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1. 風発 「クールビズ雑考」
                       飯田哲也(ISEP所長)

過日、中央環境審議会に出てみると、前回まではノーネクタイは女性委員を除
いて小生一人だったが、今回は、ほぼ委員全員がクールビズとなっており、あ
る種の壮観だった。少なくとも言葉としては一気にブレークした感がある「ク
ールビズ」について、例によって、「日本ムラ」の視点から雑考してみることと
しよう。

クールビズに関して、目に付いたブログをざっと拾い読みしてみると、「国会議
員やオヤジのクールビズはダサイ」「国からファッションのことを言われるの
もね・・」「省エネルックは失敗したが・・」「本質的な温暖化対策ではない」
などとひとしきりくさした後で、これを機に温暖化防止の気運が高まり、ドブ
ネズミ風のカイシャ文化が変わるのなら、まあ良いんじゃないかという肯定的
な論調が多いようだ。小生も、この次元では、クールビズに「留保付きの肯定」
をしている。

しかし、この問題はもっと根深いように思えてならない。「馬子にも衣装」とい
う言葉がある。これを逆読みすれば、「馬子だから衣装」「馬子ほど衣装」とい
うことだろう。クールビズの名称審査をした一人、ファッションデザイナーの
ドン小西氏は、「スーツとネクタイを脱ぎ捨てることは、それに支えられていた
ビジネスマンを自信のない丸腰のオヤジに変えてしまう危険がある」と指摘す
る(東京新聞6月21日)。これは「本社ビル」にもそのまま当てはまる。トヨ
タや松下電器の本社がそうであるように、一般に、実業の本社は質素であるの
に対し、銀行や保険会社のような「虚業」ほど立派な本社ビルを立てる傾向が
ある。つまり、外面の飾り立ては、空疎な内実=自信のなさの裏返しなのであ
る。

これを念頭に置いて、「クールビズ劇場」を見てみよう。6月8日には、小泉首
相がクールビズに着替えたために、議員バッジを付け忘れて本会議場に入れな
かったという一幕があった。メディアは面白可笑しく伝えていたが、身分証明
書を持っていたにもかかわらず、わざわざ予備の議員バッジを調達しなければ
入場できなかったという「バカバカしいにもほどがある形式主義」の愚を指摘
するメディアは皆無だった。国会や霞ヶ関でのクールビズ化を受け、地方でも
変化が始まっている。行政は概ねクールビズが多いようだが、議会では「品位
を重んじる」という理由から慎重なところが多いようだ。クールビズにするか
どうか、上着は、ネクタイは、バッジは・・と、真面目に議会で議論する幼児
性もさることながら、スーツとネクタイがなければ品位が劣ると考えるオツム
の方が、よほど品位に欠けている。

さて、クールビズは、現代の「チョンマゲ切り」となるか、それとも反動で「形
式主義」を強化することになるだろうか。クールビズで「丸腰となったオヤジ」
が権威主義を捨て去り、実質的な議論が出来るようになることが、望ましいシ
ナリオなのだが、「馬子」はしょせん「馬子」である。丸腰になると自分の空ろ
さがさらけ出される。喩えは大きいが、冷戦終結の流れに乗って、細川・村山
政権でアジアへの反省の気運が生まれた状況に似ているように思える。アジア
に向き合おうとしたことによって、日本が戦後責任を取っていない事実に気づ
かされ、その反動が今日の日本の病的なまでに自閉的なナショナリズムを生ん
でしまったように。その「悪夢」の方が、クールビズよりも、よほど「お寒い」
のである。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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2.特集1「アジア太平洋再生可能エネルギー議員会議」

 6月4日、岐阜で「アジア太平洋再生可能エネルギー議員会議」が開催され
た。これは、昨年ドイツのボンで開催された、国際会議「自然エネルギー2004」
を受けて、日本の国会議員の発案で開催されたもので、今年北京で開催される
「自然エネルギー2005」に向けたメッセージ発信の場でもある。この会議に対
する思いについて、鮫島宗明衆議院議員からご寄稿いただいた。
 また、会議そのものについては、ISEP副所長の大林ミカがレポートする。
 なお、この会議の全面的なコーディネーションはISEPが担当した。

(1)寄稿「省エネ機器先進国から、省エネ先進国へ」
                        鮫島宗明(衆議員議員)

 日本は省エネ先進国だといわれている。事実、単位GDP当りのエネルギー
消費量(エネルギー原単位)の国際比較で、日本は常にトップグループにいる
し、自動車の燃費、家電製品の省エネ性などの個別項目で比較しても、日本の
優越性は明らかだ。 
 このような背景があるために、日本の産業界は、京都議定書達成のための温
暖化ガス削減目標に対して、鼻息荒く削減量の義務化に抵抗している。産業界
からは、既に先行して達成済みだ、もう絞っても一滴も出ない、運輸、民生部
門こそ削減すべきだといった声が、漏れてくる。
 しかし、四月末に公表された「京都議定書目標達成計画」に目を通してみる
と、エネルギー消費サイド、あるいは社会システム全体の効率化については、
全くといってよいほど触れられていない。
 芝浦工業大学の平田賢学長は、ライフワークとして日本社会全体のエネルギ
ー利用効率の変化を長期にわたり追跡している。その総括表によると、197
5年と1998年で比較して、一次エネルギーの供給総量は53%増大してい
るが、有効利用の比率は、1975年の37%から、1998年の34%へと、
逆に低下している。別の見方をすれば、全エネルギーのうち、無駄になってい
る比率が、1975年の63%から、1998年には66%へと増加してしま
っている。
 このことは、日本の産業界が個別分野で血の滲む省エネの努力をしても、社
会全体のエネルギー利用効率は徐々に低下しており、その結果、京都議定書の
目標達成が益々困難になってきていることを示している。つまり、これまでの
ような分野別省エネ目標を掲げてみても、効果は薄く、社会全体のエネルギー
需要構造の再設計抜きには有効性を持ち得ないことを示している。
 再設計に際しては、原子力の利用拡大に縛られて動きのとれないエネルギー
供給の分野で、自然エネルギー、気体エネルギーのシェアを拡大することと、
燃料電池を含む小規模分散型コジェネ(熱電同時供給)装置の普及を図ってい
くことが決め手となろう。わが国が、省エネ機器先進国から、省エネ先進国へ
脱皮する時期が到来している。

                        鮫島宗明(衆議員議員)

(2)レポート「アジア太平洋再生可能エネルギー議員会議を開催」
                      大林ミカ(ISEP副所長)

6月4日、岐阜県の長良川国際会議場で、「アジア太平洋再生可能エネルギー議
員会議(APPCRE)」(主催:APPCRE実行委員会、実行委員長・海部俊樹)が開催
された。ISEPは、国会側事務局の鮫島宗明氏とともに事務局を任された。

準備期間の短さや、途上国の多いアジア太平洋地域から自費で参加を募ったた
めに、当初は、海外からの参加者は10名から20名と見込まれていたが、開催
が近づくにつれ申し込みが増え、アジア太平洋地域各国から日本を含め21ヶ国、
ドイツ、計60名(海外からは約40名)が参加した。また、昨年のボン会議で
自然エネルギー国際議員会議を主宰した、世界的に著名な自然エネルギーの推
進者であるドイツ連邦国会議員のヘルマン・シェア氏も来日、参加した。

まず、同時開催された環境省主催のエコ・アジアのオープニングイベントにて、
APPCRE副実行委員長の清水嘉代子氏が、昨年ドイツ・ボンで開催された自然エ
ネルギー2004国際会議でのウォチョレク・ドイツ連邦経済大臣の言葉を引いて、
「太陽を巡る争いはない」と演説を行った。

引き続いたAPPCREのオープニングでは、副実行委員長の鳩山由紀夫氏が、アジ
ア太平洋地域での自然エネルギーの促進の必要性を、幼少期に蝶を追った経験
と重ね合わせて温暖化の進行と自然保護の観点から述べ、同じく副実行委員長
の加藤修一氏は、自然エネルギー促進議員連盟(APPCRE共催団体でもある)の
事務局長として、また、前環境副大臣として、地球温暖化問題を解決するため
に自然エネルギーの促進を議員主導で行うことの重要性を述べた。

次には基調講演が行われ、ヘルマン・シェア氏とAPPCRE副実行委員長の小杉隆
氏が発表した。続くセッション1、セッション2では、20ヶ国それぞれからの
報告が行われ、特に日本を含めた先進工業国からの自然エネルギーに関わる技
術支援の要望、また、途上国からみた分散型エネルギーとしての自然エネルギ
ーの有効性などが訴えられた。

セッション3はディスカッションが行われ、脱化石燃料・脱原子力としての自
然エネルギーの有効性、また、それぞれの国からの発言者が、セッション4で
行われる宣言文採択についての要望などを述べた。宣言文は、会議途中も意見
を受け付けながら同時並行的に取りまとめられ、宣言文採択にあたっては、各
国から文書でもらった意見などをすべて宣言文に盛り込むことができた。

閉会にあたっては、今回の共催団体の一つとして、一部参加議員の渡航費の援
助をいただいた「人口と開発に関するアジア議員フォーラム(APFFD)」の事務
局長も努める谷津義男氏が、参加してくれたアジア太平洋各国議員への謝辞を
述べた。そして、実行委員会を代表して幹事の竹下亘氏が、昨年のボンからの
系譜に今回の会議があり、また、それが、11月開催の自然エネルギー2005へ引
き継がれることと、現地での皆の再会を願って会議を締めくくった。

以上、簡単に会議の流れを述べた。会議宣言文については、
http://www.isep.or.jp/APPCRE/jp/outcomes.htmlを参照されたい。現在、詳
細な会議報告書はISEPにて取りまとめ中で、7月中にも完成、8月初旬には、
国会にて本会議の報告会を開催することになっている。

昨年のボン会議の流れを継ぐ中国自然エネルギー2005は、11月7, 8日にわた
って開催予定であるという。今回、長良川に集った議員たちは、それぞれの国
で自然エネルギーの促進に取り組むとともに、国際レベルでの温暖化防止に向
けた努力の必要性について訴えていた。再び中国で、彼らが、自然エネルギー
促進のために各国の明らかな進捗を報告しあうことを願いたい。

                      大林ミカ(ISEP副所長)


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3.特集2「電力市場自由化・卸電力取引市場の現在」

 ゆっくりとではあるが、電力市場の自由化は、制度の上では進展している。
実態については、今後、その評価をあおいでいくことになるだろう。
 今年4月より、50kW以上の需要家を対象に、自由化の枠が広げられた。同
時に、卸電力取引市場が創設された。今回は、スタートして3ヵ月が経過した
卸電力取引市場をめぐって、2人の識者に執筆していただいた。

(1)「現実に立脚した良き電力市場への道」
           西村 陽(関西学院大学経済学部講師
               電力改革論・電力経営戦略論・環境経済論)

 今年2005年は日本の電力改革にとって初めての卸電力取引市場がスタート
し、長年日本の電力関係者を悩ませてきた競争の透明性確保への切り札として
中立機関(系統利用協議会)が設立されるという記念すべき年となった。1990年
代に入って始まった世界各国の電力自由化・競争促進の潮流に対してなんとか
追いつき、改革の遅れに対する国際的な圧力をかわそうとしてきた行政当局、
そしてそれに異を唱えながらもつきあってきた電力業界にとっては「やれやれ」
といったところかも知れない。
 しかしながら今、自由化が進んだ世界の電力市場を俯瞰した場合、電力自由
化は価格の低下、安定供給とインフラ健全性確保、そして環境価値の実現のど
れをとってもあまり良い成績を残していない。欧州では競争促進と自由化によ
る効率化や価格の下落が完全に一巡し、産業用・家庭用ともに価格は上昇に転
じているし、米国においてはカリフォルニア危機・エンロン破綻による電力ビ
ジネス全体の不安定化が起こった他、妄信的な電力自由化はこの産業の基幹イ
ンフラである送電ネットワークを弱める方向に働くという認識が(市場主義の
発祥の地であるにもかかわらず)ある程度共有されつつある。
 さらに言えば、自由化による競争が進んで電力価格が低下し続けている局面
では、風力発電をはじめとする再生可能エネルギーも極めて採用されにくく、
電力自由化と環境価値創造が両立できないという傾向も、これまでの世界各国
の経験からほぼ明らかになっている。ドイツをはじめとする欧州のいくつかの
国において、敢えて家庭用顧客に環境価値に対する消費者の負担を求める(すな
わち家庭用電気料金の値上げ)ことでグリーン電力を健全な市場ベースに乗せ
ているのはその良い証左であろう。
 ここまでの観察で言えるのは以下のようなことである。すなわち、電力自由
化と競争導入は既存の電力会社の経営体質強化や投資のダウンサイジングには
大きな効果を持つが、決して長期的な価格の下落や安定供給の確保、そして環
境価値の実現を保障するものではない。市場の力で価格は下がり、市場の仕組
みで送電投資も確保されて、市場を通じてグリーン電力も大いに入ってくると
いうのは、(主として経済学やネットワーク産業組織を浅くしか学んでいない人
の)単に不勉強な楽観主義に過ぎない。
 今なさなければならないことは、日本という市場特性に合わせた現実の上に
しっかりと立ち、顧客の利益、長期的なエネルギー供給基盤、そして環境価値
をどう創り上げていくかを目的オリエンティッドに議論して実践することに他
ならない。そこでは電力自由化も電力取引市場も、RPSも目的ではなく手段
の一つに過ぎないのだ。
 そうした現実主義と目的意識の上に立った時、(これはISEPの飯田哲也さ
ん、大林ミカさんとも時々話をすることだが)電力会社のような既存エネルギー
事業者と環境価値創造をしようとする市民は決して敵同士ではない。もちろん
電力価格が果てしなく下がり続け、電力会社が体力の限界に挑戦している中で
環境価値創造を彼ら電力会社に課するのは余りに酷だし、決してうまくは行か
ないだろう。しかしながら、市民もちゃんと負担し、ネットワークの健全性を
維持しながら、かつ環境に優しいシステムを作ることができれば、わが国にお
いてはじめて市場メカニズム、市民の意志、エネルギー企業の価値創造がうま
く協働(コラボレーション)しあった新しい電力市場の形が出来上がるのではな
いだろうか。
 そうした視点を常にもって、多くの皆さんに電力自由化に興味を持っていた
だきたいし、そこには優れた日本型市場の大きな可能性があることを知ってい
ただきたいと思う。

                 西村 陽(関西学院大学経済学部講師)
(2)「卸電力取引市場の整備について」
                      匿名希望(電力市場関係者)

 2005年4月より、電気事業分科会の報告書(「今後の望ましい電気事業改
革の詳細設計について」平成16年5月)に基づいた卸電力取引市場が創設さ
れた。卸電力取引市場における取引には、取引所取引、相対仲介取引、相対直
接取引などの形態がある。取引所は法律外事項であるが、電源開発投資環境を
整備し、全国的な電源の有効利用の促進する目的があり、任意取引市場として
整備し、相対取引との併存により事業者のリスク管理の容易化が期待される。
今回の報告書に基づいて創設されたのが、私設任意の「有限責任中間法人 日
本卸電力取引所(以下JPEX)」である。JPEXでは、報告書に要求された
一日前市場や先渡し市場(一ヶ月物)のほか、独自に掲示板取引が用意されて
いる。
 卸電力取引市場では、JPEX以外にナットソースジャパン社(以下NJが、
今回の卸電力取引制度整備以前から仲介事業の展開をしていたが、今般の制整
備により制度に準拠した店頭取引(OTC)市場での仲介事業(相対仲介取引)
を展開し始めている。但し、NJはフレキシブルな取引形態の先渡し市場に当
面特化すると共に、卸電力だけでなく小売電力取引市場も併設して運営してい
る。JPEXとNJは、ともに卸電力取引市場における仲介事業者である。
 また、従前の卸電力供給事業のほか、特定規模電気事業者(通常新規参入者
やPPSといわれる)間における電力の融通の形態で行なわれる取引(相対直
接取引)も始動している。このうち、一般電気事業者(通常電力会社といわれ
る)やPPSが設立に参画し、卸電力取引市場の成否を測るバロメーターと目
され、各事業者がその利用を義務的に考え、実際仲介事業が具体的に見えてい
るJPEXについて考えてみる。2005年6月現在、JEPXの一日前市場
の1日(受渡日ベース、土日祝日を含む)の平均約定電力量は、70万kWhを
超えたところである。6月下旬には200万kWhを超える約定が出来た日もあ
る。4〜5月が電力にとっては不需要期であることを差し引いても、取引高は
少ないというのが多くの関係者の意見であろう。ただ、取引については黎明期
であり、当初の想定通りとの指摘もある。
 因みに、一日前市場に対する2005年4月の約定高の1,422万kWhに対し
て、売り注文は約10億kWhである。最初の月であり、レベル感の形成が十分に
なされていないため、手探りでの価格提示が生んだ約定率1%台と言う数値で
あろうが、今後この数値が改善されないと、「見せ玉」としての売り注文という
レッテルが貼られかねない。
 さて、JEPXの収益からみた約定量の多寡について考えてみる。4〜5月
が電気の不需要期であることを差し引いて、仮に平均100万kWhの取引がコ
ンスタントに行われるようになったとする。JEPXはその仲介手数料を売買
当事者双方から1kWhあたり3銭(消費税抜き)ずつ徴収する。1日100万
kWhであるから受け渡し日ベースで1日6万円の収入となる。年間(365日)
に直すと2,190万円となる。
 JEPXのシステム投資は公表されていない(一日前市場の仲介を独占的に
行う法人である以上この程度の経営情報は公開した方が良いという意見もあ
る)が、2億円とも3億円とも言われる。仮に2億とした場合、システムの初
期投資だけで金利負担を抜きにしても10年近い投資回収期間がかかる。加え
て、システムメンテナンスや人件費等の費用が加わることになる。更に、シス
テムの改修や更新も考えなくてはならない。
 これに対し、先渡し市場や掲示板市場などの追加的収入が考えられる。この
うち、先渡し市場は2005年6月20日までに9件、約1,177万kWhの約
定で70万円程度の仲介実績があり、1年間でも1,000万円を越えることは
厳しい様子である。また、掲示板の掲載料は3,000円/日・件であり、仮に
甘めにみて1日平均20件あっても、営業日を250日とすると年間の掲載料
収入は1,500万円である。
 この状況を考えると、仲介料率一定ならば先渡し市場の出来高増加と一日前
市場の出来高増加が無い限り、事業としての電力取引仲介はシステム投資型で
は厳しいものとなる。電気事業者の太宗が設立に参画したJEPXの収益から
考えると、現在の取引は極めて低調ということになる。現状の一日前市場は板
寄せ型のオークション市場となっており、連系線の制約を一括で判断するため、
システムでの対応が事実上必須に近い。システム型の電力取引仲介が財務的に
厳しい事業ということは、現状の一日前市場の運用が中長期的には困難という
ことである。対策としては、仲介料率の設定見直し、板寄せ型からザラバ型へ
の取引方法の移行(この場合JEPX以外の仲介も容易になる可能性がある)、
半ば強制的な市場実績作り(ミルク補給)などがあるかもしれない。だが、い
ずれも取引参加者に何らかの資金負担が生じる可能性が高い。
 そのほかにも、色々な不満が聞かれる中で、常時バックアップ料金見合いで
価格が高いという意見(先渡しが、昼間型で6月が11〜12円台、7月が1
6円台、9月が13円台の約定と言われている。また、一日前市場でも昼間で
東日本が24円台などという値段がメディアで流れている)や、先渡しの商品
設計、リアルタイム市場の創設要求なども聞かれる。常時バックアップについ
ては、制度としての役割を考え直す時期かもしれない。後者2つについては、
取引所でいきなり仕切って商品設計をするのではなく、OTCでの標準的な商
品の形成を待って行なうことを考えるべきではないか(他の多くの商品上場は
そのようなプロセスを踏んでニーズに適応した商品設計を行なっている)。
 現状の卸電力取引市場を見てみたときに、市場の成否はマクロベースで見な
くてはならないため、JEPXのみならず、卸電力取引市場というマクロで市
場が効率的に形成されるように、全ての参加者が多様な形で協力することが肝
要と感じている。また、机上の空論でなく実際に稼動することで、実務上の問
題点が発見でき、より使い勝手の良い制度へ改善できるという効果が期待でき
る。「電気」という経済性と社会性の両面の価値のある商品を取り扱う関係者が、
取引にも柔軟に対応することで、企業としての社会的責務の達成を容易にする
ことに資すると考える。

                      匿名希望(電力市場関係者)

4.政策レビュー

(1) 「NPT再検討会議後の日本の課題
       ――核依存政策の放棄と六ヶ所再処理工場運転無期限延期」
                田窪雅文(ウェブサイト「核情報」主宰)

 5月にニューヨークで開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議が、何
の合意に至ることもなく閉幕したいま、唯一の被爆国の反核運動として、いま
こそ核廃絶を訴えなければならないとの声が強くなるだろう。ここで気を付け
るべきことが二つある。
 第一に、核廃絶と核拡散防止とが相反する主張であるかのように捕らえては
ならない。アナン国連事務総長は、再検討会議の冒頭(5月2日)、「軍縮、核
拡散防止、平和利用の権利は、すべて重要だ」とし、これらはすべて、「過去の
政治の虜としておくには、あまりにも重要だと」と訴えた。
 第二に日本の運動としては、具体的に日本でできることを考えなければなら
ない。その一つは、北朝鮮が核兵器計画をすべて放棄しても、米国が核攻撃の
脅しを北朝鮮にかけておくことを求めるような日本の核依存政策を変えさせる
ことだ。もう一つは、非核兵器国として初めての大規模プルトニウム分離工場
となる六ヶ所再処理工場の運転開始について上がった反対の声に耳を傾けるこ
とだ。
 まず、アナン事務総長は、上述の演説において、ウラン濃縮と再処理という
「燃料サイクルのもっとも機微な部分を何十もの国が開発し、短期間で核兵器
を作るテクノロジーを持ってしまえば、核不拡散体制は維持することができな
くなる」と警告し、「各国が燃料サイクル施設の開発を自発的に放棄する」仕組
みを作るよう提案した。
 また、エルバラダイIAEA事務局長は、次のように述べた。『国連改革に関
するハイレベル・パネル』ウラン濃縮と再処理についての「取り決めについて
交渉が行われている間、新規の燃料サイクル施設に関する自発的な期間限定の
モラトリアムを実施するようにとの要請――以前に私も行った提案――を行っ
ている。このようなモラトリアムは、国際社会が体制の脆弱性に対処する意志
があることを示すものとなる。」
 そして、5月5日には、米国のNGO「憂慮する科学者同盟(UCS)」が、
日本に対して六ヶ所再処理工場の稼動の無期限延期を求める要請を発表した。
40トン以上の余剰プルトニウムを抱えた日本が六ヶ所を運転すれば、「NPT
を強化するという日本の約束について深刻な懸念をもたらすことになる」とす
る要請書には、4人のノーベル賞受賞者やウイリアム・ペリー元国防長官を含
む米国の専門家ら27人が署名している。
 また、5月11日に開かれたNPT再検討会議特別セッションにおいて、NG
O代表が「プルトニウム・エネルギーの悪夢は、核兵器国に限られたものでは
ない。この文脈において、非核兵器国における初めての商業規模工場として
2007年に運転を開始する予定の日本の六ケ所再処理工場が放棄されることが
極めて重要である。」と各国代表らに訴えた。
 そして、5月24日には、「核不拡散体制強化のための日本のリーダーシップ
を求める要請――六ヶ所再処理工場運転の無期限延期の呼びかけ」という要請
書において、世界各国の平和団体の代表者など18カ国の約180人(後日追加分
を含む)が、年間核兵器1000発分ものプルトニウムを分離する六ヶ所再処理工
場の運転開始は、「北東アジアにおける核拡散問題をさらに複雑なものにする
ことに」なり、また、「核兵器(及び核兵器用物質)の取得を追求している国々
に『日本の例』という口実を与えることになる」と警告した。
 要請書には、日本の国際交流NGOピースボートや、ピースデポ、米国の「ピ
ースアクション」、「社会的責任を考える医師の会(PSR)」、「軍備管理協会
(ACA)」(NGO)の代表らの呼びかけに応じて、英国の「核軍縮運動(C
ND)」、フランスの「平和運動」、インドの「核軍縮・平和連合(CNDP)」、
「核戦争防止国際医師会議(IPPNW)」のドイツ、オーストラリア、フラン
ス、スイス各国支部、国際平和ビューロー(IPB)、国際反核法律家協会(I
ALANA)などの代表格の人々や核問題専門家らに加え、日本からは、田中
煕巳日本被団協事務局長や澤田昭二氏、岩松繁俊氏などを初めとする被爆者、
本島等元長崎市長、宗教者、著名な政治学者などと並んで、音楽家の坂本龍一
氏や作家の澤地久枝氏も署名している。後日、パグウォッシュ会議名誉会長で
ノーベル平和賞受賞者のジョセフ・ロートブラット教授も署名に同意した。
 核廃絶を求める日本の運動は、日本の核依存政策を変えさせ、六ヶ所再処理工
場運転無期限延期の決定をさせることによってこそ、核のない世界への道を示
して見せることができる。

                田窪雅文(ウェブサイト「核情報」主宰)

(2)「気候変動問題・政府専門家セミナー」の結果と今後の見通し
                              中島正明
    (特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン気候変動問題担当)

 今年5月、例年のように、ドイツのボンで気候変動枠組条約第22回補助機関
会合(SB22)が開催された。今年の会合はその様相がいつもと違い、緊張し
た雰囲気が感じられた。2月に京都議定書が発効したことを受け、今年末にカ
ナダのモントリオールで開催される気候変動枠組み条約の締約国会議(COP
11)に並行して、第1回目の京都議定書の締約国会議(COP/MOP1)も
開催される。このため、SB22はその準備会合としての意味合いが強かったこ
とが緊張感を生んでいたひとつの要因であろう。また、このSB22の前には、
京都議定書の第一約束期間後の国際制度のあり方について意見交換を行うため
の「政府専門家セミナー(SOGE)」が開催され、いよいよ将来の国際制度に
関する政府間の議論が本格的に始まったことも会場の緊張感をより一層高めて
いた。
 モントリオールでの会議で、正式に将来の枠組みに関連する国際交渉が始ま
ることとなっている。この会議の開催を控え,SOGEは非公式ながらも国連
の場で初めて各国政府代表者が将来枠組みに関する意見交換を行うものであり、
開催された意義は大きかった。このイベントは「情報の非公式な交換を促進す
るための」ものという位置づけであり、交渉ではないこともあって、終始穏や
かで明るい雰囲気の中で行われた。
 気候変動が危険なレベルに達するのを防ぐためには、産業革命以前のレベル
から2℃未満の気温上昇に抑制しなければならないと言われている。しかし、
すでに産業革命以前のレベルから気温は0.6℃ほど上昇し、現在の温室効果ガ
ス濃度で推移したとしてもあと0.4~0.8℃の気温上昇は免れない。削減率で言
えば、2℃の目標達成のためには、先進国は今世紀半ばまでに60~80%の温室
効果ガスの削減を達成しなければならない。ある調査では、同時期に開発途上
国も含めた世界全体で50%の削減が必要という結果も出ている。国際交渉の場
では、世界全体が行動を起こし、こうした大幅な削減を実現していくための制
度をいかに構築していくかが課題となっている。
 また、気候変動枠組条約などの国際合意では、気候変動を引き起こしている
先進国の責任を鑑み、先進国が率先して温室効果ガス排出削減を行うことと、
対策を行うための資金・技術支援を開発途上国に対して行うこととなっている
が、先進国の排出量は増加し、支援も十分に行われていない。2002年にインド
で開催されたCOP8では開発途上国と先進国間の対立関係が顕著化したが、
これは先進国の対策が進んでいないことに対する開発途上国の不満が爆発した
ことがひとつの要因であった。効果のある国際制度の確立には、しっかりとし
た国際的協調関係が必要であるが、信頼関係の醸成のためにはこれまでの国際
合意に基づき、先進国がまず行動することで結果を示していくことが必要不可
欠であろう。
 こういう状況の中で開催されたSOGEは、結果的には私たちが予想してい
たより、良い成果を生んだといえる。各国政府の立場はこれまでの交渉で示さ
れてきたものと大きくは変わらないが、気候変動枠組み条約の第2条に究極目
的として明記されている危険な気候変動の防止という共通の到達点に向けて、
世界全体が大幅な温室効果ガスの削減に向けて前に進むことが必要であるとの
大前提の認識がSOGE全体を通して確認され、今年末のモントリオールの会
議での交渉のための良い土壌が作られたことが一番大きな成果であろう。欧州
諸国がこれまでと同じく気候変動の影響が「危険な」閾値を超えることを防ぐ
ために、2℃以下の気温上昇幅抑制目標の達成を主張する中、中国、ブラジル
などを含む、開発途上国からの前向きな発言が目立った。中でも南アフリカや
ツバルなどは、今後の交渉の道筋を示すための「モントリオール・マンデート」
にモントリオールの会議で合意することを主張し、強い指導力を見せた。個別
の問題では、早急に将来の枠組みに関する議論を開始すること、先進工業国の
率先した行動が大切であること、2℃以下に気温上昇幅を抑えるための温室効
果ガスの大幅な削減の必要性、京都議定書の意義と重要性、そして適応策や技
術移転の強化の必要性などについて、各国が具体的に意見を述べた。こうして、
今後私たちが進むべき方向性、抱える問題や課題がより明らかになってきたこ
とは、いよいよ世界全体が新しい時代の構築に向けて動き出したことを感じさ
せた。
 日本政府も将来の制度の交渉を早く始めるべきという比較的前向きな立場を
とっていた。しかし、積極的に働きかけているというより、これまでと同じよ
うに様子見を続けている感が否めない。日本政府は、実質的な中味を伴った「マ
ンデート」にモントリオールで合意し、交渉を早急に開始できるようにEUと
共にリーダーシップをとり、締約国への働きかけを強化していくべきである。
最近のG8サミットの準備プロセスは、アメリカの阻止的行動などにより、思
わしくない方向に進んでいるが、それとは別に、国連の場での日本政府のやる
気が問われている。

SOGEの詳細については、
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/climate/cop/soge2005_html

                              中島正明
    (特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン気候変動問題担当)


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5.お笑い原子力ムラ敦賀(4)
  日野 行介(毎日新聞大阪社会部記者 今年3月まで福井支局敦賀駐在)

 「すべての道は原発に通ず」。15基が林立する世界一の「原発銀座」福井県
嶺南地方で取材するうえでの鉄則と言える。その公共事業の総事業費のうち、
何割が原発財源か、それは表ガネ(電源3法交付金)か裏ガネ(匿名寄付)か
を調べる必要がある。教育も例外ではない。
 高木孝一前敦賀市長の地元に近い、敦賀市木崎に嶺南地域唯一の短期大学で
ある敦賀短大がある。高木前市長が旗振り役となって、1986年に女子短大とし
て開学した。この建設費用約20億円も関西電力、日本原電、動燃(現、核燃料
サイクル開発機構)の寄付で賄った。口の悪い市民からは「タカリ(高木)市
長」とも呼ばれている。
 88年に就任した第二代学長は作家の瀬戸内寂聴さん。彼女の人気もあって、
入学希望者が定員を大幅に超え、順調に成長した。彼女の講義には一般市民も
押し寄せ、常に満員状態だったという。
 この短大に暗雲が漂い始めたのは開学からわずか6年後だった。瀬戸内さん
が突然辞任。関係者の話によると、原子力に対する見解の違いから高木前市長
と瀬戸内さんが衝突したことが原因という。かって「カネが足りなかったら原
子力に言ったらすぐ出てくる」と講演し、社会面を賑わせた前市長だけに、瀬
戸内さんが激怒したのは想像に難くない。
 さらに95年12月、高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ火災事故が発
生。どこまで影響があったかは不明だが、翌年の入試は受験者が大幅に減少し
た。その後は定員を割る状態が現在に至るまで続いている。その結果、敦賀市
から同短大への赤字補てん額は毎年増加を続け、現在は何と年間2億円。よく
市の財政がもつものだと感心するが、やはりタダほど高いものはないというこ
とが分かる。
 さて市の財政から見て「お荷物」とも言えるこの短大、有力者たちが後処理
策を巡って暗躍を続けている。その中で後に聞いて最も驚いたのが河瀬一治・
現敦賀市長の考えたもの。
 国立の福井大学は04年度から大学院に「エネルギー原子力専攻」を設置した。
独立行政法人化に合わせて原子力をスポンサーに経営を安定させるのが目的だ。
設置する前に専攻を福井市の現キャンパスと原発が集まる敦賀市に置くか議論
があった。福井大の児嶋真平学長は当初「敦賀市に置くべき」と発言。これを
受けた敦賀市の地元財界も誘致運動を展開した。そのころ河瀬市長は児嶋学長
と秘密裏に会談。敦賀短大を新専攻のキャンパスに使うよう提案していたとい
う。児嶋学長も前向きだったというが、最終的には敦賀設置の話は立ち消えと
なり、福井市に決まった。
 設置から約半年後のこと、地元の下請け会社の幹部が憤慨したように明かし
た。「福井大学から新専攻への資金協力を求める寄付の請求が下請けにまで来
た。仕方なく寄付したが、だまされたような気分だ」。すべての道はやはり原発
に通じている。


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6.プロジェクトフラッシュ
       「飯田市「まほろば事業」ただいま進行中
         地方の環境自治体から歴史的「大事業」がはじまった」
                     竹村英明(ISEP 研究員)

 今年(2005年)4月から、飯田市内38ヶ所、合計して208kWの太陽光発電
設備が、市民出資を受けた「おひさま発電所」として運転を開始した。38ヶ所
は保育園、幼稚園、公民館、児童センターなどの公共的施設。発電設備を設置
したのは「おひさま進歩エネルギー有限会社」で、飯田市の新エネルギービジ
ョンにそって企画された「まほろば事業」を実現するための事業主体として、
市内NPOが中心となって設立された民間会社である。「まほろば事業」の正式
名称は「環境と経済の好循環のまちモデル事業」で、環境省が地域振興と地球
温暖化対策を一緒に取り組む地方自治体の意欲的プロジェクトに年間総額25
億円の交付金(1件当たりは3年間で4億円から5億円)を投じて奨励してい
るものである。
 飯田市はこの「まほろば事業」の第1回公募に応募し、市民共同発電所、E
SCO事業、市民出資の導入、グリーン電力証書の販売などの「目玉商品」が
評価され、初年度交付金を獲得した。ISEPでは、所長の飯田哲也が政策ア
ドバイザーとして飯田市への助言などを行い、環境政策と地域振興のノウハウ
を開発している自然エネルギー.コム(株)と連携して、飯田市「まほろば事業」
を支えてきた。
 以下にこのプロジェクトの概要と目玉商品の特徴を紹介する。

1、 飯田市おひさま事業の概要
 おひさま進歩エネルギーは「南信州おひさま進歩」というNPOが母体とな
って設立された。このNPOでは昨年5月、寄付による3kWの市民共同発電所
を私立明星保育園で立上げている。「おひさま発電所」はこの市民共同発電所を
拡大する形で事業化された。具体的には、これに新規設置の37ヶ所205kWを加
えた形で、年間の予想発電量は約23万kWh。これを各施設が固定価格で買い取
る契約となっている。さらに「おひさま発電所」は電気だけでなく「グリーン
電力証書」も販売する。「おひさま事業」というときには、この「おひさま発電
所事業」ともう一つの「小規模ESCO事業」を指す。
 事業規模としては太陽光発電事業が1億3000万円、小規模ESCO事業が2
億7000万円で、総額約4億円である。このうち2億円を環境省の「まほろば事
業」交付金で、残る2億円を市民出資で集めた。

2、 匿名組合型の市民出資による太陽光発電事業
 市民共同発電所というキーワードは、太陽光発電や風力発電を市民の力で建
ててしまうという発想の中から生まれたものだ。まずは各地で「寄付型」から
始まり、出資により配当を出している先例も滋賀や宮崎などいろいろある。
 今回の飯田市での取り組みは、そうした先例を踏まえつつ、匿名組合方式と
いう市民風車事業で生み出された10年以上という長期にわたる現金分配を可
能とする仕組みを用いている。
 匿名組合方式とは特定のプロジェクトに限定して事業計画と利益分配の目標
を示し、出資を募るという手法である。飯田市 の「おひさま発電所」は、この
ような匿名組合型の市民出資をはじめて太陽光発電事業に応用したものだ。市
民風車事業では、ISEPも設立の一翼を担った「自然エネルギー市民ファン
ド」が過去に5基の風力発電を匿名組合型市民出資で実現させている。しかし、
今回の「太陽光発電事業」に対して、本当に出資が集まるのか大きな不安でも
あり、賭けでもあった。
 結果的には2ヶ月足らずで2億円の目標を達成でき、匿名組合方式の市民出
資が風力発電に限らず、広くいろいろな事業メニューでも受け入れられること
が証明された。それどころか、環境事業への投資的な「市民出資」に対して、
人々の関心が予想以上に高まっており、低金利の上にペイオフ解禁間近という
日本の金融事情もあって、市民出資事業の爆発的成長さえ予感させる結果とな
った。

3、 日本ではじめて取り組む小規模ESCO事業
 太陽光発電事業は通常では20年かけてもペイは難しい。そんな高コストの太
陽光発電を環境省からの交付金ともう一つの事業であるESCO事業でカバー
するというのが、このプロジェクトの新規性である。
 ESCO事業そのものはすでに大規模事業所では導入が進んでいる。ただ、
「おひさま事業」で特徴的なのは、中小の商店などを対象とした初の「小規模
ESCO」であること。大きな事業所だけを省エネしても、日本全体の省エネ
は進まない。だからこそ、この小規模ESCOが環境省からは高く評価される
ことにもなった。大規模ESCOとは異なり、個別の店舗の営業形態や顧客層、
雰囲気などを判断しながら、ささやかだが確実なメリットを出せる提案を探す。
いわばオーダーメイドの一着を作るような、細やかなESCOである。今年度
からスタートのESCO事業は、現在「初期診断」の真っ最中である。

4、 保育園に公民館という地域ぐるみ事業
 事業の当初計画では、公開募集で100件以上の個人住宅への設置を計画して
いた。ところが公共施設中心にという飯田市からの要請があり、保育園や公民
館に切り換えた。公共施設には限りがあり、想定規模の縮小というデメリット
があったが、一方で保育園や公民館に設置することでの「地域とのつながり」
や「将来を担う子供たちへの環境教育」が自然に実現するという大きなメリッ
トも獲得した。
 おひさま進歩エネルギーには「さんぽちゃん」というマスコットキャラクタ
ーがいる。飯田市の山の緑、天竜川と空の青、おひさまのオレンジ色の顔とい
う仮想生き物だ。着ぐるみの動く「さんぽちゃん」もいて、いまや子供たちに
大人気である。飯田市の保育園児で「さんぽちゃん」を知らない子はいない・・
ほどである。
 今年の2月から4月にかけて、おひさま進歩エネルギーは、これらの施設の
大部分で環境学習会を実施した。延べにして1000人以上の保育園スタッフや園
児の父母などが話を聞いた。また、多くの施設で「点灯式」を実施し、ここで
は着ぐるみのさんぽちゃんが大活躍した。おひさま事業は20年の息の長い事業
であり、事業後半にはこの子供たちが保母さん、保父さんになったり、飯田市
の職員になったりするのである。どんな地域社会がやってくるか、とても楽し
みである。

5、 世界初のグリーン電力自動集計システム
 さて「おひさま事業」の肝中の肝が、このグリーン電力の自動集計である。
 グリーン電力とは何か。太陽光や風力から生み出される自然エネルギーの電
気には、エネルギー価値だけでなく、地球温暖化対策や人間や環境に優しく、
再生可能で枯渇しないなど、化石燃料や原子力にはない価値がある。この価値
を総称して環境価値と呼ぶ。この環境価値部分を持った電力が「グリーン電力」
である。そしてこの環境価値の部分をエネルギーの部分と切り離して取引しよ
うというものが、「グリーン電力証書」ということになる。
 環境価値が取引されるためには、環境価値の量を正確に把握する必要がある。
電力会社と連系している自然エネルギー発電設備であれば、電力会社に売電さ
れた分の計測は可能だが、各設備の自家消費分に含まれるグリーン電力の「環
境価値」は正確に把握されていない。
 将来的には大きな価値を秘めたグリーン電力が、今は個人の満足で終わって
いるのが現状である。これを社会的価値として、コンピュータによる自動計測
と集計、管理を行い、「環境価値」をグリーン電力証書として供給するというコ
ンセプトはISEPの関連組織である「自然エネルギー.コム」で温められ、「お
ひさま事業」にあわせてシステム開発と実際の設置が行われた。4月から集計
を開始しているこのシステムが今後順調に動くことが、「おひさま事業」のみな
らず、今後の自然エネルギー事業全体の発展に深くつながってくるだろう。

 以上、今だ道半ばであるが、飯田市の「おひさま事業」を皆さんに応援して
いただきたい。飯田市は一度訪れると「飯田病」にかかるといわれるところ。「飯
田病」とは、もう一度飯田市を訪れたくなるという病。そうこうしているうち
に飯田市に住み着く人もいるとか。そのような飯田市に、ぜひ「おひさま事業」
の視察においでいただきたい。

おひさま進歩エネルギー
http://www.ohisama-energy.co.jp

                     竹村英明(ISEP 研究員)


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