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1.  風発  「コペンハーゲン・コンセンサス」
                       飯田哲也(ISEP所長)

日本では、ほとんど話題にならなかったので、ご存じない向きも多いだろうが、
保守政権誕生後のデンマークの環境政策に多大な影響を与えた環境懐疑主義
にビョルン・ロンボルグがいる(注1)。風発の2003年9月号で一度取り上げ
たのだが、ロンボルグの動静は、今後の気候変動政治や自然エネルギー国際政
治とも無縁ではないため、その後の状況を紹介したい。

ロンボルグは、デンマーク・オーフス大学政治科学部の助教授で、もともと無
名で環境研究での実績もない研究者だったが、1998年初頭からデンマークの政
治紙(Politiken)で「地球環境はじつは良くなってきている」という趣旨の連載
をきっかけにして、同国で激しい環境論争を巻き起こした。このような無名の
助教授が、代表的な政治紙に連載枠を与えられること自体が異例なのだが、そ
の後、2001年にその連載を下敷きにしてケンブリッジ大学出版会から「The
Skeptical Environmentalist」[邦題「環境危機をあおってはいけない」(文藝
春秋社)]が出版されてからは、ネーチャーなどの科学誌を巻き込んで、環境論
争も国際的に拡がった。

さらにロンボルグ自身がラスムセン現デンマーク首相(自由党)との個人的な
親交で知られ、同政権の誕生後の2002年2月には、「ロンボルグのための研究
所」(環境評価研究所、IMV)が設立されたことでも話題になった。ロンボルグ
は、2002年2月26日にIMV所長に就任した。その後、国際的な環境政治の場
に顔を出したのは、ヨハネスブルグ・サミットである。ただし、IMVは公式に
は政府機関ではなく独立の研究所であるため、ロンボルグはデンマーク政府代
表団には加わらず、ヨハネスブルグにフラッと現れてBBC主催の討論会に参加
した後、戻っていっただけなのだが、これにはウラ舞台がある。当時、デンマ
ークは欧州議長の席にあった。ロンボルグは、ヨハネスブルグ・サミット開幕
の一週間前にラスムッセン首相に個人的に会い、サミットに向けた欧州委員会
の文書を批判し、数日後にニューヨーク・タイムスに掲載される予定だった自
身の論考を手渡したという。その結果、ラスムッセン首相がヨハネスブルグ・
サミットで行った演説は、概ねロンボルグの主張(環境保全よりも経済成長優
先)に沿ったものとなり、さすがに京都議定書の否定まではしなかったが、そ
の重要性を強調することは避けたのである。このあたりに、自然エネルギーを
巡る国際合意に関して、欧州連合(EU)が強い政治力を発揮できなかった要因の
一つがあると思われる。

その後、ロンボルグがIMVの所長として実施した、最大かつ最後の「秘密プロ
ジェクト」が、2004年5月24日?28日に行われた「コペンハーゲン・コンセン
サス」である。開催を巡ってIMVの理事全員が辞任するなど、いわく付きの会
議である。会議内容は、人類が直面している「10の問題」を抽出し、ノーベル
賞受賞者3名を含む「世界的」な経済学者が、総額500億ドル(約5兆円)をこ
の10の問題に配分するというものだ。その結果は、優先順位の高い順に、HIV
問題に270億ドル、饑餓問題に120億ドル、貿易自由化(費用はほとんど不要)、
そしてマラリア対策への130億ドルで、500億ドルをすべて使い終わったので
ある。「10の問題」に含まれていた唯一の環境問題である地球温暖化問題に対
しては、したがって1円も配分されなかったわけだ。これに対して、ヴァルス
トロム前欧州環境委員長やテプファーUNEP議長も参加して行われた批判的な
並行会議(コペンハーゲン・コンシャス(良心))では、割引率が大きいために
長期的な危機が軽視されていること、配分する費用が例えば軍事費(世界全体で
100兆円規模)に比べて小さすぎること、そもそも経済学者が政治的にバランス
の良い資金配分ができるのか、といった批判が行われた。なお、コペンハーゲ
ン・コンセンサスは、その後2004年11月に、ケンブリッジ大学出版会から
「Global crises - global solutions」(地球的な危機?地球的な解決策)という
タイトルでその結果が出版されたほか、4年後にも、再び開催される予定とな
っている。

ロンボルグが「登場」した政治的な文脈には、言論上は1960年代後半から主流
となった新環境主義に対する保守主義の反発がある。レーガン政権やサッチャ
ー政権の時代に政治の主流では環境主義がズタズタにされた米国や英国と異な
り、ドイツやとくに北欧では、環境主義は思想的にも政治的にも主流を維持し
ている。その陰で、政治的には保守派、経済的には産業主義の人々は、ずっと
抑圧された感覚を持っており、その政治的な情念と知的中立を装ったポストモ
ダンなスタイルが結びついて、ロンボルグという「鬼っ子」が生まれたのであ
る。また、Politikenの編集長、ケンブリッジ大学出版会、ニューヨーク・タ
イムス、ワシントン・ポスト、BBCなど、一見リベラルで環境主義がやはり主
流のマスメディアの中に、ロンボルグの熱心な仲介者が登場したところにも、
今日的な歪みを見ることができる。すなわち、環境問題への実質的な取り組み
は遅々として進まない政治的な現実はさておき、言説上は環境主義が本流にな
ってしまったがゆえに、本流の言説に対する問い直しを試みたい「リベラル」
が、ロンボルグの環境陰謀にうまく乗せられている構図なのであろう。

ロンボルグは、コペンハーゲン・コンセンサスの後2004年8月にIMVの所長を
辞任し、いったんオーフス大学に復職したのだが、今年(2005年)2月になって、
「彼自身の『仕事』(=環境問題に関する論争)をする時間がない」という理由
で、オーフス大学も辞している。ロンボルグに最初に提供された仕事は、英国
5チャンネルのために環境問題に関するプログラムを作ることであった。コペ
ンハーゲン・コンセンサスを見ても、ロンボルグの照準は、気候変動問題に据
えられている。京都議定書は発効したものの、ロンボルグのような巧妙な「環
境陰謀ビジネス」の存在は、一応、警戒しておくべきだろう。

注1:Bjorn Lomborg。デンマーク語読みに従うと「ロンボー」と表記すべきだ
が、邦訳が英語読みに倣っているので,本稿でも「ロンボルグ」と表記する

                       飯田哲也(ISEP所長)


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2. 特集、「気候変動問題」
 先月、2月16日、ついに京都議定書が発効した。ひとまずは、良かったと
言っておく。このことがきっかけとなって、政府や企業、一般市民が、これま
で以上に温室効果ガス削減に取り組んでいくことになればいい。
 とはいえ、足元を見れば、国内の温室効果ガスの排出量は増加傾向にあり、
排出削減の方策も十分ではない。
 今回は前回に引き続き、京都議定書をめぐる国内の問題や炭素税の課題につ
いて、寄稿をいただき、「寄稿変動問題」を特集とした。ご執筆いただいた井田
氏、足立氏にはあらためて感謝する。

・寄稿1
「議定書の理解、まだまだ不十分」
                     井田徹治(共同通信社科学部)

 「異議なしと認め、そうに決します」―。一九九七年十二月十一日、京都会
議の全体委員会。極度の寝不足で霧がかかったような頭の中に、エストラーダ
委員長の木槌の音が響いた瞬間のことは、今でも鮮明に覚えている。右肩上が
りで増え続けてきた排出量のカーブを、国際協力で逆転させることを先進国が
約束をした、歴史的な瞬間だった。
 この時の解説記事中で、私は、関係者の予想を超えるスピードで対策が進み、
フロン全廃にこぎ着けたモントリオール議定書の例を引いて「大気中の二酸化
炭素濃度を安定させ、温暖化の脅威から来世紀の地球を救うためにはこの程度
の削減ではまったく不十分だ。今回の合意は温暖化対策のための小さな第一歩
に過ぎず、京都の合意を超えて社会が、どこまで先に進めるかに、地球の将来
がかかっている」と書いた。
 あれから七年。果たしてわれわれは、京都議定書を越えて、どれだけ先に進
むことができただろうか。議定書のメッセージをどれだけ深刻に受け止めただ
ろうか。最近の日本社会の温暖化対策の歩みは、早くなるどころか、どんどん
遅くなっているように感じられる。三年間をアメリカで過ごした記者の目には、
排出量取引の議論や再生可能エネルギー開発、グリーン電力市場づくりなど、
議定書を拒否しているアメリカの方が、ずっと進んでいるように見える。
 議定書が生まれたこの国で、議定書を拒否する彼の国の大統領に同調するか
のように「発展途上国が義務を負っていない不公平な条約だ」との批判が聞こ
えてくる。こんなことは今さら言うまでもないことだが、現在の温暖化を招い
た責任の大部分が先進国にあり、その対策も先進国が率先して取るべきである
との理念が、枠組み条約の長い交渉過程の中で合意された。議定書交渉のベー
スとなったベルリンマンデートの深夜にまで及ぶ交渉過程でも、あの京都での
不眠不休の二週間の交渉の中でも、この理念は生き続け、日本もそれに合意し
たはずだ。もとより議定書は完璧ではない。だが、この長い交渉の歴史を無視
して、議定書の「不備」を指摘するこの種の議論が、国際的に受け入れられな
いことは明白だ。
 だがちょっと待てよ。こんな情勢は、裏返せば、温暖化対策の重要性や国際
交渉の歴史、京都議定書の意義などを十分伝えてこなかったことの現れじゃな
いか―。メディアに身を置く者の一人として、自分の力のなさを感じずにはい
られない。

                     井田徹治(共同通信社科学部)


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・寄稿2
炭素税の検討状況と今後」
  足立治郎(「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、炭素税研究会)

 「炭素税(地球温暖化防止のための環境税)」は、90年のフィンランドを皮
切りに、英国など多くのヨーロッパ諸国がすでに導入している。日本も、京都
議定書の発効にともない、昨年末に政府内での議論が加速した。結果的には、
05年度からの導入は見送られたものの、継続的に検討することになった。

 炭素税が地球温暖化防止のための切り札のひとつとして大きな注目をあびて
いるのは、CO2削減に努力する個人や企業には経済的なメリットを与えること
により、すべてのCO2排出者に継続的な削減の努力を促すことができる点だ。
このような政策は、他にないといえる。

 ただし、今後、導入の議論は、まだまだ紆余曲折が予想される。なぜなら、
昨年末に出された案(環境省案および自民党環境部会・農水部会合同案)は、
問題が多く、導入反対派のみならず、賛成派であるNGOなどからも批判をあび
たからだ。その主な課題は次のような点だ。
 ・税率が低く(ガソリン1リットル当たり約1.5円)、環境保全効果があまり
期待できない。
 ・軽減措置が多く(軽油に対する2分の1の軽減など)、CO2削減効果を弱め、
公平性の点からも問題が少なくない。
 ・税収を基本的に温暖化対策に活用するとしているが、予算算定基準や評価
制度が示されていないため、本当に効果があがるか疑問。
 ・欧州諸国で一般的な、炭素税の税収を他の税の減税に充てる選択肢が示さ
れず、増税手段の一つに過ぎないとの懸念を払拭できない。

 既存エネルギー税との調整問題が今後大きな政治課題となると考えられるが、
昨年末にはその点の議論がほとんどなされなかった。既存の化石燃料に対する
課税は、経済産業省および国土交通省が所管している。炭素税導入と同時に既
存のエネルギー税を見直すとなると、これら省庁と環境省・農水省・財務省、
さらには、商工族・道路族・農工族を巻きこんだ大議論となり、議論が長期化
することも予想される。

 炭素税が導入された後、企業による新規の設備投資や消費者による商品の買
い換えが実際に始まるには、一定の期間が必要である。早急に炭素税を導入し、
温暖化防止型の経済社会に変革していく明確なシグナルを示すことが重要だ。
効果的で公正な形での炭素税の早期導入のため、市民・NGOの果たすべき役割
は大きい。JACSESや炭素税研究会は、政策提言や情報提供活動に尽力しており、
ぜひ御支援・ご協力をお願いしたい。(なお、論点の詳細は「環境税」(足立治
郎著、築地書館、04年7月発行)をぜひ御参照いただきたい。)

  足立治郎(「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、炭素税研究会)


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3.政策レビュー
「六カ所再処理工場-日本はアジアの核センターとなるのか?」
                      大林ミカ(ISEP副所長)

 1月21日に通常国会が始まり、6月19日の会期終了予定まで、150日間の議
会が開かれている。各省とも、法案成立のための国会詣でが続けられているが、
今回の国会には、SEENでも何度か触れた、核燃料サイクルについての法案も提
出されることになっている。
 政府が、2月18日に閣議決定し国会に提出した「原子力発電における使用済
燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律」案は、六カ所
再処理工場の操業を前に、採算性のない再処理事業への、新しい資金調達を行
うための法律である。
 法律の骨子は、毎年度、経済産業大臣が電力会社ごとに算定し通知する額を、
電力会社が「資金管理法人」に積み立てるものである。今後40年にわたって六
カ所再処理工場で再処理を行う、発生した3.2万トンの使用済み燃料について、
資金コストの発生を試算、すでに引当金として内部留保されているもの以外に、
足りない部分約5兆円を未回収費用部分として回収する。法律には明記されて
いないが、審議会の報告書では、使用済み燃料の発生より後に、市場参入した
新規事業者に対し託送料金を通じた資金調達を行うとされている。
 簡単に言えば、再処理工場にかかるコストが思っていたよりも相当高くつい
てしまい、また、電力自由化も始まって、運転が開始されれば負債となること
が明らかなため、「過去にさかのぼって」資金回収をしようというものである。
ただし、この試算そのものが低いという指摘もある。3.2万トンの処理は、工
場がフル稼働した場合の想定である。すでに六ヶ所再処理工場では処理できな
いとされている使用済み燃料3.4万トンの取り扱いについては、不思議なこと
に再処理の大義名分は適用されず、現時点では中間貯蔵しか記述されていない。
いずれにしても、このまま事業が進められれば、さらに大きなコスト負担を強
いられるのは確実だろう。
 その上、ここに来て、コスト問題だけでなく、核兵器に転用可能な核物質で
あるプルトニウムを取り出すことで著しく高まる核拡散性の問題が、世界的に
大きく注目を集めている。
 今年1月、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は、新しいウラ
ン濃縮と再処理事業の開始を5年間凍結し、核燃料を国際管理するという構想
を打ち出した。単なる事務局長の個人的構想ではなく、IAEAは昨年8月から専
門委員会を組織、2005年5月にニューヨークで開催される核拡散防止条約(NPT)
の再検討会議で提案するため、新しい核の国際管理に向けた議論を行っている。
 そして、去る22日、IAEAは、専門委員会報告書の全容を明らかにした。報
告書では、核燃料サイクル施設の国際管理によって「拡散のリスクが抑えられ
る」とされ、新規に始められる事業については、5年後の次の2010年のNPT再
検討会議まで凍結し、その間に国際的な管理体制を整えるという。先の六カ所
再処理工場の取り扱いはどうなるのか、大変興味深いが、報告書には、六ケ所
を東アジアの中核施設として国際的な共同管理下に置くことで、日本が域内の
濃縮・再処理事業を担うセンターとなる、という可能性も想定されているとい
う。2月28日から開催中のIAEA理事会でも報告書についての議論は行われて
いる。理事会のペランド議長は「多くの核施設を保有し、国際的なプロジェク
トである国際熱核融合実験炉(ITER)の誘致など国際的な取り組みに熱心な日
本は、(使用済み燃料の処理問題などで)韓国や台湾など周辺諸国のリーダーに
なれる」(2005.2.28.共同通信)と発言、日本がアジアの再処理ビジネスの中核
になるという、ぞっとするような未来に期待を寄せているようだ。
 しかし、一方では、究極的には濃縮ウランやプルトニウムなどすべての核兵
器転用可能な物質がなくなるべきであるとするエルバラダイ事務局長の発言も
ある。今回の提言は、喫緊には六カ所再処理工場の凍結、さらには、従来から
指摘されてきたNPTの条約上の不備である、核の軍事は禁止するが商業利用は
奨励し結果として核拡散を招いてきた現状に対する根本的見直しにつながる可
能性も残されている。
 国会での法案審議にあたっても、六カ所再処理工場がアクティブ試験に入る
前に、世界的安全保障に与える日本の再処理事業開始の影響について、大いに
議論が行われるべきである。

                      大林ミカ(ISEP副所長)


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4.京都での約束3
炭素税/環境税のアナウンスメント効果」
                    本橋 恵一(環境ジャーナリスト)

 炭素税ないしは環境税(以下、環境税に統一)導入に向けて、今年は節目に
なりそうだ。現在見直しが進められている、京都議定書目標達成計画(旧地球
温暖化対策推進大綱)では、CO2削減のための新たな対策が求められること
は必至だ。その中でも、炭素税が有力だということになる。まだまだ、この先
どうなるかはわからないし、環境税が導入されればすべて解決するという問題
ではないにせよ、環境を経済の中に組み込むことは必要だろう。
 今後、環境税が導入されるであろうことを前提に、今回は一つの注文をつけ
ておきたい。というのは、環境税を支払っているということが、きちんと消費
者に伝わるしくみにしてもらいたいということだ。
 旧環境庁時代より、審議会や研究会などの形で、環境税の導入はずっと議論
されてきた。その中で、大きく分けて、高率の炭素税によって抑制するか、低
率の環境税+税収によるCO2削減策という手段をとるかという二つの方法が
あった。そのうちでも、有力なのは低率の環境税ということに絞られてきたと
いうのが、現在の環境省案ということになる。
 低率の炭素税でも効果がある理由の一つとして、補助金の効果だけではなく、
アナウンスメント効果も挙げられる。だが、現在の環境省案では、その点に疑
問が残る。第1に、2000年代初頭での導入であれば、ゆっくりと効果が出てく
るものだろうが、京都議定書の第一約束期間直前では、それがどの程度まで期
待できるのかというのがある。だが、もう一つ重要なことは、課税段階が上流
部分に設定されている点だ。
 確かに、上流部分で課税されれば、徴税コストは低くてすむ。これが消費段
階であれば、徴税コストがかさみ、CO2排出削減対策に使えないということ
になる。
 もし、上流部分で課税され、その情報が消費段階にうまく伝わらないとした
ら、環境税の効果は小さなものになりはしないだろうか。そのこと以上に、多
くの人が知らないところで環境税が徴収されるというのは、どんな意味がある
のだろうか。環境税を負担するときには、その性格からいって、多少の痛みを
感じるものにしたい。なるべく払わないですむように思ってもらえるように。
 これは、政府の制度設計だけの問題ではなく、企業もまた、環境税の負担が
消費者に伝わるようにくふうしてほしいということである。電気料金やガス料
金、ガソリン代などの明細に記録しておくことはもちろん、その他にもいろい
ろなことができるだろう。すでに一部の石油会社が販売したように、CO2排
出権付きのガソリンなどを販売するということも可能だろう。

 消費者の知らないところで、負担している例として、RPS制度がある。自
然エネルギー普及のために導入した制度では、電気事業者に自然エネルギーが
義務付けられているものの、そのことが消費者に伝わっていない。そのため、
一般市民の間で自然エネルギーの利用への関心があまり広まっていないのでは
ないかと考える。
 環境税を市民がコミットメントしにくいようなものにしてはいけない。
                    本橋恵一 (環境ジャーナリスト)


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5. プロジェクト・フラッシュ
(ISEPが内外で取り組む活動からトピックスを紹介します。)

<< Sustainable Networking/ネットワーキング >>
国際シンポジウム「自然エネルギー2005:ボンから京都、そして中国へ」
 「アジア太平洋みどりの京都会議2005」関連イベント
 ハインリッヒ・ベル財団(ドイツ)、ISEP共催
         レポート 石森由美子、中野希美、佐々木育子(ISEP)

去る2月11日(祝)に開催した自然エネルギー国際シンポジウムの紹介をする。
当日はアジア太平洋地域からの招待者(多くは緑の党メンバー)と一般聴衆合
わせて300人以上が会場を埋め尽くした。第1部は「なぜ自然エネルギーが必
要か?」第2部は「自然エネルギー:各国の経験より」、第3部は「自然エネル
ギー:国際的プロセスと戦略」についてスピーカーが報告を行った。会場から
は盛んに質問が寄せられ、政策、技術、援助のあり方などについて活発な意見
が交わされた。

第1部の冒頭ではオーストラリア「緑の党」のブラウン議員が「気候変動は人
類最大の脅威」と訴え、アジア太平洋地域での自然エネルギー取り組みを強化
すること、海外投資・援助における自然エネルギー比率を高めるよう政府に働
きかけることを提案した。続いて気候ネットワークの浅岡代表は、21世紀まで
に世界全体で「50%の温暖化ガス削減が必要」と説明した。特に日本のCO2排
出量の80%を企業・公共系が占めているにも関わらず自主努力に委ねられてお
り、自然エネルギー拡大のための政策が乏しいと指摘した。そしてISEP飯田所
長は、経産省の政治的圧力によってRPS法が成立した経験を政治からの教訓と
して述べた。RPS法の結果として風力やその他の自然エネルギー技術市場が縮
小していると指摘。「自然エネルギーは民主主義によってのみ実現可能」と不透
明な行政的決定プロセスを批判した。一方で日本風力ファンドによる市民風車
やエコロジー金融商品、自治体による政策といった新たな取り組みも紹介され
た。

続いて第2部では、ドイツ環境開発フォーラムのユルゲン・マイヤー代表が、
太陽光や風力に恵まれていないドイツで自然エネルギーが拡大した背景を紹介。
国会議員が産業界の利害にとらわれず超党派で固定買取価格制度法を成立させ
たことを強調した。しかし半面、政府は毎年20億ユーロを石炭への補助金に費
やしているとし、ドイツのエネルギー政策に影の部分もあることを忘れてはい
けないと指摘した。 続いてグリーンピース・インターナショナルのレッド・
コンスタンティーノ氏が、フィリピン政府は世界で最大の地熱エネルギー生産
国となり、南西アジアでの風力発電の最大生産者となる計画であることを紹介
し、最後に韓国の自然エネルギーNGOネットワーク代表のチェ・ヨル氏が、市
民運動が政府のエネルギー政策変換に大きな影響を及ぼした経験を紹介した。
氏は今韓国では国を挙げてCO2を排除し、自然エネルギーを推進しよういう動
きが活発化していると述べ、「人間が自然を捨てれば、自然も人間を捨てるとい
う言葉がある。私たちも自然を生かしていかなくてはならない」と締め括った。

第三部でハインリッヒ・ベル財団のウンミュシッグ氏は、ボン会議が生んだ国
際行動プログラムの実施に向けた各国の足並みはまだ不揃いであり、国際的な
ネットワークの構築が不可欠だと主張。さらに、中国国立自然エネルギー開発
研究所の王氏によると、経済の急成長を遂げる中国にとって、エネルギー需要
の確保は現在の重要課題であり、新自然エネルギー法は、自然エネルギー開発
のための重要な政策の要となると述べた。最後に、自然エネルギーの国際的促
進にとって、ボン会議の国際行動プログラムの実施状況のモニタリングが会議
の成功を担保すると、ドイツのエコ研究所フリッチェ氏が訴えた。ボンから京
都、そして中国へ。飯田所長は最後に「未来を作るのは一人一人の意思。それ
を持って中国で再会したい」と呼びかけた。

本シンポジウムでは、NGOや市民団体が政治を動かし、自然エネルギー拡大へ
の歩みを大きく前進させる可能性の大きさを改めて感じた。また自然エネルギ
ーの名の元に廃棄物や大規模水力発電のためのダム開発が行われている問題、
国の擁護を受ける化石燃料産業との不当な競争など克服すべき政策課題が共有
された。そしてボン会議後の行動計画のフォローも提案され、次の中国会議へ
向けた力強いモメンタムを会場が共有できたことは、本会議の大きな成果であ
ろう。
         レポート 石森由美子、中野希美、佐々木育子(ISEP)


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6.「ISEPでのインターンシップ記」
           南原 順(ISEPインターン、京都大学地球環境学舎)

 私は現在大学院の修士1年生で、環境政策について学んでおり、昨年の9月
から半年間インターンとして勉強している。ISEPではグリーン電力の調査研究、
とくにGuarantee of Origin(原産地証明)、Disclosure(情報公開)といった海
外の自然エネルギーに関する法制度の調査に参加している。

 米国での電力の情報公開制度は、電力の自由化に伴って、消費者の知る権利
と選択する権利を確保する必要性から、販売電力の電源情報を開示する流れが
発展して生まれたものである。米国と欧州においてこの発電源証明は進んでお
り、米国ではDisclosure(情報公開)、欧州ではGuarantee of Origin(原産地
証明)という形で発展してきた。
 アメリカのDisclosureは、制度としては、カリフォルニア州で1998年に
Power Content Labelとして初めて導入され、現在20を超える州で何らかの
Disclosureが制度化されている。
 証明内容は、多くの州では電源構成と排出物のみだが、価格、契約条件、電
源構成、排出物といった内容を義務づける州もある。こういった、自身の購入
電力に関する表示が、毎月の電力料金の請求書に同封される形で消費者・需要
家へと提示される。
 RPSとThe Power Source Disclosure Programで定められている自然エネル
ギーの詳細が異なるなど、RPSとの関係性のなかで課題も見られるが、こうい
った制度はグリーン電力の普及を推し進める上で重要なものであり、日本でも
電力自由化が進行し、様々なグリーン電力プログラムが提供されるようになれ
ば、電力商品に関しての情報公開が必要になってくるのではないだろうか。

 インターンに関して言えば、大学での研究も重要だと思うが、研究室を離れ
てこちらに来て感じることは、海外のグリーン電力の先進事例を調べると同時
に、国内でグリーン電力に関する諸制度がどのように形作られようとしている
のか、調査や種々の委員会、勉強会などへの参加を通じてその現場の雰囲気を
知ることができることだと感じている。また研究、調査をする際に、例えば私
が調べた内容をまとめ投げかけると、フィードバックがすぐに戻ってくる、関
連した過去の調査などから知見を得られるという環境が非常に良いと感じてい
る。インターン終了までにきちんと調査をまとめ、結果を出していきたいと思
っている。

         南原 順(ISEPインターン、京都大学地球環境学舎
          環境マネジメント専攻修士1年 地球環境政策論所属)

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