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5.ルンド大学IIIEE留学記 第3回
                      澤木千尋(ISEP研究員)

12月13日にはルシア祭が大学構内で行われ、サフランブレッドやジンジャ
ークッキー等がキッチンに並びました。そして、24日のクリスマスには、皆
家族とゆっくり過ごすというのが習慣であるため、ルンドの町はどこもお店を
締めひっそりとしていました。

今回は、学校の授業で学んだ、2009年にOrsato氏によって紹介された企業
によるサステイナビリティ戦略について紹介したいと思います。

■4つの異なるサステイナビリティ戦略
Orsato氏は、企業による一般的なサステイナビリティ戦略を、それぞれの企業
にとって望ましい競争上の優位性(低コストvs. 差異化)、又は焦点(組織の
プロセスvs.商品・サービス)に応じ、4つのステージに分けて紹介していま
す。

Orsato’s (2009) generic sustainability strategies

戦略1、環境効率
この戦略は、運営上の効率を高め、商品生産や組織上のプロセスにおけるコス
トを大幅に削減するよう再設計し、それによる環境への影響が追加的な収入源
となるというものです。Orsato氏は、環境効率の向上により、資源利用の向上
やイノベーションへのブレークスルーとなり、更には産業間の共生(symbiosis)
にも繋がりうると言及しています。また、この戦略はB2Bが適しており、特に
農業関連産業における共生(symbiosis)、例えば、副産物をバイオエネルギー
生産事業者と売買し、それを活用するといったことが可能であり、そのポテン
シャルは大いに高いといえます。

戦略2、ビヨンド・コンプライアンス・リーダーシップ
これは、企業はその産業におけるサステイナビリティ・リーダーとなるために
クリーナー・プロダクションに関する規制をクリアする等の努力をし、ポジテ
ィブな評判を構築するという戦略です。たとえば、ISO規格を取得すること
などが挙げられますが、取得には数年かかり、また維持にもコストなどがかか
るため、より企業にとって困難なものとなります。しかしながら、メディアの
標的となる重工業や知名度のあるブランドを有する企業にとっては、この戦略
は評判低下のリスク回避のためにも最も適しているといえます。

戦略3、エコ・ブランディング
これは、生産プロセスからシフトし、実際に環境への影響に配慮した商品を提
供するという戦略です。環境配慮に関する適切な情報が表示され、又、消費者
が追加料金を払う意思があれば、当該商品は「環境にやさしい」商品としてブ
ランディングされ、更にその商品が競争力を有することになります。

戦略4、環境コスト・リーダーシップ
これは、企業が商品を低コストで生産し、同時に環境へのインパクトも大幅に
減らすという戦略です。たとえば、環境配慮型商品に対し消費者が追加料金を
支払う意思がなく市場になじまない場合に、一つの同じ製品を生産するための
資源利用を減らし、それが費用削減に繋がるということです。たとえば、包装
関連の企業が環境規制に則り、環境負荷を減らすよう、原材料を変更するなど
商品の環境設計を試みるということが挙げられます。

もちろん、比較的高コストとなる差異化は、低価格戦略にも起こりうることも
あります。たとえば、マクドナルドとバーガーキングは低価格を基本に競合し
ていますが、その中で再利用可能なパッケージを導入するなどの差異化も計っ
ています。しかし、これら4つの戦略の枠組を設けることにより、より簡潔な
環境戦略の理解を促し、その理解をもって各企業は自信のポジションを選択し
決定することになります。もっとも、これらは各企業のポジションの確立を促
すものであって、1つの戦略のみに固執するのではなく、他全体の戦略を見据
える必要があります。

[参考文献]
Orsato, R. J. (2009). Sustainability Strategies - When does it pay to be
green? : Palgrave Macmillan.

                      澤木千尋(ISEP研究員)
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2.青森エネルギー紀行(12)「究極のエコエネ実験」
                     森治文(朝日新聞青森総局次長)

 11月まで青森も例年に比べて暖かい日が続いていたが、どうやら東京から
新青森まで延びた新幹線がついでにシベリアから寒気も運んできたようだ。つ
いに本格的な冬が到来した。青森の気候はだいたい東京と1カ月ずれるという
のが実感だ。9月は東京の10月、10月は東京の11月、逆に4月は東京の
3月と1カ月遅れという具合。桜が咲くのが4月下旬だから、だいたい当たっ
ていると思う。ただし、12月から2月の冬だけは未体験ゾーン。寒さに耐え、
雪に耐え、そして膨大なエネルギーを消費する季節でもある。
 その冬に向け、6世帯による究極のエコエネ生活が六ヶ所村でスタートした。
新築した2階建ての「スマートハウス」6軒は、東北電力の送電網とは直接つ
ながってはいない。電気の供給はすべて風力と太陽光。NAS蓄電池(ナトリ
ウム硫黄蓄電池)を駆使し、各世帯が24時間いつでも不自由なくエネルギー
が使える。車は自宅前に備え付けた充電スタンドを電源とするプラグインハイ
ブリッド車(PHV)。日本風力開発とトヨタ自動車、パナソニック電工、日立
製作所の4社共同による、一般住居を対象とした世界初のスマートグリッド実
験だ。
 かつて米国でバイオスフィアといわれる巨大な密閉空間に長期間にわたって
科学者らが生活し、究極の自給自足を試みる実験があった。現代版ノアの方舟
などと称されたが、電力会社の送電網と無関係に、自宅の屋根の太陽光パネル
など閉鎖的なエネルギー環境の中にスマートハウスもいわば、エネルギー版ノ
アの方舟。そう考えると心躍らされるものがある。
 この5LDK床面積120平方メートル、高気密高断熱のスマートハウスの
実験は、日本風力開発のメンテナンスなどを担当する現地採用の社員の家族ら
が入居して9月にスタート。11月のなかば、現場が報道関係者に公開された。
 実際の生活空間は見られなかったが、家の中の一部には入らせてもらった。
家具などはこれから入れるという居間の床はフローリング、エアコンあり、テ
レビに配電盤、ごく普通の一軒家という風情だ。違うのは使うエネルギーはH
EMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)によってすべて「見える化」
され、コントロールが可能だということ。テレビモニターや携帯端末などでそ
の時点の電気の消費量が表示されるほか、その電気が自宅の屋根の出力10キ
ロワットの太陽光パネルか、それとも8キロ離れた日本風力開発の二又風力発
電所の発電か、はたまた日立が設置した出力100キロワットの太陽光発電か、
どこから来ているのかもすぐ分かる。あっ、そうそう参加企業からも分かる通
り、ガスはないオール電化である。
 「見える化」が家庭の節電意識を高めるのはよく知られたところ。だが、
2012年7月まで続くこの実験の興味深いのは、「まずは好きなだけエネルギ
ーを使って快適な生活をしてもらう」(関係者)という。
 9月から今年の年末までは入居家庭に対して「見える化」をシャットダウン
する。そうやってデフォルトの各家庭の消費量を見たうえで、電力会社供給の
電気と、今回の閉じた送電網の中での電気による二酸化炭素排出量の差を出し、
そのあとで「見える化」で省エネ意識を促す。電気に使用量に加え、料金も提
示して節約にどう結びつくかも見るという。加えて蓄電機能をまじえて、ピー
ク時に必要な発電量もはじき出す。
 実験に用意した風力、太陽光の出力とNAS蓄電池を持ってすれば、どんな
に6棟が同時に大量の電気を使っても、電気が足りなくなるということにはな
らない。ただ、実験ではわざと送電を止め、各家庭が従来通りに生活できるた
めには、屋根からの電気も想定しながら自宅に取り付けた蓄電池などにどれほ
どの電気を貯めておけばいいのか見るという。
 スマートグリッドの実用化に向けた実験としてどれほどの二酸化炭素削減効
果をもたらすのか、はたまた、旧来の火力や原発を排除した究極のエコエネ生
活の可能性を切り開けるのか、楽しみではある。国と違い民間ベースの実験で
もあり、商用化するために結論は早いだろう。ネックは最終的にはコストにな
るだろう。
 六ヶ所村の地図を見ると、スマートハウスや風力発電所、その送電線がまさ
に、日本原燃の核燃料サイクル施設のすぐ北側を取り囲むようにある。ここだ
けを見ると、次世代をかけた「エネルギー戦争」の様相にも見えるのは私だけ
だろうか。

                     森治文(朝日新聞青森総局次長)
2.青森エネルギー紀行(11)「終わりのはじまり?」
                     森治文(朝日新聞青森総局次長)

 11月2日に東京であった「原子力政策大綱の見直しの必要性に関する有識
者ヒアリング」で、青森県の三村申吾知事が公の席では珍しく気色ばんだそう
だ。
 「そのようなお考えなら、現在お預かりしているモノはただちにお持ち帰り
いただきたい」。
 預かっているモノとは言うまでもなく、六ヶ所村に一時貯蔵している高レベ
ル放射性廃棄物のこと。原子力委員会の委員の1人が、核燃料サイクルを見直
し、再処理をしないで直接処分を考える必要性に触れたことに、カチンと来た
らしい。
 知事としては当然の反応だろう。核燃サイクル政策がひっくり返るようなこ
とになれば、これまで国に協力して多大な「迷惑施設」を引き受けてきた県民
への申し訳が立たない。「安全に安全を重ね」と国と日本原燃に注文をつけ、そ
うやって県民を説得してきた自らのプライドも傷つくことになる。加えて、将
来も見込んできた多大な交付金や税収はいったい、どうなるのか。知事の胸の
内にはそんな思いすべてが去来したのではなかろうか。
 だが、原子力委員がそんな発言に至ったのも、もっともなことだ。伏線は今
年9月、原燃が再処理工場の試運転終了の目標を2年先送りして2012年
10月とすることを明らかにしたことにある。延期の表明は実に18回目。昨
年1月に同2月から半年引き延ばしたのが16回目、その8月に1年2カ月先
の今年10月へと17回目の延期、そして今回。もう、だれも原燃の言う「約
束」など信じてはいまい。政府は恐ろしくてとても国民に聞けないと思うが、
もし、「再処理工場は稼働すると思うか」という世論調査をやってみたら、どん
な回答になるだろうか。
 そんな核燃政策に疑いを持つことはきわめて常識的。しかも陰でささやかれ
るのでなく、国の公開の場で表明された「本音」として歓迎されるべきものだ
ろう。
 本音といえば、今回の2年という「長期延期」の可能性について、実は9月
に表明されるよりも前に原燃の関係者から「本音」として聞いていた。つまり、
現状の「プランA」を断念し、「プランB」に切り替えようと。それには時間が
かかるから小刻みに延期するのではなく、じっくり取り組むために大胆な延期
を世間に公表するのが望ましい、というのがその人の意見だった。
 それ以上はくわしくは教えてもらえなかったが、A炉とB炉とある再処理工
場のA炉でトラブルが続いていたから、予備としてこれまで使わずに来たB炉
で改めて試験をするのだろうということは察しがついた。だが、模擬廃液で実
験を始めることは延期の際の説明で初めて知った。それはつまり、本物の廃液
ではまたトラブルが起きる恐れがあると認めたようなものだ。ガラス固化体の
技術は未確立であり、政策的に核燃サイクルはできるかどうか分かりませんと
表明したに等しいのではないか。
 原燃はまだ公式には「本音」を言わない。国自身も言おうとしない。でも、
原子力委員会などの席で核燃サイクルへの疑問が上がり、知事がそれに反応す
る「火種」は生まれた。この2年、火種が燃え上がる可能性は高いと思う。も
しかしたら、2010年11月2日は、核燃サイクル政策の「終わりのはじま
り」として記憶されるかもしれない。
 その一方で、10月28日、再処理工場に隣接する土地にMOX燃料工場の
建設が始まった。「高品質低価格の燃料を供給する世界一の工場を」と原燃の川
井吉彦社長は力んだ。しかし、燃料をつくるための原料が供給される保証は今
のところ一切ない。国民の税金や電気料金から得た大金をつぎ込みながら、操
業を迎えることなく廃屋になるような、そんなこっけいな風景をいつまでも続
けさせないよう、本音トークが繰り広げられることを祈る。
 余談になるが、今、青森は新幹線の新青森駅までの延伸への期待が高まって
いる。八戸まで新幹線が来てから8年。岩手県の県庁所在地、盛岡まで開業し
てから数えると、その隣の県庁所在地に延びるのに実に28年もかかったこと
になる。
 これだけ歳月を費やした理由の一つが、秋田や山形のように在来線を走らせ
るミニ新幹線ではなく、新たに線路を敷いて高速で走らせるフル規格にこだわ
ったためと言われている。だが、青森まで延ばす当初は「ミニ」が真剣に議論
された。「ミニ」が浮上した時、県民の一人はこう言って激怒したという。「核
燃で迷惑施設を押しつけられているのに、ミニなんて許せない」

                     森治文(朝日新聞青森総局次長)
5.農山村の可能性に賭ける:備前グリーンエネルギーを退職するにあたって
            井筒耕平(名古屋大学大学院環境学研究科博士課程)

 2010年9月30日をもって、備前グリーンエネルギー株式会社を退職い
たしました。これまでにお世話になった方々とこれから出会う皆様に、感謝と
抱負を紙面をお借りして、お伝えしたいと思います。

 2005年10月、ISEPでのインターン中に「備前へ行かないか」との
お誘いがあり、どうせならば現場で頑張りたい、という思いを持って、備前行
きを決意しました。レンタカーに荷物を一杯に積み、仲の良い友人に見送られ
ながら、この備前へ向けて走ってきたのを思い出します。それからちょうど5
年。
 35歳にもなりましたので、新しい仕事を仕掛けたいと思うようになり、独
立することにしました。

 今、何より伝えたいのは、備前グリーンエネルギーのみなさんには本当にお
世話になり、感謝の心でいっぱいだということです。
 こうして、独立して頑張ろうと思えるのも、そのためのいろんなノウハウや
スキル、そして、事業への心構えを学ばせて頂いたからです。
 これからは、農山村の地域づくりをメインミッションとして、農業、山仕事、
商品づくり、生活サービス、養蜂などのコンテンツを豊富に持ちつつ、(自然エ
ネルギーは備前グリーンエネルギーと一緒にやります。)地域内外の人たちとと
もに様々な企画を色々と仕掛け、おもろい地域にしていきたいと考えています。

 地域づくりには、ヒト、モノ、カネ、情報が大切と言われています。ただ、
モノ、カネ、情報は、全てヒトが呼び寄せるものであって、経営の神であるピ
ーター・ドラッカーが「組織における最大の資産は人である」と述べたように、
ヒトこそがとても大切だと考えています。そういう意味では、農山村での企画
やビジネスは、上記で述べたように様々な事業(=コンテンツ)が考えられま
すが、この事業の内容だけが重要なのではなく、誰が誰と、なぜ(ミッション)、
どのように(見せ方)やるか、と言うことこそ、非常に重要であると考えてい
ます。これは、一般に技術だけ優れていても、営業や広報が劣っていてはモノ
が売れないのと同じことだともいえるのです。
 このようなヒト重視の考え方は、高度経済成長期のように時代の向く先が社
会全体で共有されていれば、仕事における「作業」の占める割合が高く、ヒト
(個人)はそれほど重要視されないわけですが、人口減少社会となり、時代の
向かう先が混沌としているエポック(変革)期の現在では、農山村に数あるネ
タをどのようにビジネスに転換するかが、「作業」ではなく『創造』」であるか
らこそ、非常に重要となっており頭と体を動かすヒトの存在が大切なのです。

 ヒト重視の考え方は、都市も同様です。すでに大企業はグローバル人材の確
保に動いており、世界で通用する人材の確保に向けて、大量の国内新卒採用か
ら舵を切り、世界の中からベストな人材を探し始めています。一方で、都市で
働く日本の若者の中には、人生の向かうべき道を模索し続けている者もおり、
農山村へ目を向け始めた若者も出てきています。こうした若者の中で、覚悟を
決めたものが既に農山村というフィールドへ飛び出しているのです。

 人口減少が進み、「シゴトが無い」と若者から敬遠される農山村は、地域に閉
じることなく、オープンでフラットなヒト同士の付き合いの中で、新たな価値
を生むべく蘇る可能性を持っており、私は、この可能性に懸けるべく今後も奔
走したいと考えてします。

            井筒耕平(名古屋大学大学院環境学研究科博士課程)
3.青森エネルギー紀行(10)~ペレット元年~
                     森治文(朝日新聞青森総局次長)

 今年は青森も「暑かった」。青森市で最高気温36.6度(平年値は「わずか」
28.3度!)を記録した8月6日の正午ごろ、最大電力を4年ぶりに更新し
た。
 エアコン(クーラー)がない家の多い青森では、夏に電力需要が伸びること
自体珍しい。4年前に最大電力を記録したのは11月24日である。気象庁の
統計ではその日の青森市の最高気温は3.9度。急に冷え込んだため、灯油で
はなく、手っ取り早くこたつや電気ストーブなど電力に頼った暖房が急増した
のではないかと推測できる。
 欧州もそうだが、寒冷地でのエネルギー需要は冬に多くなるというのは、み
なさんもご存じのところ。そんな冬のエネルギー対策が皆無に近かった青森で
ようやくペレットの活用が動き出した。
 仕掛け人は、五所川原市の建築会社社長の松野武司さん(60)。五所川原市
は津軽半島の中央部に位置し、作家太宰治のふるさとでもある。リンゴの栽培
が盛んな土地で、松野さんが代表を務める津軽ペレット協同組合のペレット工
場は、真っ赤なリンゴが収穫期を迎えた畑のすぐそばにある。
 同組合は今年8月、経産省が始めた「国内クレジット制度」のもと、ペレッ
トストーブによる二酸化炭素(CO2)削減事業が承認された。家庭で使うペレ
ットストーブがクレジットを生み出し、大企業などの削減目標達成に利用され
るのは国内でも初めてのことだ。当初は同協同組合がペレットを供給している
家庭8軒が対象で、今冬からスタート。ひと冬で1軒当たり1トンの削減量を
見込む。今年度中には60軒まで増やしたいという。
 山林の多い東北は、岩手などでペレットの利用が比較的進んでいる。一方、
青森は同協同組合のペレット工場が稼働を始めた2年前まで、ろくにペレット
を作る団体すらなかった。
 松野さんたちがペレットを生産しようと思ったのは、近くの老人ホームが使
っているペレットボイラーに供給するペレットを何と岡山県から秋田港を経由
して「輸入」していると知ったからだ。
 仕事柄、建築廃材の再利用を当初は考えたが、結局、廃材の量はわずかだし、
そこに含まれた薬剤なども心配。それよりも間伐材の7割が放置されていると
いう青森の森の現状を変えようと思ったという。建築廃材は、ペレットを作る
過程で乾燥させる際の燃料に使っている。
 ペレット自身を売るだけでなく、ストーブも販売しているが、石油が高騰し
た3年ほど前はよく売れたが、今はさっぱり。「値段だけの問題ではない」と説
明しても分かってはくれない。さらに、「二酸化炭素削減でお金になる」という
話になると、「CO2を何かに詰めて売るのか」という素朴な疑問も出るといい、
ペレットを使う意味を分かってもらうのは難しい、と松野さんも苦笑いする。
 松野さんによれば、青森には昨年時点で350台のペレットストーブがある
そうだ。そのうち100台は組合が売ったのだという。組合で生産するペレッ
トは1シーズン約900トン。このうちボイラー向けが700トンで家庭用ペ
レットストーブが200トン。しかし、この900トン、まだペレット市場の
小さい青森だけでの消費ではなく、300トンは岩手県に「出荷」している。
 いかにペレットを県内で普及させるか、そしてペレット生産が商売として成
り立つ1300~1500トンまで売れるようにするか、が直近の課題だ。
 ただし、松野さんらの努力が少しずつ報われようともしている。青森市が
10月からペレットストーブを購入する家庭に補助金をつけ始めた。他県では
とっくの昔にやられていることだが、青森の自治体としては初めてのこと。ま
た、県内の融雪道路の一部でペレットボイラーが使われることも決まった。
 青森にとって今年が遅ればせながらの「ペレット元年」と言えるかもしれな
い。松野さんの夢は、自前の「バイオマス発電」を建てることという。「バイオ
マスならリンゴの剪定による枝がいくらでもある。出力300キロワット規模
の発電ができれば、ペレット工場で使う電気をすべてまかなえる」。
 松野さんの試みはまだほんの1歩。8軒の削減量はたかが知れている。だが、
1人当たりの灯油使用量日本一の青森でペレットが普及する意味は決して小さ
くない。

                     森治文(朝日新聞青森総局次長)
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