上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
■2011年3月11日(金)14時46分頃に発生した東北関東大震災に関
しまして、被害に遭われた皆様、ご親族、ご友人、ご関係者の皆様におかれま
しては心よりお見舞い申し上げます。

≪原子力特集≫

 近年、地球温暖化対策やエネルギー安全保障の視点から、原子力の見直しの
気運が高まるとともに(いわゆる「原子力ルネッサンス」)、途上国における原
子力建設の動きが目立っています。反面、先進諸国では、高経年化した原子力
発電所の安全対策や、廃炉・リプレースが現実的な問題として直面しつつあり
ます。

 こうした状況下で、昨年11月23日には、原子力円卓会議2010シンポ
ジウム「原子力政策をどう見直すか?日英独における今日的論点とその方向性」
が開催されました。また、内閣府原子力委員会は原子力政策大綱の改定に着手
することを決定しており、第1回の新大綱策定会議は昨年12月に始まり、以
後月2回のペースで開かれています。

 今回のSEEN特別号では、一シンポジウムを報告するとともに、シンポジ
ウムでも登壇された九州大学吉岡教授からの寄稿、二「原子力政策大綱の改定
作業開始」、およびISEP飯田所長の「日本の論点2011」掲載の論文「『原
子力妄想』から醒め、自然エネルギーによる『第3の産業革命』を目指せ」の
紹介をします。


〔付記〕

 今特集号は、1月ないしは2月中に配信する予定でしたが、大幅に遅れてし
まい、読者ならびに関係者の方々にご迷惑をおかけしたこと、お詫び申し上げ
ます。
 また、こうした事情から、今特集号は3月11日の東北関東大震災をきっか
けとした原発災害を踏まえた内容とはなっておりません。
 ISEPでは、原発災害に関する情報を、以下のサイトで発信しております。
ぜひともご参照ください。
http://www.isep.or.jp/fukunp110311.html
スポンサーサイト
1.『原子力妄想』から醒め、
            自然エネルギーによる『第3の産業革命』を目指せ
       飯田哲也(環境エネルギー政策研究所 所長)

 『ビル・ゲイツが東芝と組んで「夢の原子炉」を開発』というスクープ記事
を見て、「やはり原子力ルネッサンスはホンモノだ」と勘違いした人も多いので
はないか。ウィンドウズであれほど成功したゲイツ氏の取り組みなのだから、
それも無理はない。
 しかしこれは、「上から目線」で物事を見る人たちの典型的な「間違い」で、
いかにゲイツ氏といえども、およそ実現性はない。「RE<C」(自然エネルギ
ーを石炭よりも安くする)という目標を掲げて、分散型の自然エネルギー普及
を目指すグーグルを見習った方がいいだろう。
 本稿では、そうした原子力妄想の事実と、『第3の産業革命』として期待され
る自然エネルギーの現実を明らかにする。

■原子力で上滑りする「政治主導」
 ゲイツ氏の場合は、「金持ちの道楽」と笑って済ますことができるが、国家戦
略の場合はそうはいかない。
 民主党の政権交代前のマニフェストでは、原子力に関する記述はせいぜい安
全規制の一元化など「控えめな」書きぶりだった。ところが、2009年末に
アラブ首長国連邦(UAE)への原発輸出競争で韓国に破れ、ベトナムではロ
シアに破れたことで、自尊心と偏狭なナショナリズムが刺激されたのか、「官民
一体のオールジャパン体制による原発輸出」へと一気に突き進んできた。挙げ
句の果てに、オバマ大統領の主導による「核兵器廃絶サミット」が開催された
直後のタイミングで、核不拡散条約(NPT)に加盟していないインドと、原
発輸出の二国間協定の協議を始めるなど、NPT崩れ壊を招きかねない振る舞
いだ。
 このように、いったんコトがあると一気に上滑りするのが、新政権の「政治
主導」の悪い癖だ。知性と理性に裏付けられた冷静な検証がないためであろう。
本件も、いわゆる原発是非論とは無関係に考えても、そもそも現実性がない上
に、無理に進めると大きなリスクが予見される。

(続きは「日本の論点2011」に掲載されています)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784165031000

        飯田哲也(環境エネルギー政策研究所 所長)
2. 原子力円卓会議2010シンポジウム「原子力政策をどう見直すか
        ?日英独における今日的論点とその方向性」からの報告

開催日時:2010年11月23日 13:30~17:00
開催場所:東京工業大学 本館 第一会議室
主催:原子力政策円卓会議2010
東京大学グローバルCOE
          「共生のための国際哲学教育研究センター」(UTCP)
特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)
プログラム:
 開会 趣旨説明 飯田哲也(環境エネルギー政策研究所)
 報告 日本「原子力政策円卓会議2010の提言」
     吉岡斉(九州大学副学長)
    英国 「英国の原子力政策について」
     スティーブ・トーマス(グリニッジ大学教授)
    独国 「独国の原子力政策について」
     ルッツ・メッツ(ベルリン自由大学政治社会科学学部上級准教授)
ラウンドテーブル論議
     原子力円卓会議2010+トーマス氏、メッツ氏
http://www.isep.or.jp/event/101123sympo.html

USTREAM配信
報告
http://www.ustream.tv/recorded/11035444
ラウンドテーブル
http://www.ustream.tv/recorded/11037228

(1)「英国の原子力政策について」
             スティーブ・トーマス氏(グリニッジ大学教授)
                 文責:栗山昭久(ISEPインターン)

スティーブ氏は原子力発電所(以下、原発)が期待されるほどに普及されてい
ない3つの理由を述べた。第一に、原発がほかの発電形式に比べて経済的競争
力がない。その背景として技術の不確実性による建設コストの上昇や借り入れ
コストの上昇により原発のコストが過去5年間において上がり続けていること
を指摘した。第二に、安全性を高め、かつ設計をシンプルにする試みがなされ
ているが、現状はうまくいっていない。原因は市民や行政からの原子力への安
全性の要求の高まりなどを背景にして過去50年間原発の建設コストは上昇し
つづけているとした。第三に、市民の原子力導入に対する反対意見の増加とと
もに原発を推進する政府が機能不全に陥っている可能性を示唆した。最後に今
後、北米や欧州で原発が大量に建設されることはなく、安くて安全性が低い原
発が開発途上国で建設されるだろうと予測するとともに、原発を創ることは多
くの将来の機会コストを上げていると結論付けた。

                    栗山昭久(ISEPインターン)


(2)「ドイツの独国の原子力政策について」
      ルッツ・メッツ氏(ベルリン自由大学政治社会科学部上級准教授)
                 文責:矢嶋孝裕(ISEPインターン)

メッツ氏の結論は、原子力発電は世界の電力供給のなかで、あまり大きな役割
を果たしておらず、今後も変わらないというものでした。世界の電力供給の約
15%は原子力発電により賄われていますが、全エネルギーの中で電力が占め
る割合は約16%です。単純計算では全エネルギーの2.4%が原子力発電に
よるものとなります。そして、2007年に世界中で新たに導入された全発電
容量のうち、原子力は1.2%でしかありませんでした。現在でも原子力発電
の役割は控えめなものであるといえるでしょう。

また、原子炉の耐用年数の問題もあります。現在、世界で稼働中の原子炉
441基のうち、送電線に接続されてから20年以上のものが358基、30
年以上のものが152基です。半分以上が接続から20年以上経ていることに
なります。原子炉の高齢化が示すものは、原子力産業に従事する労働者の高齢
化でもあります。新規の原子力発電所建設が少なかった事で、50歳の労働者
の数は30歳の労働者の3倍にものぼります。教育体制の再整備なども原子力
発電の隠れたコストと言えるでしょう。加えて、原子炉の重要部品については
製造上のボトルネックが存在することも、原子力産業にとっては大きな問題で
す。使用済み核燃料の処分という非常に大きな問題も未解決のまま残っていま
す。以上のことからだけでも、今後、原子力が現在より大きな役割を果たして
いくとは考えにくく、原子力ルネッサンスが起こっているとは言えないことが
わかるでしょう。

後半ではドイツにおける脱原子力政策の説明が行われました。ドイツでは
2023年までに原子力発電所の閉鎖を完了し、2030年からは核廃棄物の
最終処分を行うとされています。この目標を実現させるには、再生可能エネル
ギーの導入拡大、送電インフラの高度化、エネルギー効率の改善、より一層の
技術革新が必要であると氏は述べていました。

最後に感想として、メッツ氏の発表は、最近にわかに注目されるようになった
原子力ルネッサンスと原発輸出を考える際の前提となる国際的な文脈について、
端的に事実を示したものでありました。事実を示されて目から鱗が落ちる思い
をするという事は、普段、私がどれだけ無知であるかを思い知らされると同時
に、何が知らされていないかを知るための非常によい機会となったと思います。
メッツ氏の発表資料について、是非、多くの方々に目を通してもらいたいと思
います。

資料はこちら
http://www.isep.or.jp/event/101123entakukaigi/101123Mez.pdf

                    矢嶋孝裕(ISEPインターン)


(3)「原子力政策シンポジウム」全体ディスカッションから見える今後の議論
                  文責:氏家芙由子(ISEP研究員)

11月23日に開催された「原子力政策シンポジウム」では、S.トーマス氏、
L.メッツ氏に、円卓会議世話人のISEP飯田所長、東工大澤田氏、東大長崎
氏、九州大吉岡氏を交えてディスカッションが行われた。これまで一般に、原
子力についての議論は、放射能汚染や事故のリスクなど安全性の問題が多くを
占めてきたと思う。近年、エネルギー源の中での位置付けや経済性の議論も注
目されているが、この日は核拡散や国際政治へも議論が及び、この技術が核物
質を扱うゆえに不可欠な視点についても再確認させられた。

ディスカッションでは、論点を様々に出し、さらに各論点に様々な見方がある
ことを提示することが目指された。大きく分けると、1)エネルギー源として
の原子力の位置付け・経済性の問題、2)原子力が現実に直面している問題、
3)新興国・途上国による原子力への関心の高まり、4)核不拡散、以上の論
点が提示された。

1) に関しては、吉岡氏が「立地支援や損害賠償法等、政府による保証・下支
えをどうやってやめさせていくかという具体的な政策提案を行い、その上で電
力会社に自主選択させるというふつうの路線に戻すべき」との持論を述べた。
トーマス氏は、遅延とコスト上昇を繰り返しているフィンランドのオルキルオ
ト原発の問題点や原子力の経済性の問題等を詳細に説明した。

2) に関しては、「六ヶ所再処理工場や、もんじゅ、柏崎刈羽の運転開始など、
現に直面している問題の本当の要因はどういうところにあるのか」という問題
提起に、「ガバナンスの問題」「技術の劣化や継承が不十分」などと様々に意見
が出された。

3) は、最も議論に時間が割かれた。澤田氏は、「ルネサンスとは関係ないとこ
ろで経済的に買えないはずだが途上国が原発導入に関心を持っている、それを
どう説明できるか」と問題提起した。スティーブ氏は、「新規原発導入国はより
リーズナブルな価格で提供すると思われる中露韓から導入しようとする。それ
らは欧米で建設される原発よりも安全レベルが低くなるだろう」と懸念を示し
た。

4) については、「核兵器は民生用プログラムから広まっていった」というコメ
ントに、「歴史上核を非保有国が独自に核開発したのは米国のみで、ほぼ核保有
国の技術移転なりがないと開発できない」「技術は民生用軍事用と垣根がないが
人間の意思がないと開発できない」などと応答があった。また、「原爆を落とさ
れた日本がなぜその後数年のうちに原子力開発を始めたのかという意味を考え
るべき」という意見には、フロアから「第五福竜丸事件で史上最大の国民が反
核運動に立ち上がったときに、米国によるプロパガンダがあった」などとコメ
ントがあった。

ディスカッションの最後は、「今日は従来なかったフォーメーション。今後は、
未来世代を含めた多様なステークホルダーにも参加を求め、リアルな問題をも
う一歩進めていくため、立場は違うが議論を交わしていきたい」と円卓会議世
話人より締めくくられた。

今回は多く議題に上らなかったが、気候変動問題への対策の中での原子力の位
置付けや、どの国も頭を悩ませているという高レベル放射性廃棄物処分の問題
も重要である。これら原子力利用に伴うすべての関わり合いを明らかにした上
で、当然のことだが、原子力のエネルギー利用は私たちのためになるのかとい
うことを大局的見地から検討し、選択をしていくべきだ。

昨年12月から原子力委員会で始まった原子力政策大綱新策定会議は、第2回
会合を終えた。今後本格化する約1年間の審議とともに、建設的な議論を行っ
ていきたい。

                      氏家芙由子(ISEP研究員)
3.「原子力政策大綱の改定作業開始」
        吉岡斉(九州大学副学長,大学院比較社会文化研究院教授)

内閣府原子力委員会は2010年11月30日、原子力政策大綱の改定に着手
することを決定した。改定作業の実質部分をになうのは、新大綱策定会議であ
り、5名の原子力委員を含む26名の委員をメンバーとする。現在の原子力政
策大綱は、5年あまり前の2005年10月11日に決定された。その改定作
業は2004年6月に始まっている。したがって約6年半ぶりの改定作業開始
ということになる。当初のスケジュールでは年内にも新政策大綱を決定するこ
とが見込まれている。第1回の新大綱策定会議は12月21日に開かれた。そ
の後、月2回程度のペースで開かれている(第2回:1月14日、第3回:1
月31日)。次回は2月21日の予定である。

改定の理由として原子力委員会は、以下の3つの情勢変化を挙げている。第1
は、原子力発電に対する見方が世界的に肯定的な方向へと変化していることで
ある。第2は、その一方で日本国内では混迷が続いていることである。第3は、
多くの諸国が原子力発電導入への関心を高めるなかで、国際原子力取引の動き
が活性化するとともに、核保安・核不拡散問題に対する取り組み強化が必要と
なっていること。もとより自動車検査登録制度(車検)や原子炉定期検査など
は、特段の問題がなくても安全確保のために必ず行わねばならないものである。
原子力政策大綱の定期的見直しは、その観点からみて不可欠である。それゆえ
情勢変化を改定の理由とする理屈は妥当ではない。とはいえ見直しを行うこと
自体は正しい。

会議の進め方としては前回と同様の方式が採用されるとみられる。その方式は
以下のようなものである。「エネルギーと原子力発電」「核燃料サイクル」など
の主要項目ごとに数回の審議を行い、そのたびに合意書(官僚用語で「論点整
理」と呼ばれる)を作っていく。全ての主要項目について審議を行ったのち、
それらの合意書の骨子をまとめた原子力政策大綱案を作り、国民意見聴取によ
って若干の補正をほどこしたのちに、最終回で政策大綱を決定する。それを原
子力委員会が決定し、さらに閣議決定が行われる。「エネルギーと原子力発電」
に関する合意書(論点整理)は3月前半、「核燃料サイクル」に関する合意書(論
点整理)は5月前半に承認される予定となっており、この時点で大枠は固まる。
その他の主要項目について審議を続けたのち、10月以降に原子力政策大綱改
定案が発表されることとなるとみられる。

さて、新大綱策定会議には、現行の原子力発電政策の中核部分の一部又は全部
に対して否定的な見解をもつメンバーは2名しか含まれていない。ちなみにそ
うしたメンバーは、1994年の長期計画専門部会では0人、1995年12
月のもんじゅ事故による原子力政策の民主化の前進のあとに組織された
2000年の長期計画策定会議では2名、2004年の新計画策定会議ではや
はり2名、であった。委員構成における原子力発電政策に対する賛否のバラン
スは変わっていない。なお筆者は2000年の原子力長期計画改定と、
2005年の原子力政策大綱策定に際して、策定会議の委員として活動したが、
今回は委員に選ばれなかった。ともあれそうしたメンバー構成に加え、最近の
原子力委員会が従来路線の見直しの姿勢を見せていないことを考慮すると、今
回の原子力政策大綱改定において大きな変化が起こる可能性はほとんどないと
見込まれる。

たしかに2009年9月の政権交代後、原子力委員会のメンバーに変化があっ
た。2010年から原子力委員長代理となった鈴木達治郎氏は、核燃料再処理
路線に批判的であるだけでなく、原子力発電の拡大は難しいとの予想を繰り返
し述べてきたことで知られる。同じく2010年から原子力委員となった大庭
三枝氏は、国際関係論を専攻する学者であるが、原子力発電に関して今までほ
とんど意見を述べたことがない。そうした従来とは毛色の異なる原子力委員が
就任した背景には、政権交代があったことは周知のとおりである。鳩山内閣の
政務三役がみずから原子力委員候補を選び、社会民主党と国民新党との協議を
行って原子力委員を決めるという新しい人選システムの採用があった。

しかし変わったのはそこまでだった。その後は自由民主党政権時代とほとんど
変わらない内容の原子力政策が進められるようになった。とくに2010年5
月の社会民主党の政権離脱以降、政権内での批判勢力が失われた状態にある。
事業仕分けによるリストラの脅威が関係者にのしかかったが、結果的には大幅
リストラは回避された。そうした状態のもとで2010年6月8日、エネルギ
ー基本計画が改定された。そこには2020年までに発電用原子炉を9基新増
設し、2030年までに14基(つまり追加で5基)新増設するとの目標が示
されている。これは現時点での電力業界の計画どおりである。その意味で新し
いエネルギー基本計画は従来路線を再認証したに過ぎない。だが政権交代にも
かかわらず何も変わっていないという事実は、民主党連立政権の本質を浮き彫
りにしている。その閣議決定は新しい原子力政策大綱に対する強い縛りとなっ
ている。

新しい原子力政策大綱の内容がどうなるかについては、歴史をふまえてかなり
確実性の高い予測ができる。1994年の原子力長期計画(長計)に至るまで、
原子力長期計画は次の3つの特徴を帯びたものであった。第1の特徴は、政府
事業はもとより民間事業までも包括的に国家計画の対象に組み込んできたこと
である。民間電力会社の商業原子力発電事業もまた国家計画にもとづいて推進
するものと考えられてきた。第2の特徴は、その国家計画がきわめて詳細かつ
具体的なものであった。つまり全ての主要事業について、民間事業を含めて、
その将来の事業規模に関する数値目標や、主要装置の完成目標年度などが示さ
れてきた。第3の特徴は、ほとんど全ての主要事業について、それを前進させ
る方針が示されてきた。とくに商業原子力発電事業、使用済核燃料再処理事業、
高速増殖炉サイクル技術開発の三者は、原子力政策の「主要3事業」と呼ぶこと
ができるほど、政策文書での扱いが大きいものであったが、それらは決して凍
結・縮小・整理等の対象となることはなかった。

しかし2000年長期計画は、従来の長期計画と一線を画すものとなった。第
1に、民間事業については、政府の考え方を示した上で民間にその実施を「期
待」するという位置づけになった。第2に、政府事業と民間事業を問わず、数
値目標や目標年度はほとんど記載されなくなった。第3に、全ての主要事業を
前進させるという方針も柔軟化した。たとえば原子力発電の将来規模について
は「適切なレベルに維持していく必要がある」と述べられるにとどまった。ま
た高速増殖炉サイクル技術開発については、原型炉もんじゅの運転再開を勧告
しつつも、実証炉以後の計画が白紙となった。なおこれは1997年の原子力
委員会高速増殖炉懇談会(筆者も委員の一員をつとめた)の勧告を継承したも
のである。全体として2000年長期計画は、原子力政策の大幅な「柔軟化」を
進めたものとして評価できる。

ところが2005年政策大綱を見ると、1994年までの古い長期計画の様式
に逆戻りしていることがわかる。第1に「期待」という表現が消え、国家計画の
対象に再び民間事業が組み入れられている。第2に、数値目標や目標年度につ
いての記載が主要事業について復活している。第3に、原子力発電シェアの数
値目標が明記され、高速増殖炉サイクル技術開発に関して、実用化までのタイ
ムテーブルが復活している。このように2005年政策大綱は、2000年長
期計画と比べて大幅に「硬直化」し、先祖返りした内容となっている。

しかし唯一「柔軟化」された点として、使用済核燃料の処理・処分の方針につ
いて、総合評価方式という政策選択の手法を導入し、直線処分路線も選択肢と
なり得ることを明記した点があげられる。しかしその方法論および評価内容は
適切性を欠いた。また商業原子力発電については、複数の政策選択肢の中から
総合評価によりベストのものを選ぶという方式の活用は、吉岡委員の度重なる
要請にもかかわらず却下された。この前例が、新しい政策大綱の改定作業にお
いて、全面的に活用されることを期待してやまない。たとえ内容上の変化は期
待できなくても、せめて方法論上の変化は期待したいものである。

吉岡斉(九州大学副学長,大学院比較社会文化研究院教授)

1.「無計画停電」から「戦略的エネルギーシフト」へ
           「3.11後のエネルギー戦略ペーパー」No.1
       飯田哲也(ISEP所長)、松原弘直(ISEP主席研究員)

1)はじめに
 2011年3月11日に発生した東北関東大地震とそれに続く巨大津波によ
って、福島第一原子力発電所をはじめとする東京電力・東北電力の主要電源が
緊急停止した。このため東日本は深刻な需給ギャップが生まれ、それに対応す
るために東京電力では「計画停電」を始めた。ところがこの計画停電は、十分
に計画されたものではなく、信号や鉄道、病院といったライフラインの電力や
震災被災地の電力供給さえ止まる地域がある他、生産活動の見通しを立てられ
ない産業経済界からも異論が聞こえるなど、混乱を極めている。
 そこでISEPでは、関東圏の供給力や過去の需要量を含めた電力需要の検
証を行い、今後、公共政策として行うべき、短期・中長期的な施策をここに提
言する。

(続きは以下のサイトで)
http://www.isep.or.jp/images/press/ISEP_Strategy110323.pdf

        飯田哲也(ISEP所長)、松原弘直(ISEP主席研究員)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。