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1. 風発 「北京の蝶」
                       飯田哲也(ISEP所長)

昨年のドイツ政府からバトンを受けて、中国政府主催の「自然エネルギー2005
国際会議」(http://www.birec2005.cn/)が11月7,8日の2日間にわたって北
京の人民大会堂で開催された。冒頭、曾培炎(Zeng Peiyan)副総理が、2020年
までに中国の自然エネルギーを15%(一次エネルギー比)に拡大すると宣言し、
中国政府の強い決意を示した。日程すら今年の春まで決まらず、後ろで支える
ドイツが予想もしていなかった解散総選挙となるなど、一時はどうなることや
らと心配していたが、78カ国の政府代表団と昨年の半分の規模ではあるものの、
ほぼ期待通りの成功裏に終わったのではないだろうか。

この会議の主要な成果は、「北京宣言」に集約されているが、昨年のボン会議で
すでに国連持続可能な開発委員会(CSD)に向けた基本的な枠組みが定まっ
ているため、今後の国際行動プログラムのレビュープロセスを軸とする同宣言
も大きな混乱もなく採択された。また、昨年のボン会議以降、自然エネルギー
拡大の国際政治的なモーメンタムを維持・強化することを目的に、マルチステ
ークホルダーによるパートナーシップ組織である「REN21」
(http://www.ren21.net/)も、今年6月にコペンハーゲンで正式に発足し、事務
局をUNEPパリ事務所に置いて、今後、レビュープロセスの中心を担ってい
くことになった。

今回の会議が中国政府の主催ということで、もっとも懸念された市民やNGO
の参加については、中国の環境NGOの連合体であるCANGO主催(ドイツ
HBF財団支援)で、ISEPが実質的に企画・運営した直前ワークショップ
が盛況であったことに加えて、そこで取りまとめたNGOや市民社会からの提
言を本会議で配布できたほか、本会議の最終セッション(マルチステークホル
ダー)で中国の環境NGO代表も発言を求められるなど、予想外に開かれてい
た印象を持った。

日本の政府代表団は、高原新エネ部長を筆頭とする経済産業省スタッフと梶原
地球温暖化対策課長を筆頭とする環境省スタッフ、それに外務省で構成されて
いたが、残念ながら、11月2日組閣があった関係で今回も政治任免者は参加し
ていなかった。国会議員からは、前回に続いて小杉隆衆議院議員(自然エネル
ギー促進議員連盟会長、自民党再生可能エネルギー小委員会委員長)が参加さ
れたほか、加藤修一参議院議員(同議連事務局長)、そして木村仁参議院議員(同
議連幹事)の3名が、直前ワークショップから熱心に参加されていた。ボン会
議の時と違って、北京会議に限っては主要な対立点はなく、また日本も何か貢
献しなければならないという感覚がようやく共有された感じもある。

さて、10名という最大級の「代表団」を送り込んだISEPは、6日の事前ワ
ークショップの企画運営からNGO提言のとりまとめまで、もっとも中心的な
役割を果たしたことから、大きな存在感を示せたのではないかと自己評価した
い。長良川で開催したアジア太平洋自然エネルギー国会議員会議を支えた最強
チーム(大林さん、石森さん、中野さん)は健在で、これに中国の木村さんや
東大の佐々木さんなど、優秀なインターンシップの支援で、全体にそつなく運
営されていた。あらためてお礼を言いたい。

こうして、北京で「蝶」が羽ばたき、ニューヨーク(CSD)に向けて自然エ
ネルギーの大きな風を巻き起こすことができるか。また、日本の自然エネルギ
ー政策がその旋風に巻き込まれ、むしろ大きな風を起こせるようになるか。わ
れわれ一人ひとりが歴史の当事者として、この先もコミットしていきたいと思
う。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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2. 北京会議の意味とこれから
                      大林ミカ(ISEP副所長)

ボンから一年半たって、自然エネルギー2004のフォローアップ会議BIREC2005
が北京で開催された。ボンでは、一年かけて世界各地で地域会合が開催され、
各国の会議へのモチベーションを高める作業が行われたが、今回は、会議の正
式な開催告知もようやく4ヶ月前に出された状況で、高い参加費で直前までも
めた経緯もあり、各国の参加状況や参加モチベーションが昨年ほど高かったと
は言い難い。しかし、それでも、約80ヶ国1200人あまりが「自主的に」北京
に集い、自然エネルギーの促進を約束したことの意味は大きい。

会議では、会議の成果として、「北京宣言」が採択された。2001年に開催され
たCSD9(国連持続可能な開発委員会の第9回セッション。エネルギーが主
要議題)でのエネルギーの議論や定義は、2002年のヨハネスブルグサミットへ
引き継がれ、その直後にインドで行われたCOP8で採択されたデリー宣言に
反映された。世界はよりクリーンな化石燃料やその他のクリーンなエネルギー
技術(原子力を指す)を開発していく、としたこの文言に、NGOは強く反発
してきたが、「自然エネルギー2004」で採択されたボン宣言では、これらの文言
は削除された。今回の宣言では、クリーンな化石燃料は入れられたが、もとも
と公開されていたドラフトよりは格段と良いものとなり、NGOの主張も、ほ
ぼ95%は入れられたという評価である。

BIRECでは、義務履行がないために、緊張感のある交渉会議という雰囲気はな
かったし、そもそも、このような「形式」が重んじられる国際交渉会議で会議
毎に採択される宣言文にどれほど有効性があるのか、あまり大きな期待はでき
ない。ただし、少なくとも参加した国々はこれらの宣言文を採択したのであり、
国内での遂行が求められている。

それよりも、EUや中国のより積極的な取り組み表明や、自然エネルギーの促
進を国際的にフォローアップしていくことが確認されたことが、大きな成果だ
ったといえる。今回の国際会議の共催者でもあったEUは、2010年の目標値一
次エネルギーで12%の導入に加え、2020年の目標値を20%か25%にするか否
かで議論を重ねてきたが、スピーチで、スタブロス・ディマEU環境大臣は、
EUにおける2020年の25%目標への支持を表明した。また、中国は、2020年
に電力の15%を自然エネルギーにするといった目標を掲げ、2020年までに1800
億ドル(約20兆円)を自然エネルギー開発へと投資すると宣言した。

また、これらの発言や取り組みについて、拘束力を持ったものではないが、定
期的なモニタリングが必要であること、任意だが定期的な報告が行われること
などが、各国の間で合意された。確かに、京都議定書のような法的拘束力は持
たないが、ヨハネスブルグから3年が経って、EUが提唱してきた、世界で共
有する自然エネルギー促進の取り組みが、緩やかに合意されたとみて良いだろ
う。

REN21が、の各国の自然エネルギー促進の進捗を調べた「グローバル・ス
テータス・レポート」を発表したことや、この報告書が高く評価され、年ごと
の改訂が行われることになったことも、大きな成果だろう。REN21は、ボ
ン会議以降に組織されたボン会議のフォローアップを行うさまざまなステーク
ホルダーからなる組織であり、北京会議と同時開催された理事会において、事
務局機能を持つ組織としての発足が確認されている。

会議そのものの運営は、中国での開催ということもあって、NGOのアクセス
が厳しく制限されているのではないかという懸念もあったが、決して手前味噌
でなく、ISEPの働きかけによるBIREC開催前日のNGOフォーラムの開催
の成果もあり、中国を含めた各国のNGOたちが一体となって会議に臨むこと
が出来、会場でもNGOフォーラムの宣言の配布が許可され、各国政府にロビ
ーを行うなど、開かれた参加が可能となった。そもそも無理だといわれていた
NGOの発言も、キーノートプレゼンが二回、フロアからの発言は無制限と、
かえって自由な運営がなされていた。また、会場の人民大会堂の警備が非常に
厳しく、一度入館したら外に出られない、開演の1時間半前にバスで一斉に入
場しなくてはならない、手荷物も厳しく制限されているので紙袋のみで入場、
などなど、レジストレーションの際に沢山の注意を受けたのだが、蓋を開けて
みれば、他の国際会議と同じ常識的な警備体制で出入りも可能で荷物も普通、
「表面は厳格だが運営はフレキシブルかつプラグマチック」という、中国らし
さを感じたのである。普通の国際交渉会議とはまったく違った豪華な夕食会の
開催も、これも中国らしいといえるだろうか。

NGOフォーラムについては、ISEPのHPにプロ
グラムや宣言文、各スピーカーのプレゼン資料が掲載されているので、参照さ
れたい。世界15ヶ国、87名のNGOたちが集って開催されたこの会議は、本
会議と同じく、大変短い準備期間の中で国を超えたやりとりをしながらなんと
か実現したものである。まだ温暖化やエネルギーに関心のない中国のNGOた
ちの関心を喚起することをテーマに置いていたが、実は、各国からNGOが集
まって会議を開催することそのものが、主要な目的の一つだった。結果は、前
述のように、BIREC本体へのNGOロビーを組織することが出来、中国のNG
Oたちも発言機会や参加機会を得た。その他、NGOは、トリティン・ドイツ
環境大臣との懇談、日本政府代表団(省エネ新エネ部高原部長がヘッド)との
懇談などを行った。

BIREC2005を経て、次は数週間後にモントリオールで始まるCOP/MOP1がエネル
ギー関連のNGOたちのターゲットとなっている。モントリオールでは、12月
1〜2日に、自然エネルギーをテーマにした大きな会議をカナダ政府の大きな
支援を得て、現地カナダのNGOが開催する。この会議には、ボン会議の流れ
をフォローしているNGOの国際的ネットワークCURESが全面支援し、
BIRECの成果も反映される。さらにその先には、来年から始まるCSD14/15
ラウンドでのエネルギーの議論が待っている。

最後に、日本の国内取り組みを加速させるために参加された国会議員の方々、
昨年よりも格段と開かれた形の情報交換を行ってくれた日本政府各担当者にお
礼を申し上げたい。また、準備段階から大変な活躍を見せてくれたISEPス
タッフの中野さん(カナダ在住)、石森さん、佐々木さん、市嶋さん、心から、
どうもありがとうございました。

                      大林ミカ(ISEP副所長)


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3.「北京会議に参加して」
         蟹江憲史(東京工業大学大学院社会理工学研究科助教授)

ISEPの皆さんに勧められるがまま、北京会議に参加してきた。国際関係論
(あるいはより細かくは地球環境政治という言い方もするが)を専門としてい
る関係上、これまで気候変動枠組条約のCOPやCSD等の環境交渉プロセス
に参加し、調査、発表、情報収集・交換をすることはあった。しかし、今回は
再生可能エネルギーというより限定的な課題を扱う、しかも国連の枠組内では
ない国際会議への参加という、今までにはない新鮮な類の会議だった。当初は
まさに「勧められるがまま」という感じだったが、結果的には非常に有益な経
験が出来、また新たなインスピレーションを得られたと思っている。

上記の性格から、合計3日間の会議への期待は当初大きなものがあった。アジ
ェンダ設定段階の会議ということで、例えば気候変動に関する1980年代後半の
トロント会議やノールトヴェイク会議のように、やや「過激」あるいは「意欲
的」な目標が出たりするエキサイティングな会合になるのではないか、という
期待である。しかも「それが中国で行われればおもしろいぞ!」という期待が
あった。そういう意味では結果は期待はずれの会議だった。全体としておとな
しい印象があり、NGOの宣言文でさえ、期待したほどのものではなかったと
いうのが本音のところである。
直後の感想としては、むしろ情報共有、規範形成の場としての意味があったと
いう気がしている。国際制度(国際レジーム)の機能は、明確な法的拘束力の
ある目標設定やメカニズム構築と同等あるいはそれ以上に、これらにその意義
が求められることがある。その意味では、このような会議を継続して少しずつ
コンセンサスの領域を広げていくことで、包括的なレジームの基礎が与えられ
ることになると思う。

もとより、再生可能エネルギーに関する国際的取り組みは、その上位に気候変
動レジームや持続可能な開発に関するレジームがあると考えられる。その意味
では、レジームのヒエラルキー構造をよく理解したうえで、多様な国際合意が
ぶら下がる構造が出来つつあるのかな、という印象を持った。

2013年以降の気候変動国際枠組議論が11月〜12月にかけてのモントリオール
会議で開始される。2050年までに地球全体として60%もの排出削減、日本に関
しては70〜90%もの排出削減が求められるのであれば、将来の枠組も、京都議
定書を中心としながらも、今回のような合意の緩やかな連携を構築していくこ
とになるのではないか。そんな思いを抱いた今回の会議参加だった。

         蟹江憲史(東京工業大学大学院社会理工学研究科助教授)


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4.再生可能エネルギーとファイナンスに関する一考察
~ Beijing International Renewable Energy Conference 2005にて~
   木村寿香(Imperial Collage, University of London、上海交通大学)

2004年6月にドイツで開催されたInternational Conference for Renewable
Energies(Renewables 2004)を受けて、世界銀行(世銀)は再生可能エネルギー
促進のための融資を年間20%ずつ増加するとし、初年度の実行額は目標を大き
く上回った。特に中国においては、1990年代初頭からの数々の大規模な調査活
動(注1)と助言に加えて、1999年にはRenewable Energy Development Project
(US$100million Loan, US$ 35million GEF Grant)、さらに2005年には
RenewableEnergy Scale-up Program(US$87million Loan, US$ 40.22million
Grant)など有償・無償の資金を提供している。

しかし、世銀に対する評価は依然として厳しい。今回北京で採択されたBeijing
Declaration on Renewable Energy for Sustainable Development では、「世銀
等国際金融機関は再生可能エネルギー技術への投資を大幅に拡大すること」を
要求され、更にNGOをはじめとするCivil Society のDeclarationでは、「世
銀等国際金融機関は再生可能エネルギーを支援する適切な方策をいまだ講じて
いない」と批判されている。

北京会議における世銀のJamal Saghir、Director, Energy & Water Department

プレゼンテーションによれば、Bonn Action Planにおける開発途上国が公約し

「再生可能エネルギーによる発電を2015年までに80GW」を達成するにはU
S$90−120 billion、もしくは年間US$10 billionの資金が必要とされる。
しかし、Bonn Action Planはインドやインドネシアにおける取組みを含んでい
ない。それらを含めば、US$227billion、もしくは年間US$23 billionの
資金が必要であるという調査もある。2004年の米国と欧州の政府による再生可
能エネルギー支援は年間US$10 billion(注2)であったことと比較すれば、
発展途上国が必要とする金額の巨大さが鮮明になる。

しかし、これをファイナンスの問題として考える際に注意するべき点は、投資
と金融の区別である。プロジェクトに必要な投資額は、必要な金融の金額では
ない。まずは再生可能エネルギー技術の開発・生産主体もしくは、発電・発熱
などの事業主体である企業が、投資コストの一部を負担し、残りを金融機関等
から調達することになる。次に、資金調達手段は事業主体により大きな差があ
る。再生可能エネルギー技術(例えば風力発電のタービンなど)の製造業者の
資金調達手段は実は幅広い。中国を例にとれば、研究開発については政府の補
助金、製品商品化以降はプライベートプライベートエクィティ、そして銀行か
らの資金調達が可能である。しかし、発電・発熱事業者の資金調達手段は限ら
れている。まず、事業収益のアップサイドの可能性そしてExitの可能性が限ら
れていることからハイリスク・ハイリターンを目指すプライベートプライベー
トエクィティにはそぐわない。設備購入など初期投資コストは高いにも関わら
ず、政府からの補助は固定価格買取など「事業開始後」のものが多く、したが
って、事業開始時の初期投資は主に事業主の内部資本と銀行借入に頼ることが
多くなる。発電・発熱事業者が既存の大手であれば、コーポレートファイナン
ス、プロジェクトファイナンス等調達手段も調達先も選択肢があるが、新規参
入した規模の小さい事業主の場合、銀行からの融資を受けるのはより難しくな
る。さらに最小規模の発電・発熱の主体、つまり家庭利用のための投資につい
ては、特に貧困家庭においては、銀行からの借入は非常に困難である。

このような現状に対して、Beijing Declarationをはじめいたるところで「開
発すべき」と言われているInnovative financing mechanismとはどうあるべき
なのか?Innovative financing mechanismについては、新しい革新的な金融の
「手法」と解釈されることが多く、Renewables2004以降各地で行われた再生可
能エネルギーとファイナンスに関する国際会議では、特に先進国における新し
い金融商品について取り上げられることが多かった。今回の北京会議のファイ
ナンスフォーラムにおいてInnovative financing mechanismがどうあるべきで
あるかについての踏み込んだ議論には至らなかったが、世銀、アジア開発銀行、
KfW、中国国家開発銀行、商業銀行、そしてAmerican Council on Renewable
Energy等、様々な視点から再生可能エネルギーへのファイナンスの現状と展望
についてのプレゼンテーションがあった。さらに資金の借手側である企業の声
を起業家フォーラムで聞くことができ、今後の課題について考える上でのイン
スピレーションを得ることができた。Innovative financing mechanismは、資
金調達手段が既にある企業へより便利で安価な資金を提供するメカニズムであ
ると同時に、現状資金調達手段が限られている借手へ資金を新たに提供するメ
カニズムであるべきであり、したがって借手ごとのニーズに従ってファイナン
スの手法を提案する必要がある。例えば、発電・発熱事業者には、再生可能エ
ネルギーが地域に根差した分散化したエネルギーであることを勘案すれば、地
元金融機関からの調達が最も相応しい。そのためには世銀等国際金融機関は援
助対象国の地元金融機関をクラウドアウトせず、機関構築やキャパシティビル
ディングをサポートするかたちでの援助が望ましいと思われる。さらに借手を
細かく分類し、彼らの資金ニーズを掘り下げることによって、Innovative
financing mechanismについてより具体的な提案ができると思う。今後は実務
に携わりながら、この課題に取り組んで行きたいと思う。

   木村寿香(Imperial Collage, University of London、上海交通大学)

(注1) 主なレポートには、China: Issues and Options in Greenhouse Gas
Emissions Control (1996), China Renewable Energy for Electric Power(1996),
Financial Incentives for Renewable Energy Development (1997),Assessing
Markets for Renewable Energy in Rural Areas of Northwestern China (2000)
等がある。
(注2) Dr Eric Martinot, Senior Visiting Scholar, Tsinghua University
の北京会議でのプレゼンテーションより。


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5.発展途上国における再生可能エネルギーの促進:南・南協力フォーラム
中野希美(カナダ在住、ISEP研究員)

11月7日に開催された「南々協力フォーラム」は、発展途上国における再生可
能エネルギー促進の機会と課題を提示した。当フォーラムは、中国風力エネル
ギー協会、ドイツ技術開発機構、WWF、ハインリッヒベル財団の主催で開催され
たものである。

発展途上国のエネルギー事情は、各国の経済発展、政治状況によって様々であ
るが、現在、世界には20億人の人々が、電気へアクセスできない深刻な状況に
ある。その一方で、中国やインドを初めとする新興経済国が、世界経済の新し
い機動力として台頭し、その経済成長のために大量のエネルギーを要し、世界
的な化石燃料への依存度は増すばかりである。このような状況において、発展
途上国における再生可能エネルギーの促進は、持続的な経済成長を可能にし、
エネルギーセキュリティを確保するばかりでなく、温室効果ガス排出量を削減
し、危険な気候変動を防止することに寄与する、重要なエネルギー戦略となっ
ている。さらに、再生可能エネルギーは電気へのアクセスを持たない20億人の
人々に電気を提供し、貧困の撲滅を目指すミレニアム開発目標(MDG)の達
成を可能にするであろう。

南々協力の重要性は、途上国がこのような再生可能エネルギーの恩恵を享受で
きるだけではなく、発展途上国、特に新興経済国家が共通して直面する、歴史
的、経済的、及び持続可能性への将来の課題を共有し、学び合うことで、途上
国における再生可能エネルギーの利用促進への相乗効果を生み出すという点に
ある。そして最終的には、このような南々協力の強化は、発展途上国にとって、
Win-Win状況をもたらすことが期待されているのである。

南々協力フォーラムでは、発展途上国における再生可能エネルギー市場の拡大
に関して、次の9点が主要な問題として確認され、各国政府、産業界、ビジネ
スコ
ミュニティー、そしてNGOが具体的な行動を取るよう喚起を促すべきである
という声が集まった。

1)発展途上国における再生可能エネルギー促進のための既存の国際制度及び
ネットワークにおける不均衡の改善。
2)ジェンダー及び社会的衡平性に配慮した、より広い社会参加を実現する再
生可能エネルギー開発のためのメカニズムの構築の必要性。
3)発展途上国政府による再生可能エネルギー開発への支援強化。
4)再生可能エネルギーの衡平な貿易、投資、技術移転の促進に関する発展途
上国間の公式、非公式なネットワークの強化。
5)<Southern Coalition on Renewable Energy(SCRE)>の設立による既存の
パートナーシップ及びネットワークの強化。
6)多国間機関(世銀、地域開発銀行等)による発展途上国における再生可能
エネルギー開発の責任の強化。
7)再生可能エネルギー開発を促進する主要アクター(NGO、地元コミュニ
ティー等)への適切な支援の必要性。
8)ヨハネスブルグとボンで合意したコミットメントの進捗状況を定期的に監
視する適切なメカニズム構築の必要性。
9)北京宣言文中における、再生可能エネルギー開発のための効果的な南々協
力体制の必要性に言及する一文の挿入の要請。

このように、発展途上国における再生可能エネルギーの必要性は急速に高まっ
ており、そのための国際制度の改善、市場の整備が急がれる。さらに、途上国
国内の社会参加の向上や能力構築など残された課題も多い。この南々協力フォ
ーラムは、そのような途上国の抱える課題を特定し、南々協力を強化するため
の“Southern Coalition on Renewable Energy(SCRE)”の設立という具体的な
解決策を提示する、建設的な討議の場となった。そして何より、BIRECで採択
された北京宣言において、南北および南々協力を通じた再生可能エネルギーの
商業化と技術移転の支援強化の必要性について言及されたことは、最大の収穫
と言ってよいだろう。今後の南々協力の動きに引き続き注目したい。

                中野希美(カナダ在住、ISEP研究員)

[参考]
- Establishing a Southern Coalition on Renewable Energy (SCREN),
October 31, 2005, WWF・s Proposal
- Results of the South-South Cooperation Forum, distributed on 8
November 2005 at BIREC.


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6.Renewables2005: Global Status Report
 
                  佐々木育子 (ISEPインターン)

 今月7日から北京で開催された国際再生可能エネルギー会議2005において、
「Renewables2005 Global Status Report」が発表された。 本報告書は2004
年のボン会議における政治宣言によって創設されたネットワーク組織であるR
EN21(Renewable Energy Policy Network for the 21st Century)に対し提
出されたものであり、ボン会議後の2005年度までの世界的な再生可能エネルギ
ーにおける投資、産業、政策、途上国におけるローカルレベルの再生可能エネ
ルギーの現状を網羅的に把握したものとなっている。主筆を務めたのはワール
ドウォッチ研究所のシニアフェローであり、精華大学講師であるエリック・マ
ルティノット氏であり、世界の各地域から延べ100人以上の研究者や情報提供
者が参加した。ISEPも、飯田所長と大林副所長をはじめとするスタッフが
日本国内の現状について担当した。

本報告書は北京会議第1日目の本会議第3セッションにおいて、マルティノッ
ト氏より報告が行われた。マルティノット氏は、技術革新による発電コストの
低下、政府の直接・間接的な補助により投資家の投資リスクが減り、新エネル
ギー投資が「メインストリーム」化していることにより、「再生可能エネルギー
ビジネスは、既に世界的に大規模な市場として成立している」と述べた。特に、
近年ではゼネラル・エレクトリック社、シーメンス、シャープ、およびロイヤ
ル・ダッチ・シェルなどの大手企業が再生可能エネルギー市場に活発に参入し
ていることが強調された。

報告では、再生可能エネルギーへの全世界の投資額は、2004年に300億ドルに
達し、発電容量は160GW(全発電容量のおよそ4%)に上ることが示され、
各国の再生可能エネルギーに対する促進政策の飛躍的な増加が指摘された。例
えば14の発展途上国を含む、少なくとも48の国において、現在何らかの再生
可能エネルギー販売促進政策が行われており、2005年までに32の国と地域に
おいて固定価格制度が導入されている。また、32の地域において、固定枠制度
(RPS) も導入されている。バイオマス促進のための政策についても、少なく
とも20の地域とブラジル、中国、およびインドで制定されていることが指摘さ
れた。この様に、報告は世界において多くの種類の再生可能エネルギーの促進
を支援する政策の増大を示しており、特に再生可能エネルギーの最も活発な市
場がブラジル、中国、デンマーク、ドイツ、インド、日本、スペイン、および
アメリカ合衆国に見られると指摘している。

本報告は、全世界の再生可能エネルギーの現状を精力的に把握した資料として
重要なものである。今後も報告書の定期的なアップデートが望まれており、再
生可能エネルギーに関する活発な情報交換に寄与することが期待されている。

                   佐々木育子(ISEPインターン)

参考資料
Renewables2005 Global Status Report
http://www.ren21.net/globalstatusreport/RE2005_Global_Status_Report.pdf


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7.「一大学院生から見た北京会議」
              進藤千晶(東京工業大学 社会理工学研究科)

私は、自分の研究テーマの最先端の情報を集めるために一大学院生の立場から、
ISEPが主催するNGOのワークショップ、およびBIREC2005に参加した。

再生可能エネルギーという言葉を初めて聞いたのは、中学生のころだ。二酸化
炭素を出さないクリーンなエネルギーということをなにかの本の一部で紹介し
ていたが、当時は、実用的なものというより、「こんなエネルギーが将来使われ
るようになるかもしれないな」という可能性を示唆する程度であった。それが
10年もたたない間にこんなに発達して世界会議が行われるようになるとは思
いもしなかった。

会議を通して一番大きく感じたことは、再生可能エネルギーのもつ意味の大き
さ、多様さである。

再生可能エネルギーは当初のイメージであったクリーンな石油の代替エネルギ
ーである以上にはるかに大きな意味を持っていた。欧米の多くの国では原子力
を減らしていくという目標のために、代替である新エネルギーが必要だという
意識が大きくあった。また、中国ではエネルギーの届かない場所への農村開発
のためという意味合いが強く、その裏に東と西との間で所得格差が広がってい
る現状が垣間見えた。また、エネルギー安全保障の問題としての側面ももちろ
んのこと、アフリカではジェンダー格差の是正のためという意味合いを持って
いた。さらに、先進国では再生可能エネルギーとエネルギー効率生を同じ分野
でとらえているが、いくつかの途上国はエネルギーの安全なアクセスさえもな
い国にとって効率性と再生可能エネルギーは別であると強調していた。とりあ
えずの電力が必要だという状況なのだ。

 また、会議に関わる人々、団体の数にも驚いた。たくさんの国々の政府代表、
GEやシェルといった大企業から小さな企業、または世界を舞台にするNGO
や地元密着のNGO、研究者、まさに会議最後のセッションで使われていたタ
イトル「マルチステークホルダーダイアログ」という言葉そのものであった。
特に私は今回初めて、NGOの活動に関わることができた。今回は、ISEP
を始め、自然エネルギーに関して強い意思を持ったNGOが国を超えて協力し
て、まとめた意見を政府に提言した。直接のインパクトはないとしても、何ら
かの印象を与えたことは確かであるし、それが長い目で見ると世界を変えてい
くものになると信じている。

 今回は、何か具体的な枠組みが決まったというより、最新の研究や各国の情
報を集めて報告会を行うという印象だ。来年その次とさらなる具体的な取り組
みが決められるであろうし、今後再生可能エネルギーがどのような変化をして
いくのか、楽しみである。

              進藤千晶(東京工業大学 社会理工学研究科)


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1. 風発 「福井県から見えてくるもの」
                       飯田哲也(ISEP所長)

高速増殖原型炉もんじゅを擁し、原発が14基もひしめく福井県は、核燃料サ
イクルの重要拠点となっている青森県、そして「国」の原子力政策やエネルギ
ー政策を真正面から問い続けている福島県と並んで、今、原子力政策で、カギ
を握っている3つの県の一つである。

毎日新聞日野記者の「お笑い原子力ムラ敦賀」は、毎号、楽しく、愚かしく、
そして最後にはもの悲しくなる報告であり、原発が地域にもたらす「歪み」は、
余すところなく描かれている。その「歪み」が、今月の日野原稿にあるとおり、
県のレベルでは、国を巻き込み、さらには逆に飲み込むかたちでますます大き
くなっているのである。

構図はこうである。事実上破綻している核燃料サイクル政策転換の政治責任を、
誰も取ろうとしない「国」は、フィクションと分かっていながら、目先の政治
的な痛みを避けるために、現行政策を継続しつづける。そうとは知らず、核燃
料サイクル政策の要を「人質」に取っているつもりの福井県(と青森県)は、
それをダシに、旧来型の公共事業を「国」に要求する。「王様は裸だ」のような
国のウソを取り繕うために、破綻財政から補助金や公共事業費を大盤振る舞い
し、それを得た地域の側も、これまでに失敗している20世紀型のハコモノ開
発を性懲りもなく追求する。この「餓鬼」のような構図は、もともと「国」が
押しつけてきたものだから自業自得だが、その費用も環境汚染も、やがては無
惨に残るであろう原子力施設の残骸も、すべて将来世代を含む国民へのツケと
なる。

県(知事)には、法的に正統な原子力規制権限はないが、安全協定とさまざま
な間接的な規制権限によって、実質的な生殺与奪の権を握っている。その中で
も、電力会社や「国」から見れば、カネや公共事業でカタが付く青森県や福井
県の方が御しやすく、カネではなく正当に政策を問いつづける福島県に対して
は、ひたすら佐藤栄佐久知事の交替を待つという倒錯した状況が続く。佐藤知
事の挑戦は、日本の原子力政策に対して、保守本流の側から正統性を問い直す、
初めてと言っていい歴史的な試みなのだが、電力会社や「エネルギー国策論者」
にとってはこれが面白くなく、「国」の権限をもっと強化すべきだとの意見なの
である。

ことほど左様に、健全な民主主義と政治感覚を失った社会は、歪んでいく。こ
の度し難い社会をどのように再生していくのか。その答えも、福井県の中から
見いだせることを期待したいのである。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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2. 特集「福井県のエネルギー問題の現在」

 福井県は原子力発電が集中する県の一つ。重要な産業という見方もできる。
だが、敦賀原子力、もんじゅ、美浜原子力と事故が相次ぎ、老朽化した原子力
発電所も複数を抱える。原子力政策の矛盾が噴出した状態にあるといえよう。
 こうした地域で、原子力に頼らない市民の動きも登場している。それは、原
子力に頼ってきた日本が、これからどのように方向転換するべきなのか、重要
なヒントを与えてくれる試みでもある。
 今回は、こうした福井県のエネルギー問題について、「風発」に加え、「森と
暮らすどんぐり倶楽部」の創設者で、美浜町議会議員松下照幸氏、および本誌
の連載でおなじみの、今年3月まで福井支局に勤務していた日野行介氏に、ご
寄稿いただいた。


1)福井県における原子力発電の状況と私たちの取り組み
              松下照幸(美浜町・森と暮らすどんぐり倶楽部)

 福井県には、関西電力の原発11基と、日本原電の原発2基、そして今は事故
と不祥事で名前が変わってしまったが、旧動燃が作った「ふげん」、「もんじゅ」
の15基がある。その内訳は、加圧水型、沸騰水型、新型転換炉、高速増殖炉で
あり、原子炉の全てのタイプが存在する。
 なぜ福井県にこれほどの原発が集中して建てられたのか。それは、原子力と
いう特殊性に起因する。大事故発生時の補償問題、過疎地に限定して作られる
ためにインフラ建設費用がかさむこと、また、1基だけでは定期検査を行う作
業員の年間確保が難しいために、最低3基は隣接して作りたい。そういう原子
力サイドの事情が集中を促してきた。
 原発が運転を始めると、美浜1号機、敦賀1号機、等々、深刻な事故・トラ
ブルを起こし始めた。事故の隠蔽、データ改ざん、被曝労働、そしてスリーマ
イルやチェルノブイリ事故の発生が、新規立地を制限した。美浜2号、もんじ
ゅ、敦賀2号、美浜3号と、県内で連続して起きた原発事故は、既設立地の増
設をも止めることとなった。原発の衰退は、原発自体が鳴らしてきた警鐘の結
果であるとも言えるだろう。
 電力自由化がこの事情をさらに決定的なものにした。自由化によって地域独
占が外され、総括原価方式という電力会社の料金設定に非常に有利な制度が崩
された。従って、建設段階に入った日本原電敦賀3・4号機でさえ完成するか
どうか疑わしい。3・4号機の土木工事は認められたが本体着工は2−3年延
期するという事態は、尋常ではない。この報道に接した時、私にはある直感が
働いた。「これは痛み分けだ!」
 土木工事が始まれば立地自治体に交付金が出る。3・4号機の電力を買う関
西、中部、北陸電力は、本体着工を遅らせて、電力自由化の進展状況を盾に「電
気を買う余裕がありません」と言えば世論は納得する。敦賀市から大阪ガスが
撤退したときも、何の波風も立たなかった。だから、敦賀3・4号機の建設も
音便に止められるのである。自治体側に少しは不満が残りそうだが、交付金で
なだめられることになる。これが、日本原電敦賀3・4号機に関する私の予測
である。
 原発に対する風向きは厳しい。原発で働いている作業員、或いは経営者はそ
のように感じているだろう。地域で発信する私の声を最も理解しているのは、
原発関係者ではなかろうかとさえ思っている。定期検査の短縮は経営者にとっ
て特に厳しい。今までは1基に付き年3ヶ月の定期検査があったのに、最近で
は40日強。作業員を常時雇用しておくことができなくなる。作業単価の切り下
げも、かっての4割から5割に及ぶという。会社を止めてアルバイトをしてい
た時、原発下請け会社の社長が私を見つけて訴え始めた。「松下さん、ちょっと
聞いてほしい」、「わしらはまだ仕事があるほうでいいほうなんやが、仕事があ
っても単価が切り下げられて利益がでんのや」と言うのである。美浜3号機事
故が起きる少し前のことであった。これでは作業員の安全教育さえできないで
はないか。職場での改善案さえ受け入れられないとも聞いている。ある原発作
業員が私を訪ねてきた。「家の用事で会社を休みたいが、びっしり詰め込まれた
行程があるために、休むこともできない。定検短縮で夜遅くまで働かされ、体
力的にも持たない。このことをなんとか一般質問で言ってもらえないか」とい
うものであった。2人の訴えは関電の発電所次長に伝え、議会では一般質問も
行った。「こんな状況でどうやって安全の担保ができるのか」というのが私の主
張だった。美浜3号機事故の後、議会において藤関電社長に直接そのことを伝
えた。放射能を大量に扱う設備を運営している会社のトップとして、こんな恥
ずかしいことはないだろう。経営に「安全」が欠落している。
 福井県はまるで原発の見本市のようである。様々なケースの事故・トラブル
が続出する。まるで目が回るような忙しさである。美浜原発は古い。30年を超
えた炉が2基、30年を迎える炉が1基である。3号機事故後、トラブルが相次
いである。損傷箇所をなおしたと思ったらまた次のトラブル発生などというケ
ースが続いている。4年前に美浜町は美浜原発の増設を要望した。昨年、関電
から美浜町に「増設できない」旨を伝えられた。美浜原発1・2号機はもうす
ぐ40年を迎える。自由化の影響を考慮すると、後数年で廃炉に至るのではない
かと私は考えている。
 関電から増設できないことを伝えられた美浜町は、「美浜町に原発がなくな
ることを実感した」に違いない。美浜町は使用済み燃料の中間貯蔵施設誘致に
急遽乗り出した。議会でもその意志が確認された。私は条件付き賛成を主張し
た。いずれは「核のゴミ」になるものを他の地域に押しつけて騒動を起こさせ
たくない。美浜町に原発がなくなることが決まったのだから、ソフトランディ
ングへの方向付けとして、「美浜原発が生み出したものは美浜原発で」という判
断をしたのである。
 もんじゅの改造工事、プルサーマル、老朽化、定期検査の短縮、等々、課題
は山ほどある。いずれも無理難題ばかりである。そこへ自由化という経済的な
制約が入ってくる。原発の衰退はいっそう早まるだろう。電力会社はバックエ
ンドの問題を抱えているために、国や立地自治体へのあからさまな本音を語れ
ないが、撤退を模索し始めたことは間違いないだろう。
 美浜町で「はあとふる体験事業」が動き始めた。ここ2年ほどかけて、「体験
事業」を受け入れるための議論を重ねてきた。中高生の修学旅行を受け入れ、
地域を活性化させようとする試みである。その中心的メンバーとして私たちの
「森と暮らすどんぐり倶楽部」がある。森の恵みを活かして地域を元気にしよ
うという私たちの試みである。もちろん事業として経営的に成り立たせたい。
3年目から収支も良くなってきた。日本経済の不況のどん底期に私たちは事業
をスタートさせた。それも「林業」という分野である。多くのマスコミに注目
され、TV、ラジオ、新聞、雑誌に取り上げられた。どんぐり倶楽部の職員3
名の内2名は原発を厳しく批判している。美浜町の人の多くはそのことを知っ
ている。それでも違和感なく、「はあとふる体験事業」の中心にいることができ
る。
 来年から1,500人近い生徒が修学旅行で美浜町に来てくれることが内定した。
旅行会社に営業に出かけた人から、原発への不安が出されたケースが多かった
と聞かされた。美浜3号機事故の影響だろう。彼はその質問にこう答えたそう
だ。「美浜町には原発を推進している人もいますが、反対している人もいます。
美浜に来て頂いてその人の話を聞くことだってできるんですよ」と。すると、
旅行会社の人たちの表情が変わったそうだ。是非、私たちを訪ねてきて頂きた
いと願っている。
 私はバイオマス発電にも関心を持っている。地域の現状は、お金をかけて良
質の木質廃棄物を大量に処分している。隣接するいくつかの自治体をエリアと
して、静脈産業として成り立たせたいと願っている。隣町の町長は私の意見を
聞いてバイオマスへの取り組みを始めた。しかし、発電への挑戦はまだ迷って
いる。原子力の下請け会社の人は、私が提案するバイオマスについて強い関心
を示した。美浜町の土建会社の方から私の話を聞きたいという要請も入ってい
る。立地町の私の夢をかなえるには相当の力量が必要であると思うが、私には
とてもその力はない。都市部の人たちとの連携を模索したいと願っている。
 以上、福井県の原子力問題に関する状況を羅列しながら、私たちの活動につ
いて紹介させて頂いた。字数の関係から書くことができなかったことも多いが、
私たちを取り巻く福井県内の事情(一部)は理解して頂けたのではないかと思
う。

         松下照幸(美浜町町議会議員・森と暮らすどんぐり倶楽部)


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2)「原子力を通じて見る西川一誠・福井県知事」
 日野行介(毎日新聞大阪社会部記者、今年3月まで福井支局敦賀駐在記者)

 「高木さんに同じことをされるなら納得が行くんですがね。西川さんにはね
え…」。関西電力のある幹部がため息混じりに漏らした。原発の運転再開や設置
などの了解権限を人質に取る、いわゆる「原発カード」を武器に過大な地元振
興策の要求を国や電力会社に続ける西川一誠・福井県知事。その原子力政策の
原点は知事としての成り立ちにある。
 西川知事は自治官僚出身。同じく自治官僚だった栗田幸雄・前知事から招か
れて副知事を務めた後、03年4月の統一地方選に立候補した。県議会の主要会
派がすべて推薦したうえ、対抗馬は議員実績も無い元外交官、高木文堂氏でい
わゆる「無党派候補」。高木氏は高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開や、敦賀原
発3、4号機増設計画の是非を住民投票で問うよう訴えたが、全国有数の保守
県である福井で勝敗の行方は最初から明らかに思えた。
 しかし選挙終盤、県内各マスコミの世論調査で意外な接戦ぶりが明らかにな
った。ついには地元新聞1社が「高木氏リード」と報じ、西川陣営には危機感
が広がった。このピンチを救ったのは原発15基が並ぶ嶺南地域の経済を支配す
る「原子力勢力」。彼らは「ここが貢献どころ」と、原発内で働く下請け、孫請
け、労働者たちに強烈な締め付けを行い、西川氏を救った。結果は西川氏の辛
勝。決め手となったのはやはり嶺南だった。嶺南ではダブルスコアで西川氏が
圧勝。県内の原子力勢力の力を見せつけた。
 栗田前知事の4期16年の在任中、もんじゅのナトリウム漏れ火災事故、関電
高浜原発で使うMOX燃料の検査データねつ造と原子力スキャンダルが相次い
だ。だが栗田前知事は発覚直後はその都度、有権者向けに「怒りのポーズ」を
見せるものの、ほとぼりが冷めると、JR小浜線電化や北陸線・湖西線の直流
化への巨額寄付金などの「地域振興」名目のカネと引き換えに、プルサーマル
やもんじゅ改造工事の安全審査入りなど、原子力勢力が求める案件をすんなり
認めてきた。原子力勢力にとっては「扱いやすい知事」(関電関係者)だった。
 その栗田前知事の後継者として当選した西川知事。それだけに前知事の路線
を踏襲すると原子力勢力は期待した。「我々が勝たせた選挙だ」(敦賀市内の原
子力関連業者)との思いもあった。だが思惑は裏切られた。西川氏は思わぬ苦
戦の教訓から、「マニフェスト」、「情報公開」を政策として打ち出し、県内無党
派層へのアピールを最優先にし始めたのだ。
 一方、原子力について、西川知事のスタンスは一貫している。「原子力から(も
しくは利用して)地域振興策(カネ)を引き出し、県全体(これが重要)の利
益につなげる」というものだ。その徹底ぶりが「原子力勢力」にとっては思い
のほか厳しく、煙たい存在になり始めている。
 そのスタンスがはっきりと表れたのが、昨年末から今年2月まで繰り広げら
れた北陸新幹線の延伸問題ともんじゅの運転再開への地元了解だろう。
 もんじゅの改造工事については、02年12月に国の原子力安全・保安院が許
可し、残るは知事と敦賀市長の了解待ちの状態が続いた。その間、03年1月に
名古屋高裁金沢支部がもんじゅの設置許可無効を命じる判決を出したため、裁
判が最高裁に持ち込まれ、地元了解までの手続きがさらに長期化する結果にな
った。
 しかし経産省と文科省、核燃料サイクル開発機構は最高裁の判断が出される
前に了解するよう求め続け、敦賀市長は03年12月に早々と了解意思を発表。
残るは西川知事の判断に委ねられた。「最高裁の判断が出るまで待つべし」、
「推進なら待つ必要はない。早く了解すべき」と、県民世論も分かれる中、西
川知事はどちらとも姿勢を示さず、時間だけが過ぎていった。
 知事本人が明らかにしないため、その真相は明らかではない。しかしこうし
た時間稼ぎの背景には北陸新幹線の福井駅延伸問題があると言われる。
 国の財政悪化と、「我田引鉄」、「政治新幹線」の言葉が象徴する新幹線延伸へ
の厳しい世論から、04年末の整備新幹線のスキーム見直しには厳しい見方が多
かった。北陸新幹線の場合、金沢駅までの着工は確実視されたが、福井駅まで
の延伸は微妙な情勢だった。
 「新幹線のことになると知事の目の色が変わる」(県幹部)と言われるほど、
新幹線の福井延伸には熱心だった西川知事。03年秋から04年末まで連日、東
京陳情を繰り返し、その県庁挙げての時代遅れな陳情の様子は中央の民放テレ
ビ局に大きく取り上げられたほどだった。この陳情で西川知事が訴えたのが「国
の原子力政策への福井県の貢献」。これは「原発カード」と言うほかない。
 「原発カード」を使った結果だろうか、昨年12月、政府・与党の検討委員会
は金沢駅までの線路延伸に加えて、飛び地になる福井駅の新年度着工を決定し
た。県庁関係者は「将来的な福井延伸の担保」と狂喜したが、東京や大阪では
「20年、30年後に来る新幹線を待つなんて無意味。メンツだけの無駄な公共工
事」と批判を集めたことも付け加えたい。
 では、もんじゅはどうなったか。最高裁の判決を待つことなく、西川知事は
今年2月6日、改造工事の着手を了解した。「慎重な姿勢」を強調し、了解を「待
たせた」2年間は一体何だったのか? 裁判結果を待たずに了解した理由は何
だったのか? やはり新幹線の延伸を引き出す条件に使ったということ以外に
理由は浮かばない。
 04年7月の福井豪雨後の素早い対応、04年8月の美浜原発3号機事故の直後、
渋る関電を説き伏せて11基の原発を順次止めさせ、2次系の点検を行わせるな
ど従来の知事とは違う手法から、県内世論の西川支持率は確実に高まっている。
だが原子力政策について言えば、スタンスはあくまで「徹底した地域振興最優
先」、「原発カードの連発」なのだ。
 さて美浜原発3号機事故によって、巨額の地域振興資金が関電から福井県に
投じられることがウラ約束されたとも言われるが、こうした投資は福井県にと
って従来にない恒久的な地域振興につながるのだろうか。結局は、従来通りハ
コモノ作りにつぎ込まれ土建業を一時的に潤すだけの無駄ガネになるのではな
いかとも危ぐされており、他の先進国に比べて極めて高額な電気料金を支払う
消費者としては複雑な心境になる。国の原子力政策の中身や是非はともかくと
して、プルサーマル計画や中間貯蔵施設の設置、高速増殖炉計画の前進など国
の重要な原子力政策の是非が、こうした立地地域の「地域振興策」に矮小化さ
れ、立地地域の知事が事実上決めてしまっている歪んだ現状が福井県政には凝
縮されている。
 「情報公開」、「マニフェスト」などの用語を連発し、改革派知事の姿勢を前
面に押し出す一方で、「原発カード」については県民に説明せず、一部の側近た
ちだけで政策を決めるとも言われる西川県政。どこか胡散臭さがつきまとう小
泉流改革との類似性も見え隠れする。高木氏に投票した無党派層が西川氏支持
に回りつつあると言われる反面、西川氏当選の決め手となった嶺南地域の原子
力関係者からは「高木氏に次も出て欲しいんだけど…」との皮肉な期待も聞こ
えてくる。
3.BIREC2005:「ペキン自然エネルギー国際会議2005」開催近づく!
                    大林ミカ(ISEP副所長)

いままで何度かお伝えしてきた、11月7〜8日に中国で開催されるペキン自然
エネルギー国際会議2005(BIREC2005: Beijing International Renewable
Energy Conference 2005)の詳細が決まり、世界に向けて二度目の参加呼びか
けが9月末には発信されている。

BIREC2005は、昨年ボンで開催された、世界で初めての自然エネルギーに特化
した国際交渉会議:自然エネルギー2004の流れを継承するもので、エネルギー
がメインテーマとなる来年・再来年の「国連持続可能な開発委員会(CSD)」第
14/15セッションにてボン会議のフォローアップを行うための、事前会議の位
置づけも持つ。

中国政府からの正式なアナウンスメントが遅れたために、開催そのものも不確
かで、また、当初予定されていた「参加費」が、ビジネス・カンファレンス並
みの800〜900米ドルを、政府代表以外のNGOを含めた一般参加者に要求するも
のだったため、特に途上国からの参加が危ぶまれることが、関係者の間で大き
な問題となっていた。これについてはNGOを始め、ドイツ政府もねばり強い交
渉を続け、9月末に発表された第二次呼びかけでは、全ての参加者に対して、
参加費を無料とする旨が発表された。しかし途上国のNGOには旅費や滞在費の
問題が残るため、引き続きNGOの間ではファンドレイジングなどの議論が行わ
れている。

経済成長のただ中にある中国では、エネルギー・環境問題への一般の関心がま
だまだ低く、この分野に関わるNGO活動は、グリーンピースやWWFなどの海外
からやってきた団体がリードしている状況である。そのため、中国現地のNGO
を始めとして今回のBIREC開催を地球温暖化問題や自然エネルギーの促進など
について普及啓発を行う良い機会としたいという想いが強い。当初は、ISEPが
計画してきたNGO単独の関連イベントの開催は計画されていなかったが、ISEP
側からの働きかけもあり、会議開催前日に、中国のNGOのアライアンスである
CANGOが主催するNGO Workshopが開催される運びとなった。ワークショップで
は、キャパシティー・ビルディングと自然エネルギー促進のための政策的フレ
ームワークの二つをテーマに、各国NGO、国会議員、自治体、企業の取り組み
が紹介、議論される。

本体のBEIREC2005では、ボンで採択された「世界行動計画」(SEEN No.15を参
照)や各ステークホルダーたちが集まって議論を行うセッションも設けられる。
また、ボン会議の流れをフォローアップするために設立されたNGO、政府、企
業などが参加する国際的なネットワークREN21は、自然エネルギーの促進状況
についての「グローバル・ステータス・レポート(世界状況報告書)」を発表す
る予定である。最終日に採択される予定のペキン宣言の内容にも、大きな関心
が寄せられている。さらに正式な会期中の催しとして、WWF中国が主宰する
途上国間の取り組みを促進するための「サウス・サウス・フォーラム」や、欧
州の自然エネルギー企業の連合体EURECが主宰する「技術フォーラム」などが
開催される

来年の「自然エネルギー法」の施行に向けて、中国では、自然エネルギーの大
きなブームが到来している。日本からも積極的な参加を行い、アジア地域にお
ける自然エネルギー技術先進国としての自国の役割を見直したいものである。

*NGOワークショップの概要は近々ISEP HPに掲載いたします
BIREC2005: http://www.birec2005.cn/
REN21: http://www.ren21.net/

                      大林ミカ(ISEP副所長)


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4.連載 「上海からの風の便り」(2)
   木村寿香 (Imperial College, University of London・上海交通大学)

今回は、Beijing International Renewable Energy Conference 2005
(www.birec2005.cn)の直前ということもあり、特大号として、中国の政策の
要点を簡潔にご紹介したいと思います。

中国の自然エネルギー政策は、主に三つの層から成り立っています。まず第一
に「農村・辺境地域の電化」として1970年代以来の小型独立型発電システムの
推進を基盤としながら、第二に1990年代後半に始まった「新産業育成」、そし
て第三に「温室効果ガスの削減」に資する石炭・石油代替エネルギーとしての
自然エネルギーの推進です。

重層的な目的の中でも特に重要な「農村・辺境地域の電化」と「温室効果ガス
の削減」に対する従来の政策の成果を簡単に見てみましょう。

* 農村・辺境地域の電化
1970年代からの長年にわたる小型水力発電の推進に加え、1990年代後半の「光
明工程」「西部大開発」といった巨大国家プロジェクトの枠組みの中で小型風
力・太陽光発電が強力に推進された結果、自然エネルギー発電の小型の独立型
発電システムの開発と利用普及が広域に広まっただけでなく、製造技術も成熟
化し、小型発電機・太陽温水器等製造業およびサービス業の育成にも成功しま
した。2003年末時点で、PVは50MW、独立型風力発電18,000基、小型水力発電
は560MW、バイオマス発電は2,000MW、太陽温水器5億平方メーター、そして
150,000戸のソーラーホームシステムの普及を達成しています。

* 温室効果ガスの削減
中国の主な温室効果ガスの排出源は石炭による火力発電です。しかし「石炭を
代替するエネルギー」としての自然エネルギーの普及は滞っています。特に系
統連系型の大型風力発電の開発が遅れています。中国は世界でも指折りの風力
資源国で、ドイツの11.3倍以上と言われる風力資源を持ちながらも、2003年
末の風力発電容量は567MW(全体の0.1%程度)でしかなく、ドイツの容量の4%
にも及びません。グリーン電力の普及による温室効果ガス削減という点では大
いに改善の余地があります。

以上の結果は、従来の政府の規制と補助金を中心とした政策手段では、農村の
電化など一部の政策目標は達成できても、大規模な温室効果ガスの削減などの
目標達成は難しいということを示唆しています。最近の調査によれば、中国の
大型風力案件は補助金に頼っており、民間主導の案件が育たず、発電コストの
削減が遅れ、他国よりも60%高い水準にあるといいます。商業ベースのデベロ
ッパーや金融手法など、大型風力発電普及に必要な裾野産業も成熟しておらず、
その結果、取引費用が高いと指摘されています。

新しい政策フレームワークの背骨である「自然エネルギー法」では、以上の反
省に基づき、政策手段の柱に固定価格買取り制度を採用し、マーケットメカニ
ズムを活用していく方針です。

「自然エネルギー法」は、2005年2月末、第10期全国人民代表大会常務委員
会大14回会議で全会一致で可決され、2006年1月より施行の予定です。自然
エネルギーを積極活用していくことを明確にしたもので、今後の中国の自然エ
ネルギー推進の基本法となります。エネルギー資源の調査、開発計画、技術的
支援、応用、価格管理などを規定しています。(「自然エネルギー法」全文は
www.creia.netよりダウンロードできます)

従来のトップダウンのアプローチと異なり、政府は買取保証と技術基準の設定
と監査に注力し、マーケットメカニズムを整えることで、自然エネルギーを利
用した電力、熱、ガス、液体燃料の生産を促進させるアプローチです。注目す
べき項目について次に具体的に見てみましょう。

* エネルギーシステムへの考慮 
自然エネルギーからの電力のみならず、熱・ガス・バイオ液体燃料に対する政
策を講じ、利用ニーズに応じてエネルギーの買取り義務を課している点は注目
に値します。電力については系統管理事業者が買取り、都市部の住宅用暖房用
の熱については熱パイプライン事業者が買取り、さらに自動車用のエネルギー
のバイオ液体燃料については石油小売業者が買取ることを明確にしました。な
お、この買取り義務に反した各買取業者には罰金が課されます。さらに住宅用
太陽熱温水器などについては、建築基準を策定し、不動産開発業者が設計・建
築の際に必要な協力を提供することを規定しています。エネルギー源をいかに
組み合わせ、いかに上手に変換しながら使いやすい二次エネルギーを得るかと
いうエネルギーシステムの哲学が明確な方針と言えます。

* 固定価格買取り制度の導入
自然エネルギーからの電力の買取価格は、政府が定める一定の価格(feed in
tariff)とします。中国では、1994年以来、風力発電からの電力の買取りが一
部行われていましたが、買取価格については、個別のケースに応じて系統管理
事業者と自然エネルギー発電業者との間の交渉で決定されていたため混乱と紛
争の原因となっていました。今回の買取価格の透明化と対象電源の拡大により、
自然エネルギーの強力な推進策となると期待されています。

* コスト負担の構造の明確化
地域に分散した自然エネルギーによる発電からの買取り義務が規定され、その
費用は系統管理事業者が電気料金に上乗せできる仕組みになりました。その具
体的な方法については、別途政令で規定されます。

* バイオ液体燃料の販路確保
バイオ液体燃料(アルコールガソリン等)は、既に同品質のガソリンと価格差
はなくなったものの、流通システムがなかったことが普及のボトルネックとな
っていました。河南省など一部の省では、地方政府の政策に基づきバイオ液体
燃料をガソリンスタンドで販売を開始していましたが、この法律の施行により
全国的に石油販売業者の流通経路を確保することとなりました。

* 監督主体と実施主体の明確化
従来は、地域開発の分野、産業育成の分野、そしてエネルギーの分野と、自然
エネルギーの旗振り役が省をまたいで複数存在していましたが、今後は自然エ
ネルギーの開発と利用の責任が一元化されます。これにより自然エネルギーの
持つ複数の特性に関係する部署間の調整を、統合的なアプローチで検討し対応
することができます。さらに他のエネルギー源開発利用、電力の自由化政策、
地球温暖化対策など他の政策との調和が期待できます。政策の実施主体として
の地方政府の役割も明確にされました。さらに行政の不作為に対しての罰則を
伴うようになりました。

今後注目する点として次のものが挙げられます。

* 地方政府の取組みとの整合性 
一部の地方政府は実験的な自然エネルギー推進方策を既に採用していますが、
今回の法律で必ずしも全てサポートされていません。例えば、上海市の世界銀
行の支援を得て企画した独自のShanghai Jade Electricityグリーン電力プロ
グラムや、広東省の風力発電買取価格の特別優遇等との整合性はなく、今後の
調整が必要と思われます。

* 発電事業者 
中国の発電業者は、旧国家電力公司が分割して設立された中国国電集団など五
大発電業者が半分のシェアを持ち、その他は地方政府や民営企業が運営する小
規模な発電事業者が数百社乱立しています。五大発電業者も含めて、電力業界
の自由化のもと生存競争が激化しているなかで、初期投資コストが高い自然エ
ネルギー発電に対してはどこも消極的でした。電力セクターの自由化の渦の中、
独立系発電事業者が新しい経済インセンティブにどう反応するのか、今後の注
目に値します。

次回の連載では、独立系発電事業者の対応と「誰のための自然エネルギーか」
を考えたいと思います。

木村 寿香(Imperial Collage, University of London、上海交通大学)


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5.連載「光と風と樹々と」(2)
    「ネイティブ・アメリカン初の風力発電プロジェクト2」
                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

   1本のつぼみから

 前回述べたように、私は昨年12月4日、ミネアポリスから正味8時間、800km
あまり、大草原を疾走して、ローズバッヅ・スー族の風力発電機の現場に到着
した。2003年5月1日に営業運転を開始した、ネイティブ・アメリカン(いわ
ゆるアメリカン・インディアン)初の商業用風力発電プロジェクトである。サ
ウスダコタ州とネブラスカ州の州境である。建設費総額77万ドル(約8500万
円)のうち、50万ドルは、エネルギー省からの助成金。このプロジェクトはそ
もそもはエネルギー省の提案から始まったのだという。現時点では、系統連結
ではなく、発電した電気はすべて隣接するカジノとホテルに売っている。
 北海道グリーンファンドの「はまかぜちゃん」や鰺ヶ沢町の「わんず」、秋田
の「天風丸」のように愛称がある。1999年12月に72歳で亡くなった部族長の
ニックネームにちなんで「Little Soldier(小さな兵士)」と呼ばれている。
 2003年5月1日の運転開始式の模様などは、
http://www.nativeenergy.com/newsletter/NEWSLETTER4.pdf
(英文)で詳報されている。
 最初の1年で、230万kWhの買電量だったという。平均稼働率はちょうど35%
になる。かなり高い。月別でも、32から9%の範囲内という。1年をとおして
風がいい。また彼らはNative Energy 社をつうじて、全米に、グリーン・タグ
(green tag)というアメリカ版のグリーン電力証書を売っている。これまでで
23万ドルの売り上げを得ているという。

   5万kWのウィンド・ファームへ

 今はまだ1基だけだが、第2のプロジェクトとして、1500kWから2000kWの
風力発電機を十数機建設し、3万kWのウィンド・ファームを所有する予定でも
ある。農業省の村落電力基金から総建設費の80%を援助してもらうメドがつい
ているという。あと20%分資金獲得のメドをつけたいということだった。アメ
リカにはいろいろな種類のファンド、日本式にいうと補助金がある。2005年末
か、2006年始めに増設予定。さらには、1万kWのウィンド・ファームを2箇
所につくる予定という。2008年までには合計5万kWのウィンド・ファームに
したいと、意気軒昂である。ローズバッヅの「バラのつぼみ」は、ウィンド・
ファームという大きなバラ園に育つことを夢見ているのである(もっともロー
ズバッヅという英語の地名自体、白人から与えられた呼び名であり、彼らの伝
統的な呼び方は、Sicangu Oyate である)。
 ネイティブ・アメリカンには、連邦政府や州政府の補助金頼りで、勤労意欲
がない、アル中や成人病の罹患率が高いなどの多くのマイナス・イメージがつ
きまとう。ローズバッヅのカジノもそうだが、ミネソタ州など、アメリカの多
くの州では、ネイティブ・アメリカンにのみカジノ経営を許可している。カジ
ノ経営でようやく一息ついている、というのが、ネイティブ・アメリカンのイ
メージである。

   歴史を変える・歴史が変わる

 だからこそ風力発電は、彼らにとっての新たな希望のエネルギーである。白
人たちに追いやられて住み着いたネイティブ・アメリカンの現住地は、ローズ
バッヅのように風の強い周辺的な場所が多い。風力発電は、アメリカでも、長
年悩まされてきた強風をプラスの価値に転換する「一打逆転」の大きな契機で
ある。しかも彼らの伝統的な価値観は、太陽や風と親和的である。「自分たちの
伝統文化、霊的な価値と現代のテクノロジーの結合が風力発電だ」と、1号機
のニックネームのもとになった部族長の「Little Soldier」は、仲間を説得し
たのだという。さらに、ネイティブ・アメリカンの土地に風力発電機を建設す
ることは、他の土地に建設する場合に比べて、税制上の優遇措置が多く得られ
るという実利的なメリットもある。最大の課題は過疎地で送電線の容量が貧弱
すぎることである。
 私たちに長時間、説明してくれたリーダーのトニー・ロジャーも、40歳代後
半だが、インターネットや電力ビジネスに強く、ネイティブ・アメリカンの歴
史にも強い、堅実で現代的なロマンチストだった。ネイティブ・アメリカンの
歴史と生活は、これから十数年の間に、風力発電ビジネスの拡大とともに、全
米で大きく変化していく可能性がある。
 サウスダコタ州には、風力発電機は州全体でもまだ27機しかない。今はただ
ただ退屈な90号線沿いに、やがては、風力発電機が林立する日も遠くないだろ
う。実際、フロリダ・パワー社が定格出力1000メガワット(100万kW)のウィ
ンド・ファームを州内に建設する計画だという。

                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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6.プロジェクトフラッシュ

1)「備前市の市民ふれあい福祉まつり」
               岡山咲子+井筒耕平(ISEPインターン)

備前市は平成17年度に環境省から「環境と経済の好循環のまちモデル事業」
に全国10箇所の環境モデル都市の一つとして選ばれた。この事業を実施する
ためにISEPのリードにより、「備前みどりのまほろば協議会」が市民・事業
者・行政の協業により発足した。協議会の事業は、省エネサービス、太陽熱温
水器、木質バイオマスに関わる設備導入を行うハード事業、市民出資の広報や
普及啓発活動を行ったりするソフト事業に大きくわかれている。
 今回、備前市で開かれた『第5回市民ふれあい福祉まつり』(以下福祉まつり)
では、このソフト事業の一環として当協議会がブースを出展した。協議会の存
在や活動、イメージキャラクターなどは、この日が市民の方に対して最初のお
披露目となった。
 福祉まつりは10月29日土曜日、備前市総合運動公園にて行われた。この日
は朝からあいにくの雨であったが、市町村合併が行われてから初めての福祉ま
つりだったためか、開始前からお客が続々と集まり始めていた。10時になると
体育館で式典が開かれた。市長のあいさつや老人・障害者福祉功労者とともの
金婚式を迎えた方々が表彰されていたのが印象的だった。また、式典の内容を
すべて手話と筆記によって同時通訳されており、その心遣いに感心した。
 私たちは体育館の一角にブースを構えた。イメージキャラクターの大きな看
板が目立ったのか、来場者は「なんだろう?」といった感じでブースに来た。
来場者は、福祉まつりというだけあって、年齢層は高く50歳以上の人がほと
んどであった。ブースの中で注目をあびていたのは、薪とペレットである。や
はり現物を置いているということでビジュアル的なインパクトが強かったのだ
ろう。中には興味深そうにスタッフに質問をする人もいた。新備前物語のパネ
ルに関しては、文字が小さく量が多かったので、じっくり読んで行く人はあま
りいなかったが、スタッフが協議会紹介リーフレットと一緒に新備前物語の冊
子を渡すと、「ありがとう」と言って興味深そうに紙面に目を落としていた。
今回ブースに来た市民の方は70名ほどであったが、協議会および当事業のお
披露目としては、来場された多くの方へ強力なPRができたと感じている。今
後、こういった普及啓発活動を推進させ、市民のみなさんにこの事業が浸透し
ていくようにがんばろうと思う。子どもがイメージキャラクターを指差して、
名前を呼んでくれるぐらいになるのを目指したいと思う。

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2)「おひさま発電所オープニング記念セレモニー」(飯田市)
                    本橋恵一(ISEP 客員研究員)

 10月29日土曜日、飯田市において、おひさま進歩エネルギー有限会社の主
催により、「おひさま発電所オープニングセレモニー」が開催された。
 飯田市はこれまで紹介してきたように、備前市と同様にISEPと共同で「平
成のまほろば事業」を進めている。その中でもエネルギーに関連した市民出資
による事業として、公共施設38ヶ所に太陽光発電を設置した「おひさま発電所」
と、「商店街ESCO」の二つがある。今回はそのうち、「おひさま発電所」の
完成を記念したセレモニーだ。参加者は市民出資をしていただいた方々と地元
の方々など。
 セレモニーは太陽光発電設備を設置した保育園の一つである明星保育園の園
児、および保育士による太鼓演奏によるオープニングからスタートした。
 来賓者挨拶の中で、飯田市長の牧野光朗氏は、おひさま発電所について「全
国で最先端の取り組みであり、飯田市としてもほこりに思う」と述べ、さらに
「(平成のまほろば事業は)市にとってまちづくりの大きなパワー」になるとし
た。なお、飯田市の現在の住宅用太陽光発電設備の普及率は2%。市としては
これを30%に伸ばすという目標を持っている。
 おひさま発電所の事業で重要なポイントは、保育園を取りこんだことにある。
来賓として挨拶した鼎みつば保育園の岡沼照子園長は、「環境教育のお手伝い
をさせていただいている。園児を通して、お家の人たちにも少しずつ、環境の
ことを知ってもらっている」と語った。このように、二酸化炭素排出削減にと
どまらない、二次的な効果が期待できることに、おひさま発電所の一つの大き
な価値がある。実際に、セレモニー終了後の見学会で、保育園の屋根に設置さ
れた太陽光発電設備を目にした出資者の多くは、「単なる地球温暖化防止にと
どまらない事業」に出資したのだということを、強く感じたという。また、制
度的なことを言えば、保育園規模であれば、一般家庭用の電灯料金の契約とな
るため、コストを回収しやすいという点がある。小学校に設置する場合は、こ
の点がネックとなる。
 翌日は南信州観光公社の案内によるツアーを行った。出資者に少しでも飯田
市を知ってもらい、楽しんでもらうということだ。飯田市は全国の中でもエコ
ツーリズムに力を入れている自治体の一つである。これをきっかけに、出資者
が何度も飯田市を訪れ、ゆっくりと楽しんでいくようになれば、この事業はお
金には替えられない価値をさらに生み出していくだろう。


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