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1. 風発 「自然エネルギーと社会的合意」
                       飯田哲也(ISEP所長)

2月17日?18日にかけて、スイス・セントガレン大学主催のワークショップ
「自然エネルギー・イノベーションと社会的合意」が、ベルンに近い小さな村
で開催された。自然エネルギーは、普及を進めることが大前提の「社会的合意」
だが、近年のウインドファームなどに見られる急速な拡大は、景観問題など新
しい社会的合意の問題を生んでいる。計11編の報告をとおして、この「新し
い社会的合意」の問題を討議した。リアル政治に踏み込んだ報告(「電力政治」
が強いところほど自然エネルギーの普及度が弱い現象など)が見あたらなかっ
たのは残念だが、たとえば、固定価格制のドイツでは、小規模事業でもリスク
が小さく、地域オーナーのプロジェクトが中心となるために、社会的合意を得
やすいという、各国間の制度と社会的合意の関係も興味深いものであった。

その中でも、欧州が中心のせいか、風力発電の景観問題に軸足があり、ここに
「inverse NIMBY」という新しい概念が登場する。「自分の庭」にある風車に、
より強い愛着を持つという現象だ。従来、エネルギー開発といえば、巨大開発
と環境破壊がセットになって「外」から地域にやってくるため、利権と地域保
全のそれぞれの立場が入り組んだ対立構造を生み出してきた。地域の「外」か
らこうした開発を進める政府や事業者は、これまで自らを問い直すことなく、
地域に一方的に「合意」を迫り、無事に説得できたものが「社会的合意」と呼
ばれてきた。そして説得できない批判派に対して”NIMBY" (Not in my back
yard) という、地域エゴを連想させる下品なレッテルを貼ってきたのである。
ところが、実情を見極めてみると、批判派の姿勢と思想は、地域エゴどころか、
社会公益の高みに至っていることがわかる(たとえば、松下竜一「暗闇の思想」
など)。

このように、これまで「社会的合意」といえば、事実上、一般公衆や地域住民
への一方通行の説得に過ぎなかった。しかし、自然エネルギーの場合は、政府
や電力会社など既存のプレイヤーが「自らを譲利・修正する」という意味での
「社会的合意」も必要になってくるのである。欧州のように、自然エネルギー
がエネルギー供給で有意となるまでに急拡大した場合、エネルギー供給インフ
ラやさらにはエネルギー産業そのものも構造変化が生じることになる。政策や
国際関係すら見直しを必要とする。地域住民だけでなく、自然エネルギー・イ
ノベーションの影響を直接に受ける政府や電力会社など既存のプレイヤーも含
めて、どのように「社会的合意」を取り結ぶか。従来のエネルギー開発とは逆
転した、この新しい「社会的合意」の構図も、自然エネルギーが社会にもたら
そうとしている新しい変化といえよう。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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2.ボン自然エネルギー会議の流れを追う、
           国連持続可能な開発委員会(CSD)開催-パート1
                      大林ミカ(ISEP副所長)

5月1日から12日にかけて、ニューヨークで、第14回国連持続可能委員会
(Comission on Sustainable Development、CSD)が開催される。CSDは、
1992年のリオ地球サミットで採択されたアジェンダ21にある「ハイレベ
ルの持続可能な開発委員会を国連憲章に従い設立すべき」を受けて設立された、
リオサミットのフォローアップのための枠組みである。2003年4月のCS
D11では、2004年以降の6サイクルにて中心的に取り上げるテーマが定
められていて、2サイクル目にあたる2006/2007年のCSD14/1
5では、持続可能な開発のためのエネルギー、工業開発、大気汚染/大気、気
候変動がテーマとなり、今年はレビューを行う年になる。

前回エネルギーが中心テーマとして取りあげられたのは、2001年のCSD
9だった。ここで採択されたエネルギーについての文書には、非化石燃料と原
子力が持続可能な開発を進めるエネルギー源という記述があり、2002年8・
9月に開催されたヨハネスブルグサミット(WSSD)のエネルギーと気候変
動に関わる文書や、翌年のCOP8での合意文書に引用されるなど、大きな影
響を与えるものになった。WSSDで開催宣言がなされたボン自然エネルギー
国際会議(2004年6月開催)では、WSSDよりも一歩前進、自然エネル
ギーの本格的な促進が宣言文に盛り込まれたが、ボン会議は、このCSD14
/15を自然エネルギー促進の国際的議論のためのフォローアップ・プロセス
として位置づけているため、ヨハネスブルグからボンへ、ボンから北京へと続
いた自然エネルギー促進の流れをより確かなものにしていく必要がある。

CSDは、持続可能な開発という括りで幅広い分野を取りあげるため、また関
連会合も含めると会議開催が度々にわたるため、専門的分野に特化したロビー
活動を行うNGOの立場からは、働きかけを行いづらい国際交渉プロセスであ
る。また、国内対策や国際的な条約交渉などのリアルな政治とは切り離された
国連的会議であるため、効果そのものが見えにくいという点もあり、限られた
資金で集中的に活動せざるを得ないNGOにとって、気候変動枠組み条約など
にくらべプライオリティーを落とさざるを得ない。今回については、ISEP
は参加を予定しているが、日本でエネルギーや気候変動に取り組む、他の政策
提言型NGOが参加を計画しているかどうか、寡聞にして聞いていないという
状況である。

しかし、世界的な状況を見ると、今回と来年については、WSSDやCOPや
ボン会議に集った自然エネルギー促進と気候変動の両方に関わるNGOたちが
働きかけを行うべく、活動を始めていて、ISEPもその中にある。日本国内
では、国連での日本政府の動きをよりよいものとできるように、国会レベルの
CSDへの参加も含めて、働きかけを行っていくつもりである。

                      大林ミカ(ISEP副所長)


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3.連載「光と風と樹々と」(6)-ミネソタ農民風車物語 2               
                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

ゴルフ場のクラブ・ハウスで運転開始式
 2004年12月3日、ミネソタ州の西南端、Rock County の Luverne とい
う小さな町で、各1650kW(ミーコン社製)、計7基の農民風車の運転開始
式があった。会場はビーバークリーク・ゴルフ場のクラブハウス。クラブハウ
スから7基の風車がよく見える。MinWind という農民組合の第2期プロジェク
トである。ミネソタの風車から、MinWind という洒落た名前にしたのだろう。
すでに第1期のプロジェクトとして、950kWづつ、4基を2002年10
月に運転開始させている。会場は、シーズンなので、ツリーなどクリスマスの
飾り付けがしてある。残念ながら、電気系統のトラブルで、実際の運転開始は
もうしばらく後という。形だけのテープカットがあった。出資者を中心に、関
係者を含んで約250人が集まった。用意した座席は満席である。言葉少なで、
やや無骨な、いかにもミネソタの農民という面構え、体格の大きさである(こ
のときの写真は、以下のサイトで公開)。
http://windfarmersnetwork.org/eve/ubb.x?a=tpc&m=3090009003&f=32410342 
場所は、前回述べた風力発電が集中する強風のバッファロー・リッジの近く。
新規プロジェクトの可能性を探っているのだろう、90号線沿いに、周辺に風
測計が幾つかみえる。 ミネソタ州では、2000kW以下の小規模プロジェ
クトを奨励するために、2000kW以下であれば、最初の10年間は、売電
価格に州政府が エクセル・エナジー社が拠出した 放射性廃棄物基金(nuclear
waste fund、前回参照)から、kWあたり1.5セントづつ上積みしてくれる
(第1期プロジェクトの場合、第2期プロジェクトに対しては、0.7セント
の上積み)。そのため、第1期プロジェクトは、950kW風車が2本づつの
MinWin IとMinWin IIに分け、第2期プロジェクトは、1650kWの風車が
2本づつ MinWin III から、MinWin IX と呼んでいる。発電単価は3.3セン
ト、エクセル・エナジー社の購入価格も3.3セント。当初の10年間は基金
からの上積み分が利益になる格好である。 代表で、農民でもある Mark
Willers の説明によれば、風車の建設費(第1期プロジェクトでは計320万
ドル(約3億2000万円、単純化のために、1ドル=100円で換算))を
10年で償却すれば、それ以降の発電単価は2セント程度だという。
 第1期プロジェクトの稼働率は実績で年平均34%、大型化した第2期プロ
ジェクトでは40~41%の予測という。強風に恵まれて日本よりかなり高い。

 地域の信頼??農民組合のしくみと原型
 農民組合には、(1)出資額の少なくとも85%までは、地元の農民による出
資でなければならない(残り15%までは、農民以外の人でも、地元以外の人
の出資でもよい)、(2)同一人が15%を超えて出資はできない、(3)出資者
は出資額にかかわらず、1人1票の議決権をもつ、というルールがある。非常
に地元志向性が強い。 原型となったのは、Corn-er Stone Farmers Coop とい
うエタノール製造・販売のプロジェクトである。一帯は、「大草原の小さな家」
の舞台となったような、どこまでも真っ平らなプレーリー地帯であり、一面ト
ウモロコシ畑である。農民の共同出資のプラントで、トウモロコシからエタノ
ール(エチル・アルコール)をつくっている。アメリカでは、ガソリンに10
~15%、エタノールをまぜることが奨励している。普通のガソリン・スタン
ドで、15%エタノール入りのガソリンを購入することができる。バイオマス
燃料として石油の節約になるし、大気汚染を緩和し、植物起源のため、二酸化
炭素の排出量がカウントされないなどのメリットがあるからである(日本では、
燃料系が腐食することを理由に、法律で3%までの含有しか認めていない)。 
第1期プロジェクトの出資者66人は、わずか12日間で集まったという。 
10~20%という高いリターンをめざしている。 代表のマークさんの話で
興味深かったのは、農民たちが直接信用しているのは、テープカットのセレモ
ニーで、壇上でテープカットをした20人近くの理事たちだということである。
農民たちにとっては、風力発電がもうかる仕組みの説明はむずかしいが、顔な
じみで地元に住んでいる理事たちが言うことだから信頼できるのだという。顔
なじみプラスエタノール・プロジェクトの実績プラス近くのバッファロー・リ
ッジの風車の実績が、説得力をもっているのだろう。 筆者は、この2月4日、
北海道グリーンファンドと生活クラブほっかいどうの共催による講演会で話を
した。折からの強風で積雪で、千歳空港は事実上閉鎖に近い状態で、帰りの飛
行機が飛ばず、もう1泊することになった。ゆっくりできることになった懇親
会で、顔なじみの生活クラブほっかいどうの人たちが言うのは、市民風車第1
号の「はまかぜちゃん」のために1口50万円の募集が始まったときには、お
金が返ってくるなんて、全然期待していなかったということだった。杉山さん
(理事長)たちが、鈴木さん(事務局長)が始めたことだから、応援してあげ
たい、という純粋な気持ちだったという。 アメリカでも、日本でも、農民風
車や市民風車は、まず人とのつながりで、回りだすのである。

農地を守るために
 経済と環境と、二つの視点から、二重に土地を守らなければならない。副収
入の確保のために、地元経済の発展のために、発電用風車をすすめているんだ。
あまりの強風でトウモロコシがなぎ倒される、霰(あられ)や雹(ひょう)で
作物がやられちゃう。ここで農業をやっていくために、収入確保のために、風
車が意味があるんだ、と、マークさんは雄弁だった。 2006年には、さら
に20基増設したいと張り切っていた。                         
(この項、終わり)
               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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4.上海からの風の便り(4)
  木村寿香(Imperial Collage, University of London、上海交通大学)

連載の前号では、自然エネルギーを中国の「主流エネルギー」として普及させ
るためには、経済成長の著しい沿岸部における巨大な新興消費者のパワーと自
然エネルギーをリンクさせることが鍵となってくることを取り上げましたが、
今回は、その例として「上海市のグリーン電力 "Jade Electricity"プログラム」
をご紹介したいと思います。

上海は、日本の鹿児島市とほぼ同じ緯度にあり、1840年のアヘン戦争後、
イギリスによって通商港として開港させられてから、港町として発展してきま
した。近年でも、外資系企業の投資を大量に受け入れている上海を中心とした
長江デルタ地域の戸籍人口は、合計で日本を上回り中国の10%以上を占めま
す。

上海は、急速な電力需要に対応するため、近年風力と太陽エネルギーの開発に
着手したところです。上海は、長江デルタの最前端地域にあり、東中国海に面
しているため、沿岸海域や洋上での風力発電が可能であるほか、年間の日照時
間が2000時間を超すため太陽発電にも適しています。風力では、2003
年の上海奉賢浜海地域における4基の850KWの風力発電機による年間69
0万KWhの発電に加え、2005年7月には崇明・南匯で発電機ユニット容量
が21MWの風力発電場の運行を開始したところです。さらに、国内最大級の発
電出力10万KWの海上風力発電所1ヶ所の建設を計画しています。

上海の自然エネルギー発電を今後さらにスケールアップするには、持続可能か
つ効率的なコスト分担のシステムが必要です。上海市はEnergy Foundationお
よび世界銀行のAsia Alternative Energy ProgramとEnergy Sector Management
Assistance Programの協力を得て、中国初のグリーン電力メカニズムをデザイ
ンし、2005年6月より販売を開始しました。価格は、通常の電力料金に比
べ0.53人民元(約7.8円)高く設定されています。現状の上海氏の電力料
金の水準(ピーク時0.3元、ピーク時0.61元)であることを考えれば、
グリーン電力価格はかなり高めに設定されていると言えます。このプラスアル
ファは自然エネルギー発電のさらなる投資に用いられます。

購入単位は、企業が6MWhで家庭が12kWhで、最低購入単位は、企業は年間
の電力消費量に応じて最低単位が定められており、家庭は10単位以上です。
グリーン電力購入者には栄誉証書が授与され、大口購入者はウェブサイト上
(www.sh-greenpower.org)に掲載されます。現状の大口購入者には、宝山鋼鉄・
上海煙草など中国企業に並び、上海松下・NEC・日立・三菱エレベーターなど日
本企業や、シーメンスやノヴァルティスなど欧州企業もランキングされていま
す。

計画経済から市場経済への移行途中にある中国において、市民および企業の「自
分の消費するエネルギーを選択する権利」の実効を向上する制度が導入された
ことは、注目に値します。グリーン電力の購入量がクリティカルマスに達すれ
ば、電力購入者が発電企業の戦略に影響を与えることができます。そのために
も、上海における実験的取組が成功し、やがては中国全土に広がることを期待
しています。

木村 寿香 (Imperial Collage, University of London、上海交通大学)


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5.「お笑い原子力ムラ敦賀」(11)
 日野行介(毎日新聞大阪社会部記者、昨年3月まで福井支局敦賀駐在記者)

 先月号が配信された直後、私の勤める大阪本社宛に、名前から考えて政治団
体と考えられる団体の代表を称する東京の方から質問状が送られてきた。内容
は「記者がこのような投稿をしていることについて毎日新聞はどう考えている
か」などというものだった。
 ちなみに、この方の名前は福井県内のマスコミ関係者に広く知られている。
原子力、特に日本原子力研究開発機構(旧核燃機構)に関する記事についてし
ばしば報道各社の福井支局に質問状を送りつけたり、訪問して来るからだ。以
前にも、東京においてどのように入手し、読んでいるのかは不明だが、弊社福
井県版に掲載した高速増殖炉「もんじゅ」について書いた小さなコラムについ
て質問状を送られたことがある。
 コラムの内容は、敦賀市民病院の増築についての周辺住民説明会に住民男性
が出かけたところ、増築についての説明会が終わった後、続いて事前に告知の
なかった「もんじゅ」改造工事について核燃機構の説明会が行われ、憤慨して
いたことを紹介したうえで、少々一方的とも思える説明のやり方に懐疑的な見
解を述べた程度だった。ところが記事の掲載直後、核燃機構の複数の幹部から
「あのコラムはひどい」、「では、どうすれば説明責任を果たすことになるのか」
など、不思議なことに質問状とほぼ同じ内容の抗議を受けたことを良く覚えて
いる。
 記事に関する質問状ということで出されていることが多いので、この方の名
前を出しても構わないとは思うが、挑発するのが私の本意ではないのでここは
伏せたい。ちなみにこの方の名誉もあるので断ると、質問に対する回答を督促
されることはあっても、金銭を要求されたという事実は弊社の記録にも一切残
っておらず、原子力、特にもんじゅについて質問状を出し続ける真意は不明だ。
 さて、前にこの連載でも紹介した約20億円の匿名寄付で建設されたパビリオ
ン「きらめきみなと館」の3D(立体)映画館について、敦賀市は利用者数の
低迷に伴う多額の赤字に耐えられず、今年度末で閉鎖することを決めた。オー
プンからわずか6年足らず、黒字だった年は1年もなく、この間に敦賀市が税
金で補てんしたのは計約3億4000万円に上る。市側は「見通しが甘かった」
と原因を話したというが、それ以前にハコモノを建設して、地元の有力者にカ
ネを落すこと自体が目的だったように思える。
 これまでに何度も指摘してきた通り、こうしたハコモノの建設費は電源3法
交付金にせよ匿名寄付にせよ私たちの支払う電気料金が原資となっている。
「地域振興への貢献」という美名を煙幕に使い、いつのまにか原発立地地域に
投下された巨額の資金は地元の一部有力者を潤すだけの効果しかなく、後始末
までも税金に押し付ける構図がくっきりと浮かび上がる。これは明らかに公共
工事の裏側にはびこる「利権」であり、正当な商行為の対価とは言えないピン
ハネ行為にほかならない。基本的な構造は防衛施設庁による「官製談合」と変
わらず、私は「事件」に近いとも思っている。
 原発マネーによるハコモノ建設を一体誰が決定し、誰が得をしているのか、
そして両者にはどのような関係があるのか。そんな検証すら許さないかのよう
に、原子力マネーは絶え間なく投下され続ける。目先の利益を求めて常に狂奔
を続ける地元の人々を見たとき、報道に携わる者として無力感を覚えずにはい
られなかった。


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6.プロジェクトフラッシュ

1)「自治体政策から核燃料再処理を考える」
   核燃料サイクル国際評価パネル(ICRC)、青森報告会レポート
                    石森由美子(ISEP研究員)

2月5日に、核燃料サイクル国際評価パネル(ICRC)は「自治体政策から核
燃料再処理を考える」と題し、青森県での報告会を行いました。当日は大変な
大雪にもかかわらず、多数の参加者が集い熱心に耳を傾けていました。前半の
ICRC委員による報告では、まず京都大学助手の藤村陽氏が「核燃料再処理
に関するICRCの評価」結果を報告し、続いて九州大学教授の吉岡斉氏が「青
森県民にとっての再処理事業推進のリスク」そしてISEP所長・飯田哲也が
「青森県への提言」として6項目の提言を発表しました。後半のパネルディス
カッションには県議会議員の鹿内博(しかないひろし)氏、地元農業者の哘清
悦(さそうせいえつ)氏の2名が登壇し、それぞれ報告を行いました。

<立地地域住民にとってのリスク>
今回の報告会では、青森県が県民に対し再処理事業やアクティブ試験によるリ
スク情報を正しく伝えていない現状が浮き彫りにされました。藤村氏は県が抱
えるリスクについて「青森県は再処理工場稼動により、大気、海水への定常的
な放射能放出や事故、英仏で問題化している高レベル放射性廃液の蓄積問題、
再処理工場・MOX工場で発生する廃棄物(略称TRU)の処分の問題に直面
するだろう」と指摘しました。また吉岡氏は、「稼動による『安全・環境リスク』
に加え、事故や事件による再処理事業の行き詰まりと、それに続く再処理事業
破綻によって再処理工場は閉鎖、さらに使用済み燃料、分離・抽出したプルト
ニウム、再処理廃液などが永久に据え置かれることになれば青森県が「核の廃
墟」となる、と説明し『再処理事業破綻リスク』も重大な県民被害をもたらす
だろうと説明しました。これについて鹿内氏は、「アクティブ試験開始は、他の
地域が経験したことのない全く未知の世界に入るという説明を県民は受けてい
ない。青森県のイメージや農林水産物の売り上げにも様々な影響が懸念される
ことを、県民に訴えて行きたい」と述べました。また哘氏は、「三村知事は“攻
めの農業”を掲げているが、プルトニウム政策と農業政策は両立できない。既
に風評被害は発生しており、これからも県に対して農業者の立場から核燃料再
処理問題を追及していきたい」と語りました。

<青森県への提案>
ICRC委員からは「アクティブ試験は幸いにもまだ始まっておらず、踏みと
どまることは尚可能である」というメッセージと共に、次のような具体的提言
が発表されました。1)県独自の核燃料サイクル調査研究を行うこと、2)国
に対しては再処理事業推進の必要性についての「子供だまし」の説明を撤回さ
せ合理的かつ現実的な説明責任を果たすことを要請すること、3)政府が説明
責任を果たさない場合は、核燃料サイクル政策の見直しを要請し、地方自治体
の損失については政府が補償をするよう要請すること、4)日本原燃および電
気事業連合会に対しても、国の説明に準拠した従来説明を撤回し、説明責任を
果たすことを要請し、5)六ヶ所再処理工場のアクティブ試験実施については
安全協定の締結を無期限に保留すること、そして、6)六ヶ所再処理工場が無
期凍結状態にある間、使用済み核燃料の返還協議を進める。電気事業者が中間
貯蔵施設の操業を要請してきた場合、再処理事業を前提とした計画でない場合
には、県の調査研究に全面的な支援を行うことを条件に、緊急避難的に受け入
れを検討してもよい、の6項目です。

報告会翌日には、青森県知事へ提言書の申し入れを行いました。この3月にも
アクティブ試験が開始されると言われていますが、福島県のイニシアティブと
並び、青森県でも独自の調査研究を行い、国と対等の立場で協議・交渉を進め
る姿勢を期待したいと思います。

本提言書は今後ホームページで公開する予定です。また今後も島根県や静岡県
に対し同様の提言活動を行っていく予定です。ICRCの活動、報告書、昨年
12月の佐賀県への提言書などはhttp://www.takagifund.orgをご覧下さい。

                    石森由美子(ISEP研究員)


* *********
2)軌道に乗ってきた飯田市「まほろば事業」
                  竹村英明(環境エネルギー政策研究所)

 昨年からスタートした飯田市まほろば=おひさまの小規模省エネルギーサー
ビス=ESCO(エスコ)事業は、1年近くの経験をつんで、ようやく軌道に
乗りはじめた。「軌道に乗った!」と断定的に言わないところが微妙である。実
は、すでに乗って走っているのかもしれないのだが、当事者の実感としては、
やっと足元の軌道が見えてきたというところである。
 おひさま事業の詳細はここでは省くが(詳細を知りたい方はSEENの昨年
7月号=18号をご参照いただきたい)、ここでは、このプロジェクトの中心軸
であるエスコ事業の進行状況と、厚みを増してきたおひさま事業の周辺企画に
ついてご報告し、軌道が見えてきたという意味に触れておきたい。

(1)エスコ事業に確かな自信
 エスコ事業はまだまだシステム設計で格闘を続けている。モデルづくりと事
業スタートをほとんど同時にはじめるという「荒業」の中で、現場担当グルー
プは文字通り手探りの試行錯誤の連続であった。しかし、ここに来てやっと、
何がおひさまエスコの強みなのか、何を訴え、何を達成すればよいのかが形は
っきりと見えてきた。
 実は、おひさまのエスコ事業の担い手には学者肌が多い。まさに研究開発な
のである。しかし学者の商法ほど一般庶民からは遠いものはないというのも事
実。膨大なエネルギーをかけて、営業とは無関係のデータ収集に地道をあげ
る・・という傾向が正直言って存在している。このデータ自体はやがて威力を
発揮するものであり、将来的には大きな価値があるものなのだが、直面する事
業活性化にとっては阻害要因だった。
 営業、初期診断、仮提案、本診断、本提案、契約、工事・機器発注、施工管
理、そして最後の検証・・ここまでの一通りが今やっと一つ完結しようとして
いる。当初は初期診断に3ヶ月以上もかかったり、提案内容は顧客の相場観と
かけ離れていたり、また計算ミスが多発、契約書の作成は果てしなく時間がか
かり、工事日程を決めたら機器納品が間に合わない。事業立ち上げ期特有の、
どたばたであったといえばそれまでだが、確実に言えることは、地元のおひさ
まスタッフ、中野の技術チーム、そして技術顧問のグリーンユーティリティ社、
それぞれが力を出し合いぶつけ合って「今の形」を作り上げてきたということ
である。
 こうした時期をようやく脱し、そして今何をしなければいけないかが、明確
な形が見えるようになってきた。力が足りているわけではないが、見えるとい
うことはゆとりと自信をもたらしてくれる。それが、軌道が見えてきたという
ことである。

(2)事業のソフト化と重厚メニュー化
 初期診断の数は40を超えた。契約はまだ1件だが、すでに10件ほどがそ
の直前にある。3月末までには少なくとも20件以上の契約がめざせる状態に
ある。工事実施・終了は機器納品の都合で4月以降へのずれ込みは覚悟せざる
を得ないが、振り回されるのでなくスケジュールをしっかりコントロールでき
るという域に達してきた。営業案件はまだ50近くを数え上げているが、診断・
施工のプランニングを確かめながら、チームの能力状態を測りながら取ってい
くという、余裕の域に近づきつつある。
 今取り組んでいるのは提案書式の簡素化である。あらゆる情報を詰め込んだ
玄人仕様から、必要最小限の情報にしぼりイラストをあしらった素人版へのリ
ニューアル。エスコの手法は現在は5つか6つに限定されてきているが、これ
は素人が事務的にデータをインプットすれば答えが出るというソフト化領域に
も近づいている。診断のスピード化、同時に単純ミスの最小化につながる。
 営業のソフトもできつつある。おひさまエスコの最大の売りは「資金調達不
要」ということである。金融機関の自社借り入れ枠を温存したまま、新たな設
備投資ができる。また機械を売るのではなく省エネというサービスを提供する
ということ。だからこそ機器が最適に力を発揮するようにメンテナンスをする
し、サービス提供が約束どおりできなかった場合のペナルティも掲げている。
顧客は資金調達なしに設備投資ができ、しかも設備不良やトラブルの心配もせ
ず、なんと固定資産税の負担もなくサービスを享受できる。これが広がらない
はずはないのである。

(3)グリーン電力とさんぽちゃん商店街構想
 軌道が見え、自信がみなぎりつつあるエスコ事業であるが、先行してはじま
った太陽光発電事業は確実に発電料金を稼いでいる。この事業を予定通り完成
させるには、もう一つ「環境付加価値」であるグリーン電力を売り切らないと
いけない。エスコ事業に相当の力を取られているので、こちらの営業は足踏み
をしていたが、このたび飯田市内で最初のグリーン電力イベントが行われるこ
とになった。飯田市環境協議会主催、地場産業センター等が協賛のエコハウジ
ングセミナーである。2月には飯田市が誇る銘酒・喜久水酒造にもグリーン電
力の活用を働きかけた。
 グリーン電力はこれを使った飯田市独自の商品開発という着想にも広がる。
小規模エスコは商店街エスコとも名づけられている。ここには、ご他聞にもれ
ず年々衰退しつつある飯田市商店街の活性化の期待もこめられている。省エネ
と自然エネルギーとグリーン電力、これをつながりの軸においた商店街を誕生
させようという構想もある。この商店街の売りは、地域への貢献である。省エ
ネをして生まれた余力を地域の保育園・幼稚園や福祉施設に還元する。おひさ
まエスコやグリーン電力はそのためのお手伝いをするのである。

(4)自然エネ省エネ企業セミナー
 そして自然エネルギー・省エネルギーと街おこし・起業ノウハウの提供とい
う異業種混成の新しい発想での人材育成セミナーを、この3月に開催する。3
0人程度の参加者で宿泊も共にしながら、密度の濃い講座をこなしていく。
 講師陣には環境エネルギー政策研究所の飯田所長、市民バンクの片岡勝氏な
ど、そうそうたる陣容である。詳細はISEPもしくはおひさま進歩エネルギ
ーのホームページでご覧いただきたい。

おひさま進歩エネルギーの連絡先:http://www.ohisama-energy.co.jp

                  竹村英明(環境エネルギー政策研究所)


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3)「備前みどりのまほろば事業のこれまでのあゆみ」
           岡山咲子(備前みどりのまほろば協議会インターン)

 3月3日をもって「備前みどりのまほろば事業」がようやく一つのスタート
ラインに立ちました。いよいよ市民出資募集が開始されるのです。そこで、こ
こにいたるまでの軌跡を振り返ってみたいと思います。
 私が備前にインターン研修生として住みはじめたのは、今から4ヵ月半前の
10月中旬でした。備前の山々はまだ紅葉しておらず、夏の名残を感じる青色
でした。この頃は協議会も発足したばかりで、スタッフもパートナー会社の設
立に追われていました。
 備前の山々が赤くなり、短い秋が過ぎようとした頃、会社設立に向けてにわ
かに忙しくなりました。そして、12月8日に無事に『備前グリーンエネルギー
株式会社』が誕生し、事業の根幹部分に着手できるようになりました。備前市
内の事業所や公共施設に診断にまわり、自然エネルギーや省エネルギーの設備
設置の可能性を調査していきました。私が主に携わっていたソフト事業でも、
エコフェスタやエコツアーなどの企画が動き始めました。
 毎朝水道の水が凍ったり、畑に霜が下りたりする寒い冬が訪れた頃、新聞各
紙でこの事業のことが取り上げられ、「備前みどりのまほろば事業」は徐々に本
格化していきました。私はソフト事業の一大イベントである「備前エコ体験シ
リーズ」の『エコツアー:自然のエネルギーを実感・体験しよう!』を企画し、
2月4日に実施しました。45名の参加者とともに、兵庫県の薪ストーブショー
ルーム(ハリマ興産株式会社)と風力発電施設(五色町)、太陽熱利用の温泉
(一宮温泉まほろばの湯)を巡り、バスの中でも自然エネルギーについて解説
をしたり、事業の説明をしたり、有意義に過ごしました。最後に参加者の方に
書いていただいたアンケートから、みなさんが自然エネルギーを身近に感じる
ことができ、満足のいくツアーだったということが分かりとても嬉しかったです。
 寒かった冬も去り、春の訪れを感じさせるような三寒四温の今日この頃、備
前グリーンエネルギー株式会社として第1号となるグリーン熱ストーブ(薪ス
トーブ)の設置施工が完了し、ハード事業がいよいよ加速段階に入りました。
また、今月から市民出資の募集が開始したことに伴い、全国4ヶ所箇所で説
明会が開かれます。ソフト事業の面でも、協議会のイメージキャラクターのネ
ーミングが決定したり、ホームページが正式にオープンしたりと充実していま
す。
 これからも「備前みどりのまほろば協議会」と「備前グリーンエネルギー株
式会社」の双子の兄弟は、「備前みどりのまほろば事業」の担い手として、全国
のみなさんのご協力をいただきながら成長をしていくと思います。私自身もこ
の4ヶ月半で大学では決して教わることはない、実用性のあることをたくさん
学び、感じ、精神的に成長することができました。インターン研修期間が終了
した後、離れても備前のプロジェクトを見守っていきたいと思いますし、でき
るかぎりお手伝いもしたいと考えています。本当に感謝しています。

           岡山咲子(備前みどりのまほろば協議会インターン)


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