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1. 「風発」        飯田哲也

知識人失格!

5月14日、佐藤栄佐久福島県知事が近藤駿介原子力委員会委員長に面会し、核燃
料サイクルの見直しを要請した。「権限、情報を持っている委員長が、全人格を
かけて判断すべきだ」と要請した佐藤知事に対する近藤委員長の回答が、「核燃
料サイクルは循環型社会の理念に適うもので、これを放棄することは日本の哲学
を変えることになり、レッドカードだ」という趣旨であった。(佐藤知事の要請
文はhttp://www.isep.or.jp/satouchizi.pdfに掲載)

近藤委員長が、本当にそう考えて発言したとすれば、そもそも内容において知識
人失格である。近藤委員長も引用した循環型社会形成推進基本法にも明記されて
いるように、発生抑制、再利用、再生利用、熱回収、処分の順に優先する原則は
常識であり、ゴミの量を飛躍的に増大させる再処理は、循環型社会の理念に真っ
向から反している。

しかし、近藤委員長が政治的な思惑から発言したとすれば、不誠実さにおいて、
やはり知識人失格である。佐藤知事の問いかけは、知事としての政治的な責任を
超え、人間としての誠実さにもとづいて、まさに「全人格をかけて」真摯に行わ
れたものである。しかし、近藤委員長は、翌週18日に催された原子力委員会の定
例会合(http://aec.jst.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/indexh.htm)でも、佐
藤知事の要請に一言も触れることもなく、少し不誠実な姿勢とは言えまいか。

結局、この社会の「知識人」のありように問題は帰着する。毎日新聞5月17日号
の連載(http://www.isep.or.jpに再掲)で「時間泥棒はだれ?」と題して書いた
とおり、この国の現実政治に直接動員されている「知識人」には「失格者」が多
く、良質な知識人は審議会にもあまり参加せず、現実政治に直接働きかけること
は少ないように見える。良質な学者のすべてに政治ロビーイングをせよと言うつ
もりはないが、せめてアカデミズムの世界で「悪貨」を駆逐して欲しいと思う。

一方で、新しい社会の姿が次々とかたちを表しはじめている。

サンフランシスコ市は、今年2月17日に、従来の電力会社から離脱し、10年以内
に電力供給の4分の1をグリーン電力に転換することを目標に、太陽光発電や風
力発電、省電力に取り組むという法案を可決した。2000年暮の電力危機の後、カ
リフォルニア州では、エンロンなど大企業の利益ゲームと化した電力自由化に対
して、「コミュニティによる電力選択」(Community Choice Aggregations,
CCA)を定める法案AB117に署名・発効している。CCAとは、自治体の民主的な決
定によって、その地域のすべての需要家に対する電力会社や電気の種類を選べる
というもので、「民主主義の復権」と「地域による(電力市場の)管理」を重視
している。旧来の「エネルギー公社」に対して、CCAを「エネルギー共社」と呼
びたい。(月刊オルタ2004年5月号に寄稿「電力自由化の失敗から市民のオルタ
ナティブへ」http://www.parc-jp.org/index.html)

また、昨年11月から取り組んできた市民エネルギー調査会を、いよいよ公表する
日(6月8日:記者会見、6月17日:円卓会議)が近づいてきた。内容は公表を
待って頂きたいが、市民エネルギー調査会のおもしろさは、ワークスタイルにあ
る。いわゆる「オープンソース型」(リナックス型)で、国内の多くのNGOや専
門家がそれぞれのリソースを持ち寄り、メーリングリストで議論を重ねながら内
容を作り上げてきた、いわば「ヴァーチャル・シンクタンク」となった。経済産
業省の総合資源エネルギー調査会があらゆる意味で「20世紀」を表象しているの
に対して、「21世紀型社会」のありようを予見させるプロジェクトとなった。

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2. 寄稿1

環境と経済‐炭素税はなぜ必要か‐
気候ネットワーク 常任運営委員 畑直之

「環境と経済の両立」と言われる。しかし地球温暖化を始めとする環境問題は危
機的な状況にあり、地球や地域の環境が破壊されてしまえば経済も生活も成り立
たない。本当は「環境なくして経済なし」なのである。

従来、「環境は経済にとって負担である」と考えられてきたが、今や日本のよう
な先進国では、環境負荷を放置して利潤追求を行う企業は厳しい状況に置かれる
ようになって来ており、今後もその方向が強まることは間違いない。

しかし現時点では制度や政策は十分とはいえない。温暖化の原因となる二酸化炭
素(CO2)削減に自主的に取り組む企業は、CO2排出を放置する企業より、対策コ
スト分だけ負担増になる可能性がある。

そのような状態をなくすには、すべての企業が環境コストを負担した上で横一線
で競争するようにルール化すれば良い。例えば、日本でも公害問題が顕在化して
それに対処する排出基準などの法制度が整えられたので、水質汚濁や大気汚染の
防止対策のコストはすべての工場・企業が負担した上で横一線で競争している
(これを守らないのは犯罪の範疇である)。

しかし温暖化問題ではまだそこまでのルール化が進んでおらず、CO2を多く排出
する石炭火力発電はCO2排出ゼロの風力発電より圧倒的に優位にある。

そこで求められる政策が、環境コストを市場経済に織り込む環境税などの「経済
的手法」と呼ばれるものである。環境税とは、環境負荷が大きなものに課税し、
その値段を高くすること(価格インセンティブ(動機)効果)によりその使用を
減らし、環境負荷を減らす政策手法である。環境税のうち、温暖化防止(CO2削
減)のために化石燃料(に含まれる炭素)にかけるものを、炭素税と呼ぶ。

ではCO2削減には、公害対策のような排出規制ではなく、なぜ税という政策手法
が適しているのだろうか。

最大の理由は、石油などの化石燃料起源のCO2はあらゆる所から排出されるの
で、直接規制は現実的でなく、日本全体をカバーできる炭素税が最適の手法だと
いうことである。大工場や発電所は規制できても、クルマや家庭はとても無理だ
ということは考えればすぐに分かる。次に炭素税ならば、CO2削減コストを織り
込んで、経済を温暖化防止型に変えることができるということである。これに関
係するが、フリーライダー(サボって得する人)が出ないというのも重要であ
る。例えば大工場や発電所だけにCO2削減を義務付けると、それ以外の対象は削
減努力を怠る可能性が高い。さらに炭素税の良い所は、継続して効果が続くとい
うことである。つまり省エネすればするほど税が節約できるので、技術力のある
企業や熱心な個人はどんどん削減を進めてどんどん得をすることができる。ま
た、今ある税の仕組みが使えるので、行政のコストや企業の手間が小さくて済む
という利点もある。

炭素税は極めて公正で効率的な政策であり、温暖化防止のために必要不可欠と言
える。

(フジサンケイビジネスアイ2004年5月1日掲載稿を再掲)

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3. <<新企画>> ドイツ便り Nummer 1

ドイツ連邦環境省の政策シンクタンク共同研究プロジェクトの最終報告書発表
ISEPドイツ駐在研究員 大石りら

旧首都ボンにおける国際会議“Renewables 2004”の開催を目前にして、5月12
日に現在の首都ベルリンにおいて、ドイツ連邦環境省主催の専門家会議が開かれ
た。環境省の政策シンクタンクであるドイツ航空宇宙センター所属のテクニカル
熱力学研究所(Deutsches Zentrum fur Luft- und Raumfahrt, Institut fur
Technische Thermodynamik), エネルギー環境研究所(Institut fur
Energie-und Umweltforschung), ヴッパータール気候、環境、エネルギー研究
所(Wuppertal Institut fur Klima, Umwelt und Energie)の代表者らが、三年
間にわたる共同研究プロジェクトの最終報告を行った。

ドイツにおける再生可能エネルギーの利用・拡大に向けて、環境省はそれぞれの
エネルギー導入が環境に最適化されたかたちで行なわれるために重要なアスペク
トについての多数の研究を国内研究機関に要請した。上記の政策シンクタンクに
よる共同プロジェクトの中心的課題は、それらの研究結果をまとめ上げて、「未
来における持続可能なエネルギー供給」のための総合戦略構想を打ち出すことで
あった。そこでは、2050年までの再生可能エネルギーの長期的な発展プロセスの
なかで、さまざまな再生可能エネルギーの潜在的な利用可能性、将来予想される
技術開発とコスト削減、経済システム変化がエコロジーに与える影響、再生可能
エネルギー促進強化による経済効果などのダイナミックな相互関係の分析にとり
わけ重点が置かれている。必読文献である。

(最終報告書のタイトルは、“ドイツにおける再生可能エネルギー利用促進の自
然生態系(エコロジー)最適化”。ドイツ語の原題は“Okologisch optimierter
Ausbau der Nutzung erneuerbarer Energien in Deutschland”である。 独語の
最終報告書の完全版は285ページだが、縮約版のほうは46ページ。縮約版の英訳
はボン会議で配布される予定だが、まもなく環境省のホームページからもダウン
ロード可能。http://www.bmu.de/ )

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4. プロジェクト・フラッシュ
(ISEPが内外で取り組む活動からトピックスを拾って紹介します。)

<< Sustainable Networking/ネットワーキング >>
『自然エネルギー2004直前シンポジウム』開催報告

当研究所は、5月22日に、「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク(GEN)と協
力して、『自然エネルギー2004直前シンポジウムーシンポジウムー自然エネル
ギーの爆発的普及を目指してー』を開催しました。これは、6月1‐4日にボン
(ドイツ)で開催されるドイツ政府主催の自然エネルギーに関する国際サミット
"Renewables 2004”(自然エネルギー2004)に向けた日本国内の会合の第2弾と
して、2月に引き続いて開催したものです。

シンポジウムでは、まず自然エネルギーに直接、間接的に取り組んでいる国内の
環境NGOからの報告として、中島正明さん(グリーンピース・ジャパン)、山岸
尚之さん(世界自然保護基金ジャパン)、波多江芳枝さん(国際環境NGO
FoEジャパン)、山本将さん(地球環境と大気汚染を考える全国市民会議
)の各氏から、各団体の自然エネルギーに対する取り組みと自然エネル
ギー2004に向けた抱負が報告されたあと、当研究所副所長の大林ミカから、自然
エネルギー2004に向けた環境NGOとしての取り組み戦略を総括しました。

後半のパネルディスカッションでは、自然エネルギー事業者から、可児浩一郎さ
ん(日本風力発電協会)、正田剛さん(日本自然エネルギー株式会社)、中村成
人さん(風力発電事業者懇話会)、環境NGOからは平田仁子さん(気候ネット
ワーク)と岩崎玲子さん(財団法人みやぎ・環境とくらし・ネットワーク
/ストップ温暖化センター宮城)をそれぞれパネリストとして迎え、当研
究所所長の飯田哲也をコーディネーターとして、日本国内の自然エネルギー促進
のあり方をめぐって、熱のこもった討議が行われました。

当研究所では、自然エネルギー2004で公式のサイドイベントを開催する予定であ
り、今回の直前シンポジウムで共有された課題と最後に合意された宣言を、自然
エネルギー2004の成果に結びつけていきたいと考えています。(笹川桃代)

★パネルディスカッションの概要を含む報告や合意された宣言、自然エネルギー
2004の詳細等は http://www.isep.or.jp内特設ページを、またISEP主催の公式サ
イドイベントについては本メールマガジン末尾の「お知らせ」をご覧ください。

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5. 寄稿2

アメリカのエネルギー事情
(アメリカ・デューク大学からISEPに1ヶ月間のインターンシップに来ている市
嶋文雄さんの寄稿です。)

アメリカの道路で辺りを見回すと、私の10年前の小さなトヨタ車が巨大なSUV
(Sports Utility Vehicle)に囲まれて走っていることが多い。現代の厳しいエネ
ルギー事情とは無縁かのように、アメリカでは戦車のような燃費を持つこのSUV
が大人気で、その売れ行きが伸び続け、一人当たりのエネルギー消費量も右肩上
がりである。

アメリカの一人当たりのエネルギー消費量は世界で群を抜いてトップにたってお
り、一般国民の大多数はエネルギー事情には無関心である。関心のある人々も、
「実際余分のお金を払ってまでそれに貢献するのは本当にごく一部の人間に限ら
れる」とアメリカのグリーン電力大手のグリーン・マウンテン社
(http://www.greenmountain.com/)の職員が話していた。全米のグリーン電力購
入者数は約40万人にとどまる。この40万人以外のエネルギー事情への無関心さを
象徴しているのは、アメリカの原油輸入量の増大ではないだろうか。

ブッシュ政権下のエネルギー政策も時代に逆行しているのが現状である。2003年
にブッシュは国外へのエネルギー輸入依存度を減らす目的で、国内の石油生産増
大のために石油会社への補助金や掘削禁止区域の開放、原子力発電の援助、拡張
をしようとするエネルギー政策を提案した。この政策には代替エネルギー研究推
進への補助金も多少盛り込まれていたが、代替エネルギーを市場に参入しやすく
するような連邦制策などの根本的なサポート案は何も含まれていなかった。この
法案は可決されなかったが、ブッシュ政権下での代替エネルギーのポジションは
かなり低い。

アメリカで最初のRPSが導入されてから5年以上経ち、クリーン・エネルギーの導
入量目標も多くの州では日本に比べて高いものとなっている。しかし、RPSを導
入している州はまだ15州にとどまり、代替エネルギー発電量は全米の総発電量の
2%に過ぎない。DUKE大学のあるノース・キャロライナ州では電力自由化はされ
ておらず、グリーン電力を購入する選択肢もない。経済性を考えると、電力会社
はわざわざ従来の化石燃料よりも高い代替エネルギーを利用して電気系統に入れ
る設備投資をするインセンティブがほとんどないのが現状だ。自然エネルギー推
進の難しさが良く分かる例である。

しかし、ここ数週間にアメリカ国民のエネルギー意識を変える大きな変化が訪れ
ようとしている。それはアメリカの原油価格の急騰である。中国とアメリカの原
油需要増大、そして不安定な中東情勢も重なり原油の価格は上がり続けている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX, http://www.nymex.com/) の原油市場が過去最
高値の1バレル41ドルに到達したという出来事は、朝日新聞や日本経済新聞の1面
記事にさえなった。その後も、最高値の水準での取引が続いている。この価格の
上昇には、米国社会自身の石油の浪費が、一因とはいえ作用していると思われる
ことから、国民にエネルギー事情のことを考えさせるいいきっかけとなってい
る。

石油の生産がピークを迎える時期にはさまざまな仮説があるが、アメリカのエネ
ルギー省(Department of Energy)の楽観的なシナリオでさえ2050年にピークと
予想している(http://www.energy.gov/)。今回の原油価格上昇はそのピークを示
す一つの警笛なのではないだろうか。石油生産のピークを示唆しているのはそれ
だけではない。今年の初めに世界の石油大手ロイヤルダッチ・シェル社は自社の
原油埋蔵量の20%減を緊急報告し社長は辞任に追い込まれた。

単純なようだが、石油価格が上がり始めてからは、友人でカー・プール(車の相
乗り)をする人が増えたり、自分のトラックを売り、より燃費のいい車に買い換
える人は少なくない。このような消費行動の変化は、ガソリン・ポンプから出る
石油の値段の上昇のように、分かりやすく目に見える形で、あまりにも安すぎた
石油の値段に気づくことでおきている。このような目に見える指標を増やすこと
が、国民の意識を変えるための最も重要なことのように感じる。極端な例だが、
1970年に起きた石油危機や、2003年にアメリカのオハイオ州周辺で起きた大停電
は良い例である。このような危機が起きたことにより、あらゆる政策転換がアメ
リカでも日本でも行われたのだ。何かしらのエネルギー危機を再度迎えずにエネ
ルギー政策の転換を行う必要があり、今回の石油価格上昇がアメリカのエネル
ギー政策のターニング・ポイントになることを願う。

--

1. 「風発」

あらためて問われる「国」と「公」
環境エネルギー政策研究所(ISEP) 所長 飯田哲也

毎日新聞のNPO欄で連載を始めることになり、その第1回の原稿を用意している
ときに、ちょうどイラク人質問題をきっかけとする「自己責任」問題が吹き上
がった。自衛隊派遣問題から世論の目をそらすために、政府がそのような言説を
垂れ流すことは、もちろん容認はできないが、「お上」に迷惑を掛けたと考える
時代錯誤のオヤジが多い「政府」の思考法としては理解できる。いっそう不気味
だったのは、これに草の根ナショナリズムが呼応し、記者クラブというタコツボ
に入っている大手メディアも、一時はほぼ同じ論調にはまった。その後、「自己
責任」論を問い直す論調が盛り返してきたことが救いだが、日本社会の危うさを
実感させられた一瞬だった。すでに多くの識者が論じた「自己責任論」(例えば
京都精華大学松尾真氏の論は秀逸である)をここで展開するつもりはないが、そ
れにしても下品極まりない発想ではないか。あえてジェンダーバイアス的に比喩
すれば、「閉じこもった下品なオヤジ国家」に転落するか、それとも「開かれた
紳士社会」を目指すか、知識人の責任は重いといえよう。(『国策というウソ』
(「NPO発」毎日新聞朝刊4月19日、http://www.isep.or.jpに再掲)

もう一つ、公共性を問う重要なテーマは、六ヶ所再処理工場の扱いである。政府
の対応は、六ヶ所再処理工場の稼働を前提とした19.6兆円のバックエンド費用が
あたかも社会的に正当化されたものとして、現在は、これを託送費用に上乗せし
てすべての電力需要家から徴収する制度化と、六ヶ所再処理工場のウラン試験の
準備が並行して進んでいる状況である。ところが、肝心の核燃料サイクルに正当
性がないと考える人が少なくなく、報道されているように、自民党の核燃料サイ
クル特別委員会や原産年次大会などでも異論が相次いでいる。米国でもMIT
(http://web.mit.edu/nuclearpower/)やハーバード大学
(http://bcsia.ksg.harvard.edu/BCSIA_content/documents/repro-report.pdf)
から相次いで再処理が不利であるというレポートが提出されている(なお、ハー
バード大学のSteve Fetter教授が、5月末から6月はじめにかけて日弁連の招へ
いで来日する。この問題に関して青森や国会で講演を行う予定である)。

ところで、筆者が3月に意見を発表した原子力委員会の「ご意見を聞く会」の後
に、原子力委員会から「ご質問」が寄せられているので、その回答を含めて、
ISEPのウェブサイトとメルマガで報告していくことにしたい。

資源エネルギー庁は「新エネルギー」の普及を目指す上で、大きな課題として浮
上している系統連系の小委員会を4月7日から立ち上げた。この系統の問題は、
技術面と制度面の課題が入り交じっているだけでなく、人もモノも情報もすべて
電力会社に囲い込まれているため、とくに議論の難しい課題である。しかしなが
ら、これはエネルギー政策における公共性そのものであり、今後も市民側からの
いっそうの検証と提言が求められる。(『送電線は誰のものか』「エネルギーデ
モクラシー第4回」Hotwired Japan,
http://www.hotwired.co.jp/ecowire/tetsunari/040413/)。なお、GENの2003年
度活動報告書に詳細な系統連系研究会の報告を載せているので、併せて参照され
たい(5月22日開催のGEN総会で配布、http://www.jca.apc.org/~genでも公開予
定)。

(お知らせ) 前号の「風発」で紹介した国立公園と風力発電の関係について、加
筆した小論が「国立公園協会誌」に掲載されます
2. 政策レビュー

原子力政策に開かれた議論の場を
- 持続可能なエネルギー政策を実現するために -
環境エネルギー政策研究所(ISEP) 副所長 大林ミカ

1950 年代半ばから国策として進められてきた日本の原子力政策は、今、大きな
曲がり角に立っている。電力需要の停滞、電気事業の自由化の流れなどから、原
子力を強力に推し進める経済的メリットが失われつつある。

一方で、国と電力会社によって「ブルドーザーのように」進められてきた原子力
政策に対する地域の反発も相次いでいる。高レベル放射性廃棄物の最終処分の問
題を筆頭に、国際社会に対する核不拡散の責任、地域社会の分裂、大規模な事故
リスクに対する不安、電気事業の自由化など、日本の原子力産業が抱える問題は
多い。

また、切迫する問題として、六ヶ所再処理工場の「ウラン試験」(天然ウランを
用いた試験)や「アクティブ試験」(実際の使用済み核燃料を用いた試験)があ
る。日本の原子力政策の柱である核燃料サイクルは、高速増殖炉でのプルトニウ
ム利用を基本路線として進められてきた。しかし、1995年の高速増殖炉原型炉
『もんじゅ』の事故以来、高速炉サイクル計画が破綻し、もともとは余剰プルト
ニウムを処分する方策にすぎなかった軽水炉でのMOX利用(プルサーマル)が、
あたかも本来の目的であったかのように浮上している。資源効率の面から見て
も、経済性から見ても、プルサーマルの実施には大きな疑問が残る上に、海外再
処理などで日本が保有する38トンのプルトニウムを処理する見通しも立っていな
い。

にもかかわらず、そのプルサーマルを前提として、後戻りのできない六ヶ所再処
理工場のアクティブ試験が来年にも実施されようとしている。今こそ立ち止まっ
て日本の原子力政策を再考する時に来ているのではないか。

(本稿は、本年4月23日開催「第37回原産会議年次大会」NGOセッションのための
サマリーです。全文は、オリジナルに加筆後、http://www.isep.or.jpに掲載し
ましたのでご覧ください。)

3. プロジェクト・フラッシュ
(ISEPが内外で取り組む活動からトピックスを拾って紹介します。)

<< Focus/重点プロジェクト >>
「みんなのグリーン電力」 グリーン電力応援サイトが立ち上がりました!

日本で初めてのグリーン電力のポータルサイト「みんなのグリーン電力
が、4月22日、アースデイの日に公開されました。

グリーン電力」とは、いつも使っている電気を自分たちで選べるプログラムで
す。これまで、環境エネルギー政策研究所では、研究や国際会議、セミナーなど
を通じてグリーン電力に取り組んできましたが、「みんなのグリーン電力」で
は、一般の方々や企業に広く知っていただくために、グリーン電力プログラムに
よって生まれた商品、利用している人の体験談などの紹介も織り交ぜながら、グ
リーン電力に関する最新情報をお届けしたいと思っています。

「みんなのグリーン電力」は、1)自然エネルギーに関心のある方はもちろんのこ
と、消費やライフスタイルでも環境問題に興味を持つ方、2)新しい環境活動に関
心のある企業、3)新しい環境ビジネスを検討している企業などに訪れて頂きたい
と考えています。

「みんなのグリーン電力」の他、グリーン電力に関する新しいイベントや「商
品」の紹介なども計画中ですのでご期待ください。

ぜひ「みんなのグリーン電力」を応援してくださ
い。(大林ミカ)

★「みんなのグリーン電力」編集委員会:鮎川ゆりか(WWFジャパン) 、飯田哲
也・大林ミカ・中村雄洋(以上、環境エネルギー政策研究所)、青木美貴(日本
総合研究所)、正田剛・戸塚勝博(以上、日本自然エネルギー)、上岡裕・古谷
臨(以上、エコロジー・オンライン)、枝廣淳子(ジャパン・フォー・サスティ
ナビリティー) 、工藤拓毅(グリーン電力認証機構)、冨田秀実(ソニー)、
船木成記(環境コミュニケーション&世代交流デザイン「SOW」/博報堂)

<< Sustainable Policy Studies/政策研究 >>
六ヶ所村・再処理工場の行方

2002年2月に使用済核燃料貯蔵プールでの水漏れが確認されて以降、六ヶ所村の
再処理工場の一連のスケジュールは停滞を余儀なくされた。とはいえ全面停止し
たわけではなく、建設工事も運転開始準備も着々と進められた。延期されたのは
ウラン試験、そしてその前提となる保安規定のみである。トラブルによる品質保
証体制見直しが行われているにもかかわらず、放射性物質を使わない化学試験ま
では淡々と進められた。品質保証体制の見直しは3月末、ウラン試験の実施要領
については4月はじめに、ともに原子力安全・保安院によって承認され、地元青
森との安全協定が結ばれれば、今年7月にもウラン試験に突入するという段階に
ある。

一方で、使用済核燃料の全量再処理、プルトニウム抽出・利用という方針を今後
も続けるのか、核燃料サイクル政策をめぐる状況は揺れ動いている。高速増殖炉
計画は1995年の原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ火災事故以降、遂行される
可能性はほとんどなくなった。核燃料サイクル開発機構と日本原子力研究所の合
体という行政再編の流れからも、「もんじゅ」は、せいぜいプルトニウム専焼炉
の道しかないと思われている。プルサーマルも、BNFLの燃料データ捏造事件によ
る頓挫から3年を経て、再び実施に向けた動きがはじまったが、実現の道はまだ
険しい。そんな中、4月23日に開かれた原子力産業会議主催のシンポジウムでも
全量再処理方針は見直すべしという意見が多く出された。

原子力委員会の原子力利用長期計画の見直し作業などにより、再処理が国策でな
くなる日もあり得るのに、現場での作業の進行はまったくちぐはぐで強引であ
る。ウラン試験の前提となる化学試験の詳細データの公開さえ、まだ行われてい
ない。(竹村英明)

<< Sustainable Networking/ネットワーキング >>
RES2004、環境エネルギー政策研究所現地イベント

環境エネルギー政策研究所は、6月にドイツで開催される自然エネルギー国際会
議(RES2004)の期間中の6月1日に、ボン大学でワークショップ「日独韓・自然
エネルギーを巡る議論:市場と政策、何が違いを作るのか?」を開催します。

自然エネルギーの促進に欠かせない政策的取り組みを実現するためには、国政レ
ベル、自治体レベル、市民レベルにおける総合的な連携と実践が必要となりま
す。ワークショップでは、これらのセクターから代表的な人々を集め、風力発電
を中心に自然エネルギーの普及によって環境と経済の新しい循環を作ったドイ
ツ、太陽光発電は導入量・生産量ともに世界一となっているが他の自然エネル
ギー市場が未だ育っていない日本、さらに、ドイツに匹敵する固定価格買い取り
制度を導入して野心的な自然エネルギー促進を試みている韓国、の三カ国による
協働の可能性を議論します。なお、11月には北京で世界風力会議、韓国テグ市で
ソーラーシティ国際会議と、立て続けに自然エネルギー関係の国際会議の開催が
予定されており、RES2004の熱気や成果がそのまま、東アジアの自然エネルギー
促進の気運となっていくことが期待されます。(大林ミカ)

★ワークショップ「日独韓・自然エネルギーを巡る議論:市場と政策、何が違い
を作るのか?」

日時 2004年6月1日、14:00-17:30
場所 ボン大学にて、ドイツ・ボン
日独通訳付き
*ご参加を前提としたイベントの詳細は、環境エネルギー政策研究所までお問い
合わせください。

参加予定者:
ハンス・ジョセフ・フェル(緑の党国会議員、ドイツ)
ヘルマン・シェア(社民党国会議員、ドイツ)
日本の国会から数名(自民党、民主党など、日本)
リー・ブヨン(ウリ党国会議員、韓国)
ジョ・ヘニョン(テグ市市長、韓国)
飯田哲也(環境エネルギー政策研究所、日本)
キム・ジョンダル(キョンプグ大学、テグ・ソーラーシティ国際会議事務局長、
韓国)
リー・ピリヨル(環境運動連合、韓国)
その他、自然エネルギー産業界(ドイツ、日本、韓国)

★RES2004の詳細は http://www.isep.or.jp内特設ページをご覧ください。

<< Sustainable Community/地域社会 >>
北九州市視察報告

今回、研究の一環として、北九州市のエネルギー政策の現状と動向を知るため、
エネルギー関連施設、団体を視察しました。同市は古くから製鉄の町として、同
時に「七色の煙を吐く煙突」、「大腸菌も住めない海」を持つ公害の町としても
知られていました。しかし、主婦層を中心とする市民運動から、行政、企業と一
体となった取り組みを経て、現在では環境の町として注目を集めています。中国
大連市への公害対策技術協力や北九州市エコタウンでのリサイクル事業などが有
名で、公害の克服の経験を活かすとともに、静脈型産業への転換を試みていま
す。

エネルギーに関する施設としては、1.5MWの風車10基が並ぶ響灘、エコキャンパ
スとして太陽電池、燃料電池等を持ち、パッシブソーラーシステムも取り入れた
学術・研究都市などが注目されます。また、ハード面のみではなく、若松区の
NPO7団体が議論を行う若松環境ネットワーク、NPOによる門司港レトロでの電気
自転車レンタサイクル事業、省エネ教育を行っている港が丘小学校、環境ミュー
ジアムなど様々な活動が展開されており、関係者の方に実際にお話を伺うことも
出来ました。

環境をキーワードとして施策を進める北九州市では、エネルギーもその一分野と
して検討されており、上記のNPO関係者をはじめ、アイデアと実行力を持った
方々に多くお会いできたことで、今後の発展性を感じました。(山下紀明、ISEP
インターンシップ生、京都大学地球環境学大学院環境マネジメント専攻)

4. 寄稿

市民が育む風車に「逆風」
自然エネルギー市民ファンド事務局 菊池卓郎

日本初の市民風車「はまかぜ」ちゃん(北海道浜頓別町)の成功に触発され、市民
風車建設の機運が日本各地で大いに高まり、「わんず」(青森県鰺ヶ沢町)・「天
風丸」(秋田県天王町)がその先陣を切りました。しかし、それから1年が経過。
残念ながら、これら3基に続く市民風車は未だ現れません。

SEEN読者の皆さんならよくご存知でしょうが、今の停滞状況を引き起こした最大
の原因は、昨年4月の新エネルギー利用特措法施行です。これに伴い、主な電力
会社による風力発電の買い取り価格は、いわゆる「焚き減らし」相当水準もしく
はそれ以下の3円/kwh台まで引き下げられてしまいました。これとは別に「環境
価値分」を市場で売却できることになってはいますが、電力会社に課された新エ
ネルギーの利用義務があまりに小さいため、環境価値分を真っ当な価格で売却す
るのがとても難しくなっています。

また、風力発電に適した立地が多い地域の電力会社が入札・抽選を導入したこと
も、大きく影響しています。昨年は33万kwの入札・抽選枠に対して204万kwの応
募が殺到しました。言わば6基の風車のうち5基は電気を買ってもらえないという
状況です。今年は更にその枠が5万kw程度にまで激減するとも言われています。

嬉しいことに、石狩・大間・秋田港に計画された市民風車がその激戦を制して枠
を獲得しましたが、それでも未だ、環境価値分売却には手を焼いています。まし
てこれら以外の市民風車計画には、二重の壁が立ちはだかったままです。市民風
車への「逆風」が「追い風」へと変わる日が早く訪れるよう、働きかけを続けて
いきたいと思います。

★自然エネルギー市民ファンド: http://www.greenfund.jp

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