さ
せて、それを再びバイオマス燃料として使用するという画期的な取組も行って
いる。

スウェーデンは、1991年には炭素税を導入し、すでに全エネルギーの28%
を再生可能エネルギーにより供給しており、その半分以上(16%)をバイオ
マス燃料が占めている。実際に見学した年間生産量8万トンの大規模ペレット
工場の担当者によるとペレットの国内生産量は昨年1年間で150万トン(世
界第一位)まで達し今年はさらに増えるだろうとのこと。国内熱需要の40%
を地域熱供給の施設が賄っており、1970年代に主に石油を使用していたこ
れらの施設も、現在は様々なバイオマス燃料によりその62%を賄っている。
欧州の中でも進んだ再生可能エネルギー政策とあいまって各地域の特性や経済
を生かしたバイオマスエネルギー事情を体感することができた貴重な4日間だ
った。日本においても再生可能エネルギーに対するより明確な政策と共に、地
域の特性にあった効果的な取組がバイオマスエネルギーの本格的な普及に求め
られている。

参考URL:
「スウェーデンのエネルギー政策」
http://www.sweden.gov.se/content/1/c6/06/32/00/f09e07b2.pdf
「ペレット国際会議2006」
http://www.pellets2006.com/

                   松原弘直(ISEP客員研究員)


+++++++++++
2)Sweden とAustriaに学ぶペレット普及への道
                     井筒耕平(ISEP研究員)

■国内の状況
2000年以降、国内では徐々に木質ペレットへの注目が集まりつつある。た
だし、この6年間は閉塞状況にあることもまた事実である。需給量は3000
トン程度と相変わらずの状況であり、頭打ちといっても過言ではない。この理
由についてはペレットの品質問題、ロジスティクスの問題、機器本体の性能の
問題などのハード面と、日本人の木への親和性の欠落、バイオマスに対するス
テークホルダー間のズレ、国内の遅れた自然エネルギー政策などのソフト面が
あると考えるが、詳細は紙面の都合上ここでは割愛する。
では、先進市場である欧州の木質ペレット市場では、ペレット流通がどのよう
な状況であるのかという疑問がわいてくる。このたび、5月29日~6月11
日までスウェーデンとオーストリアへ来訪する機会を持つことが出来た。現地
のペレット流通の状況を生活者の視点、および国内での課題に対する回答とい
う視点からご報告したい。

■スウェーデン ~木を使った生活が雇用を生む~
5月29日からは、スウェーデンで開催されたWorld Bioenergy2006に参加し
た。ヨーロッパ(今回はスウェーデン、ドイツ、オーストリア)を訪れてまず
気づくことは、どこの家庭にも煙突があることだ。すべての煙突が木の利用と
いうわけではないようだが、生活の中で炎を楽しむというスタイルが確立され
ている。おしゃれな北欧家具にも利用される木は、彼らにとって「特別な存在」
ではないのである。また、コンビニには映画や音楽の雑誌とともに、エネルギ
ーに関するデザイン性の高い雑誌も陳列されている。多くの個人にエネルギー
を考えるきっかけを与えることが「普通」に行われているのである。
一方、技術についても確立されており、普及段階に達している。World
Bioenergy2006へも多くの企業が出展しており凌ぎを削っていた。燃焼機器や
ロジスティクスを担うメーカーはもちろんのこと、ペレットの袋メーカー、港
湾組合、バイオマスコンサル会社など、バイオマスによって多くの雇用が生ま
れていることが印象的であった。政策の後押しと民間企業のしたたかな推進力
のシナジー効果が十分に発揮され、日本で課題にされているようなステークホ
ルダー間のズレも埋まっていったのであろう。

■オーストリア
6月5日からはオーストリアのザルツブルグへ訪問した。ドイツやオーストリ
アには、カッフェルオーフェンという石製の大きな暖炉がある。市内のホーエ
ンザルツブルグ城内にも残る装飾の施されたカッフェルオーフェン(16世紀
製)は、豪勢なたたずまいを今に伝えている。この地方も家に煙突があること
は「普通」のことであり、木への親和性は非常に高いのである。
近年、ペレット需要は非常に高くなっており、年間60万トンの需給状況であ
る。燃焼機器は、家庭用ボイラーが4000~5000台程度、ストーブは1
万5000~2万台以上販売されている。中でも家庭用ボイラーは、複数の企
業によりEU内への輸出も含めて非常に盛んな状況である。燃料のロジスティ
クスに関しては、EU内への陸続きの利点を生かして国際取引が一般化してお
り、バルク輸送しエアレーションで施設への搬入という手法で統一されている。
オーストリアは、政策よりも民間、特に小規模ベンチャー企業によりバイオマ
スへの参入が進んでいる印象が強く、民間需要、多数の製材所の存在、ロジス
ティクス技術の向上が、オーストリアのバイオマスを牽引していると感じた。

■日本の新展開
昨今、国内でもペレット(チップ)市場に関して新展開が進んでいる。その内
容と考慮すべき論点を以下に挙げる。
一つ目は、電力会社による石炭混焼で、数万トンのペレットを利用する計画で
ある。ペレット需要が増加することは歓迎ではあるが、いまだ小規模の国内ペ
レット市場に対して、価格や品質面での影響は少なからずあるであろう。
二つ目に、大規模工場のチップ燃料導入への動きである。繊維工場、パルプ工
場など蒸気ボイラーを利用する工場が、高騰する石油から木質バイオマス(主
にチップ)への燃料転換を計画している。化石燃料の抑制にはプラスの動きで
はあるが、チップの価格上昇と、ロシア、アフリカ、南米など更なる違法伐採
の恐れがあり、注意が必要である。
三つ目にターゲット市場の広がりである。現在、温水プールや老人ホームなど、
温水を利用する中規模ボイラーが、自治体の負担によって年間数台ずつ導入さ
れている。これに対して、民間の知恵を生かし、欧州のベンチマーク市場のノ
ウハウを取り入れ、価格的にも石油と同程度を目標とする取り組みがある。国
内の燃焼機器、ロジスティクス機器から鑑みて非常に困難なチャレンジではあ
るが、大いに期待したい。
今回の欧州訪問では、国内での機器の未熟さもさることながら、ソフト面での
努力が全く不足していることを痛感した。もともと高かった日本人の木への親
和性は石油燃料の台頭した1960年以降途切れてしまい、今は刹那的な石油
文化にどっぷりと浸かっている。今後は、木を利用する生活が「普通」の生活
として心地よく取り入れることができるよう、マーケティング戦略も需要にな
ってくるであろう。それこそは、木への親和性が欠如してしまった日本特有の
新展開が必要なのである。

                      井筒耕平(ISEP研究員)


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
3.連載「光と風と樹々と」(10)
     敗者の女神・勝者の落とし穴??サッカーも人生のようなものだ
               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

・ 敗北を抱きしめて??4強の2年前

 実力伯仲のチーム同士の「死闘」。ドイツで開催中の2006年サッカー・ワ
ールドカップ準々決勝はいずれも見応えのあるものだった。ドイツがアルゼン
チンに追いついて、PK戦の末に破った試合。ゴールキーパーのレーマンは、
アルゼンチンのPKを2本しか許さなかった。同じように、ポルトガルのゴー
ルキーパー・リカルドはイングランドのPKを3本も退けて勝利した。PK戦
は1キックごとにドラマチックで、120分闘った「動」に対して、集中する
「静」の対比が見事である。集団対集団に対する、1対1の対決。
 フランスがジダンの活躍で優勝候補のブラジルに勝利した試合、イタリアが
ウクライナに3-0で快勝した試合も、日本時間で朝4時からの中継のため、
ハイライトを見ただけだが、鮮やかだった。
 予選リーグで敗退した日本の目標はベスト4だったというが、日本がベスト
8にすすむにはあと何年かかるだろう、というのが正直な実感である。日本と
世界の一線級とのレベルの差の大きさを感じさせられたワールドカップである。
 準決勝にすすんだ4チームのうち、ドイツもフランスもイタリアも前評判は
それほど高くなかった。FIFAの世界ランキング(5月現在)ではポルトガ
ルは7位、フランスは8位、イタリアは13位、ドイツは19位である。目下
優勝しそうな勢いのドイツが19位で、日本が18位というのは信じがたいけ
れど。ちなみに世界ランキング1位はブラジル、2位はチェコ、3位はオラン
ダ、4位はメキシコである。
(http://www.tsp21.com/sports/soccer/fifaranking.html)
 ドイツは2002年の日韓大会は準優勝したものの、2004年のユーロ選
手権は決勝トーナメントにすすめず、立て直しのために現在のクリンスマン監
督が就任した。フランスは1998年フランス大会の優勝国だが、2002年
の日韓大会は1勝もできず予選リーグ敗退、2004年のユーロ選手権はベス
ト8どまりだった。ドイツ同様に、監督が現在のドメネク監督に交代している。
今回も、予選リーグでは韓国・スイスと引き分けるなどもたつき、1勝2引き
分けでかろうじて決勝リーグに進出した。イタリアも2004年のユーロ選手
権は決勝トーナメントにもすすめなかった。現在のリッピ監督も、仏独同様に
この敗退直後の就任である。しかも八百長や賭博などの不正行為疑惑が直前に
持ち上がり、ワールドカップどころではない、というありさまだった。200
2年大会でブラジルを優勝させたスコラーリ監督率いるポルトガルは、200
4年ユーロ選手権準優勝で、安定して強い。
 ベスト8クラスは紙一重ということなのだろうし、チームに底力があれば、
短期間で大幅なレベルアップが可能だということでもあろう。
 敗北こそが、チーム再編、新旧交代のチャンスだということでもある。むろ
ん監督の重要性を示してもいる。

・ 名手ジダン??2004年ユーロ選手権

 日本のマスメディアやサッカージャーナリズムは成熟していないために、主
観的な印象批評ばかりやっているが、まずこういう基本的事実を抑えておくべ
きだと思う。
 2004年6月ポルトガルで開かれたユーロ選手権が印象的なのは、オラン
ダ滞在中で連日テレビで楽しんだからでもある。期間中の国中の熱狂ぶりは確
かにすごいし、試合後のテレビ解説も細かくて辛い。
 戦慄を覚えたのは、グループリーグ第1戦のフランス対イングランド戦であ
る。6月13日スコットランドのエジンバラの宿でみた。イングランドが1対
0とリードしていたが、フランスのジダンが最後の2分間に、フリーキックと
ペナルティキックを見事に決めて、敗色濃かったフランスが2対1で逆転勝ち
した。これぞ土壇場で大逆転した「プロの仕事」だった。そのとき私は、『思想』
7月号の「リスクと社会」という特集号の校正ゲラを抱えていて、印刷所の締
切時間が目前に迫り、編集者の求める直しにどう答えるべきか苦悶していたの
だが、決めるべきゴールを決めてこそプロだ、と自分を励ましたことをなつか
しく思い出す。翌朝、ホテルから指定された印刷所へFAXを送った。
 このとき開催国ポルトガルを破り優勝したのは新興のギリシアである。しか
しギリシアは2004年秋の欧州予選で敗退し、今回のワールドカップには出
場していない。オセロゲームのような、めまぐるしい栄枯盛衰のドラマである。

・ジーコはなぜ失敗したか

 2敗1引き分けというワールドカップでの日本の惨敗を、メンバー発表目前
の「壮行試合」といわれた5月13日の日本対スコットランド戦(0対0で引
き分け)を見て、私は予感した。予選リーグ突破は困難だろう、1勝もできな
いのではないか、とその週の授業で学生たちに告げておいた。
 縦パスがとおらない、ゴール前のもたつき、相手守備陣を崩せないなど、ワ
ールドカップ3試合と同じような欠陥を露呈していた。
 結局は監督ジーコが期待していたレベルと、選手の「実力」との間に差があ
り過ぎて、そのギャップを埋めることに、監督経験のなかったジーコは失敗し
たのである。
 10数年来の懸案の得点力不足、体力や技術面での個々の選手の「非力さ」
を補うのは、セットプレーを重視するとか、かたちをつくることだろう。勝つ
ための戦術論や方法論は、非力なチームにおいてほど重要である。
 最大の問題は、そもそも監督経験のないジーコになぜこの4年間を委ねたの
か、ということである。元有名選手のもつ、漠然としたあるムードや雰囲気に
期待するというのは、日本のプロ野球などの監督選出にもしばしば見られる大
きな陥穽である。
 弱小チームを強くした実績をもつ人、できれば日本で監督としてチームづく
りの手腕を発揮してきた人をこそ監督にすべきである。指導者には明確な方法
論がなければならない。
 その意味では、オシム次期監督の選出は賢明な選択である。その苦労人とし
ての半生とユーゴ時代の艱難を描く『オシムの言葉』(集英社、2005年)は
一読に値する感動的な本である。オシム氏には、強くするための方法論がある。
日本人にはほとんど乏しい、知的なおとなのユーモアがある。バルカン半島が
育んできた知性は、こういうものなのか。
 それにしても、シュートを譲り合っていた、ワールドカップでの高原・柳沢
の2トップは、シュートを避ける日本社会の象徴である。日本代表のフォワー
ドでさえこうだ、というのは深刻な問題である。
 ブラジル戦終了後、中田英寿が泣き顔をユニホームで覆ったまま10分以上
もピッチに横たわっていたのは、国際舞台での日本人の悔しさの象徴ではない
だろうか。
 何の分野でもそうだが、敗北からいかに学ぶか、という所に真価があり、再
出発の原点がある。前述したように、今回のワールドカップの4強も、それぞ
れに敗北を抱きしめて、勝ち残ったのである。女神は、敗者にも微笑むのであ
る。
 フランスに敗れたブラジルのロナウジーニョは、勝ち続けることの難しさと
落とし穴を的確に語っている。「チームが勝つことに慣れるとこういうことに
なってしまう」。

                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
4.上海からの風の便り(6)
                              木村寿香

連載の前号では中国の再生可能エネルギー法の運用を定めた「再生可能エネル
ギー発電価格と費用分担管理試行規則」を取り上げました。今回は、間接的な
方法で再生可能エネルギー案件を支援する中国クリーン開発基金(CDF)に
ついてご紹介したうえで、今後の展望と課題についてまとめたいと思います。

京都議定書に基づくClean Development Mechanism (CDM)は、温室効果ガ
ス削減目標を課された国(日本など付属書I国)が非付属書I国(主に発展途
上国、中国も含まれる)に対して、技術や資金を提供して排出削減などのプロ
ジェクトを実施し、その結果生じた排出削減量に基づいて発行されたクレジッ
ト(CERs)をCDM関係国間で分け合う手法です。PointCarbonの直近の
プレゼンテーションによれば、2012年まで1011プロジェクトからCE
Rs13億5000万トン供給されることが見込まれています。内訳は、国別
で28%が中国、19%がインド、12%がブラジル、分野別では18%が再
生可能エネルギー案件です。

世界銀行は中国政府に中国クリーン開発基金(CDF)について助言を与えて
います。CDMに係わる課税収入にドナーの寄付や開発系銀行の出資等の幅広
い財源を加えて、クリーン開発基金を設立し、気候変動や持続可能な開発に貢
献するプロジェクトに投資をしていきます。CDMの収益への課税率はガスの
種類により異なり、HFCやPFC(いずれも代替フロン)など地球温暖化係
数が高いガスは収益の65%と高い税率が課される一方、二酸化炭素やメタン
削減に係わるプロジェクトは2%と低く抑えられています。CDMプロジェク
トのなかでも、フロン破壊などのプロジェクトに対して、再生可能エネルギー
等のプロジェクトを優先して取り上げるようインセンティブを強化するユニー
クな政策手段です。

中国の再生可能エネルギー発電は、化石燃料代替により送電連係平均で1GW
hあたり1トンの二酸化炭素の削減が期待できます。1トンあたりの価格は現
状では、デリバリー保証されたもので14-16ユーロ。CDMに基づく副収
入はそれだけでは投資決定をすることはできないとされながらも、採算の分か
れ目にある案件を後押しする効果が期待できます。そしてCDMプロジェクト
を支援する金融手法も通常のプロジェクトファイナンスのほかプライベートエ
クィティ、アジア開発銀行等による保証(信用リスクを緩和するPartial Credit
Guarantee , カントリーリスクを緩和するPolitical Risk Guarantee)、CE
Rsの前払いなどバラエティに富んできています(Renewable Energy Finance
Asia 2006)。買取価格の透明性に欠ける風力の分野において、CDMが甘味料
となって外資系の参入が進むことを期待しています。

この連載では、隔月で6回にわたってダイナミックな中国の自然エネルギー政
策について、特に風力に重点をおいてご紹介しました。アジア最大のエネルギ
ー大国がどこへ向かおうとしているのかを考察することにより、日本および東
アジアにおける自然エネルギー政策を考えるヒントになれば幸いです。中国の
再生可能エネルギーマーケットの今後の展望としては、「環境に資するエネル
ギー」としてエネルギー政策上の主流となるために、経済成長の著しい沿岸部
における巨大な新興消費者のパワーとリンクした大型の風力発電のさらなる普
及が注目されます。課題としては、再生可能エネルギー法の固定価格の設定方
法の見直し、特に風力における透明性の高い固定価格の導入、全国レベルでの
需要サイドをターゲットとした政策の充実等が望まれます。

おわりに 一路順風

はやいもので、一年にわたる連載も今回が最終回となりました。その間に中国
でのBeijing International Renewable Energy Conference 2005直前号での中
国の政策のサマリーおよび会議の後の号外での雑感など連載以外でも執筆させ
ていただいたので、とても思い出深い一年となりました。この機会を与えてく
ださったISEPの皆様には心から感謝しております。またつたない文章に関心を
持って読んでくださったSEENの読者の皆様にもこの場を借りてお礼を申し上
げたいと思います。ありがとうございました。近いうちに自然エネルギー関係
の会議やセミナーでお目にかかれることを楽しみにしております。

                            木村寿香


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
5.プロジェクトフラッシュ
   備前で始まった省エネ事業 終盤にさしかかった備前市役所工事
                   柳沼佑貴(備前グリーンエネルギー)

昨年から環境省の補助金を受けて始まった備前市まほろば事業ですが、その
事業の2本柱の一つ、「省エネ事業」が備前市役所を対象に始まりました。5,
6月の2ヶ月間の工事を経て、6月30日に全施工が完成する予定です。備前
市で発足した備前グリーンエネルギー(株)としては、はじめての省エネ工事
でありながら、非常に規模の大きい案件であったため、たびたび起きる想定外
のトラブルには苦労の連続でした。しかし、その障害を一つ一つ乗り越えるこ
とで、我々は非常に多くの事を学ぶことができ、この経験は次の事業への大き
な礎として生かせるのではないかと思っております。また、今回の工事に関し
ては設計事務所や施工業者、そして備前市の職員の方々の暖かい協力がなけれ
ばかなわなかったことで、ご協力していただいた方々には感謝の念が絶えませ
ん。
さて、今回の省エネ事業ですが、具体的に何を行ったのかというと、備前市
役所の新館と旧館を対象に、大きく「照明」と「空調」に対して改修を行いま
した。照明は、蛍光灯高効率安定器やHf蛍光灯、省エネ型のダウンライトの
導入です。これらの導入により、約20%程度の省エネが可能です。また、市
役所のロビーが暗すぎるという問題点がありましたので、そのを踏まえて、省
エネ型の照明を使った適正照度への改善といった提案も行いました。
空調関係は既存の機器から最新の省エネ型の機器にリニューアルをはかりま
した。既存配管を利用しつつ、新規の機器を導入するということで、パッケー
ジエアコン、マルチエアコンの組み合わせによる提案となりました。導入した
機器にはエコリターンという機能がついていました。例えば夏場に一気に室温
を下げようと一時的に低めに温度設定をしても、一定時間後に自動的に設定温
度に復帰するという機能です。その機能を使い、夏場は28℃、冬場は22℃
での設定を行うことで、過剰なエアコンの利用を防いで省エネ運転が可能にな
ります。
今回の省エネ提案による削減量は、照明・空調をあわえて導入前の2割以上
もの削減が見込まれております。我々としてはこの成果を地域の環境教育にも
活用していきたいと考えており、例えば、市役所ロビーに毎月の省エネ量を掲
示板で広報したり、また市の職員の方には取り組の内容みやエネルギー問題に
ついての勉強会を開くなどして、この成果をまた新しい形で波及させていきた
いと考えております。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。