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1. 風発 「むつの二の舞」
                      飯田 哲也(ISEP所長)

 高速増殖原型炉「もんじゅ」で原告敗訴の最高裁判決が下った。メディアで
は「国の原子力政策を左右する判決」といった言葉が踊るだろうが、事情を知
る多くの関係者は、どちらの立場であろうと、一様に冷めている。最高裁判決
の結果はどうあれ、遅かれ早かれ、もんじゅは廃炉になる。推進側ですら、誰
ももんじゅがまともな技術開発だとは考えていないはずだ。
 日本の原子力政策には、高速増殖炉の実用化計画はなく、もんじゅは進化の
袋小路に入った恐竜と同じ道をたどることになる。唯一の「成果」は、今回の
最高裁判決のおかげで「敗訴をしなかった」という「国」のメンツを保つこと
ができたことと、しばらくは(無意味な)試験をすることで、原子力ムラのア
リバイ工作ができることくらいだろう。その後は、原子力船むつと同じように、
ひっそりと廃炉になる運命だ。その「国の弱み」につけこんで、福井県が新幹
線誘致の条件交渉までするところまで、青森県と相似形になっている。
 歴史は繰り返すというが、これほどバカ正直に過ちを繰り返す「国」も珍し
いのではないか。戦艦大和の「2つの過ち」(技術選択の過ち、失敗が確定した
後の政治判断の過ち)を繰り返したのが六ヶ所再処理工場とすれば、高速増殖
原型炉「もんじゅ」は、原子力船むつの過ちを性懲りもなくそのまま繰り返し
ている。なぜか。
 名著「失敗の本質」の指摘するとおり、組織的な問題構図が共通しているこ
とが最大の原因であろう。旧日本軍は、日露戦争の203高地と日本海海戦で勝
利したときの戦略(陸軍の「白兵銃剣主義」と海軍の「艦隊決戦主義」)の成功
体験が神格化されて、環境の変化(第一次大戦で登場した近代戦)に対応して
組織が自己革新する契機を失ってしまった。また、「起きたことは蒸し返しても
仕方がない、二度とこのような事態が起きないように・・・」として失敗の分
析も反省もないまま、「失敗の蓄積・伝播を組織的に行うリーダーシップもシス
テムも欠如していた」。まさしく原子力ムラも、旧日本軍と同様に、「自らの行
動の結果得た知識を組織的に蓄積しない組織」であるがゆえに、歴史の過ちを
繰り返すのである。
 歴史と失敗に学ばない社会(組織)に未来はない。もんじゅ最高裁判決があ
ぶり出したのは、そういう絶望であり、希望である。

                      飯田 哲也(ISEP所長)


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2.寄稿
「今の日本は、“いのちと緑を守る未来づくり”=低炭素社会の構築に挑むとき
       〜アジア太平洋再生可能エネルギー議員会議の開催によせて〜
    加藤 修一(自然エネルギー促進議員連盟(PAPRE)事務局長
                        参議院議員 学術博士)

「日本は資源に乏しく、これ以上効率化できない」、 これは「事実ではない」
と発言し、「思い込みだ」とまで指摘した。この指摘は、アジア太平洋再生可能
エネルギー議員会議の第6回勉強会(2005年5月24日)の時、招聘講師
が日米のエネルギーの技術革新の状況について述べた内容である。その講師と
は、エネルギー分野の世界的な権威、エイモリー・B・ロビンス(米国ロッキ
ーマウンテン研究所所長)その人である。私は、この正鵠を得た発言を聞きな
がら氏の1970年代の名著「ソフトエネルギーパス〜永続的な平和への道」を鮮
やかに思い出していた。その名著を始めて手にした時は院生時代で著書の印象
も強かったが、このたびの“思い込み”の指摘も非常に印象深く、また心強い
限りである。最近の著書「ナチュラル・キャピタリズム(自然資本主義)」の4
原則(資源生産性、クローズド・プロセス、前二者のビジネスモデル、自然資
本の再投資)は、彼の具体的なハイパーカー構想を知るにつけてさらに心強さ
を感じた。日本には別の論客?がいる。エネルギーの効率化はこれ以上限界で
ある。それは、乾いた雑巾の様に幾ら絞っても絞りきれないと表現する人が少
なくない。思い込まされているのか? 絞るべき雑巾を間違えているか。無資
源国であると幾重にも刷り込まれてしまっている日本人、ということになりそ
うである。常に意識改革の必要性を感じる。
遂に2月16日に京都議定書は発効した。国際公約である。日本は改めて、その
刷り込みを剥ぎ取り、足もとを見るべき時である。ロビンスの心強さ、4原則
は日本の中核にすべき充分過ぎる意味を持っている。日本の技術、イノベーシ
ョンはここにも着目すべきである。

「京都議定書目標達成計画」を完遂するためには、4原則を含めた、いわゆ
る意識改革は優先すべきものの一つである。これは、頭に非常に強烈に沁みこ
んでいる。2002年、ヨハネスブルグサミットに参加したが、各国は、循環型社
会の形成についていち早く合意した。最後までもつれた議題は、再生可能エネ
ルギーの数値目標をいれて大きく増大させることであったが、合意に至らなか
った。各国の利害の衝突であったようである。また様々な背景が見え隠れする
予防原則も同様であった。反駁するテーマの合意形成プロセスにおいて環境意
識の持ち様も非常に重要な要因と痛切に再確認させられた。

サミットにおいて、小泉総理は、国際社会に向かってキャパシティビルデイ
ング(人材教育)の重要性を指摘し、「持続可能な開発のための教育の10年」
を提言し、幸いなことに国際社会は国連での採択を可能にした。地球温暖化問
題に対する深刻な状況を如何に多くの意思決定者が、いち早く情報を共有し、
責任を共有し、共通の行動へと力強く歩き始めるかは、最も重要な視点である。
従って、ユネスコから提出される国際実施行動計画に準拠して各国が、環境教
育、エネルギー教育などを含めた持続可能な社会づくりへの教育の戦略性につ
いては、我が国が率先して国内実施計画の策定などを講じて積極的に行動すべ
きである。意識改革はここからも始まる。共有すべき情報で覚醒させる教育の
二字は重要だ。この道は、地球益、人類益への希望の道でもある。提唱国日本
のイニシャティブが益々求められている。

ところで、温暖化防止の究極的な目標は気候変動枠組み条約第2条にある。
生態系や食糧生産、経済発展に危険でないレベルに大気中の温室効果ガス濃度
を安定化させることである。既に私はこの点に着目して国会の環境委員会で
「2050年問題」を幾度となく質問してきた。産業革命以前からの上昇温度が、
2℃超えることの無い気候安定化が求められている。2℃が限界温度である。
これを超えることは生態学的、人類史的脅威である。これは至上回避課題であ
る。2050年時点で50%(1990年比)を超える二酸化炭素削減が指摘され始め
ている。気候安定化の低炭素社会を想定し、そこから時計を逆に回しながら現
在に時間をバックして、政府は今進めるべき実効的な対策を足もとから組み立
てることである。50%以上とは、6%削減で顔色を変えている産業人にとって、
驚愕する削減量である。温暖化の深刻さはここまで来ていることの現われであ
る。

その大幅の二酸化炭素削減量を達成するには、国土形成(今国会で国土総合
開発法は大きく改正)を含めた戦略性が求められる。その際欠くべからざる多
くの視点があるが、その一つを考えてみたい。昨年、G8サミットで3Rイニ
シャティブが提起され、本年日本で開催されたが、3Rを志向する循環型社会
については、2002年に合意された。今の日本の政策上の現実的な中身は、脱温
暖化社会と循環型社会のそれぞれの間において、緊密性を強化すべきである。
脱温暖化社会(=低炭素社会)の多様な対策をみると省エネルギーに力が入っ
ている。省エネルギー自体は、言うまでも無く歓迎すべき対策である。しかし
一面的な省エネルギー施策は、点の省エネルギー施策である。必ずしも二酸化
炭素削減をもたらすとは限らない。逆のことも考えられる。

単純化して物事を考えてみよう。例えば、省エネルギー効率の高い電気機器
を耐用年数前に買い換えることは、その機器を使用する時のエネルギーは著し
く少なくなるに違いない。しかし機器製造に多くの物質が使われている。物を
作るにはエネルギーが必要であり、排出量を増加させる可能性がある。従って、
省エネルギー、省資源といっても「資源調達過程→生産過程→運搬過程→消費
過程→廃棄過程などのライフサイクル全体」を考慮した省資源・省エネルギー
対策を進めることが、欠かせない。「資源生産性の原則」から見ると一工場のク
ローズドプロセスが想定されるが、異業種に跨っている「みえないクローズド
プロセス」の枠を考えることになる。だからこそ脱温暖化社会と循環型社会を
つなぐ連携的政策を行うことであり、日本政府は十分認識して進めることであ
る。民間のある著名なメーカーは既にライフサイクの視点から賢明に現実的、
実効的に対応している。一方で政府は縦割り?で連携の効果が希薄ではないか
と思う。「京都議定書目標達成計画」は、PDCA(計画―運用―監視―見直し)
方式による見直しを行うことになっている。こここそが、画竜点睛である。見
直しを削減効果、コストパホーマンス等からグッドプラクティスをとりだし、
優先施策順位を検討し相当しっかり行うことである。それであってこそ日本の
未来づくりに大きく貢献でき、国際貢献にもつながる。まさに日本の正念場で
ある。

日本は環境立国、水素社会、燃料電池総合政策、バイオマスニッポン総合戦
略、新エネルギー産業2030のロードマップ、日本版RPS法など多くの政策を
打ち出している。大事な諸政策である。以上述べてきた物質フローに着目した
ライフサイクルアセスメントが鍵でもある。これを満足させることが、課題で
あり、未来づくりになる。我々議会人の役割は、今ほど大きいときは無い。“い
のちと緑の未来づくり” =低炭素社会=日本モデル、に議会人が地球規模で正
面から挑む時代である。私も一議会人として、NPOはもとより100年の歴史
を誇り地球的活動に影響を及ぼす列国議会同盟(IPU)などとも連携し、そ
の責務を果たしたいと思う。(2005.5.25)

    加藤 修一(自然エネルギー促進議員連盟(PAPRE)事務局長
                        参議院議員 学術博士)


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3.ジャーナリストより
      川口 雅浩(毎日新聞秋田支局次長、前・東京本社経済部記者)

 4月に東京から秋田に赴任した。秋田市内で暮らして驚いたのは、街中で風
が強い日が多いことだ。しかも並の強風ではない。困るのは雨の日で、風が強
すぎて傘がさせない。無理をすると傘の骨がすぐ折れるので、仕方なく傘を閉
じ、濡れながら歩かなくてはならない。
 私はこれまで静岡、札幌、東京と転勤し、静岡県内では駿河湾から数百メー
トル、夜などは部屋から潮騒が聞こえる海岸沿いに住んだこともあるが、これ
ほどの強風は経験したことがない。秋田市中心部は海岸から数キロ以上離れて
いるのに、これだけ風が強いのは、太平洋と日本海の違いだからなのだろうか。
 これだけ風が強いのだから、秋田県が風力発電の先進地だというのも納得が
いった。傘の骨が何本も折れ、ずぶ濡れになるのは困るが、それと引き換えに、
クリーンな再生可能エネルギーがこの地で生まれるのであれば、喜んでずぶ濡
れになろうと思う。
 秋田へ赴任すると決まった3月、飯田哲也さん、大林ミカさんが都内で送別
会を開いてくれた。その時、「秋田にも市民風車がある」と聞いて、風力発電
現場を見るのを楽しみにしていた。「市民風車」には、私なりに思い入れがある
からだ。「市民風車」という言葉がマスコミにまだあまり登場しなかった02年
当時、「自然エネルギー市民ファンド」設立について、毎日新聞の夕刊1面(0
2年12月7日付)に記事を書いたのは、この私だ。手前味噌だが、「市民風車」
なる概念を早い段階で新聞に紹介できたと自負している。
 当時、02年秋と言えば、東京電力の原発のトラブル隠しが発覚した直後だ
った。電力会社と経済産業省は03年夏にかけ、「東電の17基の原発の大半が
運転再開しなければ、東京が大停電に陥る」かのような一大キャンペーンを張
った。詳しくはここで書く暇がないが、当時、このキャンペーンに経済部のエ
ネルギー担当記者として異議を唱えたのは、この私だけだった。エラそうなこ
とを言うつもりは毛頭ないが、一線の記者の中では、残念ながら、本当にそう
だった。
 私は東電の原発の大半が再稼動しなくても、節電など知恵を絞れば、真夏の
最大電力のピークを乗り切れると、数値的な根拠をもって主張した。当時の毎
日新聞の社説(03年6月24日付)は「大停電は本当に危機か」との見出しで、
「時には電気が足りなくなる社会もひとつの方法だ」「原子力への過度の依存
が、かえってリスクを高めた」との主張を掲げた。他紙には見られない主張だ
った。興味のある方は、当時の各紙の報道ぶりを調べてみてほしい。当時の経
緯や様々な圧力について内幕を明かせば、それだけで一冊、本が書けるほどだ。
 話が秋田の風力発電とそれてしまったが、私が言いたいのは、風力発電(市
民風車)は原発とは対極にあるということだ。少しぐらい生活に不自由があっ
ても、安全で安心で、後世に誇れるクリーンな技術開発を進めるのが、人類の
目指すべき姿だと思う。秋田の風力発電だけで、秋田県内はもちろん、秋田市
内の最大電力さえも賄いきれない現実は百も承知だ。そこをどう克服すべきな
のか知恵を絞り、政府や電力会社を方向転換させていくことが、ISEPのよ
うな市民団体やマスコミに求められていると思う。
 休日、クルマで秋田市内の海岸線を走っていると、突然、十数基の風力発電
の風車が姿を現し、思わずクルマを止め、見入ってしまった。見たことがない、
壮大な光景だった。まるでドイツか北欧諸国の海岸に来たかのような錯覚に陥
った。
 うれしくて、後日、大林さんに「秋田がヨーロッパみたいで驚いた」と電話
すると、「そんなの当たり前よ。東京にいるだけではわからないのよ」とたしな
められた。支局のデスクとなり、自分で記事を書くチャンスが減ってしまった
が、風力先進県のすばらしさ、抱える課題を秋田発で発信したいと思っている。

      川口 雅浩(毎日新聞秋田支局次長、前・東京本社経済部記者)


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4.政策レビュー(1)
 「電力会社を再生可能エネルギーと天然ガス・コジェネで評価する」
              鮎川ゆりか(WWFジャパン、気候変動担当)

WWFジャパンは、「パワー・ランキング−電力会社スコアカード」の日本語版
を、4月末に発表した。これはWWFが展開している「パワー・スイッチ!」
キャンペーンの一環として、WWFインターナショナルがオランダの研究機関
エコフィスに委託して作成されたものの日本語版である。世界の先進国主要電
力会社71社(うち11社が日本の電力会社)を対象に、
1) 再生可能エネルギーの導入促進
2) 天然ガス・コジェネレーションの導入促進
の2点だけに焦点を当てて、各電力会社に評価点を与え、ランキングした。ラ
ンキングの指標に、なぜこの2点だけを焦点としたかというと、WWFはこの
2点が、電力部門からの二酸化炭素排出削減に最も効果的と考えるからである。

世界の二酸化炭素の最大排出セクターは、電力部門である。2100年までの地球
の平均気温上昇を、産業革命前に比べて2℃未満にするには、まず、その最大
排出部門からの排出削減を実現させなければならない。WWFの「パワー・ス
イッチ!」キャンペーンでは、電力部門からの二酸化炭素排出を、2050年まで
にゼロにする、という目標を掲げている。

これをいかに達成するか、日本も含め、主要国における削減シナリオを発表し
た。どの国のシナリオも
1)石炭から天然ガスへの積極的な転換、
2)天然ガス・コジェネレーションなどを通し、既存火力発電、新規発電所の
エネルギー効率向上、
3)大規模風力、持続可能なバイオマス、太陽光などの自然エネルギーの大幅
導入、
4)断熱強化などによる建物のエネルギー効率向上、待機電力のカット、効率
の良い家電品、照明、空調の利用など需要サイドでの省エネルギーの積極導入
などにより、達成可能としている。

「パワー・ランキング」の評価方法は、アンケート調査を主体に、各電力会社
の「環境報告書」、ウェブサイト、IEAデータ、など公表されている入手可能
なデータに基づいている。対象電力会社の発電量は、先進国(OECD加盟国)
の発電量の約65%を占める。

「パワー・ランキング」は、2つの基準によって測られている。第1の基準は
「現況」で、現在の各会社の燃料構成を評価する。第2の基準は「傾向」で、
今後の投資における再生可能エネルギーおよび天然ガス・コジェネレーション
の割合を評価する。将来へ向けての行動をより重視する観点から、総合得点に
おけるウエイトは、現況が40%、傾向が60%。また、再生可能エネルギーをよ
り重視する観点から、再生可能エネルギーに60%、天然ガス・コジェネレーシ
ョンに40%の重み付けがされる。得点は10点満点である。

西ヨーロッパおよびロシアの地域での最高得点はスペインのイベルドローラ社
で、総合得点4.3、「傾向」では5.5であった。次はイギリスのスコティッシュ・
パワーで、総合得点3.7、「傾向」では同じく5.5。3位はロシアのRAO UESで、
総合得点3.1であったが、燃料構成においても投資傾向においても天然ガス・
コジェネレーションが多いことから高得点を獲得した。この地域では約20%の
会社が燃料構成において再生可能エネルギーを2%以上使用している。

米国およびカナダの地域では、最高得点は米国のFLP社で、総合得点4.1、
「傾向」も最高で4.9である。エネルギー効率を15%改善することを公約して
いる。次はカナダのハイドロ・ケベック社で、総合得点3.1、「傾向」は4.1。
3位は米国のウイスコンシン・エナジー社で、総合得点1.6、「傾向」は1.8。

日本およびオーストラリアの地域での最高得点はオーストラリアのタロン・エ
ナジー社で、総合得点2.94、「傾向」4.5である。2位は同じくオーストラリア
のウェスタン・パワー・コーポレーションであり、総合得点2.90、「現況」2.6、
「傾向」3.1である。日本の北海道電力が続き、総合得点2.88、「現況」1.8、「傾
向」3.6と3位のウェスタン・パワーと拮抗している。その他の日本の電力会
社も、電源開発と四国電力がそれぞれ総合得点2.1と1.7、「傾向」が2.6と2.1
で、5位と7位を占めている。日本最大の電力会社である東京電力や、関西電
力、中部電力各社は、ランキングでは最下位のほうを占めており、いずれも総
合得点は0.4から0.5の間である。

三つの地域全体を通しても、最も得点が多かったのは、スペインのイベルドロ
ーラ社(4.3)で、これに米国のFLP社(4.1)が続く。日本で最高得点を取
った北海道電力は、世界の中では9位であり、現況の割合は3−5%、将来への
投資割合は25%である。この25%は全体の中では比較的高いが、100%という
ところもある中では、必ずしも高いと評価はできない。日本の再生可能エネル
ギーの利用は極めて限られていることがわかる。

また、最高評価点の10は、地球温暖化が環境問題の最大のチャレンジであるこ
とを認識し、石炭発電はやめ、再生可能エネルギーが主流となる未来に向けて
準備している電力会社に与えられる得点であるが、残念なことに、そうした電
力会社は皆無であった。イベルドローラ社も再生可能エネルギー発電をすでに
ある程度行っており、将来に向けても投資しているが、大規模水力と原子力発
電の割合が高いため、10点からは程遠い得点であった。全体的に、71社のうち
41社(58%)は1.0未満、65社が3点未満のスコアであったことから、電力会
社は温暖化の脅威に適切に対応しているとは言いがたい。

日本の電力会社は、ことに、炭素制約社会に向けた対応をしているとは言いが
たい。当てにならない原子力に全面的に依存し、また今後電力の自由化の中で、
石炭の割合を増やそうとしている。さらに炭素税や国内排出量取引制度など、
脱炭素社会へ向けた制度構築に強く反対している。日本の電力会社は石炭を増
やすことは得策でないことを認識し、再生可能エネルギーを重要な温暖化対策
と位置づけて、導入促進にもっと努力すべきである。これは電力会社に投資す
る株主の利益とも一致し、また電気を使用する消費者側での二酸化炭素排出を
削減することとも一致することである。

本報告「パワー・ランキング−電力会社のスコアカード」の全文は、
http://www.wwf.or.jp/lib/climate/cl20050426a.pdf

              鮎川ゆりか(WWFジャパン、気候変動担当)


5.政策レビュー(2)
 「英国ソープの放射性溶液漏洩事故と日本」
                      大林ミカ(ISEP副所長)

英国セラフィールドの再処理工場THORP(ソープ)で、高濃度の放射性硝酸溶
液の漏洩事故が起き、施設が閉鎖されている。漏洩量は8万3,000リットルに
もおよび、20トンのウランとプルトニウムを含んでいるという。事故は、国際
原子力機関(IAEA)の国際事故評価尺度では、「深刻な事象」であるレベル
3に暫定的に位置づけられている。

直接的な被害者は発生しておらず周辺への放射性物質の漏れはないと発表され
ているが、IAEAの評価を待つまでもなく、事故そのものは大変深刻なもの
である。また、事故発見は4月半ばだが、実は漏洩は昨年の8月から始まって
いたにもかかわらず、従業員が対応を怠ったために9ヶ月間続いていたとする
報道も5月末になってでてきており、事故の深刻さのみならず、安全管理体制
のお粗末さにも大きな批判が集まっている。

漏洩が起きたのは使用済み燃料を硝酸溶液に溶かしてプルトニウムやウランを
分離する、放射線レベルが非常に高く遠隔操作で作業を進めている工程部分で
ある。4月19日に、施設を運営する英核グループ(British Nuclear Group: BNG)
によって事故が確認されており、オペレーターが硝酸液の中で溶けている使用
済み燃料の量を計算できなかったために、遠隔操作のカメラで調べて漏洩に気
づいたという。部屋の床はステンレスで覆われたプール状となっていて施設の
汚染は限られているとも発表されているが、強い放射線のためにすぐに調査に
はいることはできなかった。漏洩を処分し配管を修理するためには、特殊な遠
隔操作の機械をまず作る必要があり、事故の収拾や汚染除去には長い時間がか
かる。そのために、ソープは、運転再開どころか閉鎖される可能性の方が高い。

事故が明らかになったのは、折しも、日本の国会では六カ所再処理工場を稼働
させるための原子力関連法案二法が審議されている最中だった。うがった見方
をすればそのせいなのか、日本の使用済み燃料も再処理契約を結んでいるソー
プで重大事故が発生し、施設閉鎖さえ取りざたされているというのに、日本で
はこの事故についてほとんど報道がなされていない。英国でも一般紙で大きく
報道され始めたのは5月も半ば近く、9日にガーディアン紙やニューサイエン
ティストが取り上げた頃からだが、日本ではその記事の報道という形で、共同
伝が11日に概略を伝えたのが一般報道の最初である。その後も、ほとんど取り
上げられず、ようやく朝日新聞が、5月26日になって日本原電が敦賀市と東海
村の中学生のセラフィールド訪問ツアーを事故の説明をせずに募集しているこ
とに絡んでソープの現況を伝え、29日に、先の9ヶ月放置についての記事を報
道したという始末である。

実は、5月9日に、河野太郎衆議院議員が自身のメールマガジン「ごまめの歯
ぎしり」で、ガーディアン紙から引用したと思われる事故概要を的確に伝えて
いる。これが日本で初めてソープ事故が世間の目に触れ、大きな関心を集めた
最初ではないか。英国では、事故そのものの情報がマスコミに流されたのは、
英国政府ではなくアイルランド政府からだった。4月22日にアイルランド政府
は、英国政府からの情報として、事故の発生を伝えるとともに、かねてからの
主張通りソープを閉鎖するよう求める短い声明を発表している。このような状
況を考えれば、日本政府、ましてや主要顧客である日本の電力会社にソープ事
故の一報が伝わらなかったはずはない。日本原電の市民感覚とはまったく乖離
した危機感の無さにはあきれるが、原子力関連業界全体が、報道すら巻き込ん
で、意識的なだんまりを決め込んでいるとしか思えない。

そもそも、ソープで事故に限らず、英国の再処理産業の失敗と撤退は、かねて
から日本ではあまり報道が行われず、一般的にも知られていない。環境エネル
ギー政策研究所が事務局となり今年3月に立ち上げた「原子力長計中間とりま
とめ国際評価パネル(ICRC)」(座長:吉岡斉、九州大学教授)では、日本
核燃料サイクルについての評価を行っているが、評価パネルに参加している
イギリスのエネルギー政策コンサルタントのフレッド・バーカー氏は、英国放
射性廃棄物処分委員会(英国政府の指名した独立委員会) 委員でもあり、ソープ
を含めた再処理事業、原子力事業についての専門家である。バーカー氏は、3
月のICRCキックオフで招聘した際に、福井県のエネルギー政策検討委員会
で発言を行ったが、それによれば、英国ではすでに再処理事業の終了が視野に
入っており、二つの再処理工場のうちB205の閉鎖予想時期は2012年、今回の
大事故で数年早まりそうだがソープの閉鎖予想時期は2010年とみられるとい
う。そして、予定通り操業されたとしても、2012までに、英国は、分離された
プルトニウムとして142トン(うち海外顧客の使用済み燃料から37トン)、使
用済み燃料で4,100tUを保有することになるため、この膨大なプルトニウム
の備蓄量と相当な量の使用済み燃料をどう管理するのかが、大きな課題となっ
ているという。

英国では、再処理事業の行く末とこれらの課題を検討するために、90年代後半
から、規制当局、地元自治体、労働組合、環境活動家らからなるステークホル
ダーが参加する 「全国的意見交換」が、再処理の事業主体だった英国核燃料公
社(BNFL)によって運営されてきた。漏洩を9ヶ月放置という安全管理の
お粗末さやBNFLで過去に発生した日本のMOX燃料不正成型事件などを考え
ると、まだ努力は始まったばかりといえるが、セラフィールド再処理施設の「原
子力廃炉機構? the Nuclear Decommissioning Authority (NDA) 」 への移
管も実質的に議論してきている。開かれた原子力政策の一つのあり方であると
いえる。

原子力委員会長計策定会議の「中間取りまとめ」、再処理積立金法と改訂原子炉
等規制法の成立、「もんじゅ」の最高裁判決、ソープ事故報道にみられるマスコ
ミの一斉のだんまり。政府を含めた日本の原子力関連業界は、既成事実や疑似
状況のみの積み上げに汲々とするばかりである。しかし、どんなに言い繕って
も、六カ所再処理工場の事業見通しが好転するわけではないし、高速増殖炉が
実用化されるわけでもない。新しい未来を選択するために、閉じられた口を開
いて議論することから始めていくべきだろう。

ソープ事故概要およびバーカー氏講演内容について:
原子力資料情報室 http://www.cnic.jp/
CORE(セラフィールド地元カンブリア地方の市民団体)
http://www.corecumbria.co.uk/
福島県エネルギー政策検討委員会議事録
http://www.pref.fukushima.jp/chiikishin/energy/kentou.htm

                      大林ミカ(ISEP副所長)

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6.「お笑い原子力ムラ敦賀」(3)
  日野 行介(毎日新聞大阪社会部記者 今年3月まで福井支局敦賀駐在)

 「原発依存の街」、福井県敦賀市で原発マネーに頼るのは市役所に限らない。
民間企業も同様だ。
 敦賀港の近くに2棟が連なった平屋建ての赤れんが倉庫がある。米国の石油
会社が1905年に石油貯蔵庫として建設し、その後は地元の海産物会社が倉
庫として長く利用してきた。戦災を受けた敦賀にあって、貴重なレトロ建築と
して市民から親しまれている。この倉庫は現在市役所の所有だが、使い道が無
いままに放置されている。海産物会社から市に所有権が移る過程でも原発マネ
ーが介在している。
 03年5月、敦賀市は突然「日本原電が赤れんが倉庫を4億円で買い取り、敦
賀市に寄付する」と発表した。日本原電にとって何ら経済的利益は無く、寄付
の理由について、「地域振興に貢献したい」としか説明しなかった。
 しかし、この寄付は以前からウワサが出ていた。この海産物会社は若社長の
父親が当時、商工会議所の会頭を務めていた地元の名門企業だが、過大な設備
投資がたたり経営難に陥っていたからだ。
 この会社の決算を調べると謎はすぐに解けた。02年3月期決算で、02年度中
に入金確実な「未収金」として倉庫の売却益約3億9000万円が既に計上し、こ
の決算を黒字に持ち込んでいる。その結果、00、01年に続く3期連続の赤字決
算を免れていたことも分かった。4億円という買収額について、原電は「厳密
に不動産鑑定した結果」と説明するが、明らかにウソ臭いことが分かる。
 この海産物会社に取材を申し入れると、出てきたのは若社長と地元の地銀か
ら派遣されている役員。既に銀行の管理下に入っていた。決算のことを問うと、
若社長は観念したように「苦肉の策と言われても仕方ない。3期連続の赤字は
避けたかった」と明かした。3期連続の赤字決算となれば、金融機関がこの会
社への債権を第1分類(正常債権)から第2分類(要注意債権)と評価を変え、
一気に経営が傾く可能性があった。その後、若社長は開き直ったように、「事
故が起きれば風評被害もある。我々はそんな迷惑施設を受け入れているんだ」
とまくし立てた。「そのぐらいの利益を受けても当然だろう」という訳だ。関
係者が後に明かしたところによると、不動産鑑定で出された適正額は2億円だ
ったという。
 倉庫の現物寄付を受けた敦賀市もどちらかと言えば「被害者」だった。寄付
から2年経っても、使い道は決まっていない。使おうにも、建物が老朽化して
いるため補強工事には数億円かかる見通しだ。当然ながら市の持ち出しとなる。
「タダほど高いものはない」。敦賀市内にある原発寄付の施設はほぼ例外無く
赤字だ。一部の市議会議員からは市の財政を守るため寄付を制限するよう求め
る意見も出始めている。


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7.プロジェクトフラッシュ

● 「スモール・イズ・プロフィタブル」出版記念
                   エイモリー・B・ロビンス講演会
〜石油依存経済からの脱却と小規模分散型社会について〜
                   洞口 夢生(ISEPインターン)

ISEPでは、去る5月21日(土)、「自然エネルギー促進法」推進ネットワー
ク(GEN)と協力して、世界的に著名なエネルギー研究者であるエイモリー・
B・ロビンス氏を招き、同氏の著書「Small is Profitable」の日本語版「スモ
ール・イズ・プロフィタブル」の発刊を記念したシンポジウムを開催した。
 シンポジウムでは、現在の石油経済の危機とその危機に打ち勝つためをテー
マに、ロビンス氏の他に、槌屋治紀氏(株式会社シ
ステム技術研究所所長)と、山藤泰氏(ISEP理事、関西学院大学総合政策
研究科客員教授、翻訳者)を招き、お話しいただいた。
 飯田所長の開会挨拶から始まり、続くエイモリー・B・ロビンス氏の講演で
は、現在のアメリカの主な石油消費を占める交通、特に自動車について、その
車体の軽量化・燃費の高効率化・材料費の経済化等を通した、脱石油経済への
具体的なデータに沿った戦略が示された。また、現在の日本の石油依存体勢に
ついて、更なる低コストへの投資・省エネルギーの推進・分散型の自然エネル
ギーの推進に取り組めば、日本は世界をリードする国になれるとのことである。
 次に、槌屋氏の講演は、日本における石油依存経済からの脱却の可能性が
テーマだった。低炭素社会の実現のために、今までの原子力・石炭を大量に拡
大する
「ハードエネルギーパス」から、エネルギー利用効率の向上・再生可能エネル
ギーを中心とした「ソフトエネルギーパス」へと移行することが必要だという
ロビンス氏の主張を紹介した。また、発光ダイオード(LED)・ハイブリッド
カー・太陽電池・風力発電等におけ
る技術・日本での普及状況についても紹介した。
 最後に山藤氏は、今回省エネルギーセンターより出版された「スモール・イ
ズ・プロフィタブル〜分散型自然エネルギーが生む新しい利益〜」の翻訳者で
あるが、同書の中で、氏が特に興味を抱いたいくつかの事例について紹介した。
 石油経済の終焉を目前に控え、それを乗り越えていくための技術も確立され
てきた。世界をリードし、速やかに新しい技術・先進的な事例を取り入れてい
くことが今の日本に必要であることが実感されるシンポジウムであった。

* ISEPでは、翻訳者山藤氏と発刊元省エネルギーセンターのご厚意により、
「スモール・イズ・プロフィタブル?分散型自然エネルギーが生む新しい利
益?」(税込み定価5040円)を送料無料で販売しています。申し込みは
isep@isep.or.jpまで。


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8.「ISEPでのインターンシップ記」
                    堀 優基(ISEPインターン)

 2005年4月にミシガン大学天然資源環境大学院(環境政策専攻)での修士課
程1年目を終え、5月〜8月の大学夏休みを利用した約4ヶ月間、「MFO実証
検証」の共同研究インターンとしてISEPで勉強させていただくことになり
ました。
 僕の所属する大学院は学際的で、理系文系にとらわれず、様々な授業が提供
されています。1年目に履修した授業は、持続可能なエネルギーシステム、エ
ネルギー生産制度、産業エコロジー、天然資源コンフリクト管理、等です。今
まで文系一辺倒の政策学ばかり学んできた自分にとって、理系の授業履修はと
っつきにくいものでしたが、技術的な面も学ぶことで、エネルギー問題を深く
捉えることができるようになりました。また、所属学生のバックグラウンドは、
例えば、政府、企業の派遣留学、新聞記者、自動車エンジニア、など十人十色
で、そういった豊富な知識と経験、様々な問題意識を持つ学生との交流を通じ
て学べることは、授業に劣らず貴重な経験になっています。
 修士課程1年目はとても充実したものでしたが、僕の所属する環境スクール
は様々な角度から環境問題について学べる点で優れている一方、専門性を高め
ることが難しいという短所があり、薄く広い知識を身につけて終わりというこ
とになってしまうことも少なくないようです。ISEPでのインターンを通し
た集中的な研究活動とそれを関連付けた修士論文執筆は、専門性を高めるとい
う点で、僕にとって非常に価値のある経験になると確信しています。
 今回の研究題材にある「MFO」はMarket Facilitation Organizationの略
で、再生可能エネルギー市場を発展途上国で促進するためにコアとなって動く
団体(NGO、政府機関、企業等)を指すもので、既に多くの団体が「MFO」
として世界のいたる所で活躍しています。日本では、長野県飯田市の太陽光と
省エネを合わせた事業が、日本版「MFO」であるおひさま進歩エネルギー(有)
により行われています。僕は、5月下旬から、飯田市に住み込みで研究活動を
始めており、現地のステークホルダーの中に入り込んで、研究調査の充実はも
ちろんのこと、机上では体験できない現場でのリアルなやり取りを体験でき、
色々な面で貴重な経験を積むことができると思います。この機会を最大限に生
かすことができるように全力で取り組みたいと思います。


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