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4.イベントレポート:自治体が主導する気候変動政策
                   -先進自治体の「恊創」と「連携」
                        氏家芙由子(ISEP)

 2010年3月27日、東京国際フォーラムにおいて、ISEP主催による
シンポジウム『自治体が主導する気候変動政策?先進自治体の「恊創」と「連
携」』が開催された。以下、そのレポートである。

1)基調講演
 まず「東京都の気候変動対策の展開」と題して、都環境局理事の大野輝之氏
から基調講演があり、都のこれまでの気候変動対策とその成果が紹介された。
 東京都では、4月1日から、気候変動対策の大きな目玉であるキャップ&ト
レード制度等が新たに導入された。事業者、また東京の実体に合った制度にな
るように、これらの制度の導入までは、数多くの綿密な調査やステークホルダ
ー会議等、さまざまなステップが踏まれてきたとのことである。EUの「市長
誓約」やクールASEAN等、準国家的な取組みも最後に紹介され、世界の動
きの中に在る東京都の姿を垣間見せられた。

2)第1部パネル対話
 「地球温暖化対策基本法におけるキャップ&トレードと地方自治体」と題し、
はじめにISEPより「国と地方自治体が共同する気候変動政策パッケージ提
案」が発表された。続いて、高橋康夫氏(環境省)、浅岡美恵氏(気候ネットワ
ーク)、山岸尚之氏(WWFジャパン)、大塚直氏(早稲田大学)からプレゼン
テーションがあり、その後、末吉竹二郎氏(国連環境計画)をコーディネータ
ーに、飯田哲也ISEP所長も交えてパネル対話が行われた。
 3月初めに閣議決定された温暖化対策基本法案について、NGOからは、国
や地方自治体が気候変動対策に共に取り組んでいく上での大きなチャンスが同
法案であったと主張がなされた。今後はじまる同法案の国会審議はぜひ注目し
ていきたい。また、「都市の持続的な発展」「政策主体としての地方自治体」「知
識社会論的な視点での気候変動対策」等、さまざまな興味深い視点がパネリス
トから出された。

3)第2部パネル対話
 「首都圏自治体の気候変動政策・再生可能エネルギーでの新しい取組み」と
題し、東京都、埼玉県、神奈川県、横浜市、川崎市の気候変動・再生可能エネ
ルギー政策担当者、また、山下紀明ISEP主任研究員からプレゼンテーショ
ンがあった後、田中信一郎ISEP客員研究員をコーディネーターにパネル対
話が行われた。
 自治体内部で、また首都圏自治体が連携してのこれまでの取組みについて、
それぞれのパネリストが実感をもって語る姿が印象的であった。自治体職員は
目の前にある制度や職務の中でものを考えざるを得ないといったあるパネリス
トの発言には、市民やNGO・NPO、企業や国それぞれに、やはり恊働のた
めの役割があると感じた。

 シンポジウムの参加者は一般企業、エネルギー業界、NGO・NPO、学生
等さまざまであり、気候変動対策への関心の広さを改めて感じさせられた。

 このシンポジウムのプログラム、当日資料等はISEPのホームページで見
ることができる。
http://www.isep.or.jp/

                        氏家芙由子(ISEP)
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5.「ゼロ」を「1」にする仕組みづくり
                    山下紀明(ISEP主任研究員)

 在学中の9ヶ月間のインターンを経て2005年春に大学院を卒業後、研究
員としてISEPに加わり、5年が経ちました。この度、5月末から今年度い
っぱいまでドイツのベルリン自由大学環境政策研究所(FFU)にて長期の研
究留学へ向かうこととなりました。2011年4月からはISEPでの活動に
戻りますが、今回は中間まとめのような形で、この5年間で見えてきたものに
ついて記しておきたいと思います。

 これまでの中心的な業務としては、自治体との政策作り・ネットワークづく
りと地域での実践を進め、研究にもまとめてきました。同時に国への政策提言
や国際的な動向・交渉なども見つつ、研究会やシンポジウム等の企画・運営、
インターン・ボランティアとの恊働など、ISEPの行う多様な業務のほぼ全
てに何らかの形で関わってきました。

 定められたルールや手続きの中で事業を進めていく通常のビジネスとは異な
り、社会の枠組みそのものを変え、持続可能な社会に向けて働きかけていくと
いう貴重な体験を、多くの皆様のご協力を得ながら進められたことは大きな財
産となっています。ISEPの重要な社会的役割として、進めるべきモノや仕
組みが世の中に全く何も無い「ゼロ」の状態から、仕組みやルールを作り上げ
「1」 とし、将来の10や100の発展につなげていくということが挙げられ
ます。そうした取り組みの中で政治や省庁、業界の動向、自治体の力、NGO
の力など、様々なことについて身を以て学ぶことができました。一方で「現実
社会の変わらなさ、難しさ」も常に感じていました。これらのこと全てを今後
の研究にも反映し、机上の空論に陥らぬよう現実を見据えた方策を追求してい
きます。

 現在、これから取り組むべきこととして、3点を考えております。まず政策
作りについては、現状を整理することや誰かが出したアイデアを形に落とし込
む経験は多く積みましたが、新たな政策を作り出すという本当に始めの部分で
の貢献はまだまだ少ないため、自らそういうものを作り出せるようになること。
次に、この分野についての世界的な最先端の知のコミュニティに入っていくこ
と。最後にISEPのデータベースや成果を社会に使える形で出していくこと
です。

 振り返って見れば、日本の環境エネルギー政策にとって非常に大きな動きの
合った5年間であり、ISEPを通じて何らかの貢献はできたのではないかと
考えています。一方で、今は温暖化対策基本法や固定価格買取制度の詳細など、
注視していかなければならないことが多い非常に大事な時期です。この時期に
日本を離れることには一抹の不安もございますが、今後、より大きな貢献がで
きるように精一杯現地での体験を得てきたいと思います。

 この間、内部のスタッフはもちろん、先進的な自治体の方々、関係業界の方々、
大学の先生方など多くの人々との出会いとご協力により育てていただきました。
加えてISEPに熱意を持って来ていただけるインターン・ボランティアの皆
様に支えていただき、多くのイベントや成果物を作ってきました。この場を借
りて皆様に感謝いたします。

 ドイツでは、自然エネルギーの先進国と研究者のコミュニティに直に触れ、
知識と経験を積むとともに、引き続き先進的な自治体の環境政策について調べ
ていきます。その様子については、SEENなどでご紹介していきますので、
今後ともよろしくお願いいたします。

                    山下紀明(ISEP主任研究員)
4.連載:あおもりエネルギー紀行 第4回
             やっぱり選挙で語られない「環境・エネルギー」
                     森治文(朝日新聞青森総局次長)

 総選挙が始まった。
 青森でも4区で自民、民主が事実上の一騎打ちを演じている。もともと自民
王国の青森だが、民主の追い風は予断を許さない状況だ。
 それにしても六ヶ所村を抱え、風力に原発と、この県にとって重要なテーマ
であるはずのエネルギーや環境問題の何と影の薄いこと! 青森の候補者の口
から出てくる言葉は「暮らしを守る」であり、「景気をよくする」「雇用を生み
出す」であり、もう少し具体的に言えば、「農家への所得補償制度」や、なんと
か手当など。不況が社会を覆う時代だから目先のお金が大事なことはよく分か
るが、何やらみんなで同じようなマニフェストを大声で叫んでいるような気が
してくる。
 全国同じ政党の候補者が金太郎飴のように同じ文言を唱えるのが果たしてい
いものなのか。地域から選出される国会議員の存在意義を環境・エネルギー問
題と結びつけて考えてみた。
 青森では長く、核燃料サイクル問題が国政選挙で争点になり得た。明確に反
対を言う社民と共産の公認候補がいた。推進する自民や煮え切らない態度でイ
エスという民主に対抗すべく、選択肢が存在した。ところが今回、六ヶ所村の
ある青森2区に、その社民と共産が候補者を立てなかった。それぞれの党の思
惑はあるだろう。社民は今回、民主との協力関係にかなり配慮しており、民主
支持者の一部の票を社民に回すという約束があると聞く。
 現実的には、社民が選挙区で勝利するのは至難の業。一方、比例東北ブロッ
クでは今、社民は一議席取れるかどうかの瀬戸際だ。共産党も同じく比例での
一議席獲得に必死だ。自民を政権から引きずり降ろしたいが、民主一人勝ちし
すぎてもと考える人に、「選挙区は民主、比例は共産」と思わせる作戦だ。いず
れも現実的な判断だとは思うが、反核燃票は今回、確実に宙に浮く。一方で、
民主を支援する連合青森のなかで、電力総連は、4年前の青森市長選で反核燃
を掲げた候補を応援したという理由で、青森1区の民主公認候補にくみせず、
自主投票とする執念深さをみせているというのに。

 自然エネルギーもまったく選挙で語られない。環境は票にならないとはよく
言われることだけど、風力発電が盛んな土地でもやっぱりという感じだ。幣紙
のアンケート調査で青森の小選挙区の候補に聞いてみても、どこの公認候補も
だいたい党のマニフェストをなぞるだけ。青森という地方が持つ風力や農林漁
業のポテンシャルを強調し、低炭素社会に貢献しつつ、今問題になっている雇
用や景気回復、第一次産業振興の青写真を描くなんていう政治家が一人でもい
ればいいのにと思う。

 有権者が食いつきたくなる「にんじん」を目の前にぶらさげるだけでは、い
つか、にんじんはなくなってしまう。にんじんを供給する大きなビジョンを示
せないものか。雇用情勢にくわしい地元の研究者は言っていた。青森は、全国
一律の経済政策をあてにしても、いつまでも恩恵に預かれない。例えば、バブ
ルの時でさえ、有効求人倍率が0.7倍ほどだった。利益誘導というと聞こえ
は悪いが、地方選出の国会議員を目指すのなら、訴える中身も東京で作ったマ
ニフェストだけじゃ困るのである。

 マニフェストは大事だと思う。でも、全国どこでも、同じマニフェストを丸
暗記して訴えればいいというものではない。まあ、追い風の吹いている党が、
再生可能エネルギーの固定買い取り制度を導入するというから、青森にとって
は結果オーライなのだけど。

                     森治文(朝日新聞青森総局次長)


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5.シリーズ「自治体のエネルギー政策」(3)
   「環境モデル都市」としての長野県飯田市の取り組み
                  小林敏昭(飯田市地球温暖化対策課長)

 長野県飯田市は全国13の「環境モデル都市」のひとつに選定されました。
わが国が目指す低炭素社会の姿を具体的にわかりやすく示そうとするのが環境
モデル都市の構想です。2050年に温室効果ガス半減超という高い目標を掲
げ先駆的な取組みにチャレンジするものです。同時に底力の発揮による地域の
元気回復も大きな目的です。
 「おひさまともりのエネルギーが育む低炭素な環境文化都市の創造」が飯田
市の環境モデルの行動ビジョン。その行動計画では、2005年比で長期では
2050年に70%削減を、中期では排出の著しい家庭部門を40?50%削
減を目指します。
 大きく次の4つの取組みで目標と低炭素社会実現にチャレンジします。(1)
太陽光や木質バイオマスの総合利用・建築物の省エネ化・街区単位の面的熱供
給、(2)移動手段の低炭素化、(3)地域版環境マネジメントシステムの促進
など産業界と連携、(4)コーディネーターによる地域全体の意識変革と市民参
画。
 「環境文化都市」は1996年策定の基本構想基本計画で飯田市が目指す都
市像、環境がひとつの文化となって輝くまちです。2007年には環境文化都
市宣言も行い、産業・地域・人づくりを地域ぐるみで進めてきました。市民出
資による公共屋根での太陽光共同発電、「地域ぐるみ環境ISO研究会」による
企業内での点から地域の面への環境改善活動など小さな芽は大きな花を咲かせ
るところまできています。
 評価されたこれまでの飯田市の先駆的な取組みを環境モデル都市はさらに強
化拡大するものです。地方圏の人口減少・少子高齢化の厳しい現状を踏まえ、
飯田市が中心市として定住自立圏構想も南信州地域で進めています。環境モデ
ル都市の取組みと相まって「飯田市」「南信州」という地域ブランドによる生き
残りへの挑戦です。
 まもなく豊橋(三河)・浜松(遠州)と南信州を結ぶ三遠南信自動車道、
2025年には首都圏と中部圏を40分で結ぶリニア中央新幹線が開通します。
交通体系の劇的変化は、この地域を、ここに暮らす私たちの生活を大きな潮流
に否応なしに飲み込んでいきます。
 二つのアルプスに抱かれ天竜川の両岸に広がる面積658平方km、84%
が森林という自然豊かな飯田市。果物の南限・北限の地、穏やか四季の景色は
絶景です。環境はじめ様々な場面で「飯田」が登場する挑戦を地域ぐるみで展
開していきます。注目していてください。

                  小林敏昭(飯田市地球温暖化対策課長)


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6.需要を作り出す東京都の太陽熱政策パッケージ
                     山下紀明(ISEP主任研究員)

 前回のSEENでは欧州太陽熱エネルギー会議(estec 2009)での議論を紹
介しました。今回は東京都で進められている需要プル型の太陽熱の政策パッケ
ージについてご紹介します。
 太陽熱利用については国の後押しはほとんど無く、自治体においては設備設
置に対しての補助金と普及啓発が主でした。東京都ではISEPも積極的に協
力した2006年の「再生可能エネルギー戦略」、2007年の「気候変動対策
方針」の策定などを経て、「太陽エネルギー利用拡大会議」を開催し、太陽熱の
拡大のための課題と方策を検討してきました。(太陽光についても同時に検討)
 その後もISEPをはじめとするNPOや事業者、業界団体との協力・連携
を経て、次のような全国的な制度が構築されています。これは都内だけでなく、
日本全体の太陽熱業界の復権のために必要と考えられることから、働きかけを
行い、実現してきたものです。

(A)グリーン熱証書制度(太陽熱利用システムからの熱の環境価値を認め、
証書の形でやり取りを行うための仕組みであり、太陽熱の導入について金銭的
メリットを与える)
(B)太陽熱利用システム認証制度(製品の品質を担保するための制度)

 さらにこれらの制度を活用し東京都内において次のような制度が策定されま
した。
(1)一般住宅向け・・・上記(A)と(B)を活用した太陽熱利用システム
補助
(2)大規模建築向け・・(イ)自然エネルギー導入の検討義務付け(ロ)マン
ション性能評価制度(環境性能を表わすラベルの表示に太陽光・太陽熱の有無
を追加)
(3)公共建築物・・・省エネ・再エネ導入指針(公共建築の新築・改築にあ
たっては特に太陽熱の導入を促進するガイドライン)

 また来年度から始まる東京都の排出量取引のクレジットとしてもグリーン熱
証書制度が認められることが期待されています。
 これらの制度には「再生可能エネルギー戦略」で示された、需要側を重視す
る需要プルコンセプトと熱の特質を生かすという考え方が生かされています。

 こうした東京都の太陽熱関連施策をまとめると、以下の3つの特徴がありま
す。
(ア)再生可能エネルギー戦略からの需要プルコンセプトを継続して生かして
いること
(イ)太陽熱業界全体の活性化のための全国的な仕組み作りに連携して貢献し
ていること
(ウ)新たな制度を作るだけでなく、上述(2)のような既存の制度にも入れ
込み、各対象に応じて補助や義務付け、ガイドラインといった形で総合的に太
陽熱普及の仕組みをパッケージ化していること。

 こうした各制度作りが進められていますが、現時点では太陽光と比べ補助申
請件数も少なく、今後もさらなる普及のための取組が求められています。今後
の課題として環境金融の視点も重要です。太陽光発電では中小企業での導入促
進のための減税措置があり、太陽熱利用システムについても適用されることが
期待されます。

 最後に、ISEPが事務局を務めるグリーンエネルギー購入推進協議会の主
催で、これらの太陽熱の取組とグリーン熱証書に関するセミナーを8月27日
(木)に開催します(参考リンク参照)。残念ながらすでに満席となっておりま
すが、その様子はSEENやウェブサイトで紹介してまいります。

参考リンク
東京都環境局 太陽エネルギー利用拡大連携プロジェクト
http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/kikaku/solar/index.html
グリーンエネルギー政策環境セミナー 眠れる巨人 太陽熱とグリーン熱利用
の拡大を目指して
http://www.gepforum.jp/event/090827GEPFseminar/090827GEPFseminar.html

                     山下紀明(ISEP主任研究員)


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