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1. 風発 「非知性の暴力」
                       飯田哲也(ISEP所長)

まず、3月24日に、北陸電力志賀原発2号機に対する差し止め訴訟で、画期的
な原告勝訴の判決があった。想定している規模を超える地震が起こりうるため、
具体的な危険があり、志賀原発2号機は運転してはならないという判決で、至
極合理的なものだ。「画期的」なのは、従来、この程度の「合理的」な判断が極
めて希であったという司法界の異常識にあるのだが、2003年の名古屋高裁
金沢支部によるもんじゅ判決など、徐々に当たり前の判決も見られるようにな
っている。

しかし問題は、北陸電力の対応である。敗訴を予想していた北陸電力は、なん
と判決前の3月15日にすでに同原発を運転開始しているのである。運転さえ始
めてしまえば、強制差し止めなどできず、未だに異常識が通用する上級審に持
ち込めば勝てるとタカをくくっているのであろう。恥を知れ、といいたい。同
社のホームページには、「企業の社会的責任」(CSR)だの「コンプライアン
スの徹底」だの、今日の企業社会における「はやり言葉」が並んでいるが、そ
の虚しさを感じないのだろうか。

そして今度は、核燃料サイクルを巡る一連のドタバタ劇である。核燃料サイク
ルが「オヤジの妄想」の産物に過ぎないことは、これまでにさんざん論じてき
たので繰り返さない。ここで問題にしたいのは、「妄想オヤジどもの見え透いた
連係プレー」である。このことはゴールから見れば、はっきりと分かる。何と
しても2005年度中の売り上げを立てたい日本原燃と電力会社は、「200
5年度中の操業開始」というアリバイをつくるために、3月31日(またはそれ
以前)にアクティブ試験開始という「〆切」をあらかじめ設定していた。すべ
てはそこに向けて逆算されている。青森県と日本原燃とのアクティブ試験に関
する安全協定の締結があり(3月29日)、その前に古川佐賀県知事によるプル
サーマル同意(3月26日)がスケジュールされていたのである。

なんという下品。なんという非知性。自らが社会全体や歴史に対して及ぼして
いる「大いなる愚行」への畏れに欠けているだけでなく、内容の科学的・合理
的な妥当性すら評価せず、たんに「手続き」だけでコトを進めているのである。
このことは、佐賀県や青森県が公表した「検証」が、あまりに虚ろであること
がはっきりと証明している。

こうした「非知性の暴力」が、いたるところで日本社会を壊し続けているので
ある。妄想オヤジどもの暴力と暴走を食い止めること、そこから日本社会の再
生が始まる。
                       飯田哲也(ISEP所長)


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2.連載「光と風と樹々と」(7) 英語にはない市民風車
                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

   英語にはない市民風車

 本連載の2月号分(5)の冒頭で、「市民風車は、アメリカでも、
community-based wind power や community wind というコンセプトとともに、
現在大きな焦点になっている。」と記したが、本号では、この点について、もう
少し詳しく述べたい。最近あらためて確認できたことだが、実は英語には、「市
民風車」という概念がないようである。少なくとも一般的な表現ではない。ア
メリカ風力発電協会(AWEA)やイギリス風力発電協会(BWEAのサイト
内を、citizen を検索語として検索してみても、対応する表現を見出すことは
できない。
 英語に該当する表現がないので、市民共同発電所を英訳するときには
citizen-owned power plant 、市民風車にあたる市民風力発電所には citizen's
communal wind power generator の英語をあてている。
  google で citizen を検索してみると、「citizen-owned utility (市民共
同所有の電気事業者)」という表現はたくさん出てくる。サクラメント公営電力
公社のような公営の電気事業者が該当する。citizen-owned power stationsと
いう表現もわずかに見出されるが、小規模の発電所だったり、日本の北海道グ
リーンファンドの事例だったりする。
 よく使われるのは、community-based wind power やそれをより簡潔にした
community wind というコンセプトやイギリスで用いる local wind farm であ
る。直訳すれば「地域密着型風車」、地元風車である。
 "locally owned wind power" や"local ownership"という表現もある。企業
の風車に対して、農民であれ、グループや協同組合であれ、地元民出資の風車
をさす。スペインやポルトガルには、企業風車のみで、このような地元民出資
の風車はないという。これら比較的後発の国の場合は、発電事業自体が大規模
化しているからでもあろう。

   community wind の6タイプ

 アメリカで community wind をもっとも活発にアドボケート(唱導)してき
た、ミネアポリスに本拠をおくWindindustry というNPOは、次のように定義
している。community wind とは、「地元の利益を最優先するような地元所有
(locally owned)の商業規模(commercial scale)の風力発電プロジェクトで
ある。地元所有とは、地域社会のメンバーが、土地の使用料、税収、税以外の
他の収入を得ることにとどまらず、直接、重要な出資(financial stake)を行
うことを意味する」。ポイントは、地元出資・地元所有・地元利益にある。地元
性へのこだわりが強い。
 http://www.windustry.org/
 このサイトでは、community wind energy projects を、(1)自治体風車、(2)
農村電力協同組合風車(Rural Electric Cooperatives)、(3)学校風車(高校、
大学など)、(4)農民風車、(5)風力協同組合風車、(6)ネイティブ・アメ
リカンの風車、の6種類に分類し、具体的なプロジェクトを紹介している。
 では日本の市民風車に対応するのは、この6つのうちどれだろうか。小口出
資型プロジェクトは、前々回と前回紹介したミネソタ州におけるような農民風
車と風力協同組合風車である。ただし言及されている事例では、出資者の85%
は、一定地域内の農民に限られる。日本のように全国の不特定多数の市民に出
資を呼びかけているわけではない。
 むろん、community wind の問題意識や推進の動機には、日本の市民風車と似
たところがある。Windindustry が、community wind の利点としているのは、
1)地元経済への波及効果(雇用や新しいビジネス・チャンスの創出、新規投
資の呼び水になること)、2)自然エネルギーに対する地域住民の関心の拡大、
3)税収基盤の拡大と農民の収入源確保による村落社会の強化、4)クリーン
なエネルギーを生み出すことによる温暖化ガスの排出削減、大気汚染の抑制、
汚染関連の疾病の抑制、5)エネルギー関連投資のローカル重点化、6)農業
と両立可能な新規産業の立地、7)温暖化問題への地域的取り組みである。日
本の市民風車以上に、地元への経済的利益を強調している。

   トロントの市民風車プロジェクト

 Windindustry が紹介しているトロントの WindShareプロジェクト(share
には、株式や共有という意味がある)のサイト
 http://www.windshare.ca/index.html
をのぞいてみると、2003年1月に運転を開始した750kWの風力発電機は、
北米初の都市型(urban-based)の風力発電機であると謳っている。推進主体は、
1998年に近隣の環境グループが母体になってはじめたカナダ初のグリーン
電力生協、トロント自然エネルギー協同組合(Toronto Renewable Energy Co-
operative (TREC))であり、トロント市が100%株式を保有するトロント
水力発電会社の子会社と、50%づつの対等出資で、最初の風力発電機を建設し
ている。出資は1口100カナダドル(1カナダドル=103円)からだが、出資
者はトロント市民に限られる(トロント市の人口は2001年現在248万人)。
建設費160万カナダドルのうち、市民出資分80万ドル、8万口分の債券が発行
され、2002年12月はじめまでに完売されたという。この事業は、
community-owned windpower とカテゴリー化されている。トロント市民に限定
して、日本円に換算して8240万円を短期間に集めえたことも注目される。すで
に第2機分のための80万ドル分も募集中である。
 運転開始は、北海道グリーンファンドの市民風車第一号機「はまかぜちゃん」
の方が1年4ヶ月ほど早いが、ほぼ同時期に似たようなプロジェクトが進行し
ていたことも興味深い。しかも Windindustry のサイトの事例紹介が、全米お
よびカナダのプロジェクトを網羅しているとすれば、これは、農民風車以外の、
唯一の都市住民による市民出資プロジェクトということになる。
 community-owned windpower を謳うためには、地元住民に出資者を限定する
ことが必要になる。80万カナダドルを約250万人のトロント市民だけから集め
うる、という見通しが、このような選択を可能にさせたのだろう。北海道グリ
ーンファンドの1号機の場合も、限定したわけではないが、事実上、出資者の
9割以上は札幌市を中心とした北海道在住者だった。
 地元だけでは、出資者が限定されてしまい十分な資金が集められないところ
に、日本のプロジェクトの弱点がある。しかし他方では、それが、全国規模に
出資者を拡大しえた背景でもある。

   「不特定多数の市民」による「共同出資」がポイント

 ここであらためて定義すれば、市民共同発電所は、「不特定多数の市民が共同
出資して建設・運営する市民発電所」であり、市民風車は、「不特定多数の市民
が共同出資して建設・運営する風力発電所」である。この定義のポイントは、「不
特定多数の市民」による「共同出資」という点にある。
 デンマークの農民風車もそうだが、トロントの事例も、地域住民に限定され
ている。地域を超えた「市民」に出資を求めるという点では、2000年12
月にまず第1号機が募集を開始した日本の市民風車は国際的に見ても先駆性が
高いのである。日本の市民風車にもっとも近いのは、ドイツのBuergerwindpark
である。これについては次号で述べたい。

                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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3.家電省エネラベルの行方
                      大林ミカ(ISEP副所長)

東京都が2002年から普及に取り組み、2005年に条例化(表示義務化)
された東京都省エネラベリング制度について、国の制度に取り込む動きが起こ
っている。総合資源エネルギー調査会の下にある省エネルギー基準部会に設け
られた、小売事業者表示判断基準小委員会で、すでに三回の議論が行われてお
り、四回目、最終回と予想される次回は、4月5日に開催が予定されている。

現在、家電の省エネ性能を表示するものとしては、省エネルギーセンターが管
轄する省エネラベリング制度があり、省エネ性能を一覧できる「省エネ性能カ
タログ」も発行されている。省エネラベリング制度は、相対評価ではなく、省
エネ法に基づいて国の定める省エネ性能を達成した度合いがそのまま表示さ
れ、達成したものについては緑、 達成していないものについてはオレンジの
省エネ性マークが表示される。年間消費電力量などエネルギー消費効率も表示
されている。

環境エネルギー政策研究所は、東京都の温暖化防止政策に協力してきたが、省
エネラベルについても、2001年頃から欧州の省エネ政策の一環としての省
エネラベルの紹介と導入のきっかけ作りを行ってきた。2002年には省エネ
ラベルについての委員会に参加している。都のラベルは、相対評価でABC表
示、性能達成度を棒で表しているところが、欧州省エネラベルの精神を継いで
いるが、家電商品の価格とランニングコスト(10年間の電気代)を合わせて
表示して点で、消費者への情報伝達という観点からは優れているといえるだろ
う。また、表示を2005年からは義務化している。実際、欧州省エネラベル
の担当者であるIEAのポール・ワイデ氏もランニングコストを示した東京都
のラベルに注目、感心していた。

しかし、今回の国の動きでは、単なる達成率の表示から相対評価とはなった
が、ランニングコストの表示は1年間の電気代となり、ABC評価は星の数で
の表示となりそうである。また、現在の省エネラベリング制度も自主的な表示
であるため、相対評価を取り入れた新しい制度も、義務化ではなく努力義務で
しかない。省エネラベルは、事業者にとってはマイナス情報の場合があるし表
示の手間がかかるが、一方の消費者にとっては、どの商品にも表示されている
ことや他店と比較できるようにする必要があるために、自主的表示では制度上
の限界がある。

東京都を筆頭に、省エネラベルに取り組む自治体は、昨年から全国協議会を組
織し、各自治体の情報共有やレベルの統一に努めている。まだ最終取りまとめ
はされていないが、国による新しいラベルの導入に伴って、先進自治体のそれ
ぞれの取り組みが阻害されるようなことがあってはならない。特に、高知県な
どのように市民が自治体に働きかけ、見回りなどの市民の努力によって家電量
販店へ導入キャンペーンを行ってきた自治体にとって、今回の新しいラベル制
度の導入は、動きの鈍化ではなく、全体基盤の整備という枠組みの設定へと前
向きに動かなくてはならないだろう。省エネラベルの使命とは、消費者に、こ
の商品を購入し今後使用し続ける際に、本当に省エネになるのかどうかをわか
りやすく伝えることだろう。現在国が提案しているものに比べると、東京都の
現行ラベルは、この情報を的確に伝えていると自負できるものである。

東京都省エネラベリング制度
http://www.koho.metro.tokyo.jp/koho/2005/07/kiji/ene.htm

総合資源エネルギー調査会省エネルギー基準部会第4回小売事業者表示判断基
準小委員会
http://www.meti.go.jp/committee/notice/0003504/0003504.html

                      大林ミカ(ISEP副所長)


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4.「お笑い原子力ムラ敦賀」(12)
 日野行介(毎日新聞大阪社会部記者、昨年3月まで福井支局敦賀駐在記者)

 毎年のことなのだが、年度末にあたる3月末になると、新聞紙面に原子力の
記事が数多く掲載されることにお気づきだろうか。今年で言えば、金沢地裁で
あった北陸電力志賀原発2号機差し止め訴訟の判決のようなケースもあるが、
この時期のニュースの多くは「佐賀県がプルサーマル計画を了解」、「青森県が
日本原燃と安全協定締結」?といった原子力施設のある地方自治体が事業者側
の計画推進にゴーサインを出すことを伝える内容だったりする。
 「いつも一緒よ、一緒。違う結論が出るわけないんだから」。福井に着任して
すぐの2002年4月ごろ、日本原電敦賀原発3、4号機の増設計画を栗田幸
雄知事(当時)が了解するかどうかが焦点となる中、福井県庁を担当していた
先輩記者が少し投げやりな様子で私につぶやいたのを覚えている。
 確かにその通りで、基本的にパターンはいつも同じだった。まずは事業者側
がプルサーマルや増設などの計画推進に対する地元了解を知事や市町村長に求
める。その後知事や市町村長は「安全や地域振興に対する国や事業者側の対応
を見守りたい」と決まって発言する。この状態がしばらく続き、水面下で交渉
が続く。特に地域振興策、つまりカネなのだが、事業者や国が秘密の匿名寄付
金や交付金をどの程度支払うかどうかが交渉のポイントだ。ある程度まとまる
と、知事や市町村長の発言にわずかな変化が見えてくる。「安全について大臣と
直接会って確認したい」とまで言うようになると了解は近い。まずは知事と共
に事前了解の権限を持つ市町村長が「地元としては地域振興にもつながるので
了解したい」などと了解意思を知事に伝え、すぐに経産大臣や文科大臣が知事
や市町村長に早く了解するよう要望するため地元にやって来る。そうした儀式
が全て終わると、いよいよ知事の了解表明なのだが、中身はいつも決まってい
る。「安全について国が責任を持つことが確認できた」。
 しかしご存知の通り、了解の決め手は「安全確認」では無い。裏交渉で話し
合われている地域振興策、つまりカネだ。
 敦賀から京都府舞鶴市の間を若狭湾岸に東西に結ぶJR小浜線の電化事業は、
栗田知事時代に決まったものだが、関西電力高浜原発3、4号機で予定されて
いたプルサーマル計画を了解した見返りだ。総事業費約100億円のおよそ半
分は匿名寄付。今年10月に完成予定のJR北陸線と湖西線の敦賀駅までの直流
化事業も同様だ。敦賀原発3、4号機増設計画を了解する見返りに、福井県側
が負担する約70億円のうちおよそ半分は匿名寄付だった。
 高速増殖炉「もんじゅ」の改造工事を巡り、西川一誠・福井県知事から地元
了解を得るまで前例がないほど時間がかかったことで、国会議員からは「原子
力という国策が地元知事の判断に委ねられ、歪められている」という批判が相
次いだ。
 それは真っ当な批判なのかもしれないが、こうした匿名寄付を軸とする「ア
メ玉」の存在を隠す国や事業者もある意味で「共犯者」なのだ。昨年2月の改
造工事了解の陰で、西川知事が最も情熱を傾ける北陸新幹線の延伸問題に一定
の区切りがつき、新福井駅の着工に国の予算がついたことを見過ごすことはで
きない。
 知事や大臣、電力会社の社長ら有力者の公式発言を追うだけでは、一般読者
が原子力ニュースの背景についてほとんど分からないほど、一般読者に隠され
ている闇は大きい。行政が最近連発する「説明責任」や、情報公開とは遠く離
れた地域振興策、ウラ金を巡るウラ交渉こそが原子力政策の本質に思えてなら
ない。


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5.プロジェクトフラシュ

1) シンポジウム「大都市での自然エネルギー利用を東京から考える」報告
                    洞口夢生(ISEPインターン)

 去る3月21日、春分の日に開催された本シンポジウム「大都市での自然エネ
ルギー利用を東京から考える」では、「自治体によるエネルギー政策」に焦点が
置かれた。シンポジウムの進行は2つのパートに分かれ、前半は登壇者による
プレゼンテーション、その後パネルディスカッションという形式で進められた。
プレゼンテーションでは、東京都環境局企画担当部長の大野輝之氏、国連環境
計画・金融イニシアテイブ特別顧問の末吉竹二郎氏、株式会社チームネット代
表取締役の甲斐徹郎氏、および環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏の
4名よりそれぞれ報告があり、下記にその簡単な概要を示す。
 大野氏からは「東京都の再生可能エネルギー政策」として、東京都が今後進
めていくエネルギー政策の具体的なビジョンについて報告があった。日本の自
治体の中でも自然エネルギー政策においてかなり進んでいるとの評価を受けて
いる東京都のビジョンは、非常に興味深いものであり、具体的な数値は避けた
が、東京都は将来欧米並みの自然エネルギー導入目標値を設定するとのことで
あった。
 末吉氏からは「環境金融の新しい流れ」として、現在新たに生まれつつある
金融界での環境問題を考慮した投資について報告があった。欧州では既に企業
の環境問題に関する情報が機関投資家の投資基準に影響を与えており、金融の
分野で新しい価値基準の概念が生まれつつあるとのことであった。
 甲斐氏からは「都市における住まいと自然エネルギー」として、都市部の住
居を環境共生型住居へと移行することによる利益について報告があった。体感
を考慮した新しい価値指標や、複数の家族が同時に環境共生型住宅に住むこと
による倍数的な豊かな住宅環境の創出、また、住人同士の自立した共生という
近代の便利さと旧来の人の関係の豊かさを両方含めた新しい住宅形態が創出す
ることができるとのことであった。
 飯田氏からは「自然エネルギー市場という新しいパラダイム」として、現在
世界中で普及しつつある自然エネルギーの市場での発展における適切な政策の
必要性について報告があった。今はグローバルかつ歴史的なエネルギー政策の
変換期であり、世界中で自然エネルギーが政策として促進されている。しかし、
日本は他国と比べ国策としての自然エネルギー導入量が非常に低くなっており、
今後国内自然エネルギー市場の発展のためには、地域からの政策イニシアティ
ブが必要とのことであった。
 後半のパネルディスカッションでは、以上の論点を論拠とした地方自治体の
自然エネルギー政策についてそれぞれの立場から発言があり、特に議論が集中
した論点は2点。
 1点目は、日本の政策の制定過程の問題点について、明確なビジョンが欠如
しているとする日本の政策への鋭い批判があった。
 2点目は、金融・住宅・政策分野における新しい流れについて、現在金融の
環境価値や体感という新しい指標が注目されており、例えば全く新しい価値基
準に基づいた事業を行う企業が創出されると、その基準を考慮しない他の企業
と比べ圧倒的に有利な状況となり、他企業が挙って変化に対応するため、その
小さな変化は全ての枠組みが変化させていくとのことであった。
 シンポジウム全体を通しての感想として、今まさに新しい価値体系・政策構
造の変換の時期が来ており、変換の途上であるからこそ、その変化の把握と広
がりについて有意義な議論ができたシンポジウムであったと感じる。
 今後、この新しい流れが日本でどのように波及していくかについて注目した
い。


++++++++++
2) 備前まほろば「住宅の省エネ・自然エネセミナー」を開催しました
              井筒耕平(備前グリーンエネルギー株式会社)

 3月18日、備前市市民センターにて住宅に関する省エネルギー・自然エネル
ギーのセミナーが行われました。
 第1部は、関西学院大学大学院総合政策研究科客員教授の山藤泰さんによる
「家庭のエネルギー消費と省エネルギー手法」と題してご講演を頂きました。
グローバルな地球温暖化の話、国内のエネルギー消費の話から始まり、ローカ
ルな住宅のエネルギー消費効率化の必要性、エネルギーの地産地消の話などを、
実体験を交えてお話いただきました。山藤さんは、我慢の強制である「省」エ
ネルギーは危機が過ぎれば長続きしないため、機器の効率による「効」エネル
ギーに重きを置いた取り組みが必要だとの認識であり、当社の取り組む省エネ
サービスも同様の考え方による事業です。また、ご自宅をご自分で断熱改修さ
れた経験もあるとのことで、改修工事のご苦労やその後の実感についてもお話
をいただきました。その中で印象的だったことは、ガラスをペアガラスにした
結果、断熱効果も上がり外の音も遮断され、暮らしやすくなったとご自分では
満足していたところで妻に一言「ホトトギスの鳴き声が聞こえなくなった」と
言われたそうで、「断熱・気密改修工事が全ての人にとっての最適ではない。自
然との調和や文化も大切なんだ。」と考えを改めたというお話でした。私たちも、
一人ひとりが住んでいる家で大切にしていることを大事にし、御用聞きの省エ
ネ、自然エネルギーサービスを提供したいと思います。
 第2部のまほろば事業説明もスムースに終わり、最後には備前での小水力発
電導入の可能性について議論したり、山藤さんがご持参されたスターリングエ
ンジンの模型を使って実験したりとこれまでのセミナーに無い話題の広がりが
ありました。
 最近は、事業推進のためにアウトプットすることが多かったのですが、久し
ぶりにじっくりとお話を伺うことができ、私にとってもためになるセミナーと
なりました。


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6.インターン報告

1)「ISEPの社会調査」
       古屋将太(ISEPインターン・法政大学大学院政策科学研究科)

私は2005年5月からインターンとして主にISEPの研究活動にかかわっ
てきました。ここでは2006年2月におこなった「グリーン電力・グリーン
熱の導入可能性に関するアンケート調査」を例にISEPの社会調査について
報告したいと思います。

この調査は、自治体におけるグリーン電力の普及状況とグリーン熱の導入可能
性を明らかにすることを目的に、全国258の自治体を対象におこないました。
調査の手順としては、まず、昨年の「グリーン電力の導入可能性に関するアン
ケート調査」から引き続き質問する必要のある項目をピックアップし、それに
加えて「自治体がグリーン熱の導入にどの程度関心をもっているか?」「導入す
るとしたらどういった公共施設への導入が理解を得られるか?」などの問題設
定から仮説をつくり、調査票を設計しました。その後、調査票の印刷・封入・
発送・回収・データ入力というプロセスを経て、集計・分析の作業をおこない
ました。この調査の結果、回答を得た自治体では「グリーン電力の認知度が昨
年よりも向上」し、「およそ半数の自治体がグリーン熱の導入に関心がある」と
いうことがわかりました。調査結果の詳細は報告書にまとめられ、今後の普及
活動に活かされます。

私は大学院で社会調査法を学び、ISEPでのインターン活動で学んだことを
実践する機会を得ています。具体的には政策形成過程における社会調査の重要
性を学んだのですが、今回の調査を実践する中で次のようなことに気がつきま
した。政策立案は一般化すれば、「(社会調査による)現状把握→(政策による)
アリーナへの介入→結果評価→最適化」というプロセスをたどるものであり、
その第1ステップ・第3ステップに社会調査があるということです。私は社会
調査による現状把握の精度が高まれば、より適切な介入が可能になると考えま
す。また、政策の結果評価においても同様に、調査の精度を高めることで、よ
り正確な最適化が可能になると考えます。

ISEPは、これまでの市民風車の事例や飯田市の市民太陽光の事例において
も、出資者の方々のご協力のもと、アンケート調査をおこなってきました。こ
れらの集計結果は、後続のプロジェクトに活かされているだけでなく、分析を
通じて得られた知見は国内外の自然エネルギー研究の場で発表され、学術的に
も活かされています。今日、個人情報保護の重要性がさけばれ、アンケート調
査をおこなうことはますます困難になっています。出資者の皆様をはじめ、多
くの人たちに、良質な政策立案には社会調査が必要不可欠であることを理解し
ていただき、今後もご協力をお願いしたいと思います。


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