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1.  風発 「倒錯」国家のエネルギー政策
 (飯田哲也、ISEP所長)

いよいよ米大統領選挙を目前に控え、世界中の目がアメリカに注がれている。今
のところ、ケリーとブッシュのどちらが勝つか、まったく予測がつかない。アメ
リカという国の本質を見据えて、どちらが勝っても、長い目で見れば大差はない
とするシニカルな見方もあるが、破局的で何をするか解らない恐怖を喚起する
ブッシュ政権とブッシュ自身を見れば、やはりこの選挙は、「世界の明日が決す
る日」(K・v・ウォルフレン)と見るべきであろう。

実際、P・クルーグマンやウォルフレンが繰り返し指摘するように、ブッシュの
アメリカでは、ウソとプロパガンダによって真実が曲げられ、「テロとの戦争」
という戦時状況に国民を駆り立てることによって、民主主義や自由といった価値
が倒錯している。市場原理主義と大企業優遇のブッシュ政権では、低所得者層は
むしろ「被害者」であるにもかかわらず、中絶やゲイといった民主党的な「リベ
ラルな思想」をやり玉に挙げ、これが「アメリカの古き良き家族」を解体してい
るという具合に、そうした層の「漠然とした不安」をキリスト教原理主義や大衆
迎合主義によって上手に逸らすことに成功している。

マッカーシズムが吹き荒れたあとに出版された「アメリカの反知性主義」(R・
ホーフスタッター)は、40年以上も前に書かれた本どころかブッシュ政権につい
て書かれたのではないかと錯覚するほどだ。例えば、「本質的にマニ教的思想を
もつ根本主義者は、世界を絶対善と絶対悪の戦場と見なし、妥協を軽蔑し、いか
なるあいまいさも許さない。」(同書P117)というのは、対テロ戦争の論理その
ものであり、「たいした違いがないと思うことには重要性を見いだすこともな
い。」(同書P117)ことから、福祉や環境政策の切り捨てが行われてきたのであ
る。アメリカ社会におけるこうしたビジネス界の富裕層と戦闘的なナショナリス
ト、およびキリスト教原理主義との結びつきは、アメリカ建国の直後から歴史的
にずっと強化されてきたのであり、ブッシュ政権支持の根強さの背景が伺える。

日本を振り返ってみると、アメリカとは異なるものの相似形の政治アクターが、
一般的な良識からかけ離れた「倒錯」を強化してきたように思われる。そして、
この2つの国のエネルギー政策は、「エネルギー守旧派」の立場でじつに良く似
ている。反京都議定書であること、ハードパス(化石燃料や原子力の巨大電源)
重視であること、核燃料サイクルに非論理的な傾斜をしていること、自然エネル
ギーに冷淡で水素利用を前面に出していることなどである。

アメリカのエネルギー政策は、大統領選の結果如何で、変わる可能性を残してい
る。日本のエネルギー政策は、直面する核燃料サイクルに対する判断と京都議定
書発効に対する対応が問われている。

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2.  寄稿

石狩市民風車の建設着工、出資募集開始
杉山さかえ(NPO法人北海道グリーンファンド)

みなさまにはSEEN10月1日号にてご案内させていただきましたとおり、2004年10
月15日、北海道石狩市の市民風車建設と市民出資の募集がはじまりました。おか
げさまで市民出資の窓口である(株)自然エネルギー市民ファンドには、すでに
100件を越すお問い合わせをいただいております。

2005年3月運転開始をめざしたこの石狩のプロジェクトでは、石狩市と市民の協
働による全国初の取り組みと北海道グリーンファンドによる計画との、合わせて
2基の風車が建設されます。この事業化に向けての準備をはじめたのはいまから4
年前のことです。最初の市民風車「はまかぜ」ちゃんが誕生する前年、北海道電
力は「風力発電事業からの電力の買い取りを一時中断する」ことを発表しまし
た。2002年度以降の買い取り再開は不明とのことで、「はまかぜ」ちゃんが誕生
した後は、しばらく北海道で市民風車の建設は難しいだろうと思っていました。
しかし、いつ再開されても良いように、道内でいくつかのポイントを選定し風況
調査を開始しました。

また、自然エネルギーのより一層の促進を求めて「自然エネルギー促進法」推進
ネットワークが進めていた「自然エネルギー促進法」は成立を阻まれてしまいま
した。そして代わりに昨年施行された「電気事業者による新エネルギー等の利用
に関する特別措置法」は、私たちの取り組む市民風車のみならず、自然エネル
ギー全体の普及促進にとって追い風になるような社会制度をつくりだすに至って
おりません。

しかし、転んでも踏まれても、したたかに立ち上がるのが私たち市民です。昨年
春、競争率8倍という北海道電力の風力発電事業からの買い取り枠を「抽選」で
引き当てた唯一の市民プロジェクトがこの石狩の市民風車です。市民による持続
可能なエネルギー社会への転換を着実に形にしていくため、この石狩のプロジェ
クトを成功させようと北海道から全国各地を駆け回り、環境エネルギー政策研究
所(ISEP)を始め、多くの方々の協力をいただき、事業計画を確実なものとする
ことができ、こうして風車建設と出資募集を開始することになりました。今回の
経験は市民による風力発電事業を行なう上でもプラスとなり、各地域での取り組
みを支援する上で生かされていくことと思います。

私たちは未来のエネルギーの選択を人任せにしない自発的な取り組みが今後も各
地で行なわれていくことで、日本のエネルギー政策が変わっていくことと思いま
す。その参加の窓口を広げるため、地域のみなさんとともに市民風車を広げる活
動しています。そして現在、石狩のプロジェクト成功に向けてスタッフともども
全力で取り組んでおります。ぜひいっしょに市民風車をまわしましょう!

★石狩市民風車への出資にご関心のある方は自然エネルギー市民ファンドまでお
問い合わせください。ホームページ( http://www.greenfund.jp/ )にて出資資
料請求が行なえます。

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3. ドイツ便り Nummer 6

排出量の国際・国内取引制度創設とNGOの新たな役割
(大石りら、ISEPドイツ駐在研究員)

2005年元旦、EU域内における排出量取引がいよいよ始動する。

その直前、EUの政治的圧力によって、ロシアの京都議定書批准がついに決定。今
年最大の世界的ビッグニュースである。ロシア政府にとっては、批准への政策転
換は、地球環境問題重視の立場からではなく、世界貿易機関(WTO)加盟交渉を
促進させるための政治的判断にすぎないかもしれないが、温室効果ガス増大によ
る地球温暖化は、とりわけシベリアの凍土地帯の地下にある永久凍土の融解は、
ロシア経済に深刻な打撃を与えるだろうという予測がある。

京都議定書の発効によって、グローバルな環境政策は大きく前進することが可能
となった。京都体制に関するルールは、その大部分が2001年のCOP7(マラケシュ
会議で決定されたもので、(マラケシュ合意の和訳などが下記からダウンロード
可能。 http://www.gispri.or.jp/kankyo/unfccc/COP7020121.html )

京都メカニズムは、地球温暖化対策に「市場原理」と「ビジネス」を新しく導入
するものである。京都議定書により定められた数値目標であらわされる排出制約
の課せられる先進国企業は、排出量取引制度導入によって、“市場の完全性”に
基づいて-“市場の完全性”などもちろんフィクションにすぎないが、-最終的
には最適状態、すなわち最小コストで排出量削減目標が達成できると期待され
る。京都メカニズムは、多くの企業にとってビッグなビジネスチャンス到来の可
能性を秘めており、アメリカ・カナダ・オーストラリアなど京都議定書を批准し
ていない国々にも、ビッグビジネスととらえている企業は多い。すでに動き出し
ているCDM(クリーン開発メカニズム)やJI(共同実施)をベースとしたプロ
ジェクトも数多く存在する。世界銀行のプロトタイプカーボンファンド
( http://carbonfinance.org )、オランダ政府によるJIやCDMのクレジット買
い取り制度であるERUPT/CERUPTなどが、先渡しやオプションというかたちの先行
取引はすでに行われている。

先見の明のあるいくつかの日本企業は数年前から海外支社と社内排出量取引を実
験的に行っているが、日本政府自体が真剣に取り組まねばならないはずの京都メ
カニズムの制度的導入は、すでに完全に出遅れてしまっているが、国際排出量取
引に関わる国際機関IETAは日本政策投資銀行がバックアップしており、日本の主
要な大手企業や電力会社などが(なぜか)すでに加盟メンバーとなっていること
にも注目せねばならない。(活動内容や加盟メンバーリストについては、英語の
ホームページ http://www.ieta.org を参照。今年11月初めにスイスのチュー
リッヒで開かれる年次会議では、経済産業省の代表もスピーチを行う予定。)

EUの排出量取引スキームは、2003年10月にすでに発表されている。(略称ETS 
英語版のダウンロードは次から可能。排出量取引に関心がある人は必読。
http://europa.eu.int/eur-lex/pri/en/oj/dat/2003/l_275/l_27520031025en00320046.pdf )
EU加盟国はこのETSを国内法に移し変えて国内割当計画(NAP、
http://www.bmu.de/files/nap_kabinettsbeschluss.pdf )を2004年3月31日まで
に完成させねばならなかったのだが、期日を守ることが出来たのは、ドイツを含
めてわずか五カ国のみであった。ドイツ連邦環境省は、EUのETSが発表される以
前の2001年一月より、NAP創出のための作業部会を組織して準備していた。作業
部部会は、連邦環境省、経済省、経済開発協力省、財務省、外務省、防衛省、内
閣府の各代表、ドイツ経団連にあたるBDI、ドイツを代表する国際企業や国内企
業(主に自動車産業、エネルギー産業など)や金融機関、連邦議会の各政党、ド
イツ労働組合、NGO(WWF、地球の友ドイツ支部BUND、DNR、GERMANWATCH)のそれ
ぞれの代表によって構成された。

ドイツは京都議定書に定められた(1990年比で)21%という削減目標数値のうち、
すでに2002年までに19%削減を実現しているが、NAPによってドイツ産業界の排
出量は、EUのETSの第一段階(2005~2007)において年間4億9500万トンに制限さ
れることとなった。(環境省資料Nr.253/04)これは環境省やNGOが提案していた
よりも低い数値であり、これに対してはNGOサイドに強い不満を残す結果となっ
た。作業部会では、CDMやEU域内JI、その他の重要テーマについても討議されて
いるが、ここでは紙面の制限上立ち入らない。

NAPをめぐるドイツ経済界との妥協の結果、今年度計画されていた環境税の値上
げは見送られることになった。しかし、環境税、排出量取引、自然エネルギー促
進法の三つは、地球温暖化防止とエネルギー転換を同時実現するための三本柱で
あることに変わりはない。(ドイツ版NAPの概要とその背景については、下記か
らダウンロード出来るドイツのエコ研究所フェリックス・マテスの論文を参照の
こと。日本版NAPの可能性についても書かれており、重要な論証を多く含んでい
るので絶対に必読である。WWFジャパンの見事なイニシアティブによる。
http://www.wwf.or.jp/lib/climate/20040928b.pdf )しかしながら、EUのETSと
ドイツ版NAの双方に対して、ビジネスサイド、NGOサイドのそれぞれからさまざ
ま批判が寄せられている。それらについては、いずれまた、別の機会にまとめて
取り上げることとする。

それから、ドイツの排出権取引制度に関連して、是非ともここで指摘しておかね
ばならないことは、連邦環境省直属の環境庁に排出量取引所(略称DEHST)が創
設されたことである。これは、環境省の役割強化に結びつく重要ポイントである
ことを強調しておきたい。DEHSTにはこれまで約2400のドイツ企業が排出量取引
申請手続きを完了させており、2005年度から始まるEU域内の排出量取引に参加す
る。

また、グローバルな排出量取引市場の急速な拡大の波に乗じて、世界中で“ビジ
ネスNGO”と呼ばれる利潤追求を目的とするNGOの仮面を被ったニセNGOが増えて
いる。完全な情報開示を拒否して不透明なCDMやJIをベースとする国際プロジェ
クトを推進するような“ビジネスNGO”に対して、真のNGOは対峙して行かねばな
らなくなる。

それゆえに、国際的なNGOとシンクタンクが協力して、京都メカニズムのひとつ
であるCDMプロジェクトの完全な透明性や情報公開義務の要求、実際の排出量削
減の検証、CER(削減量のクレジット)の認証・発行、そしてまた、プロジェク
ト全体の評価のための社会的基準・環境的基準の導入が極めて重要となる。とり
わけ、WWFインターナショナルが提案するゴールド・スタンダードは内容もたい
へん素晴らしい。CDMプロジェクトの評価基準として、それが真に「持続可能な
発展」に貢献するものであるかどうかということを吟味することはたいへん重要
なポイントであると思われる。(ゴールド・スタンダードの概要と背景について
わかりやすくまとめたもの。ダウンロード可能。絶対必読。
http://www.panda.org/downloads/climate_change/thegoldstandardoverview.doc )
現在において、WWFの提案を補完、または具体化する方向で、環境NGOのグローバ
ルな統合組織であるCAN(Climate Action Network)のメンバーによるゴールド・
スタンダードの模索が続けられている。ヨーロッパ各国やその他の国々の政府環
境政策担当者、研究者、NGO、ビジネス関係者のあいだのエキサイティングな議
論のなかで多彩な創造的提案が行われている。(この議論については、次号の
「SEEN」参照。)

創造的なアイディアがたくさん盛り込まれた議論が、日本においても専門家のあ
いだだけではなく国民全体を巻き込んで大いに盛り上がって欲しいと心から願
う。さまざまなヴァリエーションを組み合わせつつ、日本オリジナルの国内版
CDMプロジェクト実施のためのルールを創出して、地域格差を是正して“地方の
活性化”に役立てることなども実現可能かもしれない。(これについては、次号
において自然エネルギー促進との関連において再論する予定。)日本で生まれた
排出量取引制度に関わる個性的なアイディア、独創的なプロジェクトが有意義で
転用可能な内容であれば、海外においても大きな関心と注目を集めることは間違
いないだろう。

来月は、ヨーロッパで開かれるいくつかの会議報告などをふまえて、「排出量取
引と自然エネルギー促進」というアクチュアルなテーマについて、もちろん、ビ
ジネス至上主義からではなく、市民社会の視点から論じてみたいと思う。

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