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1. 風発 「社会知を紡ぐということ」
                       飯田哲也(ISEP所長)

本号で特集しているとおり、モントリオールで開催されているCOP11/M
OP1(気候変動枠組条約第11回締約国会議/京都議定書第1回締約国会議)
では、いよいよ次期削減目標がアジェンダに乗ることになる。ただし現時点で
は、目標以前に、基本的な枠組みやプロセスに関してもさまざまな提案が提示
され「百家争鳴状態」にあるが、その事実自体が、すでに実質的に国際政治的
のアジェンダに乗っている証左である。そして、最終的な決着は、国際政治的
にさまざまに展開されていく、新しい「国際的な意思決定プロセス」によって
定まることは言うまでもない。

この「国際的な意思決定プロセス」に関して、欧州連合(EU)には、酸性雨
を契機とした「長距離越境大気汚染条約」(LRTAP、1979年)の締結以来、「一日
の長」がある。しかも、立憲原理に補完性原理や汚染者負担原則を明示的に取
り入れ、近年では「オーフス条約」(1999年)などを通して、環境政策へのいっ
そうの市民参加と意思決定のプロセスの透明化、分権化を図っている。やはり、
どうみても環境政策に関する「社会知」を積み重ねてきたのは、欧州社会とい
わざるを得ない。

振り返って、日本はどうか。たとえば、昨今、メディアを賑わせているのは、
アスベスト問題とマンションにおける耐震強度の偽造問題である。ここでは、
一つ一つの問題の詳細には立ち入らないが、いずれも共通している要素がある。
何かをきっかけに「社会的な問題」が浮上すると、一時期はメディアもそのニ
ュース一色となるのだが、政府は社会的な不満を「鎮火」するために、表面上
の「お詫び」や「補償」を優先し、必ずしも本質的な問題を洗い出すことはな
い。むしろ、本質的な問題を覆い隠すために、意図的にずれた「犯人」が生け
贄に提示され、メディアもまんまとその方向に誘導される。

アスベスト問題の本質は、「通産省」のDNAとも言える産業擁護のための政策や
事実の歪曲であり、これは水俣病以来ずっと変わらない。耐震強度の偽造問題
は、そもそも耐震性以前のお粗末な「文化住宅」がはびこっているこの国の住
宅政策そのものだろう。JCOだけに責任を押しつけた東海村臨界事故、カイワ
レを犯人に仕立てたO157問題、実用化の見通しのない高速原型炉もんじゅの実
験再開や核燃料サイクル政策などなど、枚挙に暇がない。この国の政策は、平
川秀幸氏(京都女子大学)が指摘するとおり、「証拠に基づく政策(Evidence-
Based Policy)」ではなく、「妄想(delusion, obsession)」に基づく政策、
"Delusion-Based Policy (DBP)"なのである。原因が何も改善されないから、問
題は繰り返され、いたずらに時間とお金と環境が費やされ、そして時には人命
が犠牲となる。古くは旧日本軍が同じ構図を持っていたことは、歴史的に検証
されている。

この構図を抱えた日本政府が、気候変動の新しい「国際的な意思決定プロセス」
に参画するのである。明日香報告にあるとおり、京都議定書に対してすら、デ
マゴギーのような言説が産業界や経産省サイドからは聞こえてくるのである。
この「妄想ベース」の姿勢は、国際的には、良くても「ノイズ」、悪くすれば大
きな障害になりかねない。国内の気候変動政策やエネルギー政策を、妄想ベー
スから社会知を紡ぎ上げる構造に転換していくこと。それは、国際社会に対し
ても、そして将来世代に対しても、日本社会を構成するわれわれ自身の責任な
のである。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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2.特集「COP11/MOP1の注目課題」

 今週11月28日から2週間、カナダのモントリオールにて、COP11/M
OP1(気候変動枠組条約第11回締約国会議/京都議定書第1回締約国会議)
が開催されている。
 今回の会議は、京都議定書発効後の最初の会議であり、また2013年以降の二
酸化炭素などの温室効果ガス削減目標の枠組が正式に話し合われるとなる最初
の会議でもある。加えて、COPは二酸化炭素排出削減、すなわちエネルギー
消費と経済活動をめぐる南北対立の舞台の一つでもあった。COP3京都会議
以降、資金・技術移転などの途上国問題は進展しているとは言い難い。
 今回は、次期削減目標および日本政府の対応について、WWFジャパンの山
岸氏に、途上国問題について、東北大学の明日香氏にご寄稿いただいた。


1)「京都議定書を基礎とした2013年以降の制度構築へ向けて」
                      山岸尚之(WWFジャパン)

(1) 京都議定書の発効とCOP/MOP1の開催

 本年2月に京都議定書が発効し、各国の温室効果ガス削減目標値は国際的な
約束となった。しかし、よく知られているように、この約束は、2008〜2012年
の「第1約束期間」とよばれる期間のみに関する目標であり、その後について
はまだ規定はない。
今月28日から、カナダのモントリオールでは、COP11およびCOP/MOP
1が開催されているが、そこでの1つの大きな争点は、その「2013年以降」に
ついての交渉プロセスを開始することができるかどうかにある。ただし、具体
的な制度のありようについての議論にまでは到底行かない。あくまで、プロセ
スをどのようにはじめるのか、という点に限られるであろう。

(2) どのように交渉プロセスをはじめるのか

 今回の会議で、2013年以降についての話し合いが議題になるのには2つの背
景がある。第1は、発効した議定書自体による規定である。京都議定書は、第
3条9項において、先進国の次期約束についての検討を今回のCOP/MOP
から開始しなければならないと規定している。
 第2は、第1約束期間の開始(2008年)が迫ってきており、あまり時間がな
いことである。これまで、気候変動枠組条約から京都議定書まで約5年、そし
て、その議定書が発効するまでに約7年かかっていることを考えると、次にい
かなる制度を構築するのであれ、時間的猶予はそれほどない。次の約束期間の
中身が全く無い状態では、第1約束期間への各国の取り組みにも影響がでる恐
れがある。

 しかし、一口に「交渉プロセスをはじめる」といっても、様々な問題がある。
1つは、いつまでに交渉を終わらせるのかという締め切りをもうけることであ
る。京都議定書が採択された時も、1995年のベルリン・マンデートで期限を設
定していたという背景があった。今回の場合でも、期限を設けて交渉を開始す
べきではあるが、その時期をいつにするのかは難しい。理想的には、第1約束
期間が始まる前(2007年)が良いが、現実的には不可能であろう。2007年には
IPCC第4次評価報告書が出るので、その知見をふまえ、2008年頃までには
終わらせるべきである。米大統領選挙が2008年にあるが、その結果と新政権の
方針を確認するまで待っている余裕はない。
 2つ目は、交渉の場をどこに設定するのかということである。COPは、枠
組条約に関する会議なので、議定書を批准していないアメリカやオーストラリ
アも締約国として参加できる。COP/MOPは、京都議定書の会議なので、
アメリカやオーストラリアはオブザーバーとしてしか参加できない。
 両方で進めるという方向も当然ありえる。実際、WWFもそうした立場を支持
しているが、では具体的にどちらの場でどの争点を議論するのかという問題は
残る。
 これらの問題点にすべて言及した形で今回の会議の結果がまとまるのかどう
かが今回の会議を見る上で鍵となる。
日本政府は、「すべての国々が参加することのできる実効性のある枠組み」を目
指すとしている。ここには、2つの要素があることに注意されたい。1つは、「す
べての国々が参加することのできる」であり、今ひとつは「実効性のある」で
ある。前者は、言外に意味されているところを端的にいえば、アメリカが参加
し、中国やインドといった排出量の大きい途上国も参加したものという意味で
ある。後者は、アメリカが入っても、ルールを緩めることなく、きちんとした
削減につながるもの、との意図が込められていると解釈できる。しかし、現実
には、「いかなる形であれ、まずはアメリカの参加が必要」であり、そのために
は、交渉が遅れるのは仕方ないというのが立場のようである。

 無論、世界最大の排出国アメリカが参加することは重要であるが、現政権が
「実効性のある」枠組みに参加してくる可能性は、ほぼゼロに近い。したがっ
て、アメリカが参加してくるまで交渉は待っても良いというのは、事実上、交
渉は進まなくても仕方がないと言っているのと同じになってしまう。

 アメリカが将来的に削減義務に参加することを想定して議論を進めることは
勿論大事だが、かの国の参加を待って、取り組みを待つことができるほど、現
在の温暖化の進行は余裕のある話ではない。今回の会議から、スタートを切る
ことが非常に重要である。

(3) 2013年以降の具体的な制度提案

 最後に、今回のモントリオールでは「交渉」の対象とはならないが、具体的
にはどのような制度を構築していくことが必要なのかについて、NGOの提案
を簡単に紹介しておこう。
 まず、いかなる制度を構築するにせよ、それは温暖化防止という究極的な目
標を達成するものでなければならない。それと同時に、各国の歴史的な責任や
対策をとることのできる能力を考慮に入れた、衡平かつ公平な制度とならなけ
ればならない。
 WWFやISEPもそのメンバーである国際的なNGOのネットワーク、
Climate Action Network(通称CAN)は、スリー・トラック・アプローチと
いう案を提案している。紙幅の都合上、詳しくは説明できないが
(www.climatenetwork.orgを参照)、先進国と一部発展している途上国が絶対
量削減を行う「京都トラック」、多くの途上国が脱炭素化への努力を行う「グリ
ーン化(脱炭素化)トラック」、そして、小島嶼国や後発発展途上国が温暖化影
響への対応策を進める「適応トラック」の3つからなる。詰めていかなければ
ならない内容はまだあるが、2013年以降の制度構築は、大きな枠組みとしては
このような形に基づいてなされるべきであろう。

                      山岸尚之(WWFジャパン)


++++++++++
2)COP11/MOP1での途上国問題の動向
           明日香壽川(東北大学東北アジア研究センター教授)

(1)途上国「参加」問題について
 まず、京都議定書および途上国「参加」問題に関して数点確認しておきたい。
 京都議定書を「米国や途上国が入ってないから欠陥品である」とする批判す
る声がある。しかし、この批判は認識不足によるものであり、論理的とも言い
難い。例えば、米国が離脱したことが理由であれば、米上院議員の3分の2が
賛成しない国際条約は自動的にすべて欠陥品になる。途上国が参加していない
という意味であれば、途上国は議定書に締約国として参加し、中国やインドを
含めた多くの途上国がすでに批准しているので事実に反する。途上国が排出削
減義務を負っていないという意味であれば、それは京都議定書以前のベルリン
での気候変動枠組条約第一回締約国会議(COP1)で形成された国際合意に
基づいたものであり、京都議定書はその合意を確認しただけである。
京都議定書批判は、温暖化対策自体に批判的あるいは消極的な人々が、自ら
の行動を正当化するために欠陥品というレッテルを京都議定書に貼って責任を
押しつけている、あるいは責任逃れをしている部分がある。特に、「現時点で途
上国にも温室効果ガスの排出削減を義務づけるべき」というのは、以下のよう
な3つの理由でアンフェアな要求だと思われる。
第一は、人口の大きさの無視である。たしかに、多くの排出量予測モデル計
算が、途上国(非付属書1国)全体の排出量は2030年~2050年の間には先進
国(付属書1国)全体の排出量を超えるとしている。しかし、これをもって、
特に米国や日本が中国やインドを名指しで批判するのは、仙台人(人口約100
万)が東京人(人口約1000万)に対して、「東京は仙台の10倍もの排出をして
いてけしからん」と言っているのと同じである(3人家族の人が、6人家族の
人に向かって「電気を使いすぎるぞ」と言うのとも同じ)。言うまでもないだろ
うが、人口が10倍あれば、アウトプットが10倍あっても何らおかしくないは
ずである。
第二は、一人あたりの排出量の大きさの無視である。実際には、途上国は人
口が10倍でもアウトプットはもっと小さい。なぜならば、一人あたりでは、先
進国に住む人々は途上国に住む人々の数倍の温室効果ガスを出しているからで
ある。例えば、米国は中国の約6倍、インドの約10倍を排出している。すなわ
ち、加害者責任(汚染者負担)という原則のもとでは、先進国の人々は数倍の
責任を負っている。一方の途上国では、中国だけで数千万人、全体では約16
億人がまだ無電化地域に住んでいるとされる。すなわち、人口増加中の途上国
の人々に対して現時点で削減義務を課するのは、「電気を使ってない人間は永
遠に電気を使うな」と命令することに等しいのである。
第三は、加害と被害の関係の無視である。IPCC(気候変動における政府
間パネル)などの科学的知見によると、洪水や干ばつなど、温暖化によってよ
り大きな被害を直接的に受けるのは、南に位置し、頑強なインフラ、災害保険、
他の地域へ逃げる術、そして食料価格上昇に対応できる経済的余裕のすべてを
持たない途上国に住む人々である。すなわち、途上国の人々は先進国の人々が
豊かな生活を続けることのとばっちりを受けている、あるいは尻ぬぐいを行っ
ている。より直截に言えば、私のところの留学生の何気ない言葉を借りると、
先進国の人々は間接的に途上国の人々に対して「システマティックな殺人」を
行っていることになる。
温暖化対策に伴う負担の分配を巡る状況は、芥川竜之介の小説「蜘蛛の糸」
を思い出させる。天国に続く一本の紐に、例えば7人の人間がつかまっている。
一番上にいて飽食で体重が200キロを超えている人が、下から上がってくる体
重40キロの栄養失調でガリガリに痩せて息も絶え絶えの人に向かって、「おま
えら6人を足した重さは俺よりも重い。だから、おまえら体重を減らせ。そう
しないとこの紐が切れてしまうぞ」というロジックで脅している。そして、一
番上の人間は、実は飽食をやめようとはせず、たとえ糸が切れても背中に宇宙
飛行士が持つような浮上装置を持っているので、下に落ちなくてすむようにな
っている。

(2)COP11/MOP1での動き
率直に言って、モントリオールでのCOP11/MOP1では、途上国「参加」
問題に関しては何も決まらないだろう。途上国、先進国に限らず、ほとんどの
国の国内において合意形成がなされていない状況で、国際合意を期待するのが
そもそも難しい。ただし、サイドイベントなどでは、2013年以降の枠組みであ
る「マルチステージアプローチ」や「削減と収束アプローチ」などの一人あた
りの排出量を指標としたアプローチの是非が議論されるであろうし、部門別目
標、部門別CDM、GDPあたりのエネルギーあるいは二酸化炭素排出量目標
などの、途上国に関係あるトピックに触れる議論や発言も少なくないだろう。
また、韓国やメキシコなどの、実質的な中進国あるいは先進国に属する国々の
関係者の発言も注目される。
 前述のように中国やインドがすぐに削減目標を持つことはありえないものの、
両国に対する強いプレッシャーがあるのは事実であり、それを両国とも感じて
いるのも確かである。しかし、中国とインドでは、1)一人あたり排出量の違い
(中国の一人あたり排出量は世界平均に近づきつつある)、2)現政権と現米国
政権との友好関係の深さの違い、などの理由で、そのようなプレッシャーに対
する反発の仕方も異なっているように思われる。私見だが、中国の場合、多く
の政府関係者や研究者が、内心では、GDPあたりのエネルギー消費量や排出
量に関する目標であれば、近いうちに何らかの形で受け入れざるを得ないかも
しれないとかなり真剣に考えているように思われる。
 実際に、中国の場合、また、2004年11月に発表された中国国家発展改革委
員会による中長期省エネルギー計画などによると、1)GDPあたりのエネルギ
ー消費量(2002年時点で2.68 tce/10000元)を、2010年には2.25 tce/10000
元(16%削減)、2020年には、1.54 tce/10000元(43%削減)、2)2000年の再
生可能エネルギー1%を2020年には10%に引き上げる、という大胆な国家目標
が作られている。したがって、これらの国内目標と、温室効果ガスの削減との
関連を、どのよう国内および国外にうまくアピールするかが課題となっている。
 また、(恐らく尽きることのない)技術移転や資金移転の議論や適応の議論、
そして先進国における温暖化対策の(不十分)な進展についても(先進国の弱
みを突くために)大きく取り上げられるだろう。
 いずれにしても、途上国に限らず、多くの国が様子見状態であり、議論の早
急な進展を期待することはできない。しかし、2013年以降の枠組みに関してモ
ントリオールで公式に議論が始まることは確かであり、京都議定書と同じよう
に、温暖化という巨大なリスクに対するささやかな一歩であるものの、前向き
に踏み出した重要な一歩だと考えたい。

           明日香壽川(東北大学東北アジア研究センター助教授)


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3.連載「光と風と樹々と」(3)
 市民風車のビジネス・モデルをつくった「はまかぜちゃん」
                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

●新たに5基―累計19億3000万円を集める市民風車事業
 2001年9月の「はまかぜちゃん」の運転開始からスタートした日本の市民風
車事業はすでに5基を数えるが、来年2月から9月にかけて、青森県大間町、
秋田市(2基)、茨城県神栖市、千葉県旭市で計5基が運転開始する予定である。
株式会社自然エネルギー市民ファンドをつうじて、1口50万円、計10億円の
市民出資の募集が11月から始まった。
 北海道グリーンファンドの関係者から、はまかぜちゃんの出資募集をいよい
よ始めるという話をはじめて耳にしたのは、奇しくも5年前の2000年12月8
日、日比谷公会堂で開かれた、10月に亡くなられた高木仁三郎さんを偲ぶ会の
折だった。6000万円が目標と聞いて、不景気に苦しむ北海道で、1口50万円
ではたしてどれだけ集まるだろう、と心配したが、私の予想をはるかに超えて、
2ヶ月あまりで、1億2000万円以上の出資があった。
 これを皮切りに、既設の市民風車事業は、合計約9億3000万円も集めている。
とくに本年2月に運転を開始した石狩市民風車2基の募集枠4億7000万円は、
またたく間に一杯になったという。市民風車への期待が、全国的にも、いかに
大きいかを物語っている(朝日新聞2005年2月2日付「風力発電 6%削減京
都議定書発効へ」第5回記事参照)。
 今回の新規募集と運転開始が順調にいけば、合計10基、総出力13,300kW、
総出資額約19億3000万円の市民風車事業ということになる。
 
●新エネルギー特別措置法下、生き延びた市民風車
 天下の悪法といえる「新エネルギー特別措置法」が2003年4月に施行されて
以降、市民風車がはたして生き延びることができるのか。これが大きな課題だ
った。同法施行後、計7基の運転開始は、市民風車が同法下でも生き延びるこ
とができることを示すことになる。
 東北電力の場合には、市民風車に対応する2000kW以下のプロジェクトの場合
は、電気分を3円でしか買わないことになった。11.5円がある日突然3分の1
近い3円の値段になるという「暴挙」が、現代において、しかも自然エネルギ
ーの促進を名目にまかりとおっている。
 大間や秋田の市民風車は、幸い他の電力会社が、クレジット分を6円程度で
買ってくれることになったようだが、電気が3円で、クレジット分が6円程度
というのは、得心がいかない。電気としての価値が、クレジットの半分以下し
かないというような専横的な取引きが許されてよいのだろうか。
 そもそも、ビジネスとしての風車事業は、電気などの販売契約さえ結べれば、
故障も少ないし、景気に左右されるわけでもないし、風は数年というような長
期的なスパンで見るとかなり安定して吹くから、事業リスクの少ない手堅いビ
ジネスである。デンマークを皮切りに、ドイツやスペインなどで、個人やグル
ープ、組合などによる市民風車が急増したのは、飯田哲也氏らが強調してきた
ように、固定価格での購入を電力会社に義務づける制度であるために発電事業
者にとって大きなメリットがあるからだが、風さえあれば、そもそもの事業リ
スクが少ないからでもある。
 デンマークのユットランド半島や北ドイツでは、日本やオランダ、アメリカ
で見かけるような大型のウィンド・ファームが多いわけではない。個人やグル
ープ所有の1基からせいぜい数基程度の発電用風車が、市民風車にふさわしく、
のどかに、そこかしこに点在している。

 野口悠紀雄の新著『ゴールドラッシュの『超』ビジネスモデル』を最近おも
しろく読んだ。拙著の『脱原子力社会の選択』(新曜社、1996年、pp25-31)で
も論じたが、ゴールドラッシュは、今もなお、既成の価値や枠組みにしばられ
ないカリフォルニアのパイオニア精神として息づいている。「カリフォルニ
ア・エナジー・ゴールドラッシュ」と呼ばれるような1980年代のカリフォルニ
アにおける風力発電ビジネスの勃興も、1993年のサクラメント電力公社による
世界初のグリーン電力制度のスタートも、このような精神のあらわれである。
 この本を読みながらあらためて思ったのは、北海道グリーンファンドや自然
エネルギー市民ファンドも、小口市民出資という、まったく新しい「市民風車
の日本版ビジネスモデル」をつくったのだということである。ビジネスモデル
ができたからこそ単発の1基に終わらずに、青森の「わんず」と秋田の「天風
丸」に拡大し、新エネルギー特別措置法下も生き延びることができたのである
(鈴木亨「市民風車の普及とひろがり」飯田哲也編『自然エネルギー市場』2005
年、築地書館)。石狩市民風車を経て、地元のNPOなどを母体とする事業主体
としての有限中間責任法人の設立、自然エネルギー市民ファンドによる出資の
募集と事業主体へ融資という「新エネルギー特別措置法」下でのビジネスモデ
ルが確立したといってよい。
 本年9月末現在認証件数2万3000件を超えるNPOの世界も、(委託事業の
受け皿となるような)事業系のNPOと(おもに会員収入に依拠する)運動系
のNPOに大別できる。おおまかに言えば、環境NPOは運動団体的な性格が
強く、事業展開は容易ではない。市民風車は、環境NPOの世界での、委託事
業ではない、自立した事業展開の代表的な成功例といえるのである。事業性と
運動性との見事な統合をはたしてみせたのではないか。
 市民風車は、アメリカでも、community-based wind power というコンセプト
とともに、現在大きな焦点になっている。次号では、ミネソタ州の農民風車を
紹介したい。

                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

4.連載「お笑い原子力ムラ敦賀」(8)
 日野行介(毎日新聞大阪社会部記者、今年3月まで福井支局敦賀駐在記者)

 今回は敦賀市内の酒場で出会った青年から聞いた話を紹介したい。ちょうど
2年前の冬の夜、当時20代後半だった青年と知り合った。お互い一人で来てい
たこともあり、店のマスターも含めて3人で話が大いに盛り上がった。
 市内の蒲鉾工場に勤めるという彼の出身は、原発計7基がある敦賀半島の東
岸、敦賀湾から見て西側のため通称「西浦」と呼ばれる漁村だった。
 人口わずか700人の西浦はかって敦賀市内まで道路もまともに通っていない
「陸の孤島」だった。市内への交通手段は徒歩か船しかなく、急病人が出ても、
天候次第で助からないケースもあったという。そうした不便な交通状況もあっ
て原発をいち早く受け入れた。
 そして40年ほど前、国内最初の軽水炉、日本原電敦賀原発1号機の建設が始
まると、西浦の風景は一変する。半島北端に近い建設地に資材を運ぶため、縦
断道路が完成し、沿線には作業員を泊める民宿が建ち並んだ。だがこの青年は、
もっとも変化したのは太古の時代から漁業を生業としてきた住民の生活や意識
だったと語る。
 原発の新増設があると、漁業者は事前に予定地近辺の一定海域について漁業
権を放棄し、数十億円に上る巨額の漁業補償金を受け取る。この保証金は地元
の漁協を通じて、予定地からの距離に比例して漁協の組合員に配分され、多い
ところでは一軒当たり数千万円に達することもあるという。敦賀市の西浦地区
にある原発は敦賀1、2号機、日本原子力研究開発機構(旧核燃機構)の高速
増殖炉「もんじゅ」、新型転換炉「ふげん」、それに現在は敦賀原発3、4号機
の建設が進む。こうした原発立地のたびに巨額の補償金が支払われてきたのだ。
 青年によると、巨額の補償金が入るたびに、住宅の増改築や高級車の購入が
繰り返され、中には漁協に加盟したまま市街地に新築の住宅を購入し、漁村を
出る者も現れた。また住民の多くは建設作業員や原発の定検作業員が宿泊する
民宿を開いたり、建設作業員に転職するようになり、多くが漁業から離れてい
ったというのだ。
 「もっと情けないことがあるんですよ」。青年は打ち明ける。補償金が入って
から10年も経つと、貯えを使い切る家も出てくるそうで、そうした場合には地
区の寄り合いが行われる。テーマは「どうやってカネを引き出すか」だった。
そうして編み出された方法は、「波が荒い」、「船を泊める波止場が必要」などと
市や県、電力会社に要求し、漁港や防波堤を建設させることだった。建設費用
の大半は日本原電や核燃機構が「地域振興への寄付」という名目で立て替える
という。そこには地域振興に向けた自主活力など微塵も感じられない。
 青年は「西浦の出身というと、市内の人の視線が厳しいんです。『お前ら何度
も海を売って儲けやがって』とか『働かなくて生活できて良いなあ』と思われ
ている。恥ずかしいからもう戻りたくない」とため息混じりに明かした。
 さて、その西浦地区だが、3、4号機増設で40億円もの補償金が入ったにも
関わらず、新たなプロジェクトがさらに進行中だ。住民たちが数年前から半島
縦断道路のバイパス道路を作るよう秘密裏に市や県、日本原電に要求を続け、
県の同意が近く下りて着工する予定だ。その費用は約50億円、すべて日本原電
の寄付だ。将来的には人口600人の漁村に県道とバイパス道路が完成する。
日本のどこにそんな場所があるだろうか。
 ところで受け取った巨額の補償金を元手に商売を始め、成功を収めたという
話は聞いたことが無い。巨額の補償金は、冬の日本海に舞う波の花のように跡
形も無く散っていくだけなのだろうか。


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5.寄稿「2005北京国際可再生能源大会に参加して
                    ―危うい中国と変わる中国」
                    末吉竹二郎(UNEP FI)

「食料純輸入国へ転落」、「石油輸入国へ転落」、「高度成長のもたらす中国の環
境破壊進む」、「すすむ水不足」、「大河の断流拡大」、「工場周辺の土壌汚染深刻
化」、「日本の酸性雨の原因の半分は中国から」、「猛烈な黄砂、日本へ」、「労働
争議急速に拡大」などなど。
 中国の猛烈な高度成長の影で進む様々な問題を語ることばは枚挙に暇がない
中での北京訪問でしたが、筆者の愁眉を少し開かせてくれたのが北京政府の対
応振りです。「第11次5ヵ年規画」に初めてエネルぎー消費効率の改善がもり
こまれたとの報道などからいよいよ動き出したなとの期待を持って参りました。
昨年6月、ボンで始ったばかりのSEの会議を早速に北京に招いた事、しかも
会議の場にあの人民大会堂を提供した事、冒頭だけとはいえ会議に副首相が出
席した事、さらには胡錦涛主席のメッセージが寄せられた事などから、北京政
府の強い熱意が感じられたのは、大変うれしいことでした。この変化の裏には
深刻化する様々な問題を解決しなければ明日の中国はないとの強い危機感と、
その解決には海外からの支援は欠かせないとの認識があるのは容易に想像でき
ることです。この北京政府の意気込みが成功するかしないかは中国のみならず、
全世界にとって非常に重要です。世界がグローバルな視点から中国に協力する
大事さを改めて感じたところでした。

                    末吉竹二郎(UNEP FI)


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6.プロジェクトフラッシュ

1) おひさまエスコ事業の進行状況
                      竹村英明(ISEP研究員)

飯田市のまほろば事業の現状報告をします。昨年度事業の太陽光発電は、着実
に発電を行っており、この10月までに15万kwhを超える電気を生み出してい
ます。今年度および来年度事業の中小規模エスコ事業は、他に例のない事業で、
診断から提案、そして契約方法まで、全てを新しく作りながら進めるという事
業です。多くの既存エスコは、大規模な投資をして大きな額で費用回収すると
いうものですが、おひさまエスコは小規模な投資を10年かけて少しずつ回収す
るというシステムです。実際に事業に着手してみると、次々に難問、障害がた
ち現れてきました。今回は、そのおひさまエスコの苦難を乗り越える「涙の物
語」をさわり程度ご紹介いたしましょう。

・顧客メリットを出すのは容易でない
おひさまエスコは地球温暖化防止への貢献という壮大な事業目標があります。
お客様には、その事業目標に共感し、一緒に取り組んでいただくというコンセ
プトなのですが、そうは言っても、衰退の一途をたどる「地方商店街」です。
何もメリットなしでは心は動きません。ところが当初の診断見積もりでは、相
当にコスト削減できるのに顧客メリットが一割も出ませんでした。最初は「な
んだこんなもの」とつき返される厳しい現実も。いろいろなやりくりで、個別
ケースの幅は大きいものの、今は改善された顧客メリットとなっています。料
金計算のソフトにも、色々と心がこもってきました。

・初めは仮提案まで3ヶ月も
 エスコの実技はパンフレットやパネルに書くのとは違います。初期診断、仮
提案、本診断、本提案、契約、工事という一連の流れをスムースに流すことは
大変です。上記の顧客メリットもその一つですが、とりかかってみると、診断
し結果を集計し分析するリソースが圧倒的に足りませんでした。集計方法も試
行錯誤の連続で、6月ごろ開始した初期診断の仮提案が秋に・・というなさけ
ないケースも。しかし、だんだんとチームスタッフの規模が広がり、おひさま
に加えノウハウ指導の名古屋のGU社、中野の自然エネルギー.コムのスタッフ
など、総勢10人を超す規模となり、1ヶ月以内というペースになりました。

・まだまだこれから本番
これまでは事実上システム構築のため、走りながら仕組みを考えるという段階
でした。スタッフ内部でも喧々諤々の大議論をやり、やっと形になってきて、
実業モードに入ったという段階と言えます。事業の進捗状況を正直にご報告す
ると、初期診断が30件、本診断数件で、1件目の本提案をしているところです。
何としても一件目の工事を早く行おうと思っています。おいおい事業目標(今
年度7?80件規模)は達成できるのかいという危ぶむ声が聞かれそうですが、上
記に書いてきたような「密度の濃い」助走作業だったわけです。いよいよ飛ぼ
うと思ったら年末年始が目前で、昨年の太陽光発電の追い込みを思い出してい
ます。交付金の関係で3月に終了しなければならない工事は1月後半から3月
に集中するでしょう。太陽光発電以上に過密な日程を今から覚悟しています。

・チャレンジと打ち手の連続
いま最初の提案にさし掛かっていますが、検証と保証という本質的な課題があ
ります。元来コストをかけられない小規模エスコでは大規模エスコのように一
件数十万円の測定通信装置を使うような厳密な検証は行えないという事情があ
ります。他の人間的な工夫で顧客に納得していただこうと工夫をし、チャレン
ジしています。また冒頭に書いた、衰退する商店街の再生という課題もありま
す。もちろんエスコをもってして全国の構造的課題を解決は出来ない・・とい
うのは事実なのですが、勝ち残っていこうと努力するお店は、今回の取組みに
絡めて応援していきます。いま商店街活性化につながる「さんぽちゃん増殖計
画」という新たな企画も準備中です。乞う!ご期待。

                      竹村英明(ISEP研究員)


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2) 環境エネルギーオフィスがオープン
                    井筒耕平(ISEPインターン)

 備前へ常駐スタッフとして派遣され、まもなく2ヶ月が経とうとしています。
ゆっくりと流れる備前の時を感じながら、プロジェクトは急ぎ足で進んでおり
ます。
 そんな中、今回は備前で展開する予定の環境エネルギーオフィスを紹介した
いと思います。
 環境エネルギーオフィスは、最新の省エネ機器や第3世代(高デザイン性・
高効率)の太陽熱温水器や薪ストーブをツールとして、新しいライフスタイル
の提案を行う場としてオープンする予定です。これまでのようなケチで我慢を
強いられるイメージをもたれている省エネのスタイルから脱却し、「おしゃれ
でかっこいいライフスタイル」を実現できるような省エネ、自然エネをとり入
れた暮らしの提案を行います。
 備前には、古くから残る民家が多数点在しており、日本家屋の古き良き部分
を残しつつ、高断熱高気密住宅への省エネ改修を行うことで、さらに質の高い
ライフスタイルを達成することが出来ると思います。また、備前は晴れの日が
多く、今が旬の紅葉鮮やかな森林に囲まれているため、そのような自然資源を
利用した、第3世代の太陽熱温水器や薪ストーブを導入も、一歩先行く備前の
ライフスタイルにふさわしいものでしょう。そんな提案も、環境エネルギーオ
フィスから発信していきます。
 そしていよいよ冬到来です。壁の隙間から風が吹き抜ける備前社宅(古い日
本家屋)にて、灯油ストーブに身を寄せて毎晩過ごしております。少しでも早
く第3世代の薪ストーブを社宅へ導入し、炎の豊かさ、デザイン性の高さを感
じながら、質の高いライフスタイルを実現していきたいと考えています。

                    井筒耕平(ISEPインターン)


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