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1. 風発 「ピークオイル問題をどう捉えるか」
                       飯田哲也(ISEP所長)

 そろそろ日本でも、ピークオイル問題が論壇の地平線に浮かび上がってきつ
つある。ISEPとしても私自身も、まだ十分に論点を網羅しているわけでは
ないが、例のごとく「日本型」の歪んだ政治アジェンダで固まってしまうまえ
に、この問題への基本的な視点を提示しておくことは重要だと考える。
 ピークオイル問題とは、かつて1970年代に流行った石油枯渇論とは異な
って、全世界の原油の生産量が頭打ちになり(=ピーク)、その後は生産量が減
衰していく状況を指す。世界の石油消費は堅調に伸びており、「ピーク」後には
急速に需給ギャップが広がるために、原油の高値は続き、世界は急激なエネル
ギーシフトを余儀なくされ、社会的な混乱や戦争、国際的な不平等がますます
ひろがることが懸念されている。
 歴史的には、1956年に米国の石油地質学者であるM.K.ハバートが発
表したベル型の石油生産量の推移、すなわち「ハバート曲線」が理論的な論拠
である。ハバートは、アメリカが原油の生産の減少と石油輸入国に転落するこ
とを予告し、業界から袋だたきに遭ったものの、事態はその通りに推移したの
である。その後、1998年にK.キャンベルがサイエンティフィック・アメ
リカン誌にピークオイル論を投稿し警鐘を鳴らしてから、この問題が国際的に
はクローズアップされてきた。日本では、昨年8月に「ピーク・オイル」(リン
ダ・マクウェイグ著、益岡賢訳、作品社)が翻訳出版されてから、じわりと広
がってきたように思う。
 さて、この問題に対する「日本型アジェンダ」は、すでに政府筋で登場して
おり、そうでなくても容易に想像できる。温暖化問題を原子力擁護の論理に臆
面もなく使ったように、原子力開発と石油開発という経産省系の2大既得権益
を維持するために、「危機」をつまみ食いするのだ。ところが、いずれも真の危
機が訪れた場合には、ほとんど役立たない。ここでも、日本ムラの特徴である
「理想主義の貧困とリアリズムの欠落」が露呈している。
 ピークオイル問題に対しては、歪んだ「日本型」のアジェンダではなく、持
続可能性(サスティナビリティ)とエネルギー民主主義という2つの軸から、
対応を考える必要がある。ピークオイル問題に限らず、地球温暖化問題、そし
て原子力リスクも回避する「持続可能なエネルギー社会」への急激な移行を構
想する必要がある。また、一人ひとりの基本的な生存権や地域の自己決定と自
立(律)、南北間・世代間の衡平性、さらには、危機においても信頼関係を維持
できるタフな社会関係を築きあげていくことが不可欠だろう。
 なお、ピークオイル論は、石油保守層からは「悲観論」と呼ばれていて、こ
れに対抗する「楽観論」も経済学者や保守的なエネルギー業界人からは根強い
人気を持っている。ただし、ピークオイル論が「ファクト」に基づくのに対し
て、楽観論は定性的・抽象的な議論に留まり、悲観論を否定する論は見あたら
ない。百歩譲って、論争が五分五分だとしても、予防的に考え、かつ持続可能
なエネルギーシステムが持つ社会的な恩恵を考慮すれば、ピークオイル論を起
こりうるリスクとして捉え、行動した方が賢明であることは論を待たない。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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2.国連・持続可能な開発委員会(CSD)開催-パート2
                      大林ミカ(ISEP副所長)

第14回国連持続可能な開発委員会(Comission on Sustainable Development、
CSD)が、5月1日からNY国連本部で始まった。今年・来年のCSD14
/15では、持続可能な開発のためのエネルギー、工業開発、大気汚染/大気、
気候変動がテーマである。

2006年はレビュー年にあたるため、政策年であるCSD15に向けての前
哨戦としての位置づけが強く、この文章を書いている時点で前半の一週間が過
ぎたところだが、まだ激しいロビー合戦には至っていないようだ。常に大きな
争点の一つである原子力についても、NGOはいくつかのサイドイベントを開
催し、喧伝される「原子力ルネッサンス」を警告している。ただ、国際原子力
機関(IAEA)や産業界が相変わらず推進の演説を行っているものの、会議
全体としていつものように強引に推し進める雰囲気はいまだなさそうだ。これ
に対して、産業界からは、今年がチェルノブイリ20年忌にあたるため推進基
調が抑えられているのではないか、といった「ぼやき」もでているようである。

5月8日の第二週目には、ハイレベルセグメント(閣僚など高官達を交えての
議論)を迎える。日本からは、環境副大臣江田康幸氏が代表団トップとなる。
例によって二日間程度の強行軍であるし、強い指揮力を発揮できる可能性は少
ない。自然エネルギーや省エネルギー、気候変動対策については、国内でも大
きな進捗はないことから、日本はいつも通り関連省庁主導のビジネス・アズ・
ユージュアル・シナリオの披露に留まるだろう。このままで決して良いはずは
ないが、世界のNGOも含めた日本への期待は、自然エネルギー分野における
めざましい貢献ではなくて、どうかネガティブな動きを展開しないで欲しい、
ということである。

CSDは強制力を持たないため、たくさんの問題を包括的にただ議論している
場にすぎないとも言われる。しかし、実際には、ここでの議論が、強制力を持
つ場である気候変動枠組み条約の交渉やWSSDなどの国連のプロセスに、影
響を与えている。強制力を持つ会議では多くの利害対立が表面化して整理でき
ない、自然エネルギーや原子力などについての議論に、道筋を与える場ともな
っている。

今回は、京都議定書の第一約束期間の開始を控え、また、目に見える形で顕著
になってきた気候変動の脅威とピークオイルの問題にどう対処すべきかが、会
議での議論の背景にみえる。いずれも、緊急に対処すべき深刻な問題であり、
日本国内のエネルギー政策を巡る楽観的な状況とは、大きくかけ離れた世界の
「常識」である。

また続報をお知らせしたい。

国連持続可能な開発委員会14セッション
http://www.un.org/esa/sustdev/csd/review.htm
◎連日の会議報告
Earth Negotiations Bulletin:
http://www.iisd.ca/csd/csd14/
国連の会議アーカイブ:
http://www.un.org/webcast/csd14/csd14.htm

                      大林ミカ(ISEP副所長)


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3.特集「自然エネルギーの熱利用政策」

 自然エネルギーというと、グリーン電力に代表される、電気としての利用が
頭に浮かぶ。しかし、給湯や暖房など、熱源として利用する場合は、電気にす
る必要がなく、エネルギーのロスを少なくすることができる。だが、日本にお
いては、自然エネルギーの熱利用に関する政策は進んでいないどころか、後退
しているのが現状。事実、効率の良い機種が海外で開発されているにもかかわ
らず、太陽熱温水器の普及率は減少しているし、バイオマスの利用も、掛け声
だけという状況ではないだろうか。そうした中で、一部の自治体では先進的な
取り組みが進められつつある。

++++++++++

1)岩手県のペレット・クーポン制度のねらいは?
               金沢 滋(岩手・木質バイオマス研究会会長)

 ようやく桜も咲く季節になった。森林に入ると雪害の跡がそこかしこに見え
る。「今年の冬はすごい雪だったねえ」と今更ながらに思い出す。なにしろ、私
の自宅も連休前になって雪が消えたばかりだ。
 今冬の木質ペレット需要は、異常寒波と想定外の灯油高に影響され、品薄に
なった時期が何度もあった。年末や2月の豪雪や寒波の時期だ。石油業界関係
者によると、灯油価格は昨シーズンに比べ1.5倍から2倍に跳ね上がった。
原油高に加え、西日本の灯油消費量の増加により、灯油を輸入に切り替えたこ
とが灯油高を支えたのだという。実は、灯油は需要が安定して大量に生産でき
る国産灯油のほうが安価なのだ。
 この波がペレットの重要にも押し寄せる。県林業振興課によると、岩手県内
のペレット設置台数は814台で、この1年間で約350台増えた。シーズン
前半はいまいちの売れ行きだったが、「灯油価格と木質ペレット価格が実質並
んだ」2月ごろから、一気に加速したようだ。
 しかし、燃料を含めたエネルギーは、単価によってだけ普及するものではな
い。岩手県が新年度からペレット袋にクーポンをつけ、6袋(約90kg)買
えば1袋もらえる新システムをスタートさせるが、新制度の目的は「買いやす
さ」と「わかりやすさ」にある。
 現状のペレット購入動向は、製造工場直買の割合がまだ高い。末端のガソリ
ンスタンドでの購入や配達は、流通コストが高いこともあって、いまひとつ浸
透していない。利用者が、トラックや乗用車で製造元へ買い付けに走るのは、
まだ流通が成熟していない証拠だ。県担当課に言わせると、県内50店舗以上
で購入できる仕組みになっているはずだが、アンケートでも「購入できる販売
店が少ない」「買いに行ったが、置いていなかった」など小売機能の未整備が指
摘されている。
 新クーポン制度では、二酸化炭素排出量をとりあえず数値化し、90kgで
1袋を利用者がメリット受けられる理論を展開して県議会の承認を得た。これ
から制度のシステムを構築し、既存の取扱者を中心に、新規参入者を含め少し
ずつとりまとめてもらう方針だ。また、クーポンのデザインをわかりやすくし
て、取扱店に表示してもらい消費者へ告知する象徴とすることや、購入者の流
れを把握することなども検討されている。
 いずれは「グリーン熱証書」に移行すべきだが、ペレット需要の把握やクー
ポン制度による利用者への告知など、需要の波が激しかった昨シーズンよりも
早めの対応が求められている。

               金沢 滋(岩手・木質バイオマス研究会会長)


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2)太陽熱温水システムとグリーン熱証書
                    山下紀明(ISEP研究員)

・太陽熱温水システム
先日、太陽熱温水システムのメンテナンスを中心に行う個人事業者の仕事を見
せてもらう機会があった。太陽熱温水システムは石油ショックを契機として導
入され、ピーク時には年間約83万台が生産されたが、現在は年間10万台を
下回っている。原因として、原油価格の低下、為替の円高、他の給湯機器との
競争、一部の悪質な訪問販売などが挙げられているが、業界団体であるソーラ
ーシステム振興協会でも有効な振興策を提案できておらず、市場が縮小しつづ
けているのが現状である。
 前述の事業者はすでに生産が終わった機種の故障にも、安易に買い替えを進
めるのではなく、修理で対応し、顧客との信頼関係を築いていた。現在も営業
を続けている太陽熱事業者の多くが、地域密着型を掲げており、その現場を垣
間見ることができた。一方で、強引なメンテナンスや他社の名前を語る悪質な
業者が消えていないことを嘆いていた。
中国では太陽熱温水システムが年間700万台以上も販売され、世界生産量の
4分の3を占めている。欧州でもドイツやオーストリアなどを中心として、年
間100万台以上が販売されている。あるメーカーでは、機器そのものの利便
性の向上はもとより、施工店やメンテナンスについても重要性を認識していた。
日本での再興に向けても、製品の利便性や経済性の向上はもとより、利用者が
安心できるサービスやメンテナンスの仕組みを構築する必要があると感じた。

・グリーン熱証書等を活用した自然エネルギー熱利用の拡大
2005年度ISEPでは、環境省の地域協同実施排出抑制対策推進モデル事
業として表題のプロジェクトを行った。電気に比べ促進が進んでいない太陽熱
やバイオマスなどの自然エネルギーの熱利用を促進する仕組みを構築すること
を目的とした。
 電力に関しては自然エネルギーの価値を評価して取引する「グリーン電力証
書」の仕組みがあり、企業による購入やイベントでの使用などが行われている。
同様に自然エネルギーにより生産された熱の環境価値を評価し、取引する仕組
みを検討したが、これは海外でもほとんど例が無く、先進性の高いものである。
 まずオーストラリアやテキサス州などでの参考となる事例の調査を行い、基
本的なスキームの整理を行った。次に日本の地域レベルでの導入に関する課題
について整理し、東京都や岩手県、自然エネルギー事業者と研究会を開催し、
具体的なパイロットモデルを検討した。東京都では太陽熱温水器によるスキー
ム、岩手県では木質バイオマスからの熱とグリーン熱証書を組み合わせたスキ
ームなども検討した。また「グリーン熱証書」との取引も視野に入れ、昨年度
実施した「グリーン電力証書」の個人用および地方自治体での利用スキームに
関して、主に東京都において、更なる展開のためのフォローアップを行った。
特に、グリーン熱証書の検討では、グリーン熱の定義、その認証基準の素案、
認証組織のあり方、計測方法と「グリーン熱」の価値の考え方の整理を行い、
パイロット的な利用の見通しを得た。
 これらのスキームを面的に広げていくことで、グリーン熱証書を通じた二酸
化炭素削減の有効性は非常に高くなると考えられる。

                    山下紀明(ISEP研究員)


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4.連載「光と風と樹々と」(8)?大草原の大学風車
               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

・はじめての市民向けの講演

 2004年9月25日、滞米中の私ははじめて一般市民向けの講演をするこ
とになった。ミネソタ州の州都ミネアポリスから65kmほど南にあるカール
トン・カレッジ(Carleton College)で、1650kWの大型風車の運転開始
式を行うという。式を見たいと申し出たら、あわせて何人かを講師に講演会を
行うが、講師役も引き受けてくれということになった。日本の市民風車の話を
すればいいだろう、英語での一般市民向けの講演というのはなかなかない機会
だから、思い切って引き受けることにする。早速、北海道グリーンファンド、
京都グリーンファンドにメールで、写真を送ってもらうことにして、パワーポ
イントのスライドを用意した。
 案内のメールには、「celebrating the erection of a 1.65MW wind turbine」
とある。こんなときerect を使うのか、学生らしいジョークなのか。

・カールトン・カレッジ

 カールトン・カレッジは、学生定員1800人の小さなリベラルアーツ・カ
レッジ(http://www.carleton.edu/)。2004年の大統領選挙で民主党の有力
候補と目されていたポール・ウェルストン(Paul Wellstone)という上院議員
がいた。2002年の中間選挙の折に飛行機事故で亡くなり、非常に惜しまれ
た。ミネソタ州のリベラル派の間では今なお人気が高い。カールトン・カレッ
ジは、彼が1990年に上院議員に当選するまで、21年間政治学の教鞭をと
っていた大学として有名である。遺著となった『リベラルの良心』(The
Conscience of a Liberal, University of Minnesota Press, 2002)の扉には、
「父さん・母さん、僕はアメリカの上院議員だけど、心配しないでくれ、僕は
今なおリベラルだ」という味な言葉が記されている。
 ユニバーシティ(総合大学)に対して、リベラルアーツ・カレッジは一般教
育に重点をおく家族的で小規模な私立の大学である。日本の大学では一般教育
が人気がなく、どんどん縮小傾向にあるが、アメリカでは、むしろ大学院に入
ってからが専門教育、学部教育は一般教育重視という傾向が今でも強い。
 私が滞在していたミネソタ大などは学生数4万人で州立大としては全米第2
のマンモス大学である。ミネソタ大の関係者が一番大きいのはテキサス大だよ、
テキサスは何でもでかいんだというとき、テキサスに対して、(あっちはただで
かいだけという)やや見下したようなニュアンスがある。
 
・公共交通機関がない!

 講演の準備をすすめるなかでまず驚いたのは、カレッジなのに、そこに行く
公共交通機関がないことである。主催者側の学生と電話で話して、私の借りて
いる家まで迎えに来てもらうことになる。学生たちは主に寮生活しているとの
ことだが、農村部はむろん、郊外になるだけで、車以外に頼る交通手段がなく
なるというのがアメリカの実情である。自称「世界一の豊かさ」は、公共交通
の驚くべき貧困と隣り合わせである。昨年8月のニューオーリンズのハリケー
ン騒ぎが世界中に露呈したように。

・残念、風がない!

 風車が建設されたのは、キャンパスから東に2.5kmほど離れたいかにも
大草原(プレーリー)らしい、とうもろこし畑のまっただ中である。ミネソタ
州は、「大草原の小さな家」の舞台である(本はみんな知っているが、ほとんど
の人がテレビドラマの存在を知らず見たこともないという。テレビドラマ版は、
日本の方がはるかに有名だ。日本ではほとんどの人が見たことがあるよ、とい
うと一様に驚かれる)。
 工事中から完成までの写真が、
http://apps.carleton.edu/campus/facilities/sustainability/wind_turbine
/にアップされている。学生寮からはよく見えるが、キャンパスからは体育館か
ら少し見えるだけだという。
 地域の人々を含め、約200人ぐらいが集まって、バンドも繰り出してとて
もにぎやかである。関係者のいろいろな挨拶が続く。「ミネソタは風力発電のサ
ウジアラビアよ。どんどん風車を建てていきましょう」と女性議員の勇ましい
演説。いよいよ学長のテープカット、スイッチ・オン。待ちに待った運転開始。
一同注視。ん、びくともしない。残念、快晴で雲一つなく、風もない。昨日は
元気よく回っていたんだけどと、迎えに出てくれた学生が言う。案内どおり、
確かに ハブの高さ70m、羽根の長さ40mの風車の erect を祝ったことに
はなるけれど。
 この大学が風車をつくることにしたのは、持続可能なキャンパスづくりの一
環としてである。建築のある教授の努力と奔走が結実したようだ。引き続いて、
生ゴミリサイクルプロジェクトなどを展開する予定という。
 年間の予想発電量は500万kWh(稼働率34.6%)、20年の長期契約で、
全量、エクセル・エナジー社にkWあたり3.3セントで販売されるが、キャ
ンパス全体の年間の電力消費量の約4割に相当する発電量という。大学所有で
売電用の風車は全米初という。このほかに、州からの助成金が10年間kWあ
たり1.5セント、NPOを対象とする連邦からの減税分のクレジット(tax
credit)が10年間kWあたり1.5セントが得られる。建設費にも州の補助
金が使われていて、大学の実質的な持ち出し分は少ないという。学生やOBら
への寄付の呼びかけなどもなかったようだ。

・ Sea-Wind chan

 erection を祝う式典が終わったあと、キャンパスを会場にSustainable
Campus Conferenceと題された講演会の開始。聴衆は学生中心に40人ぐらい
に減っている。私の報告のタイトルは、「学校は、自然エネルギー普及の最初の
ターゲット」。community-based な自然エネルギーは、学校プロジェクトと市民
所有プロジェクトに大別されるとして、京都グリーンファンドのおひさま発電
所と北海道グリーンファンドの市民風車プロジェクトなどについて解説した。
「はまかぜちゃん」は、Sea-Wind chanと英訳した。はまかぜの英訳はふつう
は sea breeze だが、breeze では、そよ風的なイメージが強く、風車をびゅん
びゅん吹かせる強風という語感がないからである。ここの風車には名前がない
ようだが、学生から公募して名前をつけると増すよ、と助言した。
 とくに聴衆の共感を呼んだのは、おひさま発電所で、設置前の太陽電池パネ
ルのウラに子どもたちが自分の名前や好きな物に絵を描いたりしているスライ
ドや、発電容量がテントウ虫の数で示され、リアルタイムで園児にも一目瞭然
というスライドである。
 終了後、自分はがんばっているんだけど、うちの地域の教育委員会は風力発
電に理解がないから、講演してほしいと50代ぐらいの女性からリクエストが
あった(オーケーと返事したが、その後、連絡がなかった)。
 日本の市民風車のネタは、その後、バージョンや力点を変えて、ウィスコン
シン大やハーバード大、ミネソタ大でも話したが、日本の先進的なプロジェク
トを英語で紹介するのは実に気持ちのいいものである。

               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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5.上海からの風の便り(5)
                              木村寿香

前回の連載では、市民や企業などのグリーン電力への需要がクリティカルマス
に達すれば、IPPsの投資の意思決定に影響を及ぼすことができるという観
点から、電力の需要サイドに着目した上海市の実験的な取り組みについてご紹
介しました。今回は、IPPsの投資の意思決定に影響を及ぼすと考えられる
その他の要因のうち、買取価格の現状について取り上げたいと思います。

自然エネルギー投資へのファイナンスについては、世界的(Renewables 2004)
にも中国国内でもボトルネックであると指摘されていました。しかし、中国国
内を見てみると、銀行借入については、この1年で大きな改善が見られます。
中国の主要銀行は、経営の面では民営化されていますが、融資方針については、
政府の重点分野であるかどうかは重要なポイントになってきます。自然エネル
ギー法の承認、北京国際自然エネルギー会議の開催など、政府の自然エネルギ
ーに対するコミットメントの表明に従い、中国の銀行では自然エネルギー案件
に積極的に対応する方針になりました。とはいえ、セクターにより若干のばら
つきが見られます。最も優遇されているのは、タービンやPVシステムなどの
機器製造業者で、銀行のみならず国内外のプライベートエクィティファンドか
らの積極的な支援を受けています。現状、最も欠けているものと言えば、グリ
ーン電力を発電する新規事業者へ安定した長期の資金です。

発電業者へ融資・投資する立場からみて重要なファクターは買取価格です。長
期の固定価格での買電契約(PPA)の不在は、中国での発電プロジェクトへ
の融資を難しいものとしてきました。そのため、再生可能エネルギー法による
買取制度が発表されたときには、ドイツのような「固定」価格買取の導入に伴
い中国における新規融資のチャンスが増大するのではと期待に胸を膨らませま
たものです。しかし、今年の1月に発表された「再生可能エネルギー発電価格
と費用分担管理試行規則」(NDRC Price 2006No.7)は「自然エネルギー法」で
定められた固定価格買取制度の具体的な価格水準のガイドラインですが、当初
の勢いが若干希薄化されてしまった感があります。

「再生可能エネルギー発電価格と費用分担管理試行規則」のうち、今後の日本
の政策へも参考になるのではないかと思われる点を要約したいと思います。ま
ず第一に、「政府定価」と「政府指導価格」のダブルスタンダードになり、風力
発電や競争入札を経たバイオマス発電については政府指導価格が適用されるこ
と、政府指導価格については、政府定価のように明確な年数の保証について言
及されていないこと、第二に、「政府定価」といいながらも排煙脱硫処理済の石
炭火力発電の価格に基づいて、プラス0.25元という実質変動価格であり毎
年見直されること、などはドイツ型の固定価格買取制度との大きな差異と思わ
れます。面白い点としては、まず水力についてはサイズを問わずこのガイドラ
インは適用されないこと、そして発電業者と電網企業は再生可能エネルギーの
売買金額、価格を帳簿に記載する義務があり、さらに価格主管部門、電力監督
機構、監査部門の検査と監査を受ける義務があることなどが挙げられます。

中国政府が自然エネルギー電力を推進する政策は地方も含めたもさまざまなレ
ベルで直接・間接のさまざまなアプローチで進められており、今後の関連政策
の動向は引き続き注視する必要があります。連載最終回である次回は、間接的
な方法で再生可能エネルギー案件を支援する中国クリーン開発基金CDFにつ
いてご紹介したいと思います。

                             木村寿香


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6.プロジェクトフラッシュ

1)「自然エネ省エネ起業セミナーの報告」
                      竹村英明(ISEP研究員)

ひと月遅れになってしまいましたが、3月に行われた自然エネ省エネ起業セミ
ナーの報告をします。もともと飯田市のおひさま事業は大きな利益を目指すの
ではなく、自然エネルギーの普及と地域の活性化に寄与するということが大目
標でした。「環境と経済の好循環」の意味はそういうことであろうと。したがっ
て、ただ単に太陽光発電設備をつけたり、省エネのエスコ事業を広げるだけで
なく、それが地域の雇用や新しい産業育成にどうつながるのか・・ということ
も大きなテーマです。
 そういう地域活性化のための人材育成、飯田に根付く新しい事業の発掘、そ
して雇用の拡大という大目標にむけてWWB(Women's World Banking)ジャパ
ンの協力により企画されたのが「自然エネ省エネ起業セミナー」です。参加者
は総勢で25人。北は青森県から南は大阪、飯田市近隣からの参加もかなりあ
りました。

・快晴の天竜峡でスタート
初日の天気は快晴。絶好の行楽日和で東京方面からのバスは渋滞に巻き込まれ、
いきなり45分遅れに。しかしコーディネーターをお願いしたWWBジャパン
の奥谷京子さんが機転を利かせ、「起業度チェック」の診断で見事にさばいて何
事もなかったように発進。起業度チェックは自らの弱点にも気づかされ、実に
勉強になりました。参加者全員が揃ったところで奥谷さんからのオリエンテー
ションがあり、ちょっと肩ほぐしの「自然エネルギーQ&A」。そのあと牧野飯
田市長のあいさつでしたが、大部分が飯田市外からの参加者だったので、バッ
チリ「飯田に住もう」と宣伝されていました。

・起業は女性の方が強い
奥谷さんの話はテンポ良く立て板に水のごとく話すという印象でした。飽きさ
せない、ひきつけて離さない・・という感じで。具体例をあげながら、いろいろ
な起業例とくにWWBジャパンでやってきた女性たちの起業事例を紹介してい
ました。体験の中から実用ヒット商品を生み出すカリスマ発明主婦、自転車の
盗難を防いでご近所の底力にも登場したオリジナルペイントチャリ、量り売り
の「土」販売(観葉植物用、根菜類用・・など希望に応じてブレンド)など。
年間2000件以上の農作業に手伝い人を送り、指定管理者制度で三ヶ所の福
祉施設運営まで任されることとなった学生・シニア耕作隊を組織した女子学生
というのもありました。どうもベンチャー起業を成功させる能力は女性の方が
高そうです。
 奥谷さんによる「成功するための起業のコツ」をご紹介します。
1)良いことだけではお金にならない。
2)運動は嫌われる。
3)早く宣言して自分を追いつめる。
4)さんぽちゃんのように会社カラーを3色で決める。
5)会社の特徴をひとことで言える「ことば」を持つ。

・エスコ実践の場を初披露
翌日の視察では最後に「エスコの現場」へと向かいました。といっても行き先
はおひさま進歩エネルギーのオフィスなのです。オフィスが入っている「いと
うや」ビルが着手第1号になりました。ここで施工・検査進行中の設備を実地に
見学してもらいました。電圧調整装置、蛍光灯電子式安定器(デモセットあり)、
冷凍庫室外機のエネカットがここにはあります。
いとうやの社長さんからもあいさつをいただき、まずはキュービクルがある最
上階に皆さんを案内、そこにつけられた電圧調整装置を見てもらいました。と
いっても幅50cm、高さ1m程度の箱があるだけ。中は二つの巻かれたコイ
ルがあるだけです。それだけで106Vほどの電圧を100V近くに落として
電灯回路に流します。電力会社は供給義務もあって常に少し強めの電圧で送っ
ているのですが、これを電圧、電流とも下げることで10%程度の電気を節約
します。電子式安定器はつけてないものとつけているものを電力メーターで比
較します。針が一回転する時間を比較するのですが、つけていないと35秒で
つけていると45秒、その差10秒は消費量では20%以上の削減ということ
になります。いとうやさんでは、職人さんから照明が明るくなったという評価
を受けています。実はルクスは変化していないのですが、ちらつきがなくなっ
た分そう感じられたのでしょう。スイッチ即点灯という付随的効果もあります。
冷凍機の室外機についているエネカットは、冷却配管に水を霧状にかけて気化
熱で配管を冷やすというもの。これから夏場になって活躍するものです。

・いよいよ起業プラン
 起業セミナーの2週目のテーマは、実際に起業プランを立ててみることです。
残念ながら、20人を超える参加者の中で起業プランを出したのは数人でした。
奥谷さんの話にあった悉皆屋の現代版、エネルギーに関する何でも屋、グリー
ン電力証書を活用した太陽光発電システム販売、地域交流の場「よりまえカフ
ェ」、塚平鉄工のペレットストーブ商品化、この4つが提案として出されました。
 起業プランをめぐるグループディスカッションでは、参加者がこの4つのプ
ランに別れ、さらに具体化し実現可能性を高めるために議論しました。当初は、
単なる思いつきかな・・と思っていたプランがみんなで議論している間に、いろ
いろな新しい情報も加えられ、現実的なプランとなって行きました。

・今後のテーマはソーシャルファイナンス
 最終日は午前中、プレスオルタナティブの片岡勝さんの一般公開講座。一般
参加も含め80人ほどの人が会場を埋めました。片岡さんの話は、冒頭から「人
にあわせない」、「マーケットにあわせるとだめになる」、「良いことをやってい
ると思ってるビジネスはつぶれる」、「自分がやりたいことをやれば良い」、「人
とうまくいきそうなときにはちょっと引く」、「売れ出したら危ない」などなど、
型破りな多くの示唆を与えるものでした。
 お金のまわり方の順番で、まず地域貢献、次に助け合いと生きがい、三番目
に経済・・というのもビックリ。この考え方で片岡さんは次々に事業を手がけ、
いまは年間16億円を動かす事業家になりました。儲かりだしたら使うことを
考え、使わないとビジネスにはならないとも。本来の投資とは社会に必要なこ
とをやるためにに皆が(力を)持ちよること・・という言葉はとても含蓄のあ
る言葉でした。
 おひさま事業に深く関係する地域との関係では、1)すりよらない、2)地
域を理解しない、3)地域からも理解されようとはしない・・ことという驚く
べき極意でした。地域の中で目だって目だって、マスコミに注目され、地域か
らの注目された石見の温泉宿の若女将、人手2000人を動かし、いつの間に
か行政から頼まれる存在になった学生耕作隊。まだまだ刺激的な話があるので
すが、紙面の関係でこの辺にしておきます。

・おわりに
今回の起業セミナーを全体評価として言うと、単にお勉強をしたというのでは
なく、実際に事業化の具体例がいくつかまとまり、それにむけた動きが開始さ
れたということです。またもう一つは、自然エネルギー起業を支える技術的に
もマインド的にも強いネットワークが生まれたということです。本当に大きな
成果を残した起業セミナーでしたが、これ1回で終わらせることなく、今年度
この夏にも第2回にチャレンジしたいと思っています。

                      竹村英明(ISEP研究員)


* *********
2)備前の環境エネルギーオフィスがオープン!
                   井筒耕平(備前グリーンエネルギー)

 4月20日、備前みどりのまほろば協議会の事務所前に、備前の環境エネル
ギーオフィスを本格オープンいたしました。環境エネルギーオフィスとは、も
ともとデンマークで始まったものであり、大人から子どもまで地域の環境を一
緒になって考えることのできる施設として、20ヶ所以上の地域で開設されて
いるそうです。
 備前の環境エネルギーオフィスには、まほろば事業で取り扱うグリーン熱ス
トーブ(実物)や太陽熱温水器(模型)を展示しております。グリーン熱スト
ーブは、スイス・トンヴェルク社製T-Eye(燃料は薪)を展示しており、
来訪された方からはその特徴的なデザインと機能性に感嘆の声が聞かれます。
また、省エネサービスの中核である照明についても、白熱球(60W)と電球
型蛍光灯(12W)を比較したり、蛍光灯安定器の有無を比較したりして、省
エネ効果を学んでいただけるように工夫を凝らしています。照明器具の灯具に
ついては、建具屋さんで修行を積んだ地元の若者が木製灯具を制作し、私を含
めた備前の事業スタッフがニス塗りなどで手を加えた後、地元の電気屋さんに
設置していただきました。多くの人の手がかかった照明および灯具は、思い入
れの強い展示品となりました。そのほか、自転車発電機やソーラークッカーな
ど大掛かりな器具から、太陽光発電キットや学習器材/ビデオなど小さな教材
まで、様々な種類の機器を幅広くご用意しており、レンタルにも対応する予定
です。
 環境エネルギーオフィスが完成したその日、地元の子どもたちと「太陽電池
で回る風車」や「自転車発電」などで大いに遊びました。キャッキャッと笑う
あの子たちは、この青い空ときれいな水を残してくれた大人たちに、守られ育
てられているんだなと羨ましく感じました。そして、この環境エネルギーオフ
ィスが、少しでもあの子たちの心に響き、これからも備前の青い空ときれいな
水を守っていってくれたらいいなと思いました。

                  井筒耕平(備前グリーンエネルギー)


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7.インターン報告「大学のグリーン電力
  松尾寿裕(ISEPインターン・千葉商科大学大学院政策情報学研究科)

私は2004年8月からインターンとして様々な活動に関わってきました。千
葉商科大学大学院の三橋規宏教授(ISEP顧問)のもとで研究と現場の両方
を経験をして いますが、今回は、2006年2月に千葉商科大学で行った「環
境が大学を元気にする」シンポジウムのグリーン電力利用について報告します。

千葉商科大学では、大学の社会的責任の視点から「次世代に健全な地球を引き
継ぐ、強い意志を持つ、環境マインドの高い学生を多く育て、社会に送り出こ
と」に取り組んでいます。
大学における環境教育の取り組みとして、学生主体のISO14001(環境
マネジメントシステム)の認証取得を支援し、これを原点に学生による地域小
中学校への環境教育指導など社会貢献を通じた体験的学習を中心とする「実学
教育」を推進しています。それらの取り組みが、2005年度文部科学省の「特
色ある大学教育支援プログラム(特色GP:Good Practice)」に採択されました。
そこで、特色GP採択記念シンポジウムを、2006年2月24日に「環境が
大学を元気にする」というテーマで開催し、信州大学 藤井恒男先生、京都産
業大学 黒澤正一先生、千葉商科大学三橋先生から、各大学の環境教育の事例
報告と、「企業から大学の環境教育に何を期待するか」をめぐり、国連大学ゼロ
エミッションフォーラム理事の谷口正次氏と、アサヒビール社会環境推進部の
大谷久雄氏の二人の経済人と3大学の教授の方にディスカッションをしていた
だきました。全国33大学から教職員、学生など約200名の参加を頂き、プ
ロジェクトのスタートを切ることができました。

私は、シンポジウムの準備責任者として、企画や講演者との連絡調整など準備
全般に関わりながら、大学におけるグリーン電力の利用も提案しましたが、い
きなり大学の使用電力にグリーン電力を導入することは出来ず、まずはシンポ
ジウムで太陽光発電によるグリーン電力を利用することになりました。当日の
4時間半に渡るイベントの電力消費量に相当するグリーン電力は、飯田市の市
民出資によって設置された幼稚園や保育園からの太陽光発電によるものなので、
大学の社会的責任を考える上でも、幼稚園や保育園などでつくったということ
は、話題提供の価値も高かったと思います。当日の打ち合わせの際、飯田市の
まほろば事業やグリーン電力認証制度を講師の方に簡単に説明したところ、飯
田市にもキャンパスがある信州大学の先生からの関心を集め、アサヒビールは
神奈川工場で既に、風力のグリーン電力を年間330万kWhも利用しており、
グリーン電力の着実な広がりとさらなる普及にむけて、追い風が吹いているこ
とを感じました今後は、大学の発行する報告書やパンフレット類の印刷や、学
内の自動販売機へのグリーン電力導入などを広げ、学内の認知度を向上し、最
終的には大学でグリーン電力を利用できるように働きかけていきたいと思って
います。


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